Night/Knight 第17話 怒りの矛先 作:福山漱流

タイトル画像

マシュー・フランクリン:22歳。聖十字協会の魔術師。爵位は無し。
            新米魔術師であり、ブランドンの部下としてヘブリニッジに派遣された。
            使用魔術は基礎的なものを幅広く扱い、威力も平均的。典型的な知性派であり、近接戦闘には向かない。
            優等生タイプで、頭もよく回るが、ルールに縛られやすく、柔軟に対応できない面を持つ。      
      

ブランドン・マールスフェルト:20代後半。聖十字協会所属の魔術師。男爵の爵位を持つ。
               鎮とは腐れ縁のライバルであり、しょっちゅう小言をいう保護者の様な存在。
               術式形態はアゾット剣を用いた魔術を織り交ぜた近接攻撃。及びアゾット剣に封印された人工魔獣をつかったもの。

マリアン・グロリア・シサリーザ:20代後半から30代。聖十字協会所属の魔術師。伯爵の爵位を持つ。
                聖十字協会の幹部であり、普段の仕事はもっぱらのデスクワークである。
                ブランドンの直属の上司。若くして聖十字協会の幹部となっただけあり、頭の回る策師。
                普段は飄々としているが、締める時には締める抜け目ない人物。
                結界術に長け、護身術式である結界術であっても中位魔族相手に苦戦しないほど。

マルリス = アヴィラ:純血吸血鬼であり、吸血鬼界の名家『アヴィラ家』の子女。見た目18歳くらいの少女だが、実年齢は200オーバー。
           生粋のお嬢様であり、口調もお嬢様。しかし、怒ると地が出てしまい荒い口調になる。

ダレル・ハイド:吸血鬼であり、マルリスの側近。ヘブリニッジの治安維持を務める『アヴィラ家』の重役。筋骨隆々の大男。
        見た目30代後半。荒事対応や事件現場整理などの外役の責任者を務める。
        荒っぽい口調だが、身内に対して義理人情の厚い人物。

ウォリス・ヒューズ:吸血鬼であり、マルリスの側近。ヘブリニッジの治安維持を務める『アヴィラ家』の重役。細身の男性。
          見た目、30代前半。事務処理や、情報管理などの内役の責任者を務める。
          折り目正しい人物だが、神経質が欠点。

♀マルリス:
♀マリアン:
♂マシュー:
♂ブランドン:
♂ダレル:
♂ウォリス:

※一同1: 表記の場所では マシュー・マリアン・ウォリス・ダレル のキャストが
※一同2: 表記の場所では マシュー・マリアン・ブランドン のキャストが ガヤをお願いします。
========================================

マルリス :では、ウォリス。約束通りすべて話してもらうぞ?

ウォリス :・・・はい。

マルリス :まず、何をさせられていた。

ウォリス :吸血鬼と鬼の一件について、調べが付いたことや、シモーヌ家に関しての情報操作を。

マルリス :ほう・・・?それは、だれの指示だ?

ウォリス :ルドルフ・シモーヌ様に

ダレル  :様付けかよ

ウォリス :俺は、あの人に拾われて今があるんだ・・・。逆らえない。

ダレル  :だからって!今の家をないがしろにしていいってか!?ああ!?

マルリス :ダレル。やめなさい。

ダレル  :ちっ!

ウォリス :ないがしろにするつもりは毛頭ない。・・・俺は、アヴィラに忠誠を尽くすと決めた。
      だから、ここにいる。それは、信じてほしい。

ダレル  :口先ではなんとでも・・・

マルリス :ダレル!いい加減にしろ!

ダレル  :わかったよ。黙ってる。

マルリス :脇道に話がそれた。
      ルドルフの指示に従ったのはなぜだ?

ウォリス :先ほど言った通り、私はアヴィラ家に来る以前はルドルフ様に仕えていました。
      その、ご恩を返すため。

マルリス :それだけか?

ウォリス :・・・はい。

マルリス :これは、少々小耳にはさんだ話なんだがなぁ?ウォリス。
      メリン・フォレル。この名前、聞いたことがあるだろう?

ウォリス :っ!それは・・・っ!どうして・・・っ!

マルリス :ウチの情報網を舐めるなよ?ウォリス。これくらいすぐに調べがつく。
      ・・・ダレル。

ダレル  :メリン・フォレル。32区居住。198歳。混血吸血鬼。職業は娼婦。
      ルドルフの経営する売春宿『スリーピィ・ゴート』従業員。
      魔界居住時には、シモーヌ家の下仕え(したづかえ)をしていた。

マルリス :そして、魔界での生活地区はお前が住んでいた辺り・・・魔界でも一等貧困なスラムに居たそうじゃないか。
      いわゆる、幼馴染・・・というやつか?

ウォリス :・・・・はい。

マルリス :ふん・・・。ここからは、私の勝手な推測だが・・・。
      ウォリス。この女と良い仲なんだろう?

ダレル  :・・・はぁっ!?

マルリス :なんだ、ダレル?気づいてなかったのか?

ダレル  :え?いや・・・えぇっ!?おま・・・そうだったのか!?

マルリス :で。どうなんだ?ウォリス。当たりか?

ウォリス :・・・はい。恥ずかしながら

マルリス :そんなことだろうと思った。
      ルドルフの奴はそれを知ってて、お前を使ったわけか。
      お前の忠誠心と、恋人の命を質に取ったと。

ダレル  :ウォリスに・・・彼女・・・マジか・・・

マルリス :なかなかに下種なことをするじゃないか。ルドルフの奴は。

ウォリス :・・・家を裏切り。申し訳ありません。
      この罰は如何様にされても文句はありません。命をというのでしたら、すぐに。

マルリス :ばぁーか。

ウォリス :・・・は?

マルリス :テメェの命なんか要るかよバァーカ。どうしたウォリス。ルドルフとつるみすぎて頭が弱くなったか?

ダレル  :お、お嬢・・・口が悪くなってきてる・・・ぞ?

マルリス :うるせぇ!だまってろ。

ダレル  :お、おう・・・。

マルリス :お前がクソがつくほどに忠義心に厚いのはよく知ってる。んなやつが簡単に家を裏切るなんて思えなかった。
      だから、私は手間をかけてまで色々と調べた。

ウォリス :はい。ですからその贖罪を・・・

マルリス :いらねぇっつってんだろ。お前は今回被害者で、加害者なのはあのクソ蛆虫野郎のルドルフだ。
      落とし前は奴からもらう。お前からじゃない。

ウォリス :お嬢様・・・。

マルリス :ダレル。私の部屋から制服をもってこい。速攻でだ。

ダレル  :お、おう・・・あれか。わかった。

ウォリス :お嬢様。無礼なお願いだとは承知しております。ですが、これだけは言わせてください。

マルリス :なんだ?

ウォリス :どうか、シモーヌ家に対して攻撃はしないでください!

マルリス :それはできない。

ウォリス :どうしてです!

マルリス :わかってるだろ。私が今、一番頭にキテるからだよ

ウォリス :っ・・・!(気圧される

ダレル  :お嬢。持ってきたぞ。

マルリス :ありがとう。・・・よいしょっと。

ダレル  :お、おい!お嬢!?ここで着替えるのか!?

マルリス :見てわからないか?

ダレル  :せめて、着替えるなら人目のないところで・・・

マルリス :るっせぇな!時間がねぇんだよ!それにお前ら!私よりも良い身体の女の裸見てきてんだろうが!

ダレル  :いや、その・・・。そうじゃなくてだな、一応、ほかの奴らの目もあるわけで・・・。

マルリス :つべこべ言わずに次々に服よこせ、ったく。

ウォリス :お嬢様。もしや・・・

マルリス :っしょと。察しの通りだよ、ウォリス。これから粛清に行く。
      シモーヌ家を血祭りに上げてやる。
      ダレル。見回りに出ている全ユニットすべてを戻せ。総攻撃の準備だ。

ダレル :おう、了解だ。

ウォリス:やめてください!お嬢様!どうか、それだけは・・・

マルリス:いや、やめない。私の家族に手をだしたらどうなるか。きっちり教え込んでやる。

ウォリス:っ!・・・家族・・・。

マルリス:そうだ、家族だ。アヴィラ家に所属する皆はすべて家族だ。構成員の恋人に至るまでな。
     ・・・安心しろ。メリンの身柄もしっかり押さえる。無事にお前の前に連れてくる。


======================================



マシュー :ふあー。・・・おはようございます。ブランドンさん。

ブランドン:おう、起きたか。つってもまだ3時だけどな。

マシュー :ブランドンさんは、寝てないんですか?

ブランドン:軽く寝たけどな。1時間くらい。

マシュー :それ、寝た内に入るんですか?

ブランドン:ま、大丈夫大丈夫。

マリアン :時に諸君。ここを開けてくれないか。

マシュー :あ、はーい・・・って、えぇっ!?ね、猫が喋った!?

ブランドン:おう、シサリーザか。ほれ、マシュー。入れてやれ。そいつはシサリーザの使い魔だ。

マシュー :は、はい!ど、どうぞ。シサリーザ卿。

マリアン :すまんね。・・・相変わらず狭い部屋だな。

ブランドン:うるせぇ。悪かったな。

マリアン :そんなことはどうでもいいか。・・・あ、マシュー。

マシュー :は、はい!

マリアン :ミルクはあるか?

マシュー :あ、はい。ありますけど・・・。

マリアン :一杯いただけるかい?できればひと肌程度にしてくれ。

マシュー :え?えと・・・はい!ただいま!

ブランドン:で?ミルクをねだりに来たわけじゃねぇんだろ?

マリアン :もちろん。定期連絡をもらいにな。

ブランドン:あ?こないだ「犬」をやったろ?

マリアン :それは三日前のことだろ?その後の情勢はどうだい?

ブランドン:相変わらず。動きはねぇ。・・・そっちは?

マシュー :お、おまたせしました!

マリアン :すばやいな。ありがとう。
      ・・・それがだな?内部に探りを入れたんだが、なかなかに面白いことになってるぞ?

マシュー :といいますと?

マリアン :今回の鬼と吸血鬼の一件。どうやら本格的に封滅騎士が絡んでいる。

マシュー :・・・封滅騎士が?

ブランドン:うわ。やっぱりか。

マリアン :封滅騎士団所属の魔術師がこの街へ出たり入ったりしているのはもちろんなのだが。

マシュー :それ以外にもなにか?

マリアン :封滅騎士の何人かが、鬼島組の下部組織「魁村組(かいむらぐみ)」や四名家「シモーヌ家」の配下に接触している。
      どうとでも言い訳のしようはあるだろうが。疑うには十分な証拠だ。

ブランドン:確かに。

マリアン :プラスして言うと。・・・この件に総統も絡んでいる可能性が出てきた。

ブランドン:・・・は?

マシュー :総統って、あの封滅騎士団 統括総統です?

マリアン :それ以外に何がある?

ブランドン:はあぁぁぁっ!?トップじゃねぇか!ありえん!

マリアン :それがあり得ているんだよ。というより考えようによっては、奴が主体でコトを起こしているといっても過言ではないだろうな。

ブランドン:厄介だ・・・厄介だ厄介だ厄介だぁぁぁっ!

マシュー :さ、錯乱しないでください!落ち着いて!ブランドンさん!

ブランドン:あのクレメント・アッカーソンだぞ!?落ち着けるかっての!

マリアン :策謀将軍と名をはせた奴が黒幕となると、いくらお前でも気が引けるか。

ブランドン:当たり前だ!どこに奴の目や耳があったもんかわからねぇんだぞ!

マシュー :そんなにすごい人なんです?

ブランドン:すごいってモンじゃねぇ。あれは鬼畜だ。悪魔だ。
      目標達成のためなら味方の犠牲はお構いなし。たとえ、そこで一般人が犠牲になろうとも「コラテラル・ダメージ」の一言で終わらせる。
      
マリアン :そのうえ、人をたぶらかすこと、脅すこと。飴と鞭の使い分けに長けて、自分の立ち位置をしっかり見極める曲者ときた。
      まぁ、裏を返せば、だ。そういったことが出来るからこそ、あの歳で封滅騎士 統括総統になっているんだろう。

ブランドン:ぜってぇ奴とはお近づきになりたくねぇ。頼まれても願い下げだ。

マシュー :でも、一応味方ですよね?

ブランドン:味方ぁ?

マシュー :だって、封滅騎士団と聖十字協会は母体団体は一緒ですよ?

マリアン :ぷっ・・・あはははっ!

マシュー :え?あれ?

マリアン :マシュー。いいことを教えてやろう。たとえ、母体が同じでも思想が同じとは限らない。
      そして、思想が異なれば、活動方針もおのずと異なる。
      我らは魔族と共に歩む道を模索するが、奴らは違う。撃滅することに意義を見出している。

マシュー :撃滅・・・。

マリアン :理解が及ばんのだろうよ。魔族たちがもたらしてくれる恩恵に。
      魔術の仕組み、魔界の文化、その他いろいろが来たおかげで、今日(こんにち)の我々が過ごす生活が満たされているというに。

ブランドン:魔族に因縁があるやつらも多いと聞くからな。仕方がないのはあるが。

マリアン :しかし、恨み辛みでどうこうなるほど世の中は甘くはないさ。奴らは所詮、弱者だよ。

マシュー :弱者・・・。

マリアン :そう、力におぼれた弱者だ。臆病者だ。
      私も、それなりに魔族たちには因縁があるから、一概に切って捨てるのも心苦しいがね。
      だからといって、擁護する気にもならん。

マシュー :因縁・・・。たとえば・・・?

マリアン :んー・・・ま、それは別の機会だ。話を戻そう。
      確実に、クレメント総統が絡んでいるという実証がない訳だが、その可能性もゼロじゃない。
      この現状をどうするか。

ブランドン:封滅騎士どもの腹が見えないから、どうしようもないんだがよ・・・。

マシュー :ですね・・・。あ、そういえば・・・

ブランドン:あ?どうした?

マシュー :えと、その・・・封滅騎士の戦闘予行会っていつでしたっけ。

マリアン :たしか・・・今日と、三日後の土曜だったはずだが?

マシュー :鬼島が出した停戦期間のリミットってたしか土曜日ですよね。

マリアン :・・・まさか。

ブランドン:そんな安直な・・・クレメントらしくない。

マシュー :でも、ありえないとは言い切れないですよ?
      タイミングとしてはぴったりです。

マリアン :なにかが起こると見越しての戦闘予行会。
      警戒するべきだな。

ブランドン:なら、なんとしてでも中で納まるように仕向けないとまずいな・・・ん?

マシュー :ブランドンさん?どうしました?

ブランドン:三つ目鴉・・・。鎮の使い魔がそこにな。

マリアン :のぞき見か?奴も趣味が悪い。

ブランドン:いや、そうじゃないみたいだ。マシュー。入れてやれ。

マシュー :あ、はい。えと、窓を開け・・・うわぁっ!?

マリアン :おいおい。お前がつつかれてどうする。

マシュー :いたっ!いたいっ!僕なにもしてないのにぃっ!

ブランドン:ここは動物園じゃねぇんだぞ!ったく!
      よーしよし、どうどう・・・。手紙が付いてるな。どれどれ?・・・は?

マリアン :なにか面白いことでもあったか?

ブランドン:ま、じ、か?・・・マジかマジかマジか!!

マシュー :次はなんです?

マリアン :・・・何が書いてあった?

ブランドン:ついにマルリスが動きやがった!

マリアン :というと?

ブランドン:アヴィラ家が独自で動くつもりなんだよ。
      どうやら、身内に何かちょっかい出されたらしい。

マリアン :それは、すこし厄介だな。今、火の手が上がると街の均衡が一気に崩れるぞ。
      あと、外の封滅騎士を呼び込みかねん。

ブランドン:こっちの誘導通りにコトを進めたいんなら・・・

マリアン :介入するしかないな。

マシュー :ついにですか。

ブランドン:どうした?ビビったか?

マシュー :すこし。

マリアン :肩肘張らんでも大丈夫さ。ブランドンがうまくやる。

ブランドン:俺が全部がんばるのかよ。

マリアン :そうさ、頑張れブランドン。

ブランドン:ったくよ・・・。とりあえず、マルリスを抑えなきゃならんか。

マリアン :二人でなんとかなるかい?

ブランドン:なんとかするんだ。

マシュー :そ、そうなんです?

ブランドン:後で打ち合わせだ。ちゃんとついて来いよ。

マシュー :が、がんばります。

マリアン :では、私は本部で遠隔サポートといこう。

ブランドン:いざとなったら頼むぜ。

マリアン :ああ。任せろ。

======================================

マルリス :では、行こうか。諸君。私の家族を傷つけた責任、とってもらおう。

ウォリス :お嬢・・・様。その・・・

マルリス :あなたはここで待ってなさい。

ダレル  :お嬢。各ユニット、準備できたぜ。打ち合わせ通りだ。

マルリス :大丈夫よ。ウォリス。

ウォリス :私が、無力なばかりに・・・

マルリス :力が及ばないなら、力を合わせればいい。
      
ダレル  :一族、正義、忠道。ってね。

マルリス :アヴィラの家訓。忘れたわけじゃないわね?

ウォリス :はい。

マルリス :なら、ここで私たちの帰りを待ちなさい。
      必ず、それ相応の報いをルドルフに与えてくるから。      

ダレル  :全ユニット。聞け!マルリス頭首代行の言葉だ!

マルリス :これより、我が家族、我らが友人ウォリス・ヒューズの屈辱を拭う。
      敵はルドルフ・シモーヌ。己(おの)が欲のため、我が家族を使い、脅し、侮辱した!
      この行いは万死に値する!一同!同じ怒りを胸に、怒りの剣(つるぎ)を奴の脳天に振り下ろせ!

※一同1  :うおぉぉぉぉっ!

ブランドン:おぉっとストップだ。団体さん。盛り上がっているところ悪いな。

マルリス :ブランドン・・・。何用だ?

ブランドン:用ってなぁ?そりゃあ、なんとなく察してくれよ。

ダレル  :魔術師風情が、要らないちょっかいを出してくるんじゃねぇ

ブランドン:シモーヌと一戦やらかす気か?マルリス。

ダレル  :魔術師に答える義理はない!

ブランドン:俺はマルリスに聞いてんだ!側仕えは引っ込んでろ!

ダレル  :テメェっ!

マルリス :ダレル。やめなさい。・・・ブランドン。これは名誉の問題だ。
      私はな?今、痛烈に怒っているんだよ。ルドルフの野郎に。

ブランドン:ああ、それはわかってるつもりだ。

マルリス :だったら、そこをどけ。すぐにこの一件を終わらせて来るから。

ブランドン:断る。この一件はそう簡単に終わりはしないぞ。

マルリス :あぁ?

マシュー :ルドルフ・シモーヌは、みなさんが追う、吸血鬼連続殺害事件に関与しているからです。

マルリス :フン。弟子の噂は本当だったか。ブランドン。
      小僧、私たちを甘く見ているのか?ルドルフが例の一件に関与していることは知っている。
      それも含めて、今ここで粛清する!

マシュー :そんなことをしても、鬼との戦争がより一層避けられないものになるだけですよ!?

マルリス :鬼を黙らせるくらい、奴のクビ一つでどうとでもなる。

マシュー :そんな簡単なことじゃないんです!

ブランドン:ルドルフの野郎が、鬼の一派とつるんでることは知っているか?

マルリス :・・・・ちっ。

ブランドン:その様子だと、それとなくは知っていたようだな。
      鎮(まもる)の言葉か?

マルリス :それがどうした?

ブランドン:今は、奴らの思うように踊らされなければならん。
      物事を進めるには堪えることも必要だ。

マルリス :貴様は私の親か?それとも小姑か?

ブランドン:口やかましくもなる。外に被害が出るんならな。

ダレル  :出すつもりはない

マシュー :出すつもりはなくとも、必然的に出てしまうのがこの街と認識していますが。

マルリス :吹くじゃねぇか。クソガキ。

ブランドン:これは内密の話だがな。その例の殺害事件に外も絡んでいるんだよ。
      だから、今お前が動くと、この街にこれ以上の魔術師がなだれ込んで、一大戦争だぞ?

マルリス :外も・・・だと?ウォリス。知っているか?

ウォリス :いえ・・・。私は、何も聞かされていなかったので・・・。

マルリス :そうか・・・。

マシュー :それに、今、外では封滅騎士による戦闘魔法を用いた一般公開訓練が予定されています。
      今、下手に騒ぎを起こすと、立場が悪くなるのは門の内側になります。

ダレル  :それが嘘じゃないという証拠は?

マシュー :ありません。ですが、信じてもらうしか。

マルリス :その話が本当だとしても、私は奴を殺す。

ブランドン:そういうと思った。なら、力づくでも止めるしかないな。

ダレル  :この数を相手にか?

ブランドン:誰が全員相手にするって言った?マシュー!

マシュー :結界、最大展開!

マルリス :っ!?これは

ダレル  :ちぃっ!いつの間に・・・

ウォリス :お嬢様!ダレル!

マシュー :シサリーザ卿の作った結界です。

ブランドン:そう簡単に壊れると思わないことだな。

マルリス :断界(だんかい)の魔女め・・・厄介なものを・・・

ブランドン:さ、それじゃあ、2対2のバトルと行こう。

マシュー :何が何でも止めます!

マルリス :いいだろう。そんなに死にたいのなら・・・望み通りぶち殺してやる!(剣を片手に突進

ブランドン:ちぃっ!(剣を受け止める)
      ・・・ははっ、やっぱり速いな!

マルリス :その余裕そうな顔が腹立つんだよ!

 (ぎりぎりと押されてゆくブランドン)

ブランドン:いやいや、余裕なんてねぇ・・・よッ!

 (受け流されて態勢を崩し、よろけるマルリス)

マルリス :ちっ!うぜぇ!

 (むりやり態勢を立て直して、ブランドンの方へと突進しようとする)

ブランドン:巻き起きろ!バーン・フレイム!

  (マルリスの目の前で炎が巻き起こり、壁のように立ちはだかる。)

マルリス :ええい!厄介な炎だ!

ダレル  :お嬢!

(駆け寄ろうとするところに割って入るマシュー)

マシュー :あなたの相手は僕ですよ!

ダレル  :うるせぇ!邪魔を・・・するな!

(振り下ろすコブシの一撃。その拳に向かって魔術を放つマシュー

マシュー :スラッシュ・ウィンド!

ダレル  :ぐうっ!?詠唱なしだと!?

マシュー :あまり僕を甘く見ないことです。

ダレル  :言うじゃねぇか・・・。本気で潰されたいようだな!?

マシュー :で、できるなら。やってみてください!

ダレル  :ぶっ潰す。来い・・・ブラッド・エッジ!

マシュー :鎚・・・。それが、貴方の剣ですか・・・!

ダレル  :その細っこい剣をブチ折ってやる。はあぁぁっ!

マシュー :まともに受けられない・・・。なら!
      ショートカット!スモーク・ディフューズ!

ダレル  :煙幕で姿を消したところでェッ!(鎚を振りおろす

マシュー :ショートカット。プチ・ファイア。

ダレル  :しょっぼい火の玉なぞっ!

マシュー :燃え移れ。炎!

ダレル  :これはっ!?がぁぁぁぁっ!?

マシュー :粉じん爆発です。ただの煙と思いましたか?

ダレル  :やって・・・くれるじゃないか。餓鬼っ!

マシュー :っ!?

マシュー(М):な、なんだ・・・このプレッシャーは・・・!?

ダレル  :すこぉし効いたぞ?

マシュー :もう少しダメージを与えたつもりでしたけど。

ダレル  :これくらいでへばってたら、お嬢のお付きはできないんだよぉっ!(突進

マシュー :おわぁっ!?

ダレル  :おらぁ!ボーっとしてんじゃねぇぞ!(鎚を振り回す

マシュー :ショートカット。アイシクル・レイン!貫けっ!

ダレル  :ちょろいんだよ!ぬらぁっ!

マシュー :くっ・・・力の差がっ・・・

ダレル  :この程度か、魔術師なんてものは?

マシュー :僕を基準に考えない方がいいですよ。

ダレル  :フン!だとしても、似たり寄ったりだなっ!

マシュー :ぐっ!がはっ!?

ダレル  :耐えるか。なら、もう一撃っ!

マシュー :もう一度食らうわけにはっ!

ダレル  :だらぁっ!!

マシュー :ショートカット!ウッドガード!

ダレル  :ちぃっ!邪魔だあっ!

マシュー :一発で壊されるなんてっ!

ダレル  :伊達に、鍛えて、ねぇんだよぉっ!!

(一方、鍔迫り合いをするブランドンとマルリス

マルリス :いいのか?ブランドン。弟子が死ぬぞ?

ブランドン:ハッ、何が弟子だ。単なる部下だっつの。ンでもって・・・(マルリスの剣を弾き飛ばす

マルリス :ぐぅっ!?しまった、剣が!

ブランドン:奴もそんなに雑魚じゃねぇかんなぁっ!(マルリスを蹴り飛ばす

マルリス :ぐうっ!?(よろけて数歩たたらを踏む

マシュー :ショートカット・バーンアウトォっ!燃え上がれっ!

マルリス :がぁぁぁぁっ!?

ダレル  :お嬢っ!?テメェ!元から狙いはお嬢を・・・っ!

マルリス :がっ・・・あぐがぁ・・・ダ・・・れル。・・・だいジョうブだかラ。(舌が焼けて呂律が回らない

マシュー :あの一撃でも死なないって・・・

マルリス :ほんキれ・・・止めるツモりなんだナ?ブラんどン(自己修復徐々に呂律が治ってくる

ブランドン:だから最初から言ってただろうが。

マルリス :テメェは本気と冗談の差が見えねぇんだよ。

ダレル  :お嬢。大丈夫か?

マルリス :表面が焼けた程度だ。・・・おいクソガキ。

マシュー :は、はいっ!?

マルリス :さっきの攻撃は効いたぞ。
     (ここから先はマシューの耳元でささやく)・・・この借りは、いずれ“きっちり”返させてもらうからな?

マシュー :ひぃっ!?

ブランドン:あ?どした?

マシュー :な、なんでもないです・・・・。

マルリス :今回の件・・・。いったんは保留にする。だが、この振りぬいた剣はルドルフにきっちりと振り下ろしてやるからな。

ブランドン:それは、鎮に言ってくれ。俺らは関知しない。

マルリス :ふん・・・。いいだろう。お前らの口車に乗ってやる。今回だけな。

ブランドン:恩に着る。

マシュー :ありがとうございます。

マルリス :ちっ・・・面白くない。

ブランドン;んじゃ、俺らは撤収するか。

マシュー :はい。了解です。

ブランドン:じゃあな、お嬢さん。(マシューと共に転移する。

マルリス :ウォリス。すまないな。

ウォリス :いえ・・・。この街全体がかかっているのです。

ダレル  :お嬢。先発させたユニットから連絡。メリン・フォレルの身柄確保と。

マルリス :このくらいしか動けなかったか。

ダレル  :魔術師の目が厳しく、ルドルフの確保までは。

マルリス :こっちを派手にすれば、魔術師どもの目を盗んで暗殺できると踏んだんだが・・・。
      一筋縄ではいかないな。断界の魔女は。

マルリス :ウォリス。

ウォリス :は、はい!

マルリス :お前に任務を命ずる。通常職務に加え、メリン・フォレルの身柄の安全を確保しろ。
      お前が護衛するんだ。

ウォリス :お嬢様・・・。

マルリス :必要に応じ、応援は家の中から出す。申請はいつもの通りにな。

ウォリス :・・・ありがとうございます。

ダレル  :へいへい。甘いねぇ、お嬢。

マルリス :うるせぇ。いいから持ち場に戻れお前ら。仕事はまだ山積みだぞ。

ダレル  :へーい。んじゃ、解散だお前ら!演技お疲れさん!持ち場にもどるぞー!

※一同2 :うーい

マルリス :ルドルフ・・・。今は生かしておくが、何れその首を落としてやる・・・。

======================================

ブランドン:次回予告

マリアン :鬼の策士による悪意

マシュー :その手は、ついに頭首へと向けられる。

ウォリス :次回 Night/Knight 第18話 冬虫夏草

ダレル  :裏切りと絶望で悪意は進む。




もどる


前の話へ/次の話へ