Night/Knight 第27話 マン・ハント 作:福山漱流
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♂サンタナ・A・スミス:魔界にあるBar『ファンタズム』のオーナーであり亡霊。お調子者な性格で盛り上がることが大好き。
♂夜巳 鎮(やみ まもる):純血の吸血鬼。見た目17歳くらいだが、実年齢は200オーバー。感情の起伏が浅く、眉間に皺が寄っているため常に怒っているように思われる。
達観とも諦観ともとれる思考をしており、物事に対して醒めている。
♀マルリス = アヴィラ:純血吸血鬼であり、吸血鬼界の名家『アヴィラ家』の子女。見た目18歳くらいの少女だが、実年齢は200オーバー。
生粋のお嬢様であり、口調もお嬢様。しかし、怒ると地が出てしまい荒い口調になる。
♀アルマ・フォン・ターク:純血吸血鬼であり、吸血鬼界の名家『ターク家』の家長。見た目20歳くらいだが、実年齢は300オーバー。
騎士道に準じた在り方を重んじる。
♀ブリット・ノイマン:23歳。封滅騎士団特務攻撃隊所属。戦争孤児であり、魔術研究結社『ヴィクティム(犠牲)』に拾われた後、魔術師に。
戦闘は両手の平に刻まれた魔術紋を使った「破壊術」と強化された肉体での超接近戦。
魔術師になるにあたって強化されており精神面が不安定。
また、戦闘時は術発動の衝撃を押さえるため腕の関節や筋肉を魔術で増加させる。その際に、腕が人間の二倍に伸びる。
サンタナ♂:
鎮♂:
マルリス♀:
アルマ♀:
ブリット♀:
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サンタナ:さぁ!始まった始まった!一年に一度の盛大な祭り!マン・ハント!
物理的に「血が湧き」「肉が躍る」そんなド派手なパーティの幕開けだぁっ!
司会はもちろん!このオレ!ヘブリニッジ切っての色男。サンタナがお贈りするぜぇ!
鎮 :・・・フン、相変わらず、趣味の悪い祭りだな。
マルリス:鎮様。おいででしたの。
鎮 :マルリスか。
マルリス:ご機嫌麗しゅう。珍しいですわね。鎮様がこの祭りに来るなんて。
鎮 :様子見に来ただけだ。参加するつもりは毛頭ない。
マルリス:でしょうね。なにせ、お優しい鎮様ですもの。罪人とはいえ無抵抗な人に手を上げるなんてことはしませんものね。
鎮 :それは、俺に対する嫌味か?マルリス。
マルリス:なんとでも。・・・それにしても先日までの事が嘘みたいですわね。
鎮 :鬼との騒動か。早期に終結したからな。それに、ここはヘブリニッジだ。魔窟は一つや二つの騒動では揺らがん。
マルリス:確かに。まぁ、あと今回の一件で街に暮らす魔族の不満が募っていたのもありますし、ちょうどよかったのではありません?
鎮 :いいガス抜きになると?
マルリス:ええ、不平不満のぶつける先があるのと無いのでは違いますわ。
サンタナ:さぁてさて!ここに並ぶ哀れな人間共は門の向うで大きな罪を犯した罪人だ!もれなく全員死刑判決くらってるわけだ。
殺人・強盗はもちろん国家反逆罪に大量虐殺!手心を加える必要のないごろつき共だ!
アルマ :よくもまぁここまでそろえたものだよ。人間というものはどうしてこうも同胞をためらいもなく殺すのかね。
マルリス:アルマ様。いらしてたのですね。
アルマ :ああ、ここの警備を任されているからな。
マルリス:なるほど、そうでしたか。
鎮 :配備はどうだ。
アルマ :十全だ。まぁ、そうそう攻撃があるとは思えんがな。
マルリス:鬼も先日の闘争で損耗が激しかったですし。それの立て直しにてんてこ舞いらしいですわね。
鎮 :だから、アルマが警備か。
アルマ :現状、戦力を相当数もっているのはウチの家だからな。当然だろう。
・・・さて、そろそろ始まるか?
サンタナ:さぁて!ここからはルール説明だ!とはいってもここにいる血に飢えた野郎どもは知ってるだろうけどな!
マルリス:相変わらず、うるさいですわね。サンタナは。二階席なのにここまで響いてきますわ。
鎮 :やつの性分だからな。・・・耳障りだ。
アルマ :あまり言ってやるな。あやつもそのうち泣くぞ?
鎮 :フン、くだらん。茶番だな。
マルリス:鎮様?どこに行かれるので?
鎮 :騒々しいのは嫌いだ。帰らせてもらう。
サンタナ:これから半日。このヘブリニッジを逃げ回って生き残ったら勝ち!無罪放免!
けどぉ?捕まったら最後!ってな具合だ。
捕まえる側のみなさぁ~ん。わかってんなー?これから5分間はノータッチでおねがいしますよぉー?抜け駆けは無しだぜー?それじゃあ、よーいスタート!
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サンタナ:ふぅーん。大体逃げたか?あと一分程度で開始だが・・・。
ブリット:(口ずさむ)Twinkle,twinkle,little star・・・(トゥインクル、トゥインクル、リトルスター)
サンタナ:おーい。お嬢ちゃん。逃げねぇのかい?逃げねぇと真っ先に食われちまうぞ?
ブリット:(口ずさむ)How I wonder what you are(ハウ、アイ、ワンダー、ワット、ユー、アー)
サンタナ:ったく、なぁに歌ってやがんだよ。っと開始時刻だな。5、4、3、2・・・1
ブリット:拘束術式・・・解放!!
サンタナ:なっ!?魔術師!?
ブリット:一人目ぇ・・・いただきまぁす!
サンタナ:俺かよっ!?ノイジーオブセッション!!
ブリット:ぐぅっ!?耳が・・・いたいぃぃ
サンタナ:くっそ、ビビらせんなよ・・・ってか、なんだぁ?テメェ。その腕、そんなに長かったか?
ブリット:壊さなきゃ・・・殺さなきゃ・・・アは・・・アハハハッ!
サンタナ:おいおい、マジこいつはイッちまってる類か!?
マルリス:サンタナ!下がりなさい!行けっ!ブラッドエッジ!!そして、出でよ我が眷属(けんぞく)たち!
ブリット:ぬぅぅ・・・邪魔ぁッ!
サンタナ:サンキューだぜ。お嬢さん。つか、なんなんだこいつぁ。
マルリス:私が知る訳ないでしょうに!
サンタナ:増援は、アンタだけか?
マルリス:アルマ様はこのホールに居る客の避難誘導に出てる。終わったらこっちに来る手筈。
サンタナ:鎮のお坊ちゃんは?
マルリス:知らない!
サンタナ:あっそうかい!んじゃ、俺らで相手って訳かい
ブリット:この狼・・・邪魔・・・邪魔・・・邪魔ぁぁぁっ!!
サンタナ:こっちに来るぞ!?
マルリス:散開!掴まれたら終いよ!
ブリット:むぅぅ、イラつく・・・壊さなきゃ・・・壊すぅぅぅ!
サンタナ:まともな思考してねぇなコイツ
マルリス:ならばさっさと仕留めますわよ。ゆけ!ブラッドエッジ!
サンタナ:派手に行こうぜ!マジック・アンプリファイア!!
ブリット:っ!?直撃っ!?あぁぁぁっ!?
サンタナ:やったか!?
マルリス:知っていて?サンタナ。それ、フラグっていうらしいですわよ?
サンタナ:フラッグ?旗でも掲げるかぁ?
マルリス:ちがいますわ。フラグってのはなにかのきっかけになる言葉で
ブリット:痛い・・・じゃなぁぁぁい?
サンタナ:まじ・・・かよ・・・
マルリス:大体、悪いことが起こる前触れなのよ。
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アルマ :諸君!落ち着け!避難経路は確保されている!ゆっくり進むんだ!慌てる必要はない!
鎮 :何があった。アルマ。
アルマ :夜巳のか!魔術師が中で暴れてる。囚人の中に紛れ込んでいた。
鎮 :数は。
アルマ :1。しかし、なかなか厄介そうだ。サンタナの騒音が大して効かなかった。
鎮 :なに?今、相手は誰がしてる
アルマ :マルリス嬢とサンタナだ。だが、どこまで持つか。
そこ!慌てるな!ゆっくり進むんだ!立ち止まらないで!
鎮 :わかった。俺が行く。
アルマ :待て!私も行こう。
鎮 :アルマは避難誘導を先に終わらせろ。
アルマ :指示はすでに部下に出している。後は奴らがやってくれる。
鎮 :陣頭指揮は誰がとる?
アルマ :ウチのジニーが引き継いだ。奴なら心配ないだろう?
鎮 :わかった。じゃあ、掴まれ。
アルマ :ん?なにを・・・
鎮 :まさか、歩いて戻る訳じゃないだろう。跳ぶんだ。
アルマ :跳ぶ・・・?まさか、跳ぶって転そ・・・
鎮 :その・・・まさかだ!
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サンタナ:そらっ!そらっ!オレのギターテクはどうだっ!
ブリット:うるさいっ!邪魔っ!(腕を振るう
サンタナ:ぐあっ!?
マルリス:サンタナっ!
ブリット:コウモリも邪魔ァ!!
マルリス:ちぃっ!
まったく、なんだあの化け物は。
サンタナ:痛ってて・・・。なぁ、俺死んでるか?
マルリス:元から死んでるだろ。というか、サンタナ。さっさとその身体捨てやがれ。
サンタナ:捨てられるもんなら捨ててるっての!あー、見え張って新しい身体にするんじゃなかったぜ。
ブリット:(口ずさむ)Twinkle,twinkle,little star・・・(トゥインクル、トゥインクル、リトルスター)
サンタナ:さっきから何歌ってやがんだ?あいつ。
マルリス:きらきら星だったか?前時代の童謡だったはず。
サンタナ:ハッハァ、そりゃあいい。これがほんとのキラーキラー星ってな。
マルリス:うまいこと言ったつもりかもしれないけどな。笑えねぇんだよ、サンタナ。
ブリット:・・・時間がない。
マルリス:とりあえず、避難の時間を稼ぎきるぞ。
サンタナ:もう、だいぶ稼いだろ?
マルリス:まだ足りないんだっつの。わかったらさっさと・・・
ブリット:壊す。限定解除。ブレイク。
サンタナ:はぁ?さっさとなんだっ・・・て・・・?
マルリス:あっがぁぁぁっ・・・・う、腕・・・
ブリット:あれ?ズレた?ま、いっか。次ぃ。
サンタナ:おい!マルリス!おいって!
マルリス:サンタナ・・・逃げろ・・・
サンタナ:逃げろって、そんな
マルリス:テメェ一人じゃ何にも出来ねぇだろうがっ!
ブリット:次はこっち。ブレイク。
マルリス:わかったらさっさと・・・
サンタナ:が・・・く、そ・・・
マルリス:サンタナ!!ちっ!
ブリット:よかった。今度は当たった。
マルリス:なにを・・・しやがった。テメェっ!
ブリット:なに?なにって、壊したんだけど。
マルリス:ノーモーションで相手を攻撃するなんてある訳が
ブリット:なにを言ってるのかわからないけど。できるからやってる。
マルリス:・・・はっ、私たち以上に化け物じゃねぇか。
ブリット:うるさいのも居なくなったし。じゃ、続き。やろっか。
マルリス:続き・・・遊ぶタイプか。お前も。
ブリット:遊ぶ?ううん、これは仕事だけど。
マルリス;会話にならねぇな。もういい。さっさと来い。
ブリット:じゃあ、いくよっ!
マルリス:っ!ブラッドエッジ!
ブリット:効かなぁい!
マルリス:刺さったら十分!爆ぜろ!エクスプロージオ!
ブリット:がぁっ!?
マルリス:少しは効いたかっ!?
ブリット:うあぁぁぁっ!
マルリス:しまっ・・・がはっ!
ブリット:痛い・・・痛い痛い痛いっ!
マルリス:くそっ、離せっ!
ブリット:・・・怒った。引きちぎってやる。
マルリス:何を・・・ぐっ、アァァァァっ!
ブリット:まずは、腕。
マルリス:や、やめっ・・・がっ、ぐぅぅぅぅっ!
ブリット:右足
マルリス:ふざけっ・・・あぁぁぁぁぁっ!
ブリット:次は左足
マルリス:あぁ・・・あぁぁっ・・・
ブリット:最後、頭を・・・潰すっ!
アルマ :そこまでだ!下郎!来い!ブラッドエッジ!
ブリット:っ!?上っ!?がはぁっ!?
アルマ :夜巳の!マルリス嬢を
鎮 :わかってる。
マルリス:もうしわけ・・・ありませんわ、鎮様
鎮 :いいから黙ってろ。運んでやる。
ブリット:違う、吸血鬼・・・?
アルマ :貴様。よくもやってくれたな。
ブリット:壊さなきゃ・・・壊さなきゃ・・・
アルマ :マルリス嬢をあそこまで傷つけた借りを返させてもらおう!
ブリット:あぁぁっ!
アルマ :(盾で受ける)ぐぅっ!なかなか重いパンチだな・・・!だがっ!
ブリット:(押し返されたたらを踏む)うぅっ!?
アルマ :それだけで通用すると思うな!(ランスを突き出す
ブリット:ちぃっ!(素手で受け止める
アルマ :ふふっ・・・全く、老いたかな。最近、受け止められてばかりだ
ブリット:邪魔を・・・しないで・・・っ!
アルマ :邪魔立てしているのは貴様だろう、化け物。
ブリット:化け物はお前だぁぁっ!(アルマのランスを砕く
アルマ :ちぃっ!
ブリット:ブレイクッ!
アルマ :くっ!?
ブリット:避けたっ!?
アルマ :奇怪な技を・・・魔術とは違うな。
ブリット:だめ・・・ダメダメダメっ!壊れて!壊れて!壊れろよ!
アルマ :ちぃっ!こう、乱射、されてはっ!どうにもできんな!
ブリット:このっ!邪魔っ!邪魔っ!邪魔ぁぁっ!
アルマ :ぐっ!?しまった!盾がっ!
ブリット:もらったぁぁぁっ!
鎮 :喚くな。耳障りだ。
ブリット:剣が突き刺さり血を吐く)
こふっ・・・な・・・なに・・・?
鎮 :アルマ。問題ないか。
アルマ :ああ、一応ね。防戦しかしてないから、損耗はない。
鎮 :マルリスは家に送り届けた。今は処置を受けているだろう。
アルマ :そうか。全く、兄(けい)は私の聞こうとすることを見透かすようだな。
鎮 :これくらいわかる。それにしても、これはなんだ。
ブリット:血・・・血がぁ・・・
アルマ :さぁ?さっぱりだ。しかし、ここで止めを刺さねば今後に憂うな。
鎮 :同感だ。というわけだ。潔く死ね。
ブリット:夜の・・・王・・・。ローランドの・・・敵っ!
鎮 :なに?今、何を・・・
ブリット:貴様だけは殺すっ!
鎮 :っ!?
アルマ :夜巳のっ!(盾で庇って受け止める
ブリット:アンタは邪魔ぁッ!(盾ごと投げ飛ばす
アルマ :ぐうっ!?
鎮 :なるほど。いじられた人間か!
ブリット:ブレイクダウン!潰れてしまえっ!
鎮 :シャドウ・ウォール!・・・っ!一発で壊すだと!?
ブリット:こんのぉぉぉ!
鎮 :来い!ブラッドエッジ!
ブリット:これもっ!壊れろっ!
鎮 :なにっ!?この術はっ!
ブリット:つぶれろぉぉっ!
アルマ :ゆけっ!ブラッドランス!
ブリット:ぐあぁぁぁっ!?
鎮 :いいタイミングだった。アルマ。
アルマ :ひやひやしたぞ。夜巳の。
ブリット:壊さないと・・・いけないのに・・・。
アルマ :しかし、これはどうしたものか。
鎮 :高速回復・・・本当に人を辞めたようだな。
アルマ :辞めたというか捨てたというか・・・。
とりあえず、我々に近いのは確かだな。
ブリット:・・・帰らなきゃ。
鎮 :帰るだと?
アルマ :ここまでしておいて行かせるとでも?
ブリット:うん、わかった。・・・あの、ごめんね。言う通りにできなくて。
アルマ :一体、誰と喋っている。
ブリット:わかった。すぐに帰るね。
鎮 :行かせん。行け、ブラッドエッジ!!
ブリット:転移。・・・またね。吸血鬼。
アルマ :転移魔術まで・・・。なにからなにまで何でもありだな。
鎮 :全くだ。・・・サンタナは。
アルマ :ダメだ。やられてる。
鎮 :やられてるのはガワか?
アルマ :ああ、外見の死体だけだ。おそらく今はファンタズムで復活しているだろう。
鎮 :そうか。全く、肉体がない奴は楽でいいな。
アルマ :そうでもないだろうさ。しばらくは火の玉程度にしかなれんぞ?
鎮 :フン、その方がうるさくなくて済む。
アルマ :全く、当たりが厳しいな。
・・・時に、マンハントはどうする?このまま続けられるか?
鎮 :観客で来ていた者に損害は?
アルマ :なし。避難の際、転んだ程度だな。
鎮 :ならば一応、続けよう。ここで取止めたらヘイトがこちらを向きかねない。
それよりも公開する情報を誘導した方がいい。
アルマ :門の向うの魔術師が暴れた。民間人避難の際、敵の目を逸らすため、囮として戦闘をしていたマルリス・アヴィラ嬢が重傷を負い、治療中。
こんなところか?
鎮 :そうだな。魔術師の所属はフリーランスにしておけ。
アルマ :それは、後のことを考えてか?
鎮 :ああ。詳しいことはマルリスが復帰してから四名家のみで話す。
とりあえずは、そうしてくれ。
アルマ :承った。・・・板について来たな。
鎮 :なにがだ。
アルマ :我らの取りまとめ役だ。一昔前とは大違いだ。
鎮 :取りまとめになった覚えはない。
アルマ :そうか。ならそうしよう。それでは、何かあったら伝えてくれ。
鎮 :ああ、わかった。
アルマ :では、失礼する。
鎮 :あの女が使っていた魔術・・・。あれは禁忌の「破壊魔術」。
人間の世界では使ってはならないとされていたはずだが・・・?
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サンタナ:次回予告
アルマ :突如起こった混乱。
鎮 :その糸口を見つけるため吸血鬼は魔術師に渡りをつける。
マルリス:Night/Knight 第28話 守りたいもの
ブリット:それぞれの思いは衝突する。
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