Night/Knight 第36話 Quad-Alliance(クアド・アライアンス)

♂夜巳 鎮(やみ まもる):純血の吸血鬼。見た目17歳くらいだが、実年齢は200オーバー。
             感情の起伏が浅く、眉間に皺が寄っているため常に怒っているように思われる。
             達観とも諦観ともとれる思考をしており、物事に対して醒めている。

♀マルリス・アヴィラ:純血吸血鬼であり、吸血鬼界の名家『アヴィラ家』の子女。見た目18歳くらいの少女だが、実年齢は200オーバー。
           生粋のお嬢様であり、口調もお嬢様。しかし、怒ると地が出てしまい荒い口調になる。

♂ダレル・ハイド:吸血鬼であり、マルリスの側近。ヘブリニッジの治安維持を務める『アヴィラ家』の重役。筋骨隆々の大男。
         見た目30代後半。荒事対応や事件現場整理などの外役の責任者を務める。
         荒っぽい口調だが、身内に対して義理人情の厚い人物。

♀アルマ・フォン・ターク:純血吸血鬼であり、吸血鬼界の名家『ターク家』の家長。見た目20歳くらいだが、実年齢は300オーバー。
             騎士道に準じた在り方を重んじる。

♀ミーシャ・シモーヌ:純血吸血鬼であり、ルドルフの弟(もしくは妹)。性別不明。精神的にも肉体的にも幼く、歪んだ感情表現をしがち。
           知識、魔術すべてにおいてルドルフより遥かに優れており、それを畏れ、憎んだ兄から幼いころから虐待を受けていた。
           その結果として、精神的に「壊れて」しまった。

♂バラック・べリンガル:ミーシャの下僕となった混血吸血鬼。以前は死霊魔術を得意とする魔術師であり、どこかに所属することのないフリーランスだった。
           人や魔族を呪い傀儡とする事から「骸狩り」という二つ名を持つ。下僕となった現在はミーシャの事を狂信的に信仰している。
           主人に対する敵対者はすべて殺害対象であり、同時に「コレクション対象」としか見ておらず、見下している。

♂鎮:
♀マルリス:
♂ダレル:
♀アルマ:
♀ミーシャ:
♂バラック:

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  (アヴィラ家 マルリス自室。起き上がり、書類に目を通しているマルリス)
ダレル :おーじょーう!入っていいかー?

マルリス:開いてる。勝手に入りなさい。

ダレル :ういよ。(ト、入室)
     よお、お嬢。調子はどうだ?

マルリス:ぼちぼちって所ね。腕は万全。後は足の修復。

ダレル :おう、ま、起き上がれるようになって何よりだ。

マルリス:私をバカにしているのかダレ・・・。
     ・・・なぁ、ダレル。

ダレル :ん?どうした?お嬢。

マルリス:その、手に持ってるお重はなんだ?

ダレル :あん?これか?・・・なぁ、お嬢。

マルリス:なんだ?

ダレル :弁当屋っているだろ?あのお嬢ダイスキな女。

マルリス:・・・わかった、もういい。その先は言うな。

ダレル :さっきひょっこり現れてな。
     「ねぇ!マルリスお嬢様起きたんだって!?これをあげて!特製弁当!」
     つって俺に押し付けてきたんだよ。

マルリス:・・・・。(ト、露骨に嫌そうな顔)

ダレル :なんでも、夜の王の所の従者・・・裕美(ひろみ)ちゃんだっけか?
     あれに料理の特訓してもらっただとかなんとか。
     味は万全だから安心して!ってえっらい勢いで語ってきたぞ。

マルリス:わかった。十分わかったから、とりあえず、そこ。置いといて。

ダレル :おう。んじゃあ、ここに。

マルリス:用件は以上?

ダレル :まぁ、そうだな。

マルリス:そう。

ダレル :・・・・。

マルリス:・・・。ダレル。

ダレル :ん?なんだ。

マルリス:いつまで居るつもりだ?

ダレル :いや、お嬢がコレ食うまで。

マルリス:なんでだよ!

ダレル :あの弁当屋に言われたんだよ。
     お嬢がちゃんと食べるまで見てろって。

マルリス:私が捨てるとでも思ってるのか!あの弁当屋は!

ダレル :いや、感想が聞きてぇって。

マルリス:だったら、後で聞きにくれば・・・!

ダレル :だって、お嬢、居留守使うだろ?

マルリス:・・・う。

ダレル :そういう意味だ。さぁ、あきらめて食えってお嬢。

マルリス:ちっ、わかった。わかったよ!食えばいいんだろ!食えば!
     (お重の蓋を開ける、マルリス)
     ・・・なんだこれは。

ダレル :なんつったか、キャラ弁・・・だったか?お嬢の顔を食材で作ったんだと。

マルリス:余計に食いたくなくなったんだが?

ダレル :人の好意を捨てるのか?

マルリス:自分で自分の顔を食えっていうのかお前は!

ダレル :あくまで「顔っぽい」だけだろ。

マルリス:うぅ・・・。はぁ、しかたない。

アルマ :失礼する。おや、病み上がりにしては元気そうだな。マルリス嬢。

鎮   :言っただろう。これくらいで病人然(びょうにんぜん)とする奴じゃないと。

マルリス:あ、アルマ様!?それに、鎮様も!?ど、どうしてここに!?

アルマ :おや?連絡はしたはずだが?今日、四名家会談(よんめいけかいだん)を行うと。

マルリス:はい!?き、聞いていませんわ

ダレル :・・・あぁ。そういやそうだった。

マルリス:ダレル!

ダレル :いや、わりぃわりぃ。すっかり忘れてた。

マルリス:忘れてたですまないってわからない!?

鎮   :どうでもいい。とりあえず、会談が行えれば。

マルリス:ですが、こちらにも迎える準備というものが。

アルマ :おや、これは・・・

マルリス:あ、それは!

アルマ :弁当屋の弁当か。なるほど、このために訓練していたわけか。

マルリス:・・・はぁ?

鎮   :裕美(ひろみ)を使って、さんざん料理していた。
     おかげで、食いたくないものを食わされた。

アルマ :そうか?なかなかに美味だったが。

マルリス:ちょ、ちょっと待って!なんであなた方も知っているのです!?

鎮   :言ったろう、ウチの裕美に習っていたんだ。作る場所はウチだ。

アルマ :そこで作り過ぎた料理は、ウチの部下の弁当になったというわけだ。
     いや、非常に助かった。いかんせん、ウチは食い扶持が多いからな。
     低価格で流してもらった故、

マルリス:何やってんだ、あの弁当屋・・・。

鎮   :さんざん俺たちにも迷惑をかけたんだ。責任をもって処理しろ。

マルリス:わかってますわ。・・・いただきます。あむ・・・。ぐ、ぐぬ・・・

アルマ :どうした?口に合わんか?

マルリス:ちが!・・・いや、その。

鎮   :どうせ、想像より上手く作ってあって腹立つとかそこらへんだろう。

マルリス:なんで、わかるんですの・・・。

ダレル :お、マジでか。どれどれ。はむ

マルリス:あ、ちょっとダレル!

ダレル :ほう、こりゃうめぇ。マンドラゴラの根の煮びたしか。
     苦味もとってあってうまいな。

アルマ :だろう?やはり、あの弁当屋の食は絶品だ。今後も利用してみるか・・・。

鎮   :それはそうと、マルリス。さっさと食え。会談を済ませたい。

マルリス:わ、わかってますわ!


バラック:Night/Knight第36話 Quad-Alliance(クアド・アライアンス)


ダレル :んで、四名家会談って言ってるが、シモーヌ家はどうした?

アルマ :それなんだが、なんでも、名代が来るとかなんとか。

鎮   :名代か。どうせ奴だろう。

マルリス:奴・・・?

バラック:いやはや、お待たせを致しました。皆様方。遅参の段、お詫び申し上げる次第でございまする。

マルリス:『骸狩り』!?貴様なぜここにッ!?

バラック:おお、そんな恐ろしい顔をなさいますな。マルリス様。不肖、私、バラック・べリンガル。
     魔術師ではなく、半魔の身になりました故。皆様と敵対するつもりはありませぬ。

マルリス:半魔に?

鎮   :伝えてなかったか?ミーシャの吸血に遭って、コイツは今、ミーシャの配下だ。

バラック:ええ、我が主、ミーシャ様にお仕えさせていただいております。
     若輩者ではございますが、以後お見知りおきを。

マルリス:うさん臭いな。どこまで信じられたものかわからないのだけど?

バラック:ええ、もちろん。そうおっしゃられると思いまして、1つ。贈り物をご用意してございます。

ダレル :送りもんだぁ?賄賂かなにかのつもりか?

バラック:いえいえ、賄賂ではなく。正式な『贈り物』でございます。

マルリス:それは、なに?

バラック:こちらを、お納めください。

アルマ :ほぉ?生首が贈り物とは趣味が悪いな。

ダレル :お嬢。コイツは。

マルリス:ああ、その様ね。貴方、この首をどうして?

バラック:ミヒャイ・ドロプツキー。我がシモーヌ家配下にして、アヴィラ家指名手配犯。
     この首を差し上げとう存じます。

マルリス:ええ、そうね。先代からずっと差し出せと言っていた相手。なぜだか知ってるのかしら?

バラック:この匹夫めがアヴィラ家管轄の商店に対し、嫌がらせ及び買収行為を働いたためと。

マルリス:よく知っているのね。じゃあ、コイツがどういう存在かってことももちろん知っているわよね。

バラック:ええ、シモーヌ家筆頭家老にして、家老統括。

ダレル :テメェが、それをやすやすと殺したと?どういうつもりだ。

バラック:ただ、ひとえに。今後ともアヴィラ家と密接な関係を築きたく。

ダレル :それが、テメェが信用できると証明すると本気で思ってんのか!?

バラック:ええ、もちろん。ご聡明なマルリス様は信用していただけると。

マルリス:・・・いいだろう。

ダレル :お嬢!?

マルリス:だが、その前に1つ質問いいかしら?

バラック:なんなりと。

マルリス:それは、貴方の独断?それともミーシャの指示?

バラック:もちろん、答えは1つです。どちらも、でございます。

ダレル :答えになってねぇんだが?

マルリス:フフッ・・アハハハッ!

ダレル :お、お嬢!?

マルリス:クソが付くほど冗談が過ぎるぞ、骸狩り。
     筆頭家老を独断でぶち殺して、他所にやるとか本気か?

ダレル :お、お嬢。どういうこったよ。

鎮   :わからんか?ダレル。コイツは『ミーシャの意図を汲んで、独断で殺した』って言いたいんだよ。

アルマ :まさしく狂人だな。これを子飼いにするシモーヌの気が知れん。

バラック:もはや、この者は我が家に不要となりました。故に、処分を。

マルリス:こいつはシモーヌの領地半分を仕切ったたはずだが?

バラック:取り上げたうえ、他の者に任せました。

マルリス:そう・・・。いいわ。信じてあげる。

ダレル :お、おい!いいのかよ!?

マルリス:いいの。むしろ気に入った。腐臭が付くのが気に入らないけれど、こういう血生臭い行動ができる奴は見てて面白いから。

鎮   :それは、俺らに対する当てつけか?マルリス。

マルリス:そんなはずないでしょう?なんにせよ平和が一番ですし。
     それに、鎮様がここでは一番血生臭い存在でしょうに。

鎮   :知ったような口を。

マルリス:知っていましてよ。鎮様。何やら聖十字協会とつるんで探し物をしているそうじゃないですか。

アルマ :ほう?なんとも聞き捨てならんなそれは。

ダレル :(棒読みで)あー、お嬢。ついでになんだが。

マルリス:なぁに?ダレル。

ダレル :(棒読みで)最近、この街に出入りして、いろいろ嗅ぎまわってた封滅騎士の連中が、姿を見せなくなってるんだよ。
     この街に入ったきり、外に出てないんだがどうしてだかわかるか?

マルリス:ですって、鎮様?なにか心当たりは?

アルマ :どうやら・・・ここで隠し事はしない方が身のためだと思うぞ?夜巳の。

鎮   :ったく、相変わらず犬みたいな嗅覚をしているようだ。

マルリス:犬ではなく狼と言ってほしいところですわね?

鎮   :いいだろう。今回の四名家会談を開いた理由でもある。
     早速、本題に入らせてもらおう。

ダレル :んじゃ、俺は外に・・・

鎮   :いや、お前はここにいた方が都合がいい。

ダレル :そ、そうか。

鎮   :さっきダレルが言った通り、封滅騎士を殺しているのは俺だ。
     とはいえ、有力な奴がいたわけでもないがな。

マルリス:大方、探し物関係でしょう?

鎮   :ああ、この場にいる全員に聞く。『聖杯』というものを知っているか?

ダレル :聖杯ってぇと。あの、手にした者に絶対的な力を与えるって言うあれか?

鎮   :ああ、それを封滅騎士も探しているようだ。

マルリス:ハッ!ありもするかわからない代物でしょう?どうしてそんなに血眼になって隠すような素振りを見せるんです?
     勝手にさせればいいじゃないですの。

アルマ :確かに。そもそもの話だ。このヘブリニッジに『聖杯』と呼ばれる代物があるとは聞いていない。
  
バラック:聖杯・・・ですか。ああ、懐かしき響き。

鎮   :しっているのか。

バラック:ええ。もちろんですとも。とはいえ、実物を見たことはありませんが。

ダレル :どうせ、なんちゃってな代物だろう。

バラック:いいえ。聖杯は確かに存在しまする。それも、強大な力を持つものとして。

アルマ :それで?夜巳の。その聖杯を探してどうするつもりだ?

鎮   :破壊する。それ以外ない。

ミーシャ:えー。もったいなーい。

バラック:おお、我が主。ようこそおいでを。

ミーシャ:うん、おまたせ。少し手間取っちゃった。

アルマ :名代を出して遅参するほどの事があったようだが。

ミーシャ:うん、ちょっとね。あ、そうそう。アルマさんにイイコト伝えなきゃ。

アルマ :うん?なんだ。

ミーシャ:あのね。こないだ、そっちのシマに妙なの来なかった?

アルマ :妙なの・・・?なんのことだ?

ミーシャ:隠さなくていいよ。人売りに手を染めてるなんて思わないから。

アルマ :・・・それをどこで?

ミーシャ:いやー、さっきまで遊んでた人が人売りを生業にしてる人でね。
     勝手にウチのところで商売し始めたから、怒ったの。そしたら、俺はターク家から許可を得てるなんて言うもんだからさ。

アルマ :ほう?それを独断で処断したと?

ミーシャ:あれ?ダメだった?人にやさしいアルマさんがそんなことしないと思ったんだけど。

アルマ :・・・いや。今回は恩に着る。妙な商売を持ち掛けてきた阿呆だからな。
     我が家は一切関係のない、ただの野良犬だ。

ミーシャ:ンフ、ならよかった。

ダレル :人身売買なんぞ、この街じゃそこらで見かけるが・・・。

マルリス:さすがに、語った家名が不味かったですわね。よりにもよってターク家を隠れ蓑にしようとするとは。

鎮   :・・・いい加減、本題に戻させてもらっていいか?

ダレル :おっと、そうだそうだ。その・・・聖杯探してぶっ壊そうってことだったよな。

バラック:そもそも。なぜ、封滅騎士が聖杯を探しているとお考えに?

鎮   :『予知』を見た。

ミーシャ:よち・・・?なにそれ?

バラック:夜の王がお持ちの特殊技能『ギフト』でございます。我が主よ。
     なんでも、未来に関する先見(さきみ)ができるとか。

ミーシャ:へぇー!すごい!やって見せて!

鎮   :・・・ふん。予知は自分が狙って起こせる技能じゃない。
     いつ、どこで、何が条件で見れるものかもわからん。

ミーシャ:ちぇー。つまんないの。

ダレル :そんで。夜の王。その予知で『聖杯を探せ』と出たと。

鎮   :ああ、だからこそ、ここで四名家すべての行動を統一させておきたい。

マルリス:我々は、封滅騎士よりも先にその『聖杯』とやらを見つけ出すと。

アルマ :言うは易いが、いざどうするのだ?何か手がかりは?

鎮   :無い。

ダレル :はぁ!?ちょ、ちょっと待ってくれ夜の王!

マルリス:だと思いましたわ。

アルマ :夜巳の。分かっているだろうが、そんな空を掴む内容で我々にどう動けと?

鎮   :どうも。動かなくていい。

ダレル :ん?なぁ、待ってくれ夜の王。さっきから言ってることがあべこべだぞ?

マルリス:つまり?聖杯を探すということを我々は目標にしなくてはいけない。
    けれど、現状。鎮様以外この件に関しては動かなくていい、と?

鎮   :そういうことだ。

アルマ :なぁ、夜巳の。少し先行が過ぎるのではないか?
     一応、我々は同盟関係だが、あくまでこれは相互の利潤を目的にした同盟だ。
     ここにいる誰も、『夜巳家に従順して』同盟を結んでいるわけではないんだぞ?

鎮   :別に。この件に関して、付き合えないならば離脱してもらってかまわん。
     そもそも、この件にはそっちの三家には関係ない話ではあるからな。

マルリス:鎮様。少々言葉がキツイ様に感じるのは私だけなのでしょうか?
     それでは、つまり、我々は『用なし』と言われているように聞こえるのですが?

ミーシャ:アハハハッ!なんだかわかんないけど、ピリピリしてるー

バラック:ミーシャ様。お静かに。あまり騒がれますと、剣が飛んできますぞ?

ミーシャ:キャーこわーい

鎮   :フン。まぁいい。重要なことは聖杯がどうのよりも、こちらだからな。

アルマ :まだ何かあるというのか?

鎮   :封滅騎士。そこのエリートがこの街に紛れ込んだ。

アルマ :なんだって?

ミーシャ:・・・へぇ?

ダレル :封滅騎士が入ってくるのはいつもの事じゃねぇか。それがどうしたって・・。

マルリス:ダレル。聞いていませんでしたの?相手はエリートと言ったの。

ダレル :・・・つまり?

マルリス:はぁ。あのねぇ!

バラック:つまり。総統閣下直属の『お抱え魔術師』が『何かしらの作戦』を行っていると? 

鎮   :ああ。何を目指しているかは不明だが。用心に越したことはないだろう。

アルマ :我々の内、誰かの首を取りに来たと。

鎮   :あるいは、全員の首かもしれんがな。

マルリス:こんな時に厄介な。

ダレル :一番に狙われやすいのはウチか。

アルマ :順当に考えればな。マルリス嬢が行動不能の今、寝首を掻くには丁度いい。
     ・・・よし、私の旗下(きか)から腕の立つ奴を護衛で貸そう。

マルリス:結構。・・・と言いたいですが。ありがたく受け取らせてもらいますわ。

ダレル :現状。うちで戦力になるやつらが少ないからな。

マルリス:部下の錬成を後回しにしていた付けですわね。
     よければ、訓練もつけてもらえないですかしら?

アルマ :かまわんさ。好きに使ってやってくれ。

ミーシャ:ボクのとこは大丈夫だよー?
     むしろ、今すぐにでも戦いたいかも。

バラック:そうですな。物量だけは我々、持っております故。

ダレル :戦いは数ってか・・・。それが通用する相手だといいがな。

鎮   :目下、厳戒態勢を引くことだ。子飼いにも伝えてやっておいた方がいい。

アルマ :言われなくとも。

マルリス:厄介が早々に終わることを祈るしかできませんわね。

鎮   :とりあえずは、以上だ。何か言いたいことはあるか?

ミーシャ:とくになーし

マルリス:いいえ。

アルマ :ないな。

鎮   :では、これで終わりにする。

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マルリス:ふむ・・・どう見ましたか?アルマ様?

アルマ :夜巳ののことか?うむ・・・。

ダレル :どうした?なんか気になるか?
     俺はいつも通りに見えたがなァ。偏屈で頑固っぽい。

マルリス:付き合いが短い者にとってはそうでしょうね。

ダレル :あらら。

アルマ :・・・少々、焦っているように見えた。

マルリス:ええ、同意しますわ。

ダレル :焦ってる?そうだったか?

マルリス:ダレル。あなたはもう少し、人の表情を読む訓練をした方がいいですわ。

ダレル :へいへい。どうせ苦手ですよー。

アルマ :どうにもきな臭い。あそこまで追い詰められるということは、背後で何かが起こっているのかもしれん。

マルリス:すこし、探ってみる必要がありますわね。

アルマ :下手につつくと藪から蛇を出すことになるが。

マルリス:そこはお任せを。戦いは少々しか得手ではないですが。我が家の本領は捜査と追跡。
     陰から影への仕事はお任せを。

アルマ :ああ、頼む。知らぬところで火の手が上がるのは避けたいからな。

マルリス:ええ。もちろん。じゃ、ダレル。聞いてたわよね。

ダレル :あいよ。とりあえず、耳がいい奴らかき集めて探ってみるわ。

マルリス:お願い。ああ、そうだ。ダレル。

ダレル :なんだ?お嬢。

マルリス:あくまで「お淑やかに」ね?

ダレル :はいよ、りょーかい。

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バラック:ミーシャ様。

ミーシャ:んー?なにかな?バラック。

バラック:聖杯の件ですが。

ミーシャ:うん。解ってる。見つけたいんだね?

バラック:ええ。ぜひとも。

ミーシャ:いいよ、探そっか。

バラック:ありがとうございます。

ミーシャ:鎮さんは「壊す」なんて言ってたけど、そんなもったいないことできないよね。

バラック:もっともでございまする。

ミーシャ:それに、聖杯探してたら、きっと楽しく『遊べる』人たちがいると思うんだ。

バラック:封滅騎士。でございますな。

ミーシャ:うん。あ、そうだバラック。

バラック:なんでございましょう?

ミーシャ:紛れ込んだ封滅騎士について、リストを作ってくれる?
     遊びに行く対象にするから。

バラック:かしこまりましてございます。

ミーシャ:おねがーい。ンフフ、さぁ、どんな遊びができるかなー?

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鎮   :チッ、ここまで『予知』通りか。このままでは最悪の展開に変わってしまう。
     ・・・そうなる前に、手を打たないといけないが・・・。
     クソッ!どの手もリスクが高すぎる。となれば、後は・・・。

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ダレル :次回予告

バラック:過去からの残影

マルリス:それは破壊と暴力の化身。

ミーシャ:心酔する者は、少女を奈落へと突き落とす

アルマ :Night/Knight 37話 Twinkle Little Star

鎮   :憎悪の一手が影に潜む。




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