Night/Knight 第39話 出航

三十八 康孝(みそや やすたか):元・封滅騎士団 砲戦機動隊。通称、「第三艦隊」隊長。
                元々海軍出身であり、魔術の適正は低かった。魔力増幅器を体内に埋め込むことで前線に対応できるレベルになった。
                地の力は低いが戦場戦略に長けており、「提督」という通り名で知られている。
                退役した現在は、日がな農作業や釣りなどで過ごしている。ある種、昼行燈のような生活スタイル。性格は大らかであり柔和。人を諭し、導く父性に長けた人物。
                退役後の平穏な生活にどこか違和感を感じており、阿積の懇願もあり、第三艦隊へ復帰、以後隊長として指揮を執る。
                連携行動で相手を封じるという手法を初めて魔術師として取り入れた『集団魔術戦闘行動のパイオニア』でもある。
                

金剛 阿積(こんごう あづみ):封滅騎士団 砲戦機動隊。通称、「第三艦隊」所属。第三艦隊の中での階級は戦艦。
                 康孝と同じく海軍出身の魔術師。魔術の適正は低く、魔力増幅器を体内に埋め込むことで前線に対応できるレベルになった。
                埋め込んだ魔力増幅器は五器であり、人間が本来耐えられる数を大きく超えている。(本来は一人につき一つ)
                性格は生真面目。副官という役職が服を着たような堅苦しさを持つ。が、それはあくまで組織を運営するための必要行動と割り切ってのこと。
                康孝に対して忠節を誓っているが、それは海軍時代に上官であったとあることに起因している。
                そのせいもあり、康孝に対してはある程度砕けた会話もできる。しかし、他者に対しては硬いまま。
                苗字の『金剛』は本名ではなく識別名。本名は「浅葱 阿積」。

ガルシア・ノーフォーク:封滅騎士団 砲戦機動隊。通称、「第三艦隊」所属。第三艦隊での階級は重巡洋艦。
            軍人出身の魔術師。体内に魔力増幅器を埋め込んでいる。数は三。
            性格はフランク。裏を返せば軽薄であり、場の空気を乱すタイプ。しかし、認めた相手や身近な人間に対しては情に篤く、矢面に立ち守れる気概の良い人物。
            命令違反を繰り返し、軍を除隊させられ、処罰として軍用魔術研究所へ送られ被験者として扱われ、結果魔術師となった。
            ファミリーネームの「ノーフォーク」は本名ではなく識別名。本名は「ガルシア・ミリガン」

暁 尊(あかつき みこと):封滅騎士団 砲戦機動隊。通称、「第三艦隊」所属。第三艦隊での階級は駆逐艦。
             少年兵出身の魔術師。体内に魔力増幅器を埋め込んでいる。数は三。
             第三艦隊の中で最年少。中性的で、愛嬌のある顔立ちをしており、大人受けのしやすいタイプ。
             しかし、その反面、精神性は歪んでおり、シリアルキラー(連続殺人犯)のそれ。
             幼少期から虐待を受けており、少年兵として育てられたこともあり、人を殺すことにためらいはない。
             愛情表現がイコールとして殺害行動になっており、持ち前の愛嬌で相手の隙をさそい、暗殺することに長けている。
             苗字の『暁』は本名では無く識別名。本名はなく、阿積につけてもらった『尊』を名乗っている。
             性別は男性なのだが、小柄で中性的で声も高いという点を戦闘に生かす、と同時に単純な『個人的な趣味』として、少女の服を着ている。(いわゆる『男の娘』)

アビゲイル・サラトガ:封滅騎士団 砲戦機動隊。通称、「第三艦隊」所属。第三艦隊での階級は空母。
           軍人出身の魔術師。体内に魔力増幅器を埋め込んでいる。数は四。
           知識人でいろいろなこと、特に魔術知識に関して人一倍の知識を持っているがその反面、人の感情の機微には疎い。
           天才ゆえ嫌味なく時に場の空気が読めず、蘊蓄を語り出し周囲からウンザリされる事が多々ある。
           阿積からは「サラ」、ガルシアと尊からは「アビー」の愛称で呼ばれており、本人はどちらとも気に入っている。
           ファミリーネームの『サラトガ』は本名ではなく識別名。本名は『アビゲイル・モーガン・シモンズ』


♂康孝:
♀阿積:
♂ガルシア:
♀尊
♀アビー:
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阿積  :おつかれさまです。提督。

康孝  :おう。いやぁ、長旅は疲れるな。

阿積  :おっしゃっていただければお迎えにあがったのですが。

康孝  :いや、いい。気楽な電車旅ってのもいいもんだ。

阿積  :そうですか。・・・人員はすでにそろっております。

康孝  :うむ、そうか。

阿積  :少々、人数は減りましたが。

康孝  :・・・誰が逝った。

阿積  :空母・飛龍、重巡・ノーザンプトン、軽巡・夕張、駆逐・シムス 以上、計4名。

康孝  :皆、戦死か?

阿積  :飛龍とシムスは。ノーザンプトンは負傷名誉除隊の後に病死。夕張は・・・その。

康孝  :軍規違反か。

阿積  :・・・前任の提督を意図的に戦死させたとして。

康孝  :そんなことをするような奴ではないだろうに。

阿積  :・・・誰も納得はしていません。ですが。

康孝  :決まったことは覆らないか。

阿積  :彼の事は触れないでおいてください。まだ引きずっていますので。

康孝  :ああ、了解した。

阿積  :では、こちらへどうぞ。お入りください。

康孝  :うむ。ありがとう。

阿積  :全員、傾注。たった今、提督が着任されました。

ガルシア:ようこそ。ボス。

康孝  :ああ、ガルシア君、だったね。これからよろしく。

ガルシア:もちろん。

アビー :提督!お久しぶりです。

康孝  :アビゲイル。元気だったか。

アビー :割と元気でした。また提督と戦えるのは光栄です。

康孝  :こっちもだ。よろしく頼む。

尊   :初めまして!てーとく。

康孝  :君は、見ない顔だね。

尊   :暁 尊といいます。よろしくおねがいします。

康孝  :ああ、君が。暁ということは駆逐だな。よろしく。

尊   :よろしくお願いします。

阿積  :提督。以上が第三艦隊総員です。

康孝  :うむ。少数精鋭と言ったところだな。

アビー :あの、提督。他の人員についてなんですが、その・・・

阿積  :サラ。提督はもうご存知よ。

アビー :あ・・・。うん。そう。すいません。

康孝  :いい。君が謝る事じゃない。さて、諸君。少しばかり耳を貸してほしい。
     これより、我ら第三艦隊は戦闘行動に入る。目標はヘブリニッジ魔族特区に住む四名家の排除だ。

尊   :よんめいけ?

ガルシア:おいおい、これくらいは知っとこうぜ。

アビー :四名家とは、ヘブリニッジ魔族特区を取り仕切る有力な家系を指すの。
     アヴィラ、ターク、シモーヌ、夜巳(やみ)の四家あるから四名家。
     そのすべては吸血鬼で各々が各々の役割をもってて・・・

阿積  :サラ。

アビー :あ、ごめん。

康孝  :アビーが解説してくれた通り、吸血鬼の有力者だ。それらの排除は容易ではない。
     そして、我々は知っての通り、非力にして少数だ。

ガルシア:多勢に無勢ってやつか。

尊   :そんなの、負けるんじゃない?普通にやったって。

康孝  :ああ、負けるだろう。だからこそ、我々は1つの手しか持っていない。

ガルシア:ゲリラ戦ってやつ?

康孝  :本来。我々は全員で集中して一目標を叩くことに長けている。
     その戦力を分けるというモノは本来するべきではないのだが。

アビー :個人に対してならば話は別。

康孝  :その通り。我々の目標はこの四人。

阿積  :アルマ・フォンターク。マルリス・アヴィラ。ミーシャ・シモーヌ。そして・・・。

康孝  :夜巳 鎮。

ガルシア:あの有名な『夜の王』に対して喧嘩を売るって訳ね。

康孝  :相手として、不足はないだろう。
     
尊   :見込みはある?

阿積  :勝算ってこと?

ガルシア:まぁ、気になるところだろうな。

康孝  :率直に言うとゼロに近い。だが、ゼロではない。

尊   :どういうこと?

阿積  :ゲリラ戦と言った通り、突発的かつ少数目標に対しての攻撃になる。そのため、

康孝  :そのため、すべての対象を調査し、分析して弱点を探る。

阿積  :性格、趣味、欠点、こだわり。人間関係。そのすべてに至るまで調べ上げる。

アビー :ワオ、なにそれストーカーみたい。楽しそう。

尊   :趣味悪いよ?

アビー :うっさい。

康孝  :調べた上で物理的弱点だけでなく、精神的な弱点までも把握する。 
     その前提が成り立った上で我々の勝利が近づく。

尊   :スパイ映画みたい。

アビー :ロシアより愛をこめて。

ガルシア:なんだそりゃ

アビー :前世紀のスパイ映画。007っていうスパイが敵国の暗号を奪い取るために内情を知る女性に接近するんだけどね?
     その裏には悪の組織の陰謀が絡んでて・・・

尊   :なにそれ、見たい。

阿積  :サラ。少し黙って。

アビー :あ、うん。了解。

康孝  :いいか諸君。目下やることは、この人物たちの動向調査だ。
     細かいところまで洗いざらい調査。ただし、痕跡は残すな。脅迫や殺害などは不測の事態以外は避けろ。

ガルシア:了解。んじゃ、俺はコイツもらい。アルマ・フォンターク。

尊   :私はこの子がいい。マルリス・アヴィラ。

アビー :残り物には福があるのかしらね。ミーシャ・シモーヌ。

阿積  :夜巳 鎮は私が。各員、連絡は密に。

康孝  :以上、みな行動に移ってくれ。

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康孝  :暁。ちょっといいかい。

尊   :はい。なんでしょー。てーとく。

康孝  :その服装や、言動はワザとか?

尊   :ん?なんのことー?

康孝  :君の動作が少し妙でね。

尊   :妙って、なにがー?

康孝  :歩き方は男のそれだろう。歩幅は短いが動きが大雑把。
     スカートが翻ることを気にしてるようだが、女性のそれよりワンテンポ遅い。

尊   :・・・サイコメトラー?

康孝  :分析したまでだよ。動作や言動がおかしくないかってな。

尊   :・・・あー。さすがですね。
     ごまかせてると思ったんだけど。

康孝  :いや、普通だと気付かない。ごまかすどころじゃないレベルにはね。

尊   :これ、やめろって言う?

康孝  :なぜ?

尊   :前の提督はやめろって。気色悪いって。

康孝  :君は、ホモセクシャルか?

尊   :だったら?

康孝  :別に。ただの事実確認だ。

尊   :んー。別に男性が好きとか女性が好きはないかな。
     むしろ、やりたいからやってる。

康孝  :なるほど。・・・そのままでいい。

尊   :いいの?

康孝  :いわゆるカバーだろう?偽装工作。

尊   :まぁ、そんな感じですかね?趣味もあるけれど。

康孝  :なら構わない。好きなようにやればいい。

尊   :ありがとうございます。

康孝  :ただし、注意がある。

尊   :何でしょう?

康孝  :カバーに対して、こだわりを持ちすぎるな。自分を見失うぞ。

尊   :というと?

康孝  :自分が何者で、何を目的としていたかが消えるってことだ。

尊   :・・・気を付けます。

康孝  :分かったならいい。それじゃ、作業に移ってくれ。


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ガルシア:へぇ?コイツすげぇな。

アビー :なになに?うわ、なにこれ。ファンタジーのヒーローみたい。

ガルシア:13歳で家長就任。23には四名家入りの一役を担ってる。

アビー :武力のターク家っていう謳い文句は伊達じゃなさそう。
     1人で40人の吸血鬼と戦って無傷ってどういうことよ。

ガルシア:おんなじ魔族って訳だし、俺らと同じように考えたら負けだぞ?

アビー :それはわかってるって。けど、これは度が過ぎてるでしょ。
     相手は武器所持。一方このアルマってやつは徒手空拳。素手で戦ってる。

ガルシア:素手って。吸血鬼には武器を作る魔術があるだろう?

アビー :それすら使ってないんだって。

ガルシア:まさしく鬼神だな。

アビー :姿は男装の麗人だけれど。

ガルシア:そっちはどうだ?ミーシャ・シモーヌってやつ。

アビー :すっごい経歴。虐待の形跡在り。性別が分からないけれど。多分、性的な虐待も受けてるんじゃないかな?

ガルシア:うえ、頭おかしいやつじゃねぇか。

アビー :そのおかげでコイツも頭のおかしい存在になってるけどね。
     猟奇的な行動が、多数見受けられる。

ガルシア:監禁、拷問、うえ・・・これ見ろよ。じわじわ殺してやがる。

アビー :ちょっと、そんなの見せないでよ。

ガルシア:的確に致命傷にならないようにワザと外して刺してる。
     しかも、解剖までやってる臭いな。

アビー :ってか、この資料。どっから手に入れてるの?
     私たちこんなの見たおぼえないけど。

阿積  :提督のツテよ。魔族サイドのね。
     はい、追加の資料。

ガルシア:魔族サイドに協力者がいるのか?

阿積  :協力者って言っても金を使ったものだけどね。

アビー :つまり、情報屋ってこと。

阿積  :そうね。四名家なんて言ってても、所詮はマフィアと変わらないから。
     痕跡なんてごろごろ出てくる。捕まらないのは『ヘブリニッジ』っていう特殊な環境と

ガルシア:見せしめっていう自己顕示欲か。

アビー :まったく、理解ができないな。

阿積  :とりあえず、情報をすべて漁って分析してみましょう。

アビー :かなり時間がかかりそう。

ガルシア:やらなきゃな。

阿積  :明日には外部で情報を漁れるようにしなければいけないから。

アビー :聞き込みとか刑事ものっぽい。アメリカン・ギャングスタみたいな。

ガルシア:また映画か?

アビー :そう!麻薬捜査の警官が、あの手この手で犯人を追い詰めるんだけど・・・

阿積  :それ、今じゃないとダメ?

アビー :ごめん。お口チャックしとく。

阿積  :全く。ほら、私も手伝うから。

ガルシア:たすかるよ。

アビー :んじゃ、私こっちの山ね。

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阿積  :ふぅ・・・

康孝  :お疲れの様だな。

阿積  :あ、提督。おつかれさまです。

康孝  :いや、私はたいしてだよ。君の方が疲れてるだろう。
     ほら、飲むといい。

阿積  :コーヒー・・・。提督のブレンドですか?

康孝  :ああ、割とうまく行った方だ。

阿積  :また、よく言いますよ。・・・おいしい。

康孝  :そうか。ならよかった。
     どうだ。やれそうか?

阿積  :たぶんですけど。

康孝  :ふむ、難しい問題だな。

阿積  :勝てる戦いしかしてきませんでしたから。

康孝  :そうだな。勝てる戦いしかしない。それが我らのルールだ。

阿積  :死んだ二人は・・・。

康孝  :それも運命だ。

阿積  :割り切れないですよ。いつまでたっても。

康孝  :やはり、君は優しいな。

阿積  :そ、そんなこと!・・・いわないでください。

康孝  :すまない。妙な意味ではなかったんだ。

阿積  :いえ、こちらこそ。

康孝  :私は、今回君たちを殺すかもしれない。

阿積  :皆、元よりそのつもりです。

康孝  :残される者は、心が痛む。

阿積  :それは・・・わかりますが。

康孝  :だから、君たちは絶対に生きろ。

阿積  :可能な限り。

康孝  :そのために私は、頭を使うことにするよ。

阿積  :よろしくおねがいします。

康孝  :よし、それじゃあ俺は寝るよ。

阿積  :はい、おやすみなさい。

康孝  :君も、早く寝るんだよ。夜更かしは美容の敵だからな。

阿積  :・・・はい。そうします。

康孝  :うむ、それではな。

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ガルシア:あー、やっと入れた。

尊   :ガルシア遅いー

ガルシア:うっせぇよ。

アビー :どうしたのダーリン。

ガルシア:俺がイケメン過ぎてな。声かけられまくってたんだよ。

アビー :あらやだ。妬けちゃう。

尊   :で?ホントのところは?

ガルシア:持ち込んでるもので引っかかってな。

アビー :まさかいやらしいものかしらー?

阿積  :これよ。

アビー :ワオ、なにこれ

ガルシア:PDW(ピー・ディー・ダブリュー)。つまりサブウエポンだ。

康孝  :魔術付与されていないようだが?

ガルシア:あ、ボス。ええ、わざとしてません。対人武器なんで。

康孝  :なるほど。護身用か。

ガルシア:どうやって取り戻したんで?

阿積  :持ってきた。

ガルシア:はい?

尊   :つまり、置き引き?

アビー :それはクール。

康孝  :あまり危険な橋は渡るべきではないぞ?

阿積  :必要行動かと。

康孝  :まぁいい。本題に入ろう。今回のミッションだ。
     これを見てくれ。

尊   :この街の見取り図?

阿積  :20~40が吸血鬼が治める地区。私たちがいるのが、ここ。39地区。

康孝  :目標が居るのが25、28、35。この三つだ。今回のミッションはこの三地区からの離脱経路の調査。

アビー :撤収時間は?

康孝  :15分。

ガルシア:・・・短いっすね。

尊   :派手にやれないのが問題だね

阿積  :そう。あくまで隠密作戦が前提ということを忘れずに。

康孝  :衝突後、撤収となったとき、我々は影にならなければならない。
     誰にも見られることなく、ここ。5地区の集合場所まで戻れ。

アビー :経路選定の上で条件は?

康孝  :スラムには立ち入るな。

尊   :その場所はどこ?

阿積  :外縁スラムと言われているところ。
     38、39、40。鬼の管轄も同じく、18、19、20。

ガルシア:文字通り外縁スラムって訳か。
     立ち入り禁止の理由は?

康孝  :スラムは一種の治外法権区画だ。四名家の影響力が及ばない。

尊   :なら、より一層紛れやすいんじゃ?

康孝  :いや、影響力が及ばない代わりに、ここには独自のルールがある。
     そして、この地域は顔見知りがグループを作っている。

アビー :つまり知らない顔が居たら目立つ。ベリー・マディソンみたいに。

康孝  :魔術師30人殺しか。最後は知り合いから身元がばれてあっけなく捕まった。

アビー :ど派手な衣装にこだわり過ぎて捕まったとか間抜けですよね。間抜けと言えば・・・

ガルシア:ベイビー?賢いのはわかったから、ちょっとな?

アビー :あー、うん。了解。

阿積  :裏道、側道。その他使えるルートをすべて駆使してここへ戻る。それを今日だけで把握して。

ガルシア:了解。

康孝  :では、解散。後で例の場所で落ち合おう。

尊   :あれ?提督はやらないんですか~?

康孝  :俺は・・・少し寄るところがあってな。じゃあ、また後で。

阿積  :では、行きましょう。・・・行動開始。

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康孝  :ここは、まだ残っていたか。・・・また、この街に帰ってくることになるとはな。

ガルシア:あれ?ボス。どうしてここに?

康孝  :ん?ああ、ガルシア。いや、何。ちょっとばかり昔を懐かしんでいただけだよ。

ガルシア:昔?ここに来てたことがあるんで?

康孝  :ああ、個人的なことでな。

ガルシア:個人的っすか。

康孝  :気にするな。特に意味はない。・・・それより、油を売っていていいのか?

ガルシア:あ、やっべ。今、何分っすか!?

康孝  :後、10分で再集結地点につかないと、阿積が怒るぞ?

ガルシア:そ、それだけは勘弁!んじゃ、ボス!先行ってます!

康孝  :ああ、気を付けろよ。
     ・・・・桐江(きりえ)。行ってくる。

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阿積  :なんです。この体たらくは。

ガルシア:はぁ・・・はぁ・・・、いや、これでも急いだんだけどよ。

尊   :やーい、びりっけつー

ガルシア:ぶっ飛ばすぞ、尊!

アビー :この天才少女アビーちゃんが慰めてあげよう。

尊   :少女って言う歳でもないよね?

アビー :なんか言った?

尊   :ううん。なんでもない。

ガルシア:つか、俺、割と全力で戻ったんだけどなんで、びりな訳?

阿積  :日ごろの鍛錬が足りないんでしょう。

ガルシア:ひでぇ!

アビー :まーまー。ところで、提督は?

尊   :そういえばいないね。

ガルシア:あー、ボスならさっきばったり会ったぞ?
     なんか、家をじーっと見てたけど

尊   :家?どんな?

ガルシア:古くてボロい一軒家。ツタが壁一面びっしりの。

アビー :家でも買うつもりなの?

阿積  :私が知る訳ないでしょう。
     それより、次の行動に移りましょう。

ガルシア:待ってくれって。俺、まだばててる・・・

阿積  :聞こえません。次は・・・

康孝  :今日は、終わりにしよう。

阿積  :提督。

康孝  :諸君、今日一日でこの街の雰囲気は掴めたか?

アビー :んー?なんとなく?

尊   :だいたいは。

ガルシア:そもそもへとへと。

康孝  :しばらくは隠密行動がメインになる。
     人目につかず、かつ自然に見えるようこの街に慣れることを優先とする。

阿積  :いいんですか?作戦決行は・・・

康孝  :ああ、わかってる。それゆえだ。
     今日は、休養日にする。各々独自にこの街を満喫したまえ。

ガルシア:ラッキー・・・。これ以上走り回るのは面倒だ。

尊   :んー。ショッピングでもしようかなー。

アビー :あ、なら私も!ちょっと行ってみたいところが

阿積  :作戦行動中ということを忘れないように。

アビー :わかってるって。

康孝  :よし、それではな。明日、08:00(マルハチマルマル)にここに集合。
     以上解散。

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阿積  :・・・どういう風の吹き回しですか?

康孝  :自由行動にした意味か?さっき言っただろう?

阿積  :そうではなく。・・・お宅を訪ねていたと。

康孝  :ガルシアから聞いたか。・・・ああ、少し気になってな。

阿積  :まだ、提督は・・・

康孝  :よせ。もう、終わったことだ。

阿積  :ですが、私は・・・

康孝  :いいんだ。これは私自身が背負うべき業だ。

阿積  :・・・提督。

康孝  :君も、好きに羽根を伸ばしてくると良い。
     刺激的なものが多くあるぞ。この街には。

阿積  :・・・そう、ですか。
     では、お言葉に甘えて。失礼します。

康孝  :ああ、行ってこい。

   ( 間 )

康孝  :気を遣わせたか。・・・私も、まだまだ青いということか。
     『夜の王』・・・お前に会ったら、俺はなんて声を掛けるんだろうか・・・。

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ガルシア:次回予告

尊   :緋色の衝撃

アビー :偽りの存在は少女を追い詰める

阿積  :そして、現れる聖なる翼。

康孝  :Night/Knight第40話 片翼(かたよく)

阿積  :血に沈むのはどちらか一方。




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