Night/Knight 第18話 冬虫夏草 作:福山漱流

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♂魁村 輝久(かいむら てるひさ) :鬼島組 直参 魁村組 組長。インテリタイプで神経質。見た目30代前半。
                元々二次団体の組だった魁村組を一代で直系にまで押し上げた実力者。吸血鬼と同盟を結び、鬼島家の転覆をはかっている。

♂鬼島涼(きじま りょう):鬼の一族を統率する組織『鬼島組(きじまぐみ)』の組長。人間界では17歳と偽っているが200歳を優に越えている。
             楽観的で浮ついた性格だが、仲間思い。ヘブリニッジを統括していた鬼の一族、鬼島家の現当主。

♀魄稜 摩季(はくりょう まき) :鬼島組直系 魄稜会 会長。妖艶であり、頭の回る狡猾な女性。見た目30代前半。
                 実力のみでのし上がってきたタイプで、高い向上心を持つ。

♂夜巳鎮(やみ まもる):純血の吸血鬼。見た目17歳くらいだが、実年齢は200オーバー。感情の起伏が浅く、常に怒っているように思われる。

♀水原 裕美(みずはら ひろみ):夜巳に仕える吸血鬼。20代の見た目をしている。人間との混血である故に、捨てられて居たところを鎮に拾われる。
                瀟洒で人付き合いの良いタイプ。

♀鬼島 美嘉(きじま みか):涼の双子の妹。いささかブラコンの気がある、小悪魔少女。
             15歳と偽っているが兄と同じく200歳を越える。
             輝久の悪事に気付き、止める為に独自行動した結果、罠にかかってしまい虜囚の身となる

♂魁村 輝久:
♂鬼島涼:
♀魄稜 摩季:
♂夜巳鎮:
♀水原 裕美:
♀鬼島 美嘉:
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涼 :突然の招集だな。輝久。

摩季:なになにぃ?何の用事ぃ?

輝久:申し訳ありませんね。しかし、急を要する事案と考えましたので。
   ・・・犀魏(さいぎ)は?

涼 :療養中だ。アヴィラにやられた傷が治りきっていない。

摩季:あらあら。かわいそー。・・・あ、そういえば美嘉ちゃんと西魅(にしみ)さんもいないじゃない。

涼 :西魅さんは、明後日の戦争に向けて、協力者を募っている。鬼島組の総戦力では心もとないと。美嘉は・・・体調不良だ。

輝久:ふむ・・・では、しかたありませんね。ここにいる人のみで始めましょう。

涼 :それで、本題はなんだ?輝久。

輝久:はい。数日前から吸血鬼側からの休戦協定の通達がいくつか届いています。

涼 :それか。無視するように言ったはずだが?

輝久:ええ、それは守っております。確認ののち、廃棄しているのですが、その中に一つ気になるものが混ざっていまして。

摩季:気になるもの・・・?

輝久:こちらです。

涼 :ふん?・・・普通の手紙だが?送り主は無いが。

輝久:中を確認していただけますでしょうか?

涼 :中・・・?・・・・っ!?こ、これ・・・は・・・。

摩季:・・・何があったの?

涼 :これは・・・なんだ・・・?(怒りに震える)

輝久:頭首様。答える前に1つ、質問をさせてください。若頭である妹君、鬼島美嘉。本当に体調不良なのですか?

涼 :くっ!

摩季:ちょっと!二人で勝手に話を進めないでよ!話が全く見えないのだけど!?

輝久:失礼しました。魄稜さん。・・・頭首、その手紙を魄稜さんに。

涼 :・・・ほら。

摩季:ん?一体なに・・・が・・・。こ、これって。

輝久:脅迫文です。我らが頭首へ向けた脅迫文。「若頭の命を助けたくば、こちらの話を聞け」と。

摩季:ちょっと!涼君!ここに書いてあることは本当なの!?

輝久:頭首。若頭は、体調不良で欠席された訳ではないのですよね?

涼 :・・・ああ。そうだ。

摩季:っ!?そんな。

涼 :美嘉は先日から行方不明だ。夜間に部下二人を連れて失踪している。

輝久:なぜ、それをお隠しに?

涼 :士気にかかわるからだ。若頭が戦争を目の前に消えたとなったら全体の士気が下がる。

摩季:でも、せめて私たち幹部には言うべきじゃないの?

涼 :言おうと思った!だが・・・くっ!

輝久:西魅さんに止められたのですね?

摩季:・・・どういうこと?

涼 :西魅さんは内通者を恐れていた。「一枚岩じゃない現状の鬼島組。それの瓦解を画策する者がいるかもしれない」と。

輝久:なるほど・・・。

摩季:今の私からしてみると、そういった動きをしている西魅さんの方が裏切者っぽくみえるんだけど。今この場にいないし?

輝久:ですが、短絡的に決めつけてしまうのは得策ではないと思いますが?証拠がありません。

摩季:でもさぁ?こういうことがばれそうになったから火消しに回ってるとも考えられなくもないじゃない?

輝久:それは・・・。でも、だからといって・・・。

涼 :やめろ!!(遮って)今ここで誰かを疑うために会を持ったんじゃないだろう!!(怒鳴る

摩季:そ・・・そうだけど・・・さ?

輝久:・・・ふぅ。失礼いたしました。頭首。

涼 :で、輝久。これを俺に見せて、美嘉のことを聞いて。どういうつもりだ?

輝久:実は・・・、誠に勝手ながら、私共の方で動かせてもらいました。

摩季:それって、相手とコンタクトを取ったってこと?

輝久:はい。事後承諾になり申し訳ないのですが。

涼 :・・・相手は、誰だ。

輝久:配下の者だったので、誰とは。しかし、吸血鬼の者でした。

涼 :どこの家だっ!?

輝久:落ち着いてください。頭首。すべてお話しいたしますから。

摩季:美嘉ちゃんが心配なのはわかるけど、先走ると厄介なことになるから、さ。落ち着いて、涼君。

涼 :ふーっ・・・ふーっ・・・。ふぅ・・・。すまない。輝久。摩季。続けてくれ。

輝久:はい。それでは。コンタクトを取った相手の要求はこうでした。
   1つ、『三日後に迫る戦争を取りやめること。』
   2つ、『鬼の連続殺害事件の調査に関して横槍を入れないこと。』
   そして、3つ目に・・・うむ・・・。

摩季:勿体ぶってないで言いなさいよ。

輝久:それが・・・言いにくいのですが・・・

涼 :いい。言え、輝久。

輝久:それでは。3つ目に『鬼島組頭首、鬼島涼の解任と鬼島組の解散』と。

摩季:・・・ちょっと、なにそれ?バカにしてるのにも程があるんじゃない?

輝久:もちろん返答は保留にしています。こんな条件飲めるわけがないので。

涼 :・・・なぁ、輝久。

輝久:何でしょう?

涼 :ソイツに会うことはできるか?

摩季:ちょっと、涼くん!それはマズいって。

涼 :俺が直接出向いて殺してやる。すべて話させた後に、この世の全ての地獄を味わわせて殺してやる。

輝久:お気持ちは理解しているつもりです。ですが、おやめください頭首。

涼 :なぜだ!?

輝久:仁義に反するからです。

涼 :仁義を通してないのは奴らだ!こんな外道な真似をしてっ!美嘉をっ・・・!

輝久:だとしても、ここは押さえてください。頭首。感情のまま刃を抜けば、我らが悪となります。

涼 :悪だろうがなんだろうがかまわない!俺はっ!今、どうしようもなくブチ切れてるんだよっ!!

輝久:ならば頭首は無益に我らを殺すおつもりですかっ!!

涼 :なっ!?

輝久:今、義憤に任せ、剣を抜いて吸血鬼と戦ったとしましょう。あわよくば若頭を助け出すこともできるでしょう。
   ですが、その際に流れる我らの血や命はたったそれだけのために流され無駄に消費されることになるのです。

涼 :美嘉の命を救うのに無駄というのかっ!?

輝久:ええ。もちろんです。つりあいません!

涼 :そんなはずはない!

輝久:では、考えてみろ!たとえ勝って、このヘブリニッジすべてを手に入れたとして!
   ただの怒りで期日の約束を反故にし!自らの怒りで蹂躙した主に誰が付いてゆくの言うのか!

涼 :それはっ・・・

輝久:怒るのはわかりますが頭首。どうか利口に動いてください。
   我らの命は鬼島組の繁栄のために。鬼の一族の繁栄のためにあるのです。
   リスクと対価。その二つをしっかりと見極めてください。

涼 :わかっている・・・わかっているけどっ・・・

摩季:落ち着いて考えようよ。涼くん・・・じゃなかった頭首。
   考えたんだけど、若頭ってそうやすやすと殺せないでしょ?向うにとっては。

輝久:というと?

摩季:ようは弾除けよ。ふつうの立場だったらいざ知らず、美嘉ちゃんって一応、幹部だからね。
   戦争になったとしても、この脅迫状の差出人が自分だけ逃げようとしたとき、美嘉ちゃんがいたら?

涼 :こっちは手が出しづらくなると?

摩季:そうそう。派手にしか動けないウチらだからね。助けだそうなんてやっても美嘉ちゃんの命を保証するようなやり方はできないから。

輝久:まぁ、否定はしません。

摩季:それに、逃げるんじゃなくてもさ。最終決戦とかで相手方の士気が下がってるときとかでも使えるしね。
   
輝久:処刑の餌にして。士気高揚を図ると?

摩季:その通り。だからさ。昨日の今日で美嘉ちゃんがすぐに殺されるとは考えられないのよね。
   まぁ、あと言いにくいけど・・・それなりにかわいい女の子だし、ね?

涼 :美嘉を・・・見捨てないといけないのか・・・。

摩季:見捨てるんじゃなくて・・。えっと・・・そう!すこーし我慢してもらうって感じ?
   命さえあれば、どうとでもなるしさ。

輝久:私も、同意見です。先ほど言葉は過ぎてしまいましたが、述べたとおりです。
   鬼の一族のため、ここは若頭にも耐えてもらわねばならないかと。

涼 :ちくしょうっ・・・っ!

摩季:自分を責めるばっかりじゃだめよぉ?悪いのは向うなんだし。
   責めるなら向う。時が来たらね?

輝久:では、一応これでまとめということで。鬼島組としては吸血鬼が出した条件は飲まない。
   若頭には今しばらく辛抱してもらい、期を見て救出するということで。

摩季:異論はないわ。私はね。

涼 :・・・わかった。

輝久:では、今日ここで話したことは内密に。犀魏には・・・言わない方が賢明ですかね。

摩季:あれは単純だからすぐ喧嘩を売るし、よくないと思うわ。

輝久:ならば、明後日。戦争開始の直前に伝え、大きな破壊を防ぐようにと通達します。

涼 :任せる・・・輝久。

輝久:はい。・・・心労祟る話を申し訳ありませんでした。

涼 :大丈夫。ありがとう・・・。信頼してる、輝久。

輝久:はい。ありがとうございます。

摩季:んじゃ、ここは解散ね。明後日に向けて私も準備しておかなくっちゃ。

輝久:そうですね。そうしましょう。今日はご足労いただき、ありがとうございました。

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鎮 :裕美。

裕美:はい。なんでしょう?マスター。

鎮 :鬼島組の動きは今どうなっている?

裕美:街ゆく鬼たちの話によれば、鬼の領内で反鬼島派が起こした乱闘事件があったことと、明後日へ向けて戦争の準備を進めていると。
   それと・・・これはあくまで噂なのですが。

鎮 :噂?なんだ?

裕美:鬼島組若頭である鬼島美嘉が行方不明と。

鎮 :行方不明だと?

裕美:はい。数日前から姿が見えないと。

鎮 :失踪する原因は?

裕美:特にないそうです。一部では、吸血鬼に拉致されたのではという話も。

鎮 :拉致・・・か。そんな動きを見せたところはあるか?

裕美:いえ、特に。ターク家、アヴィラ家はもちろん。黒幕に近いシモーヌ家でさえそのような動きはないです。

鎮 :そうか・・・。ならば、鬼の中でのいざこざか?

裕美:そう推察するのが妥当かと。

鎮 :しかし、厄介の種がまた1つ増えたわけだな。

裕美:さらに情報を探しましょうか?

鎮 :いや、変に勘繰られてもマズい。こちらは静観しよう。

裕美:承りました。

鎮 :・・・明後日か。

裕美:はい。明後日です。

鎮 :どちらかが倒れるまでの戦争になると思うか?

裕美:おそらくは。

鎮 :そうか・・・。この公園であの時話した通りになったか。

裕美:涼様が、鬼島家を継ぐと宣言されたときですね。

鎮 :融和を求めていたあいつが、宣戦布告してくるとは思わなかったが。

裕美:人は、変わるものです。

鎮 :フン、変わるにしては早い心変わりだったがな。

涼 :おいおい。人の悪口を言うのはよしてくれって。

鎮 :・・・涼か。

裕美:マスター。(庇うように鎮の前に出る

涼 :あー。やっぱ、そうなるよな。

鎮 :裕美。いい。

裕美:・・・はい。(下がる

鎮 :なんの用だ。涼。

涼 :なあ、鎮。1つ質問していいか?

鎮 :なんだ。

涼 :お前は、明後日どうするつもりなんだ?

鎮 :もちろん。戦う。

涼 :そう・・・だよな・・・。なぁ。

鎮 :二つ目の質問か?

涼 :あ、ああ。・・・お前、誘拐とかって命令したか?

鎮 :なんのことだ?

涼 :あ、いや・・・。なんでもない。忘れてくれ。

裕美:マスター。もしや。(鎮に耳打ちする)

鎮 :ああ、どうやらあの件だろう(耳打ちをする)

涼 :な、なぁに二人でこそこそ話してんだよ。ずりぃぞぉ?仲間外れは

鎮 :すまないな。すこし、この後、用があってな。

涼 :あ、そうか・・・。悪い。

鎮 :それよりも、不用心だぞ。涼。中立地点にある公園とはいえ、護衛もつけずに歩くとは。

涼 :それを言ったらお前も・・・ってそうか、裕美ちゃんって戦えるもんな。

裕美:はい。マスターには及びませんが。一応、心得はあります。

涼 :いいなぁー。うらやましいぜ。お前。

鎮 :お前には妹がいるだろう。心強い味方と言っていた。・・・今はいないようだが。

裕美:マスター。それは・・・

涼 :あ、ああー。そうだな。うん。そうなんだけどよ。今、ちょっと体調崩しててな。
   まったく、こんな大変な時期に体調不良とかマジないわー。

鎮 :フン・・・そうか。それは大変だな。
   だからといって、明後日は容赦などしないがな。

涼 :おいおい。お手柔らかに頼むぜー?

鎮 :くだらない。それよりいいのか。こんなところで油を売っていて。

裕美:ここで私たちと話していることは、そちらにとっては不利益なのでは?

涼 :おいおい。冷たいこと言うなって。まぁ、マズいのはマズいんだけどさぁ。

裕美:では、何用でここにおられるのですか?

涼 :裕美ちゃん。前から思ってたけど、怖いのな。こういう時のキミって。
   ・・・いや、さ。ちょっとお前らと話したくなってな。

鎮 :話?

涼 :そ、世間話。昔みたいなさ、くだらねーこと言い合って笑うって感じの。
   明後日には血を流しあわないといけないってのはわかってるつもりだけど。

鎮 :いつからお前はセンチメンタリストになった?

涼 :ほら。オレってば繊細だから。

裕美:繊細・・・でしたでしょうか。

鎮 :鈍感の間違いじゃないか?

涼 :おいおい。ひっどいなー。もっと優しくしてくれよ。

裕美:剣を抜かないだけ、優しいと思いますが?

涼 :ははー。そーなるよねぇ。やっぱ、戻れないかー。

鎮 :言ったはずだ。一族を率いる立場では友人だとかは通用しない。

涼 :わかってる。わかってるさ。今は敵同士。ってのもな。

裕美:・・・和解はできませんか。

涼 :ぶっちゃけ、オレはしたい。けど、それがまかり通る状況は過ぎちまった。

裕美:そうですか・・・。

涼 :鎮。約束してくれ。

鎮 :なんだ?

涼 :明後日。本気でオレとぶつかってくれ。

鎮 :真剣勝負をしたいと?

涼 :ああ。オレも本気でぶつかるから。

鎮 :いいのか?俺はお前を殺すぞ?

涼 :おう。負けないぜ。

裕美:決闘をなさるおつもりですか。

涼 :まぁ、そんなとこさ。早めにケリつけたいだろ?
   なんなら、裕美ちゃんが仲介人になってくれてもいいぜ?

裕美:お望みなのでしたら。

涼 :なら、助かるなー。

鎮 :そろそろいいか?茶番をしている場合じゃないだろう?

涼 :あ、ああ・・・そうだな。うん。んじゃ、鎮。明後日。この場所で会おうぜ。

鎮 :フン・・・、わかった。

涼 :じゃ、またな!鎮。

裕美:・・・まるで遊ぶ約束をする子供のようですね。

鎮 :器じゃなかった。

裕美:マスター?

鎮 :あいつには荷が重すぎた。それだけだ。

裕美:手心はくわえないので?

鎮 :そのつもりはない。正面から行く。

裕美:わかりました。

鎮 :裕美。

裕美:はい。なんでしょう?

鎮 :美嘉の件。少し探ってみろ。なにか、手がかりがあるかもしれない。

裕美:黒幕の・・・ですか。

鎮 :涼の口ぶりなら、本当に行方不明なんだろう。そして、疑いはこちらに向いている。

裕美:黒幕に近づく鍵が、誘拐事件と・・・。

鎮 :難しいが、頼めるか。

裕美:はい。お任せください。

鎮 :無理はするなよ。

裕美:はい。ありがとうございます。

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美嘉:はぁ・・・はぁっ・・・ぐっ・・・づっ・・・あぁっ・・・

輝久:いい姿ですねぇ。若頭?

美嘉:てる・・・ひさ・・・

輝久:へぇ?まだ、意識を保っていられますか。素晴らしい根性です。

美嘉:ふざけ・・・ないで。私が、こんなことで・・・

輝久:魔力を自然放出してしまう特殊な体質。・・・そんな貴女が無理をしているのはお兄様のためですか?

美嘉:私の・・・体質まで知ってるとはね・・・。

輝久:もちろん。すべて把握し、自分に利があるように動く。それが私の行動理念でして。
   しかし・・・辛いでしょう?整えようとしても、無理やり魔力を吸い取られる感覚は。

美嘉:ハッ・・・。馬鹿言わないでよ・・・。これくらい、なんとも・・・

輝久:なら、もう少し、強く吸い出しますか。このように。

美嘉:あがぁぁぁぁぁぁっ!?

輝久:門の外から取り寄せた特殊金属でできた手錠です。貴女にとって拷問器具にもなる天敵。

美嘉:がっ・・・はひっ・・・あぐ・・・

輝久:もうギブアップですか?まだまだ低レベルの魔力の吸い上げなのですが?

美嘉:ふざけるのも・・・いい加減に・・・

輝久:え?なんですか?きこえませんねぇっ!

美嘉:あっがぁぁぁぁぁっ!!

輝久:私に対して、口の利き方には気を付けた方がいいですよ?若頭。
   貴女の生死は私が握っているようなものなのですから。

美嘉:はぁっ・・・はぁっ・・・。絶対に・・・殺す・・・。

輝久:できるものなら、やってみてください。今すぐにでも。ほらぁ?

美嘉:くっ・・・貴様・・・

輝久:ま、できませんよねぇ?その拘束じゃ。
   それに、たとえ今、外れたとしても、抵抗する魔力もないですし?

美嘉:今に・・・見ていろ。お前の・・・思惑は・・・

輝久:破たんすると思いますか?今まで綿密に練ってきたのです。
   簡単に壊れるほど、やわな計画ではないのですよ。

美嘉:その、自信・・・。命取りにならないといいな・・・。

輝久:ふん。こう見えて暴れ馬の調教は得意な方でしてね。
   ・・・ああ、そうそう。いいことを教えてあげます。

美嘉:どうせ、ろくでもないことを・・・

輝久:今、鬼島組は私の手に落ちました。

美嘉:なっ!?

輝久:ま、完全にとは言えないですがね?
   貴女のお兄様、頭首から現在、私は特に信頼されているようでしてね。

美嘉:そんなはず・・・っ!

輝久:今日も怒りに我を忘れた頭首様をお諫めしてきたところなのでね。
   
美嘉:貴様っ・・・また、なにか狡い手を・・・つぐあぁっ!!

輝久:おっと、手が滑ってしまいました。申し訳ない。大丈夫ですか?若頭。

美嘉:ワザと・・・やっている癖に・・・

輝久:さぁ?どうでしょう?
   で、若頭の質問ですが、狡い手など使っていません。
   ただ、貴女を誘拐した犯人からの脅迫状で、思わず我を忘れた様でしたので、なだめ諭したのですよ。

美嘉:下種が・・・。私をダシに使って・・・っ

輝久:そのために生かしているんです。よかったですねぇ?ムダに権力があって。

美嘉:覚えていろ。輝久・・・。私は、絶対に貴様をっ・・・。

輝久:ははっ!いつまでその強気が保てるか見ものですねぇ?
   ・・・もう、限界が近いのでしょう?(囁く

美嘉:やめろっ!

輝久:さっきので、生命維持に支障が出ないレベルでの魔力を、全て吸い出してしまったはずですからねぇ?
   今、貴女は気丈にふるまっていますが・・・。辛いんじゃないですか?

美嘉:そんな・・・ことはっ・・・

輝久:若頭。私も、そこまで鬼畜じゃあない。もし、貴女が私にかしづき、頭を垂れるのなら・・・。

美嘉:こと・・・わる・・・っ!

輝久:おやおや、そうですか・・・。

美嘉:お前に、従うなど・・・。泥水をすするよりも、虫唾が走る。

輝久:ま、いいでしょう。考える時間を差し上げますよ。この檻の中でじっくりと考えてみてください。
   ああ、そうだ。最後に貴女の部下についても教えて差し上げましょう。

美嘉:っ・・・。まさか、蒔絵(まきえ)と瑞枝(みずえ)にまでなにかしたわけじゃ・・・

輝久:私はなにも?ちゃんと二人とも生きてます。五体満足にね?
   ですが・・・、いかんせんウチの組は男所帯でしてね。
   私の統率が利かない若い奴らもいるんですよねぇ?

美嘉:輝久ぁっ!貴様っ!私の部下に手をかけたらっ・・・があぁぁぁっ!?・・・か・・・はっ・・・はひっ

輝久:そんな恐ろしい声を出さないでくださいよ。ま、安心してください、ちゃんと生かしはしますから。
   『生かしは』、ね?

美嘉:ふざ・・・け・・・るな・・・。

輝久:はいはい。わかってますよ・・・うん?意識を失いましたね。すこしやりすぎましたか。
   さてと。もっとお話しして差し上げたいのですが、次の用事がありまして。
   では、若頭。また後でお話ししましょう。それでは。

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摩季:次回予告

裕美:ついに戦闘の火ぶたが切って落とされる。

涼 :そして一番槍同士の衝突が始まる。

鎮 :次回 Night/Knight 第19話 暴龍 対 狂騎士(きょうきし)

輝久:力と力の対決。それは、激しき調べ。






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