Night/Knight 第25話 残酷人形(ざんこくにんぎょう) 作:福山漱流

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ミーシャ・シモーヌ:純血吸血鬼であり、ルドルフの弟(もしくは妹)。性別不明。精神的にも肉体的にも幼く、歪んだ感情表現をしがち。
           知識、魔術すべてにおいてルドルフより遥かに優れており、それを畏れ、憎んだ兄から幼いころから虐待を受けていた。
           その結果として、精神的に「壊れて」しまった。

バラック・べリンガル:ミーシャの下僕となった混血吸血鬼。以前は死霊魔術を得意とする魔術師であり、どこかに所属することのないフリーランスだった。
            人や魔族を呪い傀儡とする事から「骸狩り」という二つ名を持つ。下僕となった現在はミーシャの事を狂信的に信仰している。
            主人に対する敵対者はすべて殺害対象であり、同時に「コレクション対象」としか見ておらず、見下している。

マシュー・フランクリン:22歳。聖十字協会の魔術師。爵位は無し。
              新米魔術師であり、ブランドンの部下としてヘブリニッジに派遣された。
              使用魔術は基礎的なものを幅広く扱い、威力も平均的。典型的な知性派であり、近接戦闘には向かない。
              優等生タイプで、頭もよく回るが、ルールに縛られやすく、柔軟に対応できない面を持つ。

狩屋 夕姫(かりや ゆうき):21歳。元封滅騎士団特務攻撃隊。戦争孤児であり、魔術研究結社『ヴィクティム』に拾われた後、魔術師に。
                 戦闘は目に刻まれた魔術紋を使った「黒鳥召喚術」と強化された肉体での超接近戦。
                 寡黙な口調。性格は常に冷静であり淡泊。自分がどうなろうと気にしない自己破滅思考を持つ。

ドライ・J:露天商。グスターブの配下の一人。シモーヌ家が流通させている商品を秘密裏に横流ししてもらい稼いでいる。
      自分の利益にしか興味がなく、グスターブの下についているのも忠誠ではなく、利益のため。

グスターブ・ボメロフ:シモーヌ家幹部の一人。シモーヌ家の混乱に乗じて、部下に流通品を横流しして私腹を肥やしている。
             野心家であり、ミーシャを蹴落とそうと画策している。

♀ミーシャ:
♂バラック:
♂マシュー:
♀夕姫  :
♂♀ドライ:
♂♀グスターブ:

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ミーシャ:ふんふんふーん。んふふ~。

バラック:ミーシャ様。楽しそうでございますね。

ミーシャ:うん。楽しいよ。だって、バラックがこんなにおもちゃを持ってきてくれたんだもん。
     ありがとね。

バラック:あぁ・・・勿体なきお言葉。我が主よ。そのお言葉1つでこのバラック。歓喜に打ち震えております。

ミーシャ:大げさだよ。僕はただ、お礼を言っただけだよ?

バラック:主からの礼賛(らいさん)を受けること、それすなわち私にとって絶対の歓びにございます。

ミーシャ:うーん。ま、いいや。あ、そうだバラック。お願いがあるんだけど。

バラック:はっ!何なりと仰せつけください。我が主よ。

ミーシャ:最近ね。うちの地域で悪さする人達を懲らしめてきたじゃない?
     その中にね。どうやら、後ろで糸を引いてるやつがいるみたいなんだ。

バラック:なんと!不届きな!主に向かい悪辣な思慮の刃を向けるとは。

ミーシャ:しかもね~?それはウチの幹部の一人らしいんだ。

バラック:それは・・・!許せませぬ。我が主よ。今すぐに処刑の許可を。
     このバラック・べリンガル。矮小な身ながら、主に変わり誅罰を加えてまいります。

ミーシャ:あ、やってくれる?ありがとー。僕、粛清とか興味ないからやりたくないんだ。

バラック:我が主、自らが手を下すまでもありませぬ。僭越ながらこの私がいくらでも代わりとして悪漢どもを血祭りに上げまする。

ミーシャ:うん。じゃあ、お願い。関係書類は僕の部屋の机にあるから。勝手に持って行って。
     その間、この子たちで遊んでおくから。・・・今日のおもちゃはどこの?

バラック:主よ。こやつらは恐れ多くも、主の統べる地域にて主の許可なく店を構え、我らの下ろす商品を簒奪(さんだつ)し、蜜を吸い上げていたのです。
     ここに並ぶはその首魁と一族郎党。死して償ってもまだ足りぬ罪。それを犯しておきながら生きているのは主の慈悲により、命を救われたからです。
     こやつらのつまらぬ命。一度救った主のしたいように、弄びくださいませ。

ミーシャ:そっかぁ。それじゃあね。この中に番(つがい)は居る?

バラック:はい。そこに居る男とこちらの娘は番(つがい)です。それと、こちらとあちらも。

ミーシャ:ふぅん。じゃあねぇ。まずこの4つであそぼっかな。

バラック:おお、左様ですか。どのようになさるおつもりで?

ミーシャ:うーん。イジメて壊れても嫌だからまずは軽いとこからいこっか。
     あ、そうだ。番(つがい)を交換させるのってどう?

バラック:ほう!それはまた背徳的な!衆目の元、さらに愛する者の前で罪悪にして淫猥で放蕩の饗宴を晒すのですか。
     よいお戯れだと思いまする。

ミーシャ:それじゃあ、そうしよう!さ、それじゃあ君たちは言う通りにしてね。早速、僕を愉しませてよ。
     命令に背いたら・・・壊しちゃうから。

バラック:それでは、我が主。名残惜しいですが、私は主命を全うしてきます故。これにて。

ミーシャ:うん、いってらっしゃい。気を付けてね。

バラック:はっ!主の元に良い知らせをお届けに上がります。それでは、おたのしみくださいませ。


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マシュー:・・・えっと。狩屋さん?

夕姫  :はい。なんでしょう。

マシュー:今日、これからなにか予定あるかな?

夕姫  :いえ、特になにも。書類の整理、及び申請書類の提出は済ませてあります。

マシュー:えっ・・・。あの、20枚はあった書類ぜんぶ?

夕姫  :はい。すべてチェックして申請しました。
     ・・・なにか問題がありましたか?問題ならばすぐに回収してきますが。

マシュー:ううん。大丈夫!一度、僕も見てるし・・・。

夕姫  :そうですか。

マシュー:・・・・。

夕姫  :・・・マシューさん?

マシュー:い、いや!なんでもない!じゃあ、狩屋さん。少し付き合ってくれない?

夕姫  :付き合う・・・。何にですか?

マシュー:買い物にいこうかなって。狩屋さんの日用品とかも含めて。

夕姫  :それならば、私が一人で行きます。マシューさんの手を煩わせるわけには。

マシュー:いや、えっと。ヘブリニッジの中に買い物に行くから狩屋さん一人はちょっと。

夕姫  :・・・そうですか。わかりました。では、私はここに居ますので用があれば。

マシュー:いやいや。そこは一緒に行こうよ。狩屋さん。

夕姫  :私の物は私の方で揃えますのでお気になさらず。それに、私がヘブリニッジへ単独で入れない以上、マシューさんの邪魔にしかなりませんし。

マシュー:うん。別に邪魔とかいってないんだけどね・・・。

夕姫  :・・・?なにか?

マシュー:うん。いや、なんでもない。・・・とりあえず、いこう?気分転換もかねて!

夕姫  :あ、えっ、ちょっ、ちょっと。

マシュー:ほらほらいくよー。

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マシュー:とは言って連れてきたものの・・・。どこ行こう。買い物って言っても、僕のは薬草と錬金素材だしなぁ。

夕姫  :あの、どちらへ行くのですか?

マシュー:え?あ、ああ。そうだね。じゃあ、とりあえずここ、いこうか。

夕姫  :ここは・・・?

マシュー:ヘブリニッジ最大のマーケット。グラトン・ゴート。この一帯全てがお店だからいろいろ見て回ろう。

夕姫  :いろいろ・・・ですか。

マシュー:そう、いろいろ。食べ物、日用品、薬に衣類。さらには武器や防具まで揃う出店街(でみせまち)だよ。

夕姫  :出店。ですか。

マシュー:基本、この街で店舗をもてるのは吸血鬼四名家の配下か、鬼島組(きじまぐみ)の配下くらいしかいないからね。
     でも、ここはヘブリニッジで唯一、四名家の息が掛からない商人しか集まらない場所なんだ。
     あ、ちなみに四名家以外で店を持っている例外は騒霊(そうれい)の『バー・ファンタズム』と『化け猫亭』くらいだよ。

夕姫  :『化け猫亭』・・・。先日行った、あの化け猫が運営している?

マシュー:そうそう。小虎さんのところ。おいしいよね。あそこの料理。

夕姫  :はい。とても。習いたい程でした。

マシュー:あ、狩屋さん。料理好きなんだ。

夕姫  :ええ、それなりに。マリアンさんのところに居た時はもっぱら私が作ってましたし。

マシュー:あ、あはは・・・。わからなくもない気がする・・・。

夕姫  :ですが、そんなに難しいものはできませんので簡単なものですが。

マシュー:そうなんだ。でも、作れるのはすごいよね。僕はからきしで。

夕姫  :そう、なんですか?薬剤の調合などとても上手ですので、出来るものと。

マシュー:うーん。薬を作るのは簡単なんだけどね。料理はこう・・・調味料とか、煮たり焼いたりのタイミングがわからなくて・・・。

夕姫  :タイミング・・・ですか。不思議なところでつまずいてますね。

マシュー:うっ・・・。まぁ、人には向き不向きがあるってことで・・・。
     あ、ここ少し見ていい?

夕姫  :はい。どうぞ。

ドライ :おう、いらっしゃい。何が要る?

マシュー:黒トカゲの足と噛みつき花の牙。あと、この子に小物を見せてもらえますか?

ドライ :あいよ。小物はそっちの棚だ。勝手に見てくれ。黒トカゲの足と噛みつき花な。少し待ってな。

夕姫  :ここは、なんのお店です?

マシュー:んー?ここは雑貨屋。割とほかの店より安いんだ。こないだ知り合いから噂で聞いたから寄ってみたんだ。

夕姫  :なるほど。

ドライ :あいよ。黒トカゲの足と噛みつき花だ。どれくらい要る?

マシュー:足は20本。牙は・・・そうだなぁ、50本とかある?

ドライ :あるよ。今仕入れてる分の三分の一ってとこだ。心配しなくていいぜ、マシューさん。

マシュー:えっ、僕のこと知ってるんですか?

ドライ :そりゃあ、そうだ。むしろ、今この街でアンタのコト知らねぇのはモグリだ。
     なんせ、あの『夜の王』に喧嘩売って無傷で帰ってきたって有名だしな。

マシュー:うーん。間違ってないけど、否定したい・・・。

ドライ :それにあのブランドンの野郎の部下で、最年少で魔術のスペシャリストって触れ込みなんだろ?
     あの『最速』マルリス・アヴィラを丸焦げローストにしたってのも聞いたな。有名にならないわけがない。

マシュー:えっ、なんかすごいいわれ様・・・。

夕姫  :有名人ですね。

ドライ :有名も有名。超有名人だ。
     そんな奴の名前を知らずに喧嘩売った日にゃあ、ズタボロにされるのがオチだ。

マシュー:そんなことしませんって!

ドライ :あ!うちの店の品が粗悪品だったとかでぶっ壊しに来ないでくださいよ?
     そうなるとこっちゃあ商売あがったりになるんだ。

マシュー:だから、そんなことしませんって!僕を何だと思ってるんですか!!

ドライ :へっへっへ。おお、こわやこわや。さて、ほい。トカゲの足と噛みつき花だ。お代は3300ニュークだ。

マシュー:えっ、そんなもんでいいんですか?4000ニュークでもいいのに。

ドライ :ほんとは3500なんだが。負けとくよ。その代わり、これから贔屓にしてくれや。

マシュー:ありがとうございます。

ドライ :んで?そっちの嬢ちゃんはなにか要るかい?

夕姫  :じゃあ、このリングはなんですか?

ドライ :ああ、そいつは魔返しの指輪だ。簡単なスペルや呪いはこいつが一度だけ阻(はば)んでくれる。
     まぁ、お守り程度のもんだな。

夕姫  :こっちは?

ドライ :それは単なる鉄の指輪。アクセサリーにしてもいいし、紋を刻めば魔術道具にもなる。
     ただ、おすすめするのは鉄よりもこっちの金メッキの指輪だな。

夕姫  :メッキ・・・?金の指輪でなく?

ドライ :純金なんてここじゃ手に入らねぇからな。メッキ加工が関の山だ。
     だが、鉄の指輪よりは魔術効率は良いし、なんせおしゃれだ。安くしとくよ。

夕姫  :・・・いえ、結構です。ありがとうございました。

マシュー:あれ、いいんだ。

夕姫  :ええ、私には必要ありませんので。

ドライ :そうかい。そりゃあ残念だ。また、きておくれ。

マシュー:はい。ありがとうございました。シモーヌの幹部の方にもよろしくお伝えくださいね。

ドライ :なっ!?

マシュー:それでは。

ドライ :(通信機を取り出す)もしもし・・・すまねぇ。グスターブさんに取り次いでもらえねぇか。

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夕姫  :マシューさん。すこしいいですか?

マシュー:ん?どうしたの?狩屋さん。何か気になるものでもあった?

夕姫  :いえ、先ほど、マシューさんが最後に言っていたことが気になって。

マシュー:ああ、シモーヌの幹部によろしくってやつ?

夕姫  :はい。この出店はすべて四名家の息が掛かってないと言っていたはずですが。

マシュー:うん。そうだよ。だって、ここは四名家が商売することを禁じている区画でもあるからね。

夕姫  :では、なぜ?

マシュー:店主の後ろにあった木箱。見た?

夕姫  :いいえ。見てません。なにか問題でも?

マシュー:あれの一部にね。シモーヌ家の焼き印が押してあった箱があったんだ。
     焼き印は商品の出所を示すため、そして所有権を誇示するためにつける印。
     勝手に箱だけ、よそ者が持ち出せない代物なんだ。

夕姫  :それでは、あの店は違法経営。

マシュー:んー。まぁ、そうなるかな。この街の不文律(ふぶんりつ)を崩す行いではあるよね。

夕姫  :ならば、直ぐに処断して・・・

マシュー:しなくていいよ。脅しをかけたから多分もうあそこじゃやらない。

夕姫  :脅し・・・ですか。さっきのあの一言が。

マシュー:うん。副音声にするなら「こっちにバレてるから下手に動くな。上層部に言われる前に畳め」っていう感じかな?

夕姫  :ですが、不確実です。問題になる前に処分を。外に伝われば治安維持を怠ったと、聖十字協会本部から叱責も・・・。

マシュー:いいんだって。こんなことはそうそう伝わらないし。伝わっても反省文書けば『以上終わり』だしね。
     まあ後、今のシモーヌ家ならああいうの許さないだろうし。放置が一番楽。
     あ、それよりさ。ここ見ていこう。可愛い食器売ってるみたいだしさ。

夕姫  :・・・甘いです。楽観は危機の前触れです。・・・飼い主の身を守るため。私が・・・。

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グスターブ:どうした。こんな時間に。

ドライ  :夜遅く申し訳ありません。グスターブ。少々問題が。

グスターブ:問題?なんだ。

ドライ  :それは・・・まずはこちらへ・・・。

グスターブ:ああ、いいだろう。
      ・・・にしても、売り上げはどうだ?最近好調だからな、お前のところは。

ドライ  :はい。おかげさまで。

グスターブ:俺が通商の重役に座ったからこそこういった裏稼業ができているんだ。感謝したまえ。

ドライ  :その件なのですが。・・・聖十字協会にバレました。

グスターブ:なに?どいつにだ。

ドライ  :マシュー・フランクリン。ブランドンの弟子の。

グスターブ:なにっ?・・・よりにもよってあそこか。何か言って来たか。

ドライ  :いいえ。ただ、脅しをかけられました。おそらく、「今回は見逃すから店をたため」と。

グスターブ:厄介な。クソッ!ようやく軌道に乗り始めたというのに。

ドライ  :どうしましょう?

グスターブ:今、資金が絶えるのはマズい。ならば、あの小僧を殺しておいた方が確立はある。

ドライ  :しかし!奴は夜の王と戦って無傷で帰ってきたと

グスターブ:それは偶然だ!あんなヒョロいガキが夜の王と互角なわけがない。相手にされず目こぼしされただけだ!

ドライ  :しかし・・・

グスターブ:しかしもかかしもない!そうとなったら・・・

夕姫   :やはり、来て正解でした。

グスターブ:何者!?

ドライ  :カラスの・・・仮面・・・?

夕姫   :私の飼い主に刃を向ける者には死を。

グスターブ:っ!あの魔術師の差し金か!ゆけっ!ブラッドエッジ!

夕姫   :甘い

グスターブ:避けられた!?くそっ!

夕姫   :はぁっ!

グスターブ:つぅっ!・・・なにをボケっとしている!貴様も戦え!

ドライ  :は、はいっ!はぁぁっ!

夕姫   :ちっ。スラッシュウインド。

ドライ  :ゆ、指輪よっ!

夕姫   :っ!?魔返しの指輪!

グスターブ:隙ありだ!しねぇぇい!

夕姫   :シッ!

グスターブ:がはっ!?コイツ・・・

夕姫   :其は原初の一。降り立ち、羽ばたき、切り刻む刃と成れ。

ドライ  :させるかぁぁぁっ!

夕姫   :ダウンバース・・・っ!?

バラック :フォークロア・ウインド

ドライ  :がぁぁぁっ!?

グスターブ:な、なにが・・・

バラック :おやおや。一撃で葬ってしまった。惜しいことをした。

グスターブ:き、貴様・・・「骸狩り」!?

バラック :グスターブ・ボメロフ。いい夜だ。むせかえる風が心地いいな。

グスターブ:なにをしに来た!

バラック :それは君自身がよく知っていると思うがね?・・・この裏切者めが。

グスターブ:っ!?俺を殺しに来たかっ!

バラック :殺す?いえいえ。何を言っているのか。私はただ主命に従い、誅罰を加えに来たまでだ。
      愚かにも主君に牙剥く不逞の輩にな。

グスターブ:主命・・・まさか、あの狂犬が!?

バラック :我が聡明なる主が気づかぬとでも思ったか。ああ、愚かにも程がある。これでは死体に集る羽虫にも劣るではないか。

グスターブ:貴様・・・なり損ないの吸血鬼風情が!俺に向かってっ!

バラック :理解していないようだな?なり損ないではない。主が望まれたことを受け入れたのみ。
      半魔となり、主に尽くす。それが我が天上至高の宿命!

グスターブ:狂信徒めが・・・。

バラック :なんとでも言うがいい。・・・時に、そこなカラスよ。影に潜み期を窺うは良いが、殺気が溢れているぞ?
      奇襲を狙うならもう少し、集中することだ。

夕姫   :・・・不快。処断対象を追加。

バラック :ほう。グスターブ。不敬の輩(ともがら)よ。貴様はいささか敵を多く作りすぎたな。

グスターブ:ふ、ふふっ、だからなんだ!時間を作りすぎたな!なり損ない!俺が配下を呼ばないと高をくくったか!?

バラック :配下?・・・ああ、配下。君の配下か。それは・・・この人形たちの事かね?

グスターブ:あ?・・・な、なに・・・?なんだとっ!?

バラック :ここへ来る前に、すべて私のコレクションに加えさせてもらった。・・・しかし、趣味ではないな。
      腐臭がひどすぎる。

グスターブ:ど、どうやって・・・いや!そんな馬鹿な!腕に自信があるやつらばかり・・・

バラック :この程度がか。雑兵にも程がある。私を倒すならこの十は倍を持ってきたまえ。

夕姫   :処断・・・開始。

バラック :リブ・ウォール!

夕姫   :っ!?骨のドーム・・・なら、ブラスト・ウィンド!

バラック :おお、カラス。貴様はなかなか骨がある。貴様ならコレクションに加え愛でても良いな。

夕姫   :不快!エンチャント、ブリーディング。

バラック :ほう、出血エンチャントか。なかなか器用。しかし!

夕姫   :っ!?ぐあっ!?

バラック :私が率いるは死者の群れ。血をいくら流そうとも意味はない。

グスターブ:や、やめろ。お前たち・・・っ!やめろぉぉっ!

バラック :錯乱したか。死者どもよ。追って罰せよ!
      さて、カラス。貴様はどうするね?

夕姫   :黒鳥・・・三次解放。

バラック :ほう・・・?まだやると。よろしい!ではこの私のコレクションに・・・

夕姫   :戦技、短刺・二突(たんしにとつ)

バラック :な・・・にぃ・・・?

夕姫   :追撃。戦技、乱刺・散花(らんし・さんか)

バラック :がぁぁぁっ!

夕姫   :敵をみて、甘く見るから怪我をする。

バラック :ああ・・・ああっ!

夕姫   :死ね。狂信徒。

バラック :よくも我が肉体をぉぉぉぉっ!?(夕姫に掴み掛る

夕姫   :っ!?がはっ!?は、離せっ(首を絞める手をどかそうとする夕姫

バラック :我がっ!体をっ!傷つけて!よいのは!我が!主!のみっ!(つかみ上げた夕姫を振る
      それを、よくも・・・よくもぉぉぉ!

ミーシャ :そこまでだよ。バラック。

バラック :お、おおっ!我が・・・我が主・・・いと尊きお方・・・

夕姫   :がっ・・・ごほっ・・・こほっ・・・

ミーシャ :あーあ、傷だらけ。大丈夫?バラック。

バラック :あぁ、主よ・・・申し訳ありませぬ。見苦しい姿を・・・

ミーシャ :大丈夫。バラック、君は今とても楽しそうだ。

バラック :ああ、主・・・。私の心を救う君・・・。

ミーシャ :さて、カラス君・・・いや、「カラスさん」かな?僕の家族になにしてくれたのかな?

夕姫   :・・・・。

ミーシャ :だんまり?つれないなぁ。僕とは話してくれないの?

夕姫   :ミーシャ・シモーヌと確認。非常事態。即時撤退・・・。

ミーシャ :させると思う?

夕姫   :なっ!?

ミーシャ :それ、ドーン。

夕姫   :がっ・・・なに・・・が・・・?

ミーシャ :ふぅん?案外頑丈だね?はらわたを抜くつもりで刺したんだけど。

夕姫   :ソニックブラストっ!

ミーシャ :あははっ!おっそぉい。マルリスお姉ちゃんのほうが速いよ?
      
夕姫   :スモークディフューズっ!

ミーシャ :わぶっ!?なにこれっ?煙幕ぅ!?

バラック :ミーシャ様っ!

夕姫   :撤退開始・・・。

ミーシャ :げほっこほっ・・・。うーん、逃げられちゃった。

バラック :ミーシャ様!我が主!ご無事ですか!?

ミーシャ :うん。大丈夫。庇ってくれてありがと。

バラック :滅相もない・・・。主よ。もうしわけありませぬ。
      かのカラスめに阻まれ、不敬の徒を逃がしました・・・。

ミーシャ :うん?あー、グスターブのこと?

バラック :どうぞ!我が至らぬ行いに誅罰をお与えください!
      要らぬと言うならばこの命、今すぐに御絶ちください!

ミーシャ :だいじょうぶ。ちゃんと、君のゾンビたちが捕まえてくれたよ?今、僕のおもちゃ箱に入れてるから。

バラック :なんと・・・なんと、我が主!申し訳ありませぬ!私自らが連れてゆくべきところを煩わせるとは・・・。
      やはりこの命、絶ってお詫びを・・・っ!

ミーシャ :いいの。いいの。それより、バラック。一緒に遊ぼう?グスターブで。

バラック :よいのですか・・・?私を、饗宴に招いてくださると・・・?

ミーシャ :今日、いーっぱい頑張ってくれたからね。お礼だよ。

バラック :あぁ、お優しき君・・・。我が命、貴方様に捧げます・・・。

ミーシャ :大げさだなぁ。さ、それじゃあ帰って遊ぼう!

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グスターブ:う、・・・こ、ここは・・・

ミーシャ :おはよ。グスターブ。

グスターブ:ミーシャ・・・様っ!?

ミーシャ :グスターブ。君、いろいろ悪さしてたみたいだね?

グスターブ:そんな!そんな!これは!なにかの間違いです!はめられたんだ!

バラック :見苦しい。足掻かず罪を受け入れなさい。主君の前なのですよ?

グスターブ:黙れ!成り損ない!・・・ミーシャ様。どうか、御許しを。私は、私は無実です・・・

ミーシャ :うーん。どうしよっかぁ?あ、それじゃあこうしてみようか。

グスターブ:な、なにを・・・?ひぃっ!?

ミーシャ :魔食虫(ましょくちゅう)。魔力を持つ生物に寄生して食いつくす虫。これ食べて?

グスターブ:それは・・・勘弁を・・・主よ・・・。

ミーシャ :この子も僕の友達だからね?噛んじゃダメだよ?ちゃんと飲み込んでね?

グスターブ:いやだ・・・いやだぁっ!

ミーシャ :本当に無実で嘘ついてなかったら、この子は何もしないから。

バラック :さぁ、飲み込み、無実を証明しなさいっ!

グスターブ:あがっ・・・おごぉっ!?(飲み込む)・・・がはっ・・・ごほっ・・・

ミーシャ :さぁ、どうなるかな?

グスターブ:い、いやだ・・・取ってくれ・・・悪かった!俺がわるかった・・・っ!

バラック :どうやら・・・「有罪」。ですね?

ミーシャ :あ、見てみて、皮膚の下這いまわってる。たのしそー

グスターブ:やめて!たのむ!たのむから!なんでもするから!

ミーシャ :クフフ。それじゃ、僕の友達と仲良くね?グスターブ。

バラック :苦痛のオペラ。聞かせていただきますよ?

グスターブ:まって、おいていくな・・・やだ・・いやだぁぁぁっ!?

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バラック :次回予告

ドライ  :プライドに生きる男

グスターブ:屈辱にまみれた彼に新たな出来事が

ミーシャ :それは絶望の序曲となる

マシュー :Night/Knight 第26話 Grave Ravens(グレイブ レイブンズ)

夕姫   :転換点。そこから先には、もう戻れない。






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