Night/Knight 第31話 第三艦隊

三十八 康敬(みそや やすたか):元・封滅騎士団 砲戦機動隊。通称、「第三艦隊」隊長。
                元々海軍出身であり、魔術の適正は低かった。魔力増幅器を体内に埋め込むことで前線に対応できるレベルになった。
                地の力は低いが戦場戦略に長けており、「提督」という通り名で知られている。
                退役した現在は、日がな農作業や釣りなどで過ごしている。ある種、昼行燈のような生活スタイル。
性格は大らかであり柔和。人を諭し、導く父性に長けた人物。


金剛 阿積(こんごう あづみ):封滅騎士団 砲戦機動隊。通称、「第三艦隊」所属。第三艦隊の中での階級は戦艦。
                 康敬と同じく海軍出身の魔術師。魔術の適正は低く、魔力増幅器を体内に埋め込むことで前線に対応できるレベルになった。
                埋め込んだ魔力増幅器は五器であり、人間が本来耐えられる数を大きく超えている。(本来は一人につき一つ)
                性格は生真面目。副官という役職が服を着たような堅苦しさを持つ。が、それはあくまで組織を運営するための必要行動と割り切ってのこと。
                康敬に対して忠節を誓っているが、それは海軍時代に上官であったとあることに起因している。
                そのせいもあり、康敬に対してはある程度砕けた会話もできる。しかし、他者に対しては硬いまま。
                苗字の『金剛』は本名ではなく識別名。本名は「浅葱 阿積」。

ガルシア・ノーフォーク:封滅騎士団 砲戦機動隊。通称、「第三艦隊」所属。第三艦隊での階級は重巡洋艦。
            軍人出身の魔術師。体内に魔力増幅器を埋め込んでいる。数は三。
            性格はフランク。裏を返せば軽薄であり、場の空気を乱すタイプ。
            命令違反を繰り返し、軍を除隊させられ、処罰として軍用魔術研究所へ送られ被験者として扱われ、結果魔術師となった。
            ファミリーネームの「ノーフォーク」は本名ではなく識別名。本名は「ガルシア・ミリガン」

ノロイヒキ:幻霊。人の恐怖や嫌悪感といった空想が人の形となったもの。幻想が形となり、そのまま生き続けることで知識を得る。
      ノロイヒキはあらゆるものに対して憎悪を抱いた存在で「恨み」を辺りに振りまく害をなす存在。
      人の思いから生まれたものであるため、会話はできる。しかし、その根底は「恨み」であるため、交渉などはできない。
      

♂三十八 康敬:
♀金剛 阿積:
♂ガルシア・ノーフォーク:
♂♀ノロイヒキ+住人:

(次回予告はキャラ読みをしなくて良いです。ナレ読み推奨。)

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ガルシア :あー、暇すぎ。つか、平和すぎ。なんすか、ここ。

阿積   :無駄口を叩かない。平和なのはいいことです。

ガルシア :けどよぉ?こんなとこって肌に合わなくないっすか?

阿積   :肌に合う、合わないは今関係ないでしょう。

ガルシア :俺は苦手っすわ。なんか気が触れそうで。
      やっぱり戦火で血の滾(たぎ)る感じが性に合ってるっていうか・・・。

阿積   :あなたの趣味嗜好は聞いてない。それよりも、目的を完遂しましょう。

ガルシア :だからモテないんすよ、副長。見た目いいのに。

阿積   :・・・ガルシア兵長。

ガルシア :あ?何すか・・・?

阿積   :上官を罵倒した罪としてここで断罪しましょうか?

ガルシア :や、やだなぁ、ちょっとした冗談じゃないっすか。

阿積   :冗談にも品があります。あなたにはそれがないのです。

ガルシア :へいへい、すんませんね。

阿積   :しかし、どうしましょうか・・・。

ガルシア :どうするってなにがです?

阿積   :提督のことです。この周辺に住まわれているということなのですが。

ガルシア :そうっすね。どうにかして探さねぇとですわ。

阿積   :ですが、探すと言っても。

ガルシア :こう、人が居ないとどうしようもないっすねぇ。

阿積   :仕方ありません。そこの民家で話を聞いてみましょう。

ガルシア :はぁ?人に聞くって、いいんすか?我々は今、秘匿作戦中で・・・

阿積   :例外はつきものです。では、少し待っていてください。
      戸を叩く)すみません。どなたかおられませんか?すみません。

ガルシア :いや、だから・・・!はぁ、全く。ウキウキしちゃってまぁ。
      どんな人なんすかねぇ。副長がそこまで信頼する人って。

住人   :ハイ。なんでしょう?

阿積   :すみません。不仕付けで申し訳ないのですが、三十八 康敬という人がこの付近に住んでいると聞いたのですが・・・

住人   :ん?三十八・・・?しらないねぇ。康敬っていう人は住んでいるが・・・。

阿積   :そうですか。では、その方は今、どちらの方に?

住人   :安住さんは、今なら川で釣りでもしてるんじゃないかね?

阿積   :川で・・・

住人   :ああ、おそらくね。こっから北に行った山の中にちょっとした川がある。
      大概あの人はそこで渓流釣りをしてる。

阿積   :そうですか・・・。ありがとうございます。

ガルシア :終わりましたか?副長。

阿積   :ええ。どうやら名前を変えて住んでいるようです。
      その人は、今渓流釣りをしているようです。

ガルシア :渓流釣りねぇ?平和すぎて涙がでるぜ。

阿積   :提督の前でその口は閉じておくように。

ガルシア :へいへい。わかってますよ。

阿積   :では、いきましょう。

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康敬   :(欠伸)・・・釣れないねぇ。今日はボウズかな?
      んん?この感じ・・・当たりかっ!?

ガルシア :だーっ!どこだよ提督さんよぉっ!

康敬   :あっ!・・・逃げられたか。

阿積   :少しは黙りなさい。兵長。騒がしいです。

ガルシア :はいはい。すんませんね。

康敬   :まったく。釣れたと思ったのは魚じゃなく、人だったか。

阿積   :あ、これは失礼を。ウチの者が騒ぎ立ててしまって。

康敬   :全くだ。ちょうどアタリが来ていたのに。

ガルシア :俺のせいかよ

阿積   :やめなさい。兵長。

康敬   :兵長・・・。アンタら。軍人かい。

ガルシア :ああ、そうだよ。軍人だ。元だがな。

康敬   :へぇ、そうかい。そいつぁ奇遇だな。俺も元軍人なんだ。

ガルシア :軍人くずれがこんな場所で釣りとは、気楽でいいなァ?

阿積   :やめなさい兵長!無礼です!

ガルシア :だってよぉ。副長。コイツ俺の所為に・・・

阿積   :黙りなさい!これは命令です!

ガルシア :ちっ・・・りょーかーい。

康敬   :終わったかね?

阿積   :ええ。重ね重ねの失礼を。お詫びします。

康敬   :いらんよ。俺は別に気にしちゃいない。というか、懐かしく思ったくらいだ。

阿積   :・・・そうですか。

康敬   :んで?お前さん方は、何用でここに来たんだい?

阿積   :・・・提督を探しに。

ガルシア :俺たちのリーダーを探せって命令が出ましてねェ。

阿積   :・・・兵長。

ガルシア :はいはい。黙ってますよ。

康敬   :提督・・・か。見つかるといいねぇ。

阿積   :いえ、すでに見つけております。

ガルシア :は?副長。アンタなにを言って・・・

阿積   :三十八 康敬 大佐。ご無沙汰しております。

ガルシア :は?おい、待てよ副長。まさかこいつが・・・

康敬   :すまない。お嬢さん。なにか勘違いをしているんじゃないか?
      私は提督でも大佐でもない。ただの釣りのオヤジさ。

阿積   :ご謙遜を。いくら知り合った期間が昔であり、短いとはいえ、私は貴方を覚えています。

康敬   :ほう、そうか。ならば教えてくれ。君の知る「三十八 康敬」という人物を。

阿積   :はい。私の知る提督は、父性であふれた方でした。決して怒らず、冷静で。そして、愛をもち、誰に対しても大らかに接する。

康敬   :なるほど、えらく出来た人の様だ。

阿積   :それだけでなく。戦場ではその冷静さ故、最短で容赦なく相手を封じる手管に長ける知恵者でもあります。

康敬   :ハハッ。父性の次には知恵者と来たか。これは、さぞすごい人なのだろうねぇ。

阿積   :そして、私の命の恩人でもあります。

康敬   :・・・・・。

ガルシア :命の恩人・・・?

阿積   :私が十代の新兵であった時。私は、戦場にて敵魔術中隊の攻撃にさらされ、仲間と共に死を待つだけの状況に追いやられました。
      敵の攻撃は苛烈。逃げ場も、救援も望めない。その時でした。本来、いなかったはずの魔術砲戦部隊が現れ、その窮地を救ってくれました。

康敬   :ベリエ湾沖海上 魔術砲撃戦。当時、紛争化していた某国の軍事テロリストが起こした、対軍人放逐(ほうちく)活動。

阿積   :はい。テロリストは魔術の心得を持ち、半ゲリラ的に攻撃をしかけてきたため、通常兵器しか持たない我々は窮地となりました。

康敬   :その窮地とやらを救ったのが私だと?

阿積   :はい。率いていた砲戦部隊の攻撃により、テロリストを撃破し、さらには逃げる敵から捕虜を取り、情報を入手することもできました。
      その指揮は、単純かつ、的確に相手の弱点を突き、整然と並び揃った隊形のまま、最短にて敵を撃破しました。故に・・・

康敬   :故に、付いたあだ名が「第三艦隊」名だたる戦艦の名を冠した魔術師たち。・・・ふぅ。全く、おぼえているもんだね。

ガルシア :まさか、本当に・・・

康敬   :懐かしい思い出だ。・・・だが、私ではない。

阿積   :いいえ。貴方です。私を助けたのは・・・

康敬   :ちがう。そういう意味じゃない。隠居して、三十八の姓を捨てた今、私は提督と呼ばれた頃の私ではないさ。
      さながら、田舎の農家のじじいだな。

阿積   :それでも、貴方は私の提督です。

康敬   :違うと言っているのになぁ・・・。それで?そっちの彼は見ない顔だが。

阿積   :提督が前線を退かれた後に配属されました。ガルシア・ノーフォーク兵長です。

康敬   :ノーフォーク。重巡洋艦だな。

ガルシア :おうよ。この30口径でなんだってぶち抜いてやるぜ。

阿積   :すみません。このとおり、軽口が過ぎるのが玉に瑕(きず)でして。

康敬   :いや、自信を持つことは良いことだ。ふむ、30口径。その銃のモデルはМ1(えむいち)カービンライフルか。

ガルシア :よく知ってんな。おっさん。

康敬   :はっは。これでも、元軍人だからな。そのタイプの魔力銃も撃ったことがある。

阿積   :覚えがあります。少々不得手でいらっしゃったように記憶していますが。

康敬   :覚えていたか。なんだか恥ずかしいな。

ガルシア :なんだ。ヘタクソかよ。

康敬   :はっはっは。これは手厳しい。だが、誰しも得手不得手があるものだ。
      ・・・うーむ。今日は本格的にボウズだな。

阿積   :提督。

康敬   :まだ、提督と呼ぶかね?言っただろう。私はもうその任は降りた。

阿積   :封滅騎士団 総統閣下よりの御下知(ごげち)です。

康敬   :・・・あの、総統からかね?

阿積   :はい。本日付けで三十八 康敬 特務大尉(とくむたいい)を、封滅騎士団 砲戦機動隊 隊長に任ずる。とのことです。

ガルシア :言っとくけど、これ。命令なんで。ノーは利かないんでよろしく。

康敬   :あの人は、まだ私に厄介を背負わせようというのか。

ガルシア :厄介だろうが何だろうが、従ってもらいますよ。提督サマ。

康敬   :断る。

ガルシア :はぁ!?

康敬   :言ったはずだ。今の私は提督でなければ、三十八 康敬でもない。ただの田舎のじじいだ。

ガルシア :そんな屁理屈が通る訳ねぇだろうが・・・!

阿積   :兵長。・・・やめなさい。

ガルシア :でも、副長!

阿積   :いいのです。・・・提督。

康敬   :なんだ?

阿積   :我々は、提督のご帰還を待っております。いつまでも。

康敬   :待たれても困るぞ。

阿積   :そうでしょうね。それでは、我々はここで失礼いたします。
      兵長。行きましょう。

ガルシア :・・・ちっ!

康敬   :はぁ・・・。・・・全く。嫌になるなぁ。しばらく離れれば忘れると思ったが。
      やはり、私は戦場の昂ぶりを求めているのか・・・。

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ガルシア :・・・おい!おいってば!副長!

阿積   :なんですか兵長。聞こえています。

ガルシア :よかったのかよ!総統命令だぞ!?ひっぱってでも連れ帰らなきゃならねぇのにあんないい加減で!

阿積   :大丈夫です。あの人は、きっと戻られます。

ガルシア :はいはいそうですか。そんなに信頼してるんですねェ。だがよ!このまま帰ってこなかったら俺らが殺されるんだぞ!?
      総統命令を無視したらどうなるか・・・

阿積   :わかっています。ですから私がここまで来たのです。安心なさい。
      それにあの人は・・・。まだ、あの人の心はここにない。

ガルシア :はぁ?どういうことだよ?

阿積   :それよりも、兵長。気づきましたか?

ガルシア :あ?なにをだよ。

阿積   :先ほどより、この山の奥から流れてくる風。その中に淀んだ魔力が混ざっていることに。

ガルシア :・・・ああ、わかってる。こりゃ幻霊が生まれそうな予感だな。

ノロイヒキ:アァァァァぁぁぁ!

ガルシア :言ってる側からだな。

阿積   :ここで幻霊が生まれたら、おそらく下の村に降りて荒らすでしょう。これより先んじて撃滅します。

ガルシア :兵装を持ってきててよかったぜ。ちょうどストレスもたまってたところだ。派手に暴れてやりますよ。

阿積   :先行は任せます。単縦陣(たんじゅうじん)で接敵しましょう。

ガルシア :了解!そんじゃあ、いきますか!

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ノロイヒキ:ク・・・クハハハハハ!ヒト・・・潰す・・・タノシイ・・・。

阿積   :やはりいましたか。目標確認。幻霊 ノロイヒキ。では、現状より攻勢に移ります。

ガルシア :俺が突っ込むから、その間よろしく。

阿積   :言われなくても。

ノロイヒキ:ヒト・・・新シい・・・獲物・・・?

ガルシア :獲物とは失礼じゃねぇかっ!そらっ!そらっ!

  (ガルシア、魔術弾で複数発、銃撃。ノロイヒキ。当たるが微動だにしない)

ノロイヒキ:痛い・・・?痛く、ない?痛イ?・・・いた、いた。アハハハッ!

ガルシア :ちっ!防壁持ちか!副長!

阿積   :わかってます!射線からどきなさい!
      魔術弾、砲身充填(じゅうてん)・・・一斉射!

ノロイヒキ:アガッ・・・!?ク、ハ・・・クハハ!アハ!アハハ!

阿積   :私の砲弾が効かない!?50口径なのに!

ガルシア :コイツ!どれだけ呪いを溜め込んでんだ!

ノロイヒキ:痛イ?けれど、けレど、ははははは!

ガルシア :これ以上ばら撒かれる前になんとかしねぇと!

阿積   :一斉射用意!三連射します!これ以上進ませないように!

ガルシア :おうよ!放射用意!

阿積   :スリーカウントで行きます。3・2・1・・・てェーっ!

ガルシア :だらっ!・・・どうだ!

ノロイヒキ:あ・・・ハはっ・・・クハハハっ!

ガルシア :うそだろ・・・

阿積   :無傷なんて・・・

ノロイヒキ:痛くない・・痛くないよぉ!?どうしたのォ!?

ガルシア :こいつ・・・言語を獲得しはじめたのか?

阿積   :そうみたいですね・・・。これ以上知恵を付ける前に撃破しなければ。

ノロイヒキ:げ・・・きは・・・?壊さないとぉぉぉ!

ガルシア :来るぞ!

阿積   :回避行動!

ノロイヒキ:死ねぇ!曲がれ!砕けろぉぉぉぉ!

ガルシア :飛来魔術数10!

阿積   :当たらないように!

ガルシア :解ってますって!

ノロイヒキ:足りない・・・?なら増やソウ!

ガルシア :なにっ!?

阿積   :総数20!?これ以上増えるの!?

ガルシア :放出量、未だ増大中!

ノロイヒキ:壊れロ!捻じ曲げル!割れロ!

阿積   :防御陣展開!

ガルシア :了解!

ノロイヒキ:壁・・・?なら壊ソウ!

阿積   :くっ!多すぎる!

ガルシア :どうすんだよ副長!

康敬   :重巡。回避行動!金剛は防壁最大展開!

ガルシア :はぁ!?なんだって!?

阿積   :了解!兵長!言う通りに!

ガルシア :ちっ・・・了解!

ノロイヒキ:もう一人・・・?壊せるのタノシイ!

康敬   :遠距離砲撃戦!重巡は左舷展開。回り込め!

ガルシア :この弾幕の中をか!?

康敬   :金剛は弾幕をひきつけろ!

阿積   :了解!こっちを向きなさい!はぁっ!

  (阿積、魔弾発射。たたらを踏む)

ノロイヒキ:痛いぃぃぃ!

ガルシア :弾丸が通った!?

康敬   :奴の防御は前面だけだ。裏を狙え。

ガルシア :了解!はぁっ!

ノロイヒキ:くそがぁぁ!ちょろちょろ・・・じゃまぁぁ!

阿積   :狙わせません!斉射!

ノロイヒキ:がぁぁぁ!?いたい・・・いたいぃぃぃ!

ガルシア :ホラ、おかわりだ!

ノロイヒキ:あぎゃぁぁぁ!?こいつぅぅぅ!

ガルシア :なっ!突っ込んでくる!?

康敬   :回避!奴の持つ袋に触るな!

阿積   :撃ち・・・落とす!

ノロイヒキ:なにぃぃぃっ!?

ガルシア :ナイス!副長!

康敬   :ボケっとするな!重巡!超近距離射撃!弾丸を叩きこめ!

ガルシア :わかってますよ!ほぉら!これでも食らえ!

ノロイヒキ:がぁぁぁぁ!?

阿積   :これも!追加です!

ノロイヒキ:あ・・・身体が、壊レ・・・消えたく、な・・・

ガルシア :いいから消えろ。この害虫。(脳天に向かって射撃。打ち抜く)

ノロイヒキ:あが、声がァ・・・アハハぁ・・・きこえ・・・る・・・

阿積   :・・・戦闘終了。

ガルシア :おつかれっす、副長。

康敬   :ほう、案外あっけなかったな。

ガルシア :あっけないって・・・今のがあっけなかったか!?

康敬   :あっけない方だ。もっと粘り強いのが多いぞ。

阿積   :提督。ありがとうございました。

康敬   :ん?なにがだ?

阿積   :戦闘指揮です。おかげで助かりました。

康敬   :戦闘指揮という程じゃない。状況を読んだだけだよ。

ガルシア :状況を読むって。あの弾幕の最中でか!?

阿積   :兵長。気づいてなかったのですか?

康敬   :そのようだな。・・・金剛。君はあせり過ぎだ。

阿積   :・・・すみません。

康敬   :あの防壁に対して、火力不足というのはわかっているだろう。正面から叩き伏せることが無理な時点で気づきなさい。

阿積   :・・・了解。

ガルシア :・・・あんたは。

康敬   :なんで何もしなかったかって?理由は簡単。必要ないからだ。

ガルシア :でも!俺たちは死にかけて・・・!

康敬   :だから、指図をした。今のままでは死ぬ。しかし、指図すれば変わる。
      よって、私は手を出さず、指図で済ませた。

ガルシア :こっちとしては、手を出してほしいんですけどねぇ!?

阿積   :やめなさい、兵長!

康敬   :いい。金剛。重巡君・・・ノーフォークだったか。君の言う通りだ。
      君たちが円滑に戦闘をおこなうためには、私が戦火を加えるべきだとね。

ガルシア :じゃあ、それをさっさと・・・

康敬   :だが、したところで。結果は変らない。君たちは死ぬ。

ガルシア :なに・・・?

阿積   :わからない?ノロイヒキの呪い。連射されるあれは、敵対者の数が増えるたびに、呪いも増える。

ガルシア :・・・なんだって?

康敬   :君は、あの幻霊の仕組みを知らなかったようだね。教えよう。
      あのノロイヒキはね?呪う対象が増えれば増えるほど力が増す。

阿積   :つまり、完全な敵対者にならない限り、相手の攻撃量は減る。

ガルシア :じゃあ、さっきのは。

康敬   :手出しできる程度はあれが限界だったというわけだ。済まなかったね。

阿積   :わかったでしょう?・・・ガルシア兵長。なにか言うことは。

ガルシア :・・・すみませんでした。

康敬   :いいんだ。こちらこそすまなかったね。危険にさらして。

阿積   :これくらい。我々にとっては危険ではありません。
      元より我らは死者ですから。

ガルシア :もう一度、死にたくはないけれど。

康敬   :それは誰しもだろうね。

阿積   :・・・提督。

康敬   :ん?なにかな?

阿積   :ここに、我らは忠道を捧げます。

ガルシア :我らは船。すべては提督の命ずる指揮の元。

阿積   :死をいとわず、我々の命が果てるまで。

ガルシア :提督の元にて力を振るう。我らに戦いの息吹を。

阿積   :どうぞ、我らに命の意義をお与えください。

康敬   :まったく・・・毎回思うが照れるねぇ。しかし、嫌いじゃないよ。

阿積   :では、提督。

康敬   :ああ、行こう。その忠(ちゅう)。確かに受け取った。
      さぁ、始めよう。私たちの航海を。

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ノロイヒキ:次回予告

ガルシア :病床に伏せるはお嬢様。

阿積   :そこに現れるは、もう一人のお嬢様。

康敬   :Night/Knight 第32話 妹様、襲来。

ノロイヒキ:妹様、曲者につき。



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