Night/Knight 第21話 怒りの剣(つるぎ) 作:福山漱流
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ルドルフ・シモーヌ:純血吸血鬼であり、吸血鬼界の名家『シモーヌ家』の子息。見た目は20代前半だが実年齢120歳。
つねに偉そうな態度で人に接するヤクザ者。その割に、行動は臆病者そのもの。鎮曰く「口先だけの男」
マルリス = アヴィラ:純血吸血鬼であり、吸血鬼界の名家『アヴィラ家』の子女。見た目18歳くらいの少女だが、実年齢は200オーバー。
生粋のお嬢様であり、口調もお嬢様。しかし、怒ると地が出てしまい荒い口調になる。
ウォリス・ヒューズ:吸血鬼であり、マルリスの側近。ヘブリニッジの治安維持を務める『アヴィラ家』の重役。細身の男性。
見た目、30代前半。事務処理や、情報管理などの内役の責任者を務める。
折り目正しい人物だが、神経質が欠点。
ミーシャ・シモーヌ:純血吸血鬼であり、ルドルフの弟(もしくは妹)。性別不明。精神的にも肉体的にも幼く、歪んだ感情表現をしがち。
知識、魔術すべてにおいてルドルフより遥かに優れており、それを畏れ、憎んだ兄から幼いころから虐待を受けていた。
その結果として、精神的に「壊れて」しまった。
女中 :シモーヌ家に仕える女中。主にルドルフの身の回りの世話をしている。
謎の男 :黒いローブで身を包んだ男。身分不詳。
アーサー :人の手で作られた人工魔獣。「最強の一撃」をコンセプトに作られた最新型魔獣。
ヒト型をしており、自律行動が可能。形を変え、持ち主の剣として使うこともできる。
ガラハッド :人の手で作られた人工魔獣。「完全な防御」をコンセプトに作られた最新型魔獣。
ヒト型をしており、自律行動が可能。形を変え、持ち主の盾として使うこともできる。
♂ルドルフ:
♀マルリス:
♂ウォリス:
♀ミーシャ:
♀女中&アーサー:
♂謎の男&ガラハッド:
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ルドルフ:始まりやがったなぁ。あっちこっちでドンぱちやってまぁ。
女中 :ルドルフ様。お茶が入りました。
ルドルフ:ああ、そこに置いとけ。
女中 :はい・・・。あの。
ルドルフ:なんだ?
女中 :ルドルフ様は参加されないのです?
ルドルフ:あ?なににだ?
女中 :この街で今起こっている戦闘にです。
ルドルフ:はぁ?なんで参加しないといけねぇんだ。
女中 :同族が戦っているので・・・。
ルドルフ:あぁ、別にいいんだよ。これはオレが仕組んだ戦いだからな。
女中 :ルドルフ様が?
ルドルフ:そうだ。気に入らない鎮(まもる)やアルマを蹴落とし、オレがこの街を仕切るために作った絵図だ。
女中 :ルドルフ様が権力を・・・ですか。
ルドルフ:ああ、そうだ。考えてみろ、この街の経済を回してるのは誰だ?
門の向うからいろんな食材や道具を仕入れて、この街を豊かにしてるのはどこの誰だ?オレだ!
なのに、四名家でも最弱みたいなポジションであれやこれや指示されるなんざ我慢ならねぇ。
女中 :心中。お察しします。
ルドルフ:だからこそ、オレはこの街を食らいつくす!どんな手を使ってでもなァ!!
マルリス:妄言もいい加減にしろよ?ルドルフ。
ルドルフ:っ!?ちぃっ!
女中 :きゃあっ!?・・・がはっ・・・。ルドルフさ、ま・・・なぜ・・・
マルリス:外道だな。身を守るために女中を盾にするなんてな。
ルドルフ:ハッ!闇討ちしてきた奴が何言ってやがる。
マルリス:フン。
ルドルフ:んでぇ?ナニをしに来たんだ?マルリス。ここにゃあ鬼も魔術師もいねぇぞ?
マルリス:わかってる。だが、私が殺す相手は目の前にいる。
ルドルフ:オレ、って訳か?でもよぉ?オレがお前に何したっての?この街を乗っ取るみたいな話、それが罪とか言うわけ?
マルリス:くだらん。そんな話で私が出てくるわけがないだろう。
ルドルフ:あっそ。んじゃ、なんでそんなに殺意むき出しなのかねぇ?
マルリス:シラを切るか・・・。ウォリス。
ウォリス:はい。・・・ルドルフ様。
ルドルフ:おー、ウォリスじゃねぇか。元気してたかぁ?
ウォリス:・・・おかげさまで。
ルドルフ:そーかそーか。マルリスの家に行ってからちっとも連絡寄越さねぇからよ、心配してたんだぜ?イジメられてねぇかってな。
マルリス:フン、茶番はそこまでにしろ、ルドルフ。
ルドルフ:はぁ?なんのことだ?
マルリス:お前、ウォリスに手を出したな?
ルドルフ:手を出したぁ?
マルリス:ウォリスに、ウチの内情を探らせていたな?
ルドルフ:なんのために?
マルリス:この、鬼と吸血鬼の諍(いさか)いをあおるために。自分から疑いの目を外すために。
ルドルフ:・・・へぇ?その発想は鎮(まもる)か?それともアルマか?
マルリス:だれでもいいだろ。
ルドルフ:あっそぉ。だが、それがどうしたって言うんだよ。ウォリスはオレの物だった訳だしな。
ウォリス:っ・・・ルドルフ様・・・。
ルドルフ:オレがオレの物をどう扱おうが別にいいじゃねぇか。なぁ、マルリス
マルリス:遮って)ふざけるなよ!ルドルフ!!ウォリスは私の家族だ!!
ルドルフ:・・・ハァ?家族ゥ?何言ってんだマルリス。イカレタのか?
マルリス:貴様は、わからんだろうな。人を、部下を物としか見れんクズが!
ルドルフ:家族ごっこの邪魔されてブチ切れってか?ハハッ!『お子ちゃまマルリス』は相変わらずだなァ?
マルリス:・・・いいだろう。ひき肉にしてやる。行け!ブラッドエッジ!!
ルドルフ:来い!アーサー!ガラハッド!
アーサー:コロスゥゥゥゥ
ガラハッド:シネェェ
マルリス:人工魔獣!?厄介なものをっ!
ウォリス:お嬢様!
マルリス:来るなウォリス!打ち合わせ通りやれ!
ウォリス:・・・はっ!
ルドルフ:門の向うで作られた最高級の人工魔獣だ。しかも最新式!
相手できるか?・・・行け。
アーサー:ガアッ!
ガラハッド:シィィィッ!
マルリス:ちぃっ!
ルドルフ:ほれほれ、逃げろ逃げろぉ!
マルリス:意外に早いなっ!だが、私の・・・敵じゃない。
ガラハッド:斬ル、切る・・・キルゥゥゥ!
アーサー:アァァァッ!
マルリス:伏せだ。駄犬め。エクスプロジオン!
アーサー:ヌガァァァッ!
ガラハッド:ギャガァァッ!
ルドルフ:な、にぃ?アーサー!ガラハッド!ちっ!おい、マルリス!テメェ、なにをし・・・
マルリス:カウンターだよ。見てわからなかったか?あぁ、そうだった。お前は戦闘はからきしだったな。
ルドルフ:クソが・・・。本気でオレを怒らせたな・・・?アーサー!ガラハッド!
マルリス:犬は死んだだろうが。呼んだところで・・・ん?
アーサー:コ・・・ロス・・・
ガラハッド:シネェェ・・・
マルリス:仕留めそこなっていたか・・・
ルドルフ:来い。我が手の元に。アーサー。ガラハッド!
マルリス:ちぃっ!させるかっ!行け、ブラッドエッジ!
ルドルフ:ちぃえぇぇいっ!
マルリス:なっ!?剣で弾いただと!?・・・ならっ!エッジ・エクスプロージオ
ルドルフ:(遮って)エクスカリバーぁぁぁっ!
マルリス:がぁぁっ!?この・・・光はっ・・・
ルドルフ:アッハハハハ!いい威力だぁっ!魔族を殺す聖なる本流・・・なんて言ってみるかぁ?
マルリス:魔力の・・・束ごときにっ・・・押されるなど・・・
ルドルフ:よせよせ。なんたって、コイツはこの場所に満ちるマナを強制的に吸いあげて放つ。
この部屋のマナが尽きる前にお前が潰れんだろ?マルリスゥ!!
マルリス:だったら、どォだっていうんだ、アァン!?
ルドルフ:なっ・・・
マルリス:私がァ・・・この程度で・・・くたばるとでも思ったか!!
ルドルフ:ひっ!?
マルリス:家族を弄んだ貴様をォ・・・潰すまでェ・・・私はァ・・・私はァァァッ!!
ルドルフ:エクスカリバー!最大火力!!つぶせ!
マルリス:ぐぅっ!・・・そうか、なら。左腕だけくれてやる!!
ルドルフ:身を削ってまで、やることかよぉぉっ!?
マルリス:こい、ブラッドエッジ!これで・・・終いだぁぁっ!
ルドルフ:ひ、ひいぃぃっ!・・・なぁんてねぇ!
マルリス:なっ、盾・・・だとっ!?
ルドルフ:ざァんねんデシタァ!ガラハッドは盾でしたァ!んでもって、ダリャアッ!
マルリス:がふっ!?い、いったい何・・・が・・・
ルドルフ:この盾ってさぁ。受けた攻撃の威力をそのままそっくり相手に返す力を持ってんだよ。
マルリス:それ・・・、アルマの技じゃねぇか
ルドルフ:あ、気づいちゃった?そーそ、コピーさせてもらいました。
ま、コレの開発にかかわったのはオレだけど。
マルリス:どこまで、堕ちた。ルドルフ・・・。
ルドルフ:あァ?何言ってんだ、この嬢ちゃんは?自分が権力を握るためだ。なんでもするさ。
マルリス:人間なんぞに、同族の技を売るなんてな。
ルドルフ:べっつにいいじゃねぇか。最終的に、オレが!この世界を支配できればいいんだから。
マルリス:・・・くだらない。身の程を知れ、ルドルフ。
ルドルフ:それさぁ?今のお前が言える台詞じゃねぇだろ。ズタボロじゃねぇか。
マルリス:うるせぇんだよごちゃごちゃと!私はまだ死んじゃいねぇぞ!
ルドルフ:だったら、殺してやるよマルリスゥ!!
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ウォリス:くそ、どこだ。あまり、時間を掛けていたら・・・マルリス様が・・・。
しかし、なんて数の檻なんだ。魔獣ばかりを飼ってなにを・・・。
ミーシャ:お兄さん。ここで何してるの?
ウォリス:っ!?キ、君は・・・
ミーシャ:僕?僕はミーシャ。ミーシャ・シモーヌだよ。初めまして。
ウォリス:えっ、君・・・いや、貴方がミーシャ様ですか。
ミーシャ:うん。そだよ?なになに、僕に用事?
ウォリス:はい。ぜひ、手伝ってほしいことが。
ミーシャ:そうなんだぁ。けど、だめなんだ。お兄ちゃんからここから出るなって言われてるから。
ウォリス:出るなって・・・いや、そもそも、なぜそんなところにいるのですか。
ミーシャ:なぜって。これが僕のお部屋だから。あと、お兄ちゃんが「その方が安全だから」って。
ウォリス:そんな、それで自分からこんな場所に?
ミーシャ:うん。僕、別に窮屈なトコ嫌いじゃないし。それに、ここはいろんな友達がいっぱいいるから寂しくないよ。
ウォリス:とも・・・だち?
ミーシャ:そう、友達。お兄さんの後ろにいるのが、ミハイ。こっちがルールゥ。僕の隣にいるのがサルトル。賢いんだよ。
ウォリス:魔獣に名前を付けてるんですか・・・?
ミーシャ:ううん。ちがうよ?これが、この子たちの名前。僕が付けたんじゃないよ。
ウォリス:本当の?
ミーシャ:うん、本当の名前。教えてくれたんだ。一緒にお話してたらね。
ウォリス:魔獣が会話を・・・?ありえない・・・。
ミーシャ:ありえなくないよ?だって、僕にはわかるんだもん。
ウォリス:そ、そうですか・・・・。
ミーシャ:ところでね、お兄さん。
ウォリス:は、はい。なんでしょう?
ミーシャ:お兄さん。僕たちの「家族」じゃないよね?
ウォリス:っ・・・!?な、なんだ、この寒気は・・・
ミーシャ:お兄さん、見たことがないんだよね。今まで。一度も。
ウォリス:そ、それは・・・
ミーシャ:お兄さん。僕たちの「家族」じゃないなら、「別の家族」の人?
ウォリス:も、もし、そうだったとしたら?
ミーシャ:壊さなきゃね?
ウォリス:っ!
ミーシャ:アハハハッ。そんなに怯えなくてもいいんだよ?ここの子たち、苦しまずに殺してくれるから。
ウォリス:そ、それは・・・できません。
ミーシャ:なんで?そのつもりで入ってきたんでしょ?
ウォリス:お嬢様のために、私は死ねない。
ミーシャ:お嬢様?・・・やっぱり、誰かの下僕なんだ。
ウォリス:はい。四名家(よんめいけ)が一翼。アヴィラ家当主代理。マルリス・アヴィラが私の・・・
ミーシャ:あー!マルリスお姉ちゃん!知ってる!来てるの!?
ウォリス:え、あ・・・はい。一応。ですが、今はルドルフ様と・・・
ミーシャ:遮って)えー!お兄ちゃんと遊んでるの!会いたい!僕も一緒に遊びたい!
ウォリス:遊ぶって・・・今、お二人はですね・・・
ミーシャ:遊びは遊びでしょ?楽しいことするの。よいしょ。
ウォリス:えっ・・・
ミーシャ:何を驚いてるの?あ、檻を壊しちゃったこと?いいのいいの。どうせいっぱいあるし。
ウォリス:そう・・・ですが・・・。いえ、そうではなく。
ミーシャ:そうだ。みんなも出してあげよう。一人だけ抜け駆けするのはズルだもんね。
ほーら、出てきていいよー
ウォリス:すべてのケージが、一瞬で壊れた・・・!?
ミーシャ:よーしよし。さ、それじゃ、みんなで遊びにいこっか。
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ルドルフ:ハッハァ!どうした?マルリス!さっきまでの威勢はァ!?
マルリス:ぐっ!エクスプロジオン!
ルドルフ:効かねぇよォ?その程度っ!
マルリス:ちっ!射殺せ!ブラッドエッジ!
ルドルフ:オートガァァドォォォ!(あざけって
マルリス:ちッくしょうが・・・ふざけるのも、大概に・・・
ルドルフ:エクスぅ・・・
マルリス:しまっ・・・
ルドルフ:カリバァァァッ!
ミーシャ:絡めとっちゃえ!ラザー!!
ルドルフ:なっ!?この術はっ!?う、動けないっ!
ミーシャ:お兄ちゃんずるぅい。抜け駆けはだめなんだよ?
ルドルフ:み、ミーシャ・・・なんで、ここにっ・・・
マルリス:ミーシャ・・・?狂犬ミーシャか?
ミーシャ:お久しぶり、マルリスお姉ちゃん。んー・・・痛そうだね?
マルリス:そう思うんなら、助けてくれても、いいんだけどな。づっ・・・
ウォリス:お嬢様!!今すぐ手当を!
マルリス:ウォリス!?お前、手筈は・・・ぐぅっ!
ウォリス:プランBです。ミーシャ様の介入で予定が狂ってしまいまして・・・
マルリス:なんて、間の悪い・・・
ミーシャ:ルドルフお兄ちゃん。なんで混ぜてくれないのさ。
ルドルフ:なんで、テメェがここにっ・・・地下に閉じ込めてたはず・・・
ミーシャ:閉じ込めてた?・・・あ、ごめんね。あのお部屋、壊しちゃった。
ルドルフ:ばかな!あれは上級魔術防壁が三重にかかった超硬度の檻だぞ!?
ミーシャ:ん?なんのことを言ってるの?お兄ちゃん。
ルドルフ:なんで、こうなる・・・
ミーシャ:ねぇ、それよりさ。遊ぼうよ。お兄ちゃん。
ルドルフ:遊ぶ・・・?遊ぶ?なんのことだよ!?
ミーシャ:フフッ・・・遊ぼう。お兄ちゃんが僕にしたこと。それを、今度はお兄ちゃんにしてあげる。
ルドルフ:それって・・・まさか。
ミーシャ:おいで。みんな。
ルドルフ:これは・・・。こいつらはっ・・・
ミーシャ:僕のために置いててくれた「お友達」でしょ?返してあげるね。
ルドルフ:やめろ・・・やめてくれ。
ミーシャ:それじゃ。思う存分、食べていいよ?みんな。
ルドルフ:やめろ、よせ!くそ!アーサー!ガラハッド!自律してオレを守れ!
アーサー:ガァァッ!
ガラハッド:シャアァァァッ!
ミーシャ:邪魔。食い散らせアクーラ。
アーサー:ギャアァア!
ガラハッド:ガギャアァァッ!
ルドルフ:そんな・・・オレの。魔獣が・・・?
ミーシャ:つまんなぁい。もう終わり?
ルドルフ:いやだ。いやだいやだいやだ!
ミーシャ:そっか・・・じゃあね。お兄ちゃん。
ルドルフ:やめろ!やめ・・・ぎゃあぁぁぁっ!
ミーシャ:あーあ。もっと遊べると思ったんだけどなぁ。
マルリス:予定とは大幅に違ったが・・・。目的達成か・・・。
ウォリス:鎮(まもる)様に連絡を入れてきます。
マルリス:お願い。・・・ミーシャ。
ミーシャ:なぁに?お姉ちゃん。
マルリス:なぜ、私を助けた?
ミーシャ:助けた・・・?何言ってるの?遊んでたんでしょ?お兄ちゃんと。
マルリス:遊んで・・・。そうか、相変わらずなのね。ミーシャ。
ミーシャ:ねぇ、今度は僕と遊んでくれるんでしょ?
マルリス:申し訳ないけど、今はそれどころじゃないのよ。
ミーシャ:ん?そなの?
マルリス:そう、この街は今、鬼と戦争をしていてね。
ウォリス:戻りました。・・・手当てします。お嬢様。
ミーシャ:せん・・・そう?それってたのしいの?
マルリス:さぁ?どうだろうな・・・痛っ!ちょっと、ウォリス!?
ウォリス:すいません。少し痛みますよ。
マルリス:先に言えっての!いつっ!・・・とりあえず、鬼との戦闘が落ち着くまでここに・・・
ミーシャ:やだ。せっかく外に出たんだもん。遊びに行く。
マルリス:あっ!ちょっと待っ、ぐあっ!
ウォリス:お嬢様!動かないでください!重傷負っているんですよ!?
マルリス:これくらい、唾つけときゃあ治・・・んぐっ!?
ウォリス:治らないからこうやって治療してるんでしょう!?
マルリス:ちっ、ダレルと連絡は取れる?
ウォリス:はい。一応。外で待機しているかと。
マルリス:じゃあ、伝えてきて。「狂犬が外に出た」ってね。
ウォリス:了解。・・・動かないでくださいね。
マルリス:わかったから。行ってきて。
ウォリス:はい。それでは。
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謎の男 :ひどい有様だな。ここまでやられるとは。さすがに無能が過ぎる。四名家もこの程度か。
これは、うまくやらないとマズいかもしれないが・・・。
にしてもだ。いつまで寝ているんだ?死体のフリはもうやめていいぞ?
女中 :あっそう。あーしんどかった。・・・全く。もう少し、出来るんじゃないかと思ったのだけど。あのバカ。雑魚過ぎない?
謎の男 :ああ、私としても予想外だったが・・・腹に穴が開いているぞ?
女中 :あぁ、これ?アヴィラ家の当主代行に開けられたのよ。これくらい、ほっとけばすぐに治るって。
謎の男 :そうか、災難だったな。早急に塞がることを祈るよ。
女中 :他人事みたいに言って。災難どころじゃないんだって。
こぉんな幼気(いたいけ)な女中を盾に使うなんて。あの無能、ほんっとありえない。ぶっ殺してやりたい。
謎の男 :ふん。もう死んでるぞ?それによく言う。お前も人のことは言えないクチだろうに。
女中 :あ、ひどぉい。まだ私の方が愛嬌がありますから。ま、そんなことは置いといて。これからどうするの。総統閣下?
謎の男 :その名で言うな。ここには御忍びで来ているんでね。
女中 :はいはい。それは失礼。それで?私はなにすればいい?また、魔族どもに混じって女中ごっこ?
謎の男 :いや、本部に一度戻れ。今回の作戦は成功した。
女中 :成功?失敗の間違いじゃないの?
謎の男 :いいや、成功だよ。魔族の結託を促すことが今回の目標ですからね。
女中 :結託?そんなことを許したら外がざわついて・・・。あぁ。
謎の男 :気づいたか?それが目的。ざわつけばざわつくほど、奴らは窮地に追いやられる。・・・奴らを潰し、この世から排除するのが我らの目的だからな。
女中 :そうね。そうでした。それじゃ、先に帰らせてもらうから。シャワーも浴びたいし。・・・英知の剣の御心のままに。
謎の男 :人前に出るときは腹は隠せよ。英知の剣の御心のままに。
女中 :はいはーい。
謎の男 :これからだぞ。夜の王。今は、この騒乱に奔走していればいい。
ウォリス:次回予告
女中 :ルドルフの死が伝わる
謎の男 :思惑が崩れてゆく中、描いた絵図(えず)は姿を変える
ミーシャ:Night/Knight 第22話 思惑と現実の偏差(へんさ)
女中 :権力を願った者の果て。それは、朱(あか)に沈んで。
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