Night/Knight 第29話 疑いのまなざし  作:福山漱流

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ブランドン・マールスフェルト:20代後半。聖十字協会所属の魔術師。男爵の爵位を持つ。
               鎮とは腐れ縁のライバルであり、しょっちゅう小言をいう保護者の様な存在。
               術式形態はアゾット剣を用いた魔術を織り交ぜた近接攻撃。及びアゾット剣に封印された人工魔獣をつかったもの。

マリアン・グロリア・シサリーザ:20代後半から30代。聖十字協会所属の魔術師。伯爵の爵位を持つ。
                聖十字協会の幹部であり、普段の仕事はもっぱらのデスクワークである。
                ブランドンの直属の上司。若くして聖十字協会の幹部となっただけあり、頭の回る策師。
                普段は飄々としているが、締める時には締める抜け目ない人物。
                結界術に長け、護身術式である結界術であっても中位魔族相手に苦戦しないほど。

ガルム:ブランドンの使い魔。大型犬のような姿をしており、人語を扱うことができる。
    性格も口調もブランドンに似ており、少々つっけんどん。
    人の姿になることもでき、その際は、10代から20代の見た目で性別のわからない中性的な姿になる。

汐見麻琴:20代後半。封滅騎士団 魔術調査部 上級官。ブランドンとカークとは、学生時代からの付き合いであり、マリアンは先輩にあたる。
     過去の事件で両手、両足を失っており義手と義足を付けている。
     性格は、柔和であり、どことなくふわついている。その一方毒舌家でもあり、歯に衣着せぬ物言いもしばしば。
     動物好きでガルムにしょっちゅうくっついている。カークとは学生時代からの恋人関係。
     物事に関しては合理的判断に基づいて行動し、必要があれば簡単に切り捨てることができるタイプ。

カークランド・ディラック:20代後半。封滅騎士団 魔術調査部 上級官。ブランドンと麻琴とは、学生時代からの付き合いであり、マリアンは先輩にあたる。
             物静かな部類だが、義理人情に厚いタイプ。内に秘めた情熱はあるが表には出さない冷静派。
             麻琴とは学生時代からの恋仲であるが、彼女が手足を失うきっかけを作ってしまっている。

♂ブランドン:
♀マリアン:
♂♀ガルム:
♀麻琴:
♂カーク:

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ブランドン:なぁ、ガルム。

ガルム  :ん?なんだよ。

ブランドン:なぁんか嫌な予感がするんだが気のせいか?

ガルム  :さぁな。つか、オレにそんなこと聞くなよ。

ブランドン:この扉の向こうに厄介なやつらがウヨウヨと居そうな気配がする。

ガルム  :はぁ?意味わかんねぇ。

ブランドン:・・・ばっくれていいか?

ガルム  :アホ抜かせ。ほれ、さっさと済ませること済ませようぜ。
      マリアンから出頭命令出たんだろ?

カーク  :よぉ、ブランドンじゃねぇか。久しぶりだな。

ブランドン:カーク!?ってことはここに奴も・・・

麻琴   :わぁーガルムちゃんだー。もふもふー

ガルム  :ちょっ!や、やめっ

ブランドン:やっぱりか!麻琴!つかガルムから離れろっ!

麻琴   :はぁ~この毛並み・・・いい。ほれぼれする・・・。

ガルム  :抜ける!抜けるッ!毛が抜けるからやめっ

麻琴   :大丈夫!ブラッシングのマイブラシもってるから!

ブランドン:いや、そうじゃねぇよ!つか、カーク!テメェも見てねぇで助けろよ!

カーク  :あ?面白そうだしいーじゃん。

ブランドン:ふざけんなーっ!

マリアン :全く、君たちは相変わらず、3人揃うとうるさいねぇ。

麻琴   :あ、せんぱーい。おひさです。

カーク  :うす。邪魔してます。

ガルム  :け、汚された・・・オレ、もうお嫁にいけない・・・

ブランドン:いや、お前性別ねぇだろ。

マリアン :そうか、偶然出くわしたのか。それは行幸。

ブランドン:あ?出くわしたって・・・。もしかしてお前ら。

カーク  :おう、そのもしかしては正解だ。

麻琴   :先輩にお呼ばれなのだよ。ま、それ以外にも用事あるけど。

ガルム  :しっぽ!しっぽなら触っていいから!腹はやめて腹は・・・はひぃっ!?

マリアン :とりあえず、同じゼミ卒業の懐かしい顔ぶれがそろったんだ。
      中で、茶でもすすりながら話をしよう。

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麻琴   :ふんふんふーん。さわぁーさわぁー。

ガルム  :おい・・・いつまでやる気なんだよ。

麻琴   :んー?私が満足するまでブラッシングはやめないよぉー?

ガルム  :もう十分だっての・・・。

麻琴   :あっ!こんなところに枝毛が!カットするね!

ガルム  :どっからはさみ出したし!?

マリアン :相変わらず、動物が好きだな。麻琴。

麻琴   :いやぁ。モフモフしてるの限定ですよぉ。ってか、先輩も猫になってください。ブラッシングしますから!

マリアン :ヘブリニッジ以外で動物化しても仕方ないだろう。

麻琴   :私がモフれます!

マリアン :却下だ。

麻琴   :えーっ。

ブランドン:んで?どういう風の吹き回しなんだ?

カーク  :ん?なにがだ?

ブランドン:お前らがここにいる理由だ。

マリアン :ああ、それについてはだな。

麻琴   :私が聖十字協会をスパイしに来ましたー

ブランドン:はぁっ!?

カーク  :おい、嘘を言うんじゃねぇよ。

麻琴   :きゃー、カークこわーい。

カーク  :せめてこっち見て言え、つか棒読みじゃねぇか。

ブランドン:・・・とりあえず、嘘なんだな?

マリアン :逆だよ。麻琴から封滅騎士団の情報を定期的にもらっているんだ。

麻琴   :さよう!封滅騎士団 魔術調査部 上級官だもんー。私ってば。ま、ダブルクロスかもしれませんけどねー

マリアン :ともすれば、トリプルクロスまでしそうだがな。

麻琴   :三重スパイですか~?いやですよぉ。そこまで器用じゃないですからぁ。

ブランドン:普通にできそうなんだよなぁ。こいつ。

カーク  :そうなんだよ。コイツと組んでると苦労が絶えん。

ブランドン:同情はしてやる。

麻琴   :二人ともひどすぎるんですけど。

マリアン :それで?今日はどういうことを持ってきてくれた?

麻琴   :あー、本題に入っちゃいます?

マリアン :時間は有限だ。

麻琴   :でっすよねー。というわけで、カーク。

カーク  :あいよ。こちらをご覧ください。先輩。

ブランドン:映像結晶か。また、高価なもんを。

カーク  :借りもんだがな。一回しか流せないから気を付けろ。

麻琴   :目をかっぽじって見るがいい。

マリアン :この映像・・・これは、リストか。

カーク  :はい。現在、封滅騎士団で活動中の人員リストです。

ブランドン:へぇ?そこそこ数がいるな。

ガルム  :「蟲姫(むしひめ)」天蚕 美樹(てんさん みき)に、うぇ、コイツ嫌い。「切り裂きピエロ」ミッキー・ダグ

ブランドン:やっぱり、コイツもいるのか。「パペッター」ローランド・ワインバーガー。

麻琴   :ローくんはね。今、どこにいるかわかんないんだよね。

マリアン :居場所不明だと?

カーク  :どうやら、総統に呼ばれ、何事かを伝えられたようですが、その後の消息が不明です。

麻琴   :まーでも、たぶんヘブリニッジにいるんじゃないかな?彼、夜の王にご執心だから。

ブランドン:あーらら。まじか。

マリアン :ん?なにかあったのか?

ブランドン:コテンパンにやられたんだよ。鎮(まもる)に。

麻琴   :彼、無駄にプライド高いからねー。しかたないよねー。

ガルム  :なぁ、ここに「コンビ結成か」って書いてあるけど。これはなんだよ?

麻琴   :ああ、これ?なんかね。ツレを作ったみたいでね。確定情報じゃないんだけど。

ガルム  :あいつはソロ専門じゃなかったのか?

カーク  :どうやら、総統に呼ばれたときに、コンビを組まされたんじゃないかっていう噂が流れているがな。

麻琴   :まーここら辺はどうでもいいでしょ。ロー君ってばそんなに重視されてないし。

マリアン :相変わらず、辛辣だな。麻琴。

ガルム  :毒舌キャラ・・・だったか?

ブランドン:もしくは毒されたか。封滅騎士団の、あの荒んだ世界に。

麻琴   :私はかわってませんー

ガルム  :それはそれで問題なんじゃねぇか?

カーク  :ま、性格悪いのは否定しない。

麻琴   :みんなひどいー

マリアン :ハハッ。それはさておき。麻琴。なぜこれを見せに来た?

麻琴   :いやぁ、それがね。ここに載ってるほとんどの魔術師がヘブリニッジに入る可能性が出てきたんですよ。

ブランドン:ついに魔族と戦争をやらかすつもりなのか?そっちの総統閣下は。

カーク  :いや、それはないと踏んでる。
      実をいうと、だ。ウチは、前々からヘブリニッジへはそれなりの数の魔術師を派遣してたんだ。

ガルム  :マジかよ!?街中歩いてても、今までそれらしい奴は見なかったぞ!?

麻琴   :派遣とは言っても、実際はパトロンである人民評議会に仕事してるように見せる「パフォーマンス」だから。
      しょぼい犯罪やった魔術師を、捕まえて帰るだけ。って感じだったの。

マリアン :つまり、派遣されるのは基本、新人や三下どもで、有力者は陰に引っ込んでると。

ブランドン:よかったな、ガルム。お前は無能じゃないっぽいぞ?

ガルム  :うるせぇっ!当たり前だ!テメェと違ってちゃんと仕事してんだよ!

マリアン :で。さっき君らが言っていたことにつながるというわけか。

カーク  :その通り。今度は本当にこのメンバーが送り込まれる可能性が出てきたということです。

マリアン :フフン。こんなに名うてを送り込んで来て、なにをするつもりなんだろうねぇ?

ブランドン:真っ向から争うなんてことはしないはず。

麻琴   :というより、要人暗殺って考えた方がいいかも。

ガルム  :暗殺なら対象は鬼島組(きじまぐみ)か・・・四名家(よんめいけ)か・・・

ブランドン:弱体化しているのは鬼島組だな。代替わりの騒動で大幅に人員が減ってる。

マリアン :だが、そうするとこの街の均衡を崩すぞ?それを避けたいのは封滅騎士も同じだろう?

カーク  :ええ。世論が賛同しませんから。穏健派優位の時勢に下手なことをすれば、非難されるのはこちらですし。

ガルム  :じゃあ、狙うとしたら四名家か?マルリス・アヴィラが戦闘不能の今、寝首を掻くにはうってつけだ。

ブランドン:だったら、ここまで大げさな人員は割かない。これらを全部さしむけるとするなら・・・

マリアン :夜の王か?フン、足りんよ。これじゃあ。

カーク  :ええ、その通り。この人員は中途半端すぎるんです。大きな力を滅ぼすには少なく、かといって小さな力を滅ぼすには多すぎる。

ガルム  :ったく、何がしたいんだよ。

麻琴   :わっかんない。とりあえず、警戒して下さーいって感じですね。私たちから言えるのは。

マリアン :承った。こっちとしても警戒しておこう。

ガルム  :なぁ、中でも一番警戒するべき奴らはどれなんだ?

ブランドン:やっぱり、ローランドか?

麻琴   :さっきも言ったけどロー君は別に。それよりこっち。

ガルム  :ん?・・・ああ、第三艦隊か。

マリアン :知っているのか?ガルム。

ガルム  :ああ、オレが作られた研究所に居た奴らだ。被験体としてな。

カーク  :封滅騎士 砲戦機動隊。通称、第三艦隊。

ブランドン:なんだか、海軍みたいな名前だな。

麻琴   :そのとおり、海軍だよ。これの元の由来は。

マリアン :たしか、結成当初のリーダーが海軍出身だったとか聞いたが。

カーク  :ええ、そうです。そして、各人員のコードネームはすべて旧時代の戦艦の名前が付いています。

ガルム  :ハン、よくわかんねぇ趣味。

マリアン :総人員は?

ブランドン:ここに書いてある。えっと?戦艦1、空母2、重巡2、軽巡1、駆逐2・・・なんだこりゃ?

麻琴   :言ったでしょ?戦艦がモチーフだって。それぞれ構成員は船の種類に当てはめて呼ばれてるの。

カーク  :高火力魔術を使う者は戦艦。機動戦を行う者は駆逐。

マリアン :空母は・・・使い魔を使うからといったところか。

麻琴   :正解っす。さすが先輩。あと、重巡や、軽巡は駆逐と戦艦の間の戦闘力持ちって考えてくださいな。

ブランドン:つまり、オールマイティってことか。

麻琴   :器用貧乏ともいうけどね。

マリアン :それで?これらが警戒するべき相手というのはどうして?

カーク  :1つは組織統制。個人主義の奴らが多い中、ここだけは連携行動を得意としてる。

ガルム  :それに、こいつら増幅器積んでなかったか?

麻琴   :ガルムちゃんよく知ってまちゅねー。ご褒美に新発売のジャーキーあげる~

ガルム  :いらねぇよっ!つか、バカにしてんのかテメェっ!

ブランドン:増幅器?

マリアン :魔力増幅器。大した力を持たない魔術師が使うアレだよ。

ブランドン:あぁ、「アンプ」の事か。で?それがどうした?

ガルム  :こいつらは、その増幅器を身体の中にバカスカ埋め込んでやがんだよ。
      人間一人につき、一個が限界の増幅器を。

ブランドン:おいおい、それじゃあまるで。

カーク  :消耗品。自殺をするように自分を兵器に変えた奴ら。ってことだ。

マリアン :フン、自爆覚悟か。なかなかに厄介そうだな。

麻琴   :ま、コンセプトだけはすっごい厄介です。規律整ってるし、パワーもある。
      特にリーダー張ってる「提督」っつー人は中々の軍略家らしいです。指揮をとらせたらピカイチとか。
      けど、ぶっちゃけ元々の力は三下なんで大げさにビビる必要はないんすよねぇ。
      増幅器使わなきゃマトモに戦えないレベルですし。
      つか、自爆覚悟なんて今どき流行らないっていうか、「何時代の人間だ」っつーやつですよ。

カーク  :・・・はぁ。

ブランドン:やっぱ、病んでるよなコイツ・・・。

ガルム  :マコト、毒が漏れてんぞ?

麻琴   :んー?なんのことー?

カーク  :(咳払い)以上が、俺らから伝えられる封滅騎士団の情報です。結晶はもう仕舞っても?

マリアン :ああ、いいぞ。ありがとう。いいものを見せてくれた。
      ・・・とりあえず、この件は、向うにリークしておいた方がいいな。

ブランドン:それとなく、鎮に渡りをつけてみるよ。

ガルム  :ま、どうせ連絡係はオレなんだろうけどな。

麻琴   :ちゃんとできたらブラッシングしてあげ・・・

ガルム  :いや!それはもう十分だから!!

ブランドン:そういや、お前らもうこれで帰るのか?

カーク  :いや、近場に宿を取った。数日は居るつもりだ。

麻琴   :ヘブリニッジをフラフラしてみたいし。あと、マルリスちゃんにも会いたいし!

ブランドン:物見遊山かよ・・・。

マリアン :もし、こっちにいる最中に手が足りなくなったら頼む。

カーク  :ええ、それはもちろん。

麻琴   :先輩のためならやりますよー。

マリアン :では、今日のところはこれで解散としよう。

カーク  :それでは、お邪魔しました。

麻琴   :ばいばーい。

ブランドン:・・・嵐のような奴らだな。

ガルム  :相変わらずな。けど、さっきの情報は有用だった。

マリアン :ブランドン。ガルムは普段どうしてる?

ブランドン:あ?あまり、外には出さないようにはしてる。

ガルム  :オレが外にいると魔族の奴ら急にピリピリしやがるからな。

マリアン :今日から外に出て、共に行動するようにしろ。

ガルム  :そりゃ、オレとしてはかまわねぇけど。

ブランドン:いったいどういう。

マリアン :もし、仮にあの封滅騎士どもの狙いが魔族でなくこっちだったらと考えていてな。

ガルム  :まさか、そんなこと。

マリアン :可能性の一つだ。気を付けておいて損はない。

ブランドン:でも、なんで俺だよ。

マリアン :お前は、我々聖十字協会の中でも、特に魔族とつながりの深い人物だからな。人類に対する裏切者として処断される可能性もある。

ガルム  :処断ねぇ?まったく、血の気の多い奴らだよ。

ブランドン:あーやだやだ。なんで仕事して、お仲間から命狙われなきゃならねぇんだよ。
      縁側で茶飲み話してぇなぁ。なぁ、ガルム。

ガルム  :わからなくはないが、ジジイかよお前。

マリアン :まだ、引退はさせんと言ったろ。とりあえず、気を付けろ。ブランドン。

ブランドン:了解。頑張って生き延びることにするよ。

マリアン :ああ。ガルム、よろしく頼む。

ガルム  :あいあい。飼い主サマを守るのがオレの役目ってね。


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麻琴   :つっかれたーぁ。ベッドだーいぶ。

カーク  :ったく、はしゃぎ過ぎなんだよ。麻琴。

麻琴   :ふふー。いいじゃんいいじゃん。たまの休日なんだしー。

カーク  :仕事の内だろ。

麻琴   :そーともいう。

カーク  :腕の調子はどうだ?

麻琴   :んー?義手のコト?うん、調子いいよ。

カーク  :・・・そうか。

麻琴   :なになにぃ?やっぱり気にしてんのぉ?

カーク  :・・・・・。

麻琴   :べっつにカークが気にする必要ないよ。私が勝手にやった結果だし。

カーク  :でもよ。その原因を作ったのは俺で。

麻琴   :カーク。私は両手両足失ったけど、後悔はしてないよ?
      むしろ良かったと思ってる。

カーク  :・・・変わってんな。

麻琴   :そっかな?カークの力と、私の手足。天秤にかけた時、安い方は私の手足だと思うけど?

カーク  :でも!

麻琴   :もし、あの時カークを庇わなければ、手足なくなってたのカークだし。
      もしかしたら、それでカークの「ギフト」は消えっちゃってたかもしれないし。「魔術を反射する」っていうギフト。

カーク  :けど、そのせいで俺はお前を・・・

麻琴   :傷ものにしたって?だからなんなのさ。私には私を好きでいてくれる人が居るし。

カーク  :っ・・・!急に何言って・・・。

麻琴   :照れてんの?かわいー。そういうトコあるよね。カークって。

カーク  :誰だって急に言われたらそうなるだろうが。

麻琴   :ふふー。(服を脱ぐ)・・・ねぇ、カーク。

カーク  :あ?なんだよ。

麻琴   :義手。外して?

カーク  :いや、自分で外せるだろうよ。

麻琴   :今日は楽したい気分なんですぅー。

カーク  :しゃあねぇな・・・。

麻琴   :ふふー。

カーク  :・・・・。

麻琴   :・・・・。

カーク  :麻琴、やっぱり、俺は・・・

麻琴   :ろけっとぱぁ~んち!

カーク  :ごふっ!?おまっ!何しやがる!?

麻琴   :はっはっは。油断しすぎだぞよ?

カーク  :テメェ!もう外してやんねぇぞ!?

麻琴   :あー!ごめんって!ほんの悪ふざけじゃんかー

カーク  :ったく・・・。

麻琴   :そんな顔しなくていいよ。私は、世界が平和で、カークがいてくれたらそれでいい。

カーク  :・・・すまん。

麻琴   :すまんは無しだぞー

カーク  :・・・わりぃ。

麻琴   :言い換えじゃんか全く。

カーク  :ほれ、外したぞ。

麻琴   :うん。ありがとー。・・・えいっ!

カーク  :うわっ!?ちょっ、麻琴。

麻琴   :麻琴ちゃんの、のしかかる攻撃ぃ。

カーク  :びっくりするからやめろ。

麻琴   :これくらい、カークには重くもないでしょー?

カーク  :そりゃ、そうだけどよ。

麻琴   :フフン。・・・ちょっとだけ、甘えさせて。

カーク  :・・・勝手にしろ。

麻琴   :ふふっ、ありがと。
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カーク  :麻琴の艶やかな肌に触れる。細い肩から腕に手を這わすと、その腕は途中で途切れる。
      肘から先、失われた両腕。それはひざ下からも同じ。たった一つの、俺のミスで負わせてしまった取り返せないモノ。
      俺の罪悪。それを雪(そそ)ぐためにも、俺はコイツを守っていかなければ・・・。

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ガルム  :次回予告

麻琴   :純粋な興味

マリアン :鳥を飼う少女に向いたそれは

ブランドン:悪意と同義の一撃を与える。

カーク  :Night/Knight 第30話 濡れた鴉羽(からすば)

ガルム  :赤が滴るは黒の羽根。




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