Night/Knight 第16話 蛇の一策(いっさく) 作:福山漱流
タイトル画像
鬼島 美嘉(きじま みか) :涼の双子の妹。いささかブラコンの気がある、小悪魔少女。
15歳と偽っているが兄と同じく200歳を越える。
魁村 輝久(かいむら てるひさ) :鬼島組 直参 魁村組 組長。インテリタイプで神経質。見た目30代前半。
元々二次団体の組だった魁村組を一代で直系にまで押し上げた実力者。
蒔絵(まきえ) :鬼島組若頭である美嘉の部下。女ながらに実力もある鬼。美嘉に忠心を誓っており、誠実。
戦闘には不向きであるが、気転が利く。クールなタイプ
瑞枝(みずえ) :鬼島組若頭である美嘉の部下。美嘉の腹心でもある。「若頭の懐刀」と評されるほどの実力者。
武闘担当であり、細身ながらに男を圧倒するだけの力を持つ。
若干の同性愛的な信愛を美嘉へ向けている。
宗形 敏彌(むながた としや):魁村組 若頭補佐 物静かながら魁村の傍に控える存在。右腕として有能である。
加曾利 槞(かそり まど) :魁村組 若頭補佐 面子や体面に重きを置くタイプ。彼の抱える兵隊は統率のとれたものであり、それを纏め上げる実力もある。
伊勢崎 芥 (いせざき かい):魁村組 若頭補佐 血の気の多いタイプであり、力技で物事を解決しようとする。
謎の女 :フードを深く被った女性。高度の魔術、特に呪いを使いこなす。性格は攻撃的であり享楽的。
相手が傷つき、じわじわと壊れてゆく姿が見たいがために呪いを使っている節がある。
♀美嘉:
♂輝久:
♀蒔絵:
♀瑞枝:
♂敏彌:
♂槞:
♂芥:
♀謎の女:
__________________________________________
美嘉 :瑞枝(みずえ)ー?蒔絵(まきえ)ー?帰ったわー。
瑞枝 :おっかえりぃ!姫っちぃー!むぎゅーぅっ!
美嘉 :ひゃあっ!?た、ただいま瑞枝・・・。
瑞枝 :あぁ・・・姫っちのいい香り・・・そして、柔らかな感触。ああ、幸せ・・・(恍惚としながら
美嘉 :い、いつもに増して積極的ね。瑞枝。とりあえず、離れて・・・
瑞枝 :さぁ!姫っち!私と誓いのキスを!むちぅー
美嘉 :はい!?ちょっ!?えっ!?
蒔絵 :ハイハイ、ストップ。瑞枝、ハウス。
(蒔絵、瑞枝の服の襟をつかんで引きはがす)
瑞枝 :くっが・・・ちょっ!マッキー・・・くるし・・・ふわあぁっ!?
(瑞枝、背負い投げのように、思い切り蒔絵を放り投げる)
美嘉 :な、ナイスタイミングよ、蒔絵。ありがと。
蒔絵 :どういたしまして。それと、おかえりなさい。姫様。
美嘉 :た・・・ただいま。
瑞枝 :痛い・・・背骨がぁ・・・折れたぁ・・・死ぬぅ・・・
蒔絵 :大丈夫。瑞枝だったら折れてないから。
美嘉 :あ、あの・・・どうしたの?あの子。
蒔絵 :ああ・・。どうにも「ドージンシ」とかいうものを門の向うから手に入れたらしくてですね。
それに触発されたようで、さっきから百合だの、愛だのと・・・。お騒がせしました。
美嘉 :あっ・・・なるほど・・・。
瑞枝 :ああっ!マッキーひどいぃぃっ!
あともう少しで姫っちと私の目眩るめく(めくるめく)愛のマックスハートがスプラッシュスターだったのに!
蒔絵 :はいはい。わかった。
わかったからあっち行って一人でハピネスチャージしときなさい。
瑞枝 :そんなぁ・・・しょぼーん
美嘉 :な、なにが一体起こっていたんだろう・・・。(苦笑
蒔絵 :あ、そうそう。姫様。頼まれていた調べごとについてなのですが。
美嘉 :っ!何かわかったの!?
蒔絵 :ええ、なかなかに悪さしてますね。あの魁村って男は。
美嘉 :やっぱり私のにらんだ通りだったのね・・・。
蒔絵 :とりあえず、立ち話もなんなので姫様の部屋にでも・・・。
瑞枝 :姫っちの部屋!?
美嘉 :わぁっ!?びっくりした。急に元気にならないでよ!!
蒔絵 :はぁ・・・じゃあ、瑞枝、来る?
瑞枝 :行く!速攻行く!むしろ、イかせてください!
美嘉 :な、なんか変なニュアンスが混じってそうだけど・・・。(真剣に)それじゃ、話は部屋で聞かせてもらうわ。
======================================
敏彌 :失礼します。頭(かしら)。今、よろしいでしょうか。
輝久 :どうぞ。入りなさい。
敏彌 :失礼します。
輝久 :それで、獲物はかかりましたか?
槞 :へい。くすぼり連中をシメて、情報を集めているようです。
輝久 :よろしい。・・・当然ですが、その三下にはちゃんとデマを握らせているんでしょう?
芥 :頭(かしら)の通りに。おそらく、それを漏らしているかと。
輝久 :おそらく・・・?(静かに威圧
芥 :い、いえ。デマを信じ込ませましたんで。絶対に。それを漏らしていると。
輝久 :・・・よろしい。ウチに被害は出ていないですね?
槞 :シメられたのはウチの3次団体のガキどもです。被害はないと。
敏彌 :それに、ウチの兵隊はここんところ静かにさせてますんで。
輝久 :そうですね。大本にはダメージがあったらマズいですから。
芥 :この後は、どうします?頭。
輝久 :若頭補佐にご退場いただく。いえ、今は若頭でしたか。
槞 :・・・やるんですね。
敏彌 :なんだ。槞(まど)。ブルってるのか?
槞 :うるせぇ。
輝久 :怯えていたらお話になりませんがね。
これから、動きます。
芥 :タマをとるんです?
輝久 :いえ、生け捕りにします。彼女には重要な役割がありますから。
敏彌 :生け捕りっすか。難しくないですか。
輝久 :難しいことはわかりきっていますよ。おそらく、我々だけでとらえることは無理でしょう。
槞 :あの「若頭の懐刀」が特に厄介です。
輝久 :懐刀もだが、それの手綱を握っている奴も厄介です。
槞 :例のメガネか。
芥 :じゃあ、どうするんで?
輝久 :ひと塊で相手をすると無理。ならば、分散させます。
そして、一人になったところを押さえます。
敏彌 :それで、頭。策は如何様(いかよう)に。
輝久 :その前に、一人、紹介したい人が居てね。入ってきたまえ。
謎の女:あら?もういいの?
槞 :こいつは?
輝久 :保険であり、今回のヤマの鍵・・・というところですかね。
謎の女:なにそれぇ。
輝久 :期待している。ということです。
謎の女:そう聞こえないんだけど。
輝久 :それは、失礼しました。
・・・ということで、今回の一件。彼女にも協力してもらう。
敏彌 :協力とはいっても、一体、何をさせるつもりなんで?
輝久 :若頭の無傷での捕縛。
芥 :それは、俺らでやれば済むことで・・・
槞 :そうです!わざわざ他所もんを連れてくるほどのことじゃ・・・
敏彌 :うるせぇぞ。頭が必要と判断したんだ!黙ってろ!
槞 :だがよ、兄弟。それじゃあ俺らのメンツってもんが・・・
謎の女:『千重苦行(せんじゅうくぎょう)』
槞 :ぐっ・・・あっ・・・がっ・・・!?い、息が・・・
芥 :てめぇ!なにしやがった!?
謎の女:なにって?うるさいから黙らせただけよ?
槞 :はっ・・・はひっ・・・あ・・・がっ・・・
輝久 :そこまでにしてやってもらえないだろうか?
謎の女:え?もう終わり?
輝久 :これでも、一応うちの大事な戦力なもので。欠けるのは惜しいのです。
謎の女:『苦行赦免(くぎょうしゃめん)』
槞 :がはっ!・・・はっはぁっ!はぁっ!・・・こいつ・・・。
敏彌 :呪い・・・ですか。
謎の女:そうね。・・・呪いよりももっと高尚なものですけれど。
芥 :こいつ、本当に信用できるんで?
謎の女:さぁ?どうでしょう?後ろから刺すかもしれないけど。
槞 :てめぇ・・・
輝久 :ほら、そこまで。
謎の女:まぁ、心配されなくても仕事はこなすわ。
敏彌 :それが本当であればいいが。
謎の女:あらこわい。
輝久 :もういいかね?・・・さて、作戦なのだが。
敏彌 :すでに、決まっているのですか。
輝久 :もちろん。
槞 :で、その作戦は。
輝久 :それは、ゆっくりと説明していこう。
======================================
瑞枝 :はにゃ~。姫っちのいい匂い・・・。
美嘉 :それで?なにかわかったの?
蒔絵 :はい。どうやら、涼さんに対して離反を企てている者たちに接触を繰り返しているみたいです。
そして、その会合が本日行われるとの情報が。
美嘉 :それは、どこの情報?
瑞枝 :ん?てきとーに下っ端を締め上げた。
美嘉 :締め上げたって・・・
瑞枝 :だって、こうした方が手っ取り早いじゃん。
蒔絵 :私は止めたのですが。
美嘉 :手荒なことは避けたかったのだけど・・・。まぁ、仕方ないわ。
それで?詳しいところは?
瑞枝 :なんか、14区あたりにある倉庫でやるんだと。
蒔絵 :場所としてはちょうど街の真ん中あたりですね。
美嘉 :外れじゃなくて?
蒔絵 :ええ、普通に考えると理解に苦しむ場所ですが。
でも、いざ、襲撃などがあったときのことを考えると妥当かと。
瑞枝 :そうなのか?
蒔絵 :そう。14区は、細かい路地が方面に枝分かれしているところだからね。
その分、目立ちやすい場所でもあるんだけど。
美嘉 :そう考えたら、妥当・・・ね。
蒔絵 :ええ、それにここは吸血鬼の勢力境界に近いですし。
瑞枝 :あ、そういえばそうだな。
美嘉 :ちょっとまって、その境界が近いのは理由になるの?
蒔絵 :それがですね・・・。この一件、吸血鬼側も絡んでいると。
美嘉 :吸血鬼が!?
蒔絵 :はい。・・・今起こっている、私たち鬼と吸血鬼とのいさかい。
これの発端を作ったのが輝久本人であるということです。
美嘉 :ちょっ・・・ちょっとまって!何がなんなの!?いきなり話が飛躍して・・・。
瑞枝 :おいマッキー。もっとわかりやすく説明してくれよー。私もわかんなくなっちまった。
蒔絵 :瑞枝にはさっき説明したのに・・・。まぁ、いいわ。姫様。順を追って説明します。
美嘉 :お願い。
蒔絵 :まず、輝久はもともと鬼島組を自分の手の中に収めるために活動していました。
そのため、涼様に反目する『離反組』を自分の手中に収めてきていたんです。
美嘉 :うん、それは大体予測がついてた。続けて。
蒔絵 :はい。ただ、離反組は一枚岩でない上に、規模の小さいものでした。
決定的な下剋上を行うカードにはなりえなかった。そのため、ある絵図を描いた。
瑞枝 :それが、吸血鬼との同盟ってやつか!さっき言ってたシモーヌ家ってのと!
蒔絵 :そう。四名家として名前を並べるシモーヌ家との同盟。それで、この鬼島組をつぶす画策をした。
美嘉 :じゃあ、ウチの組員が吸血鬼に殺されてきた一件って・・・。
蒔絵 :輝久がシモーヌ家に頼んで行っていたことかと。
瑞枝 :身内殺し・・・。やっちゃあいけねぇことをやりやがったな。
美嘉 :でもまって、今の話じゃシモーヌ家にメリットはないはずよ?
蒔絵 :姫様。吸血鬼側でも鬼による犯行と思われる殺害事件が多発しているのは、ご存知ですよね?
美嘉 :まさか・・・向うも?
瑞枝 :そーみたいだぜ?聞いた話じゃ、お互いをお互いでつぶし合わせて疲弊したところを、パクリってな。
蒔絵 :シモーヌ家そして魁村組は裏方に徹し、表舞台に出ないつもりだったらしいです。
美嘉 :シモーヌ家は残る三家が潰れたら自分の天下になる、輝久は自分の組を大きくできる。
蒔絵 :はい。そのためにわざわざこの大それたことを背後で仕立てあげていたわけです。
瑞枝 :んで、その会合がこの後この倉庫であるってわけだな。
美嘉 :ここに参加する者は?
瑞枝 :大半は三次団体のくすぶってる雑魚どもらしいけどな。
蒔絵 :ただ、不確定情報ですが、ここに吸血鬼も現れるのではないかと。
美嘉 :シモーヌ家が?
瑞枝 :それはわかんねぇ。まぁ、三下をシメただけだとやっぱそこらはな。
蒔絵 :どうされますか。姫様。
美嘉 :・・・・・。
瑞枝 :ま、簡単には動けないわなぁー。
美嘉 :押さえに行きましょう。今すぐ。
瑞枝 :はえ!?
蒔絵 :姫様・・・。
美嘉 :今から行けば、輝久個人を押さえることができるかもしれない。
今止めないと・・・。戦争を止めるためにも。
瑞枝 :んじゃ、急いで兵隊をかき集めるか!
美嘉 :いえ、それはやめて。派手に動くと、輝久に気付かれる可能性がある
蒔絵 :・・・。それを考えたら、我々で動いた方が得策かと。
瑞枝 :は?マジで?
蒔絵 :今なら、輝久は気づいていない。会合も、大して人数が集まるわけではない。
なら、私たちで十分かと。・・・瑞枝もいるしね。
美嘉 :そうね。頼りにできる部下がいるもの。
瑞枝 :姫っち・・・。なら、頑張る!超頑張る!
美嘉 :でも、本当に三人で行けるかしら。
蒔絵 :大丈夫です。輝久自身は大した力を持っていません。
それに先ほど言ったように集まるのは三次団体。姫様と瑞枝なら大丈夫です。
瑞枝 :もち、マッキーも参加、だよな!
蒔絵 :ちょっ、抱き着かないで。微力ながら、私も戦いますし。姫様の護衛ですから。
美嘉 :ありがとう。それじゃあ、さっそく、行くことにしましょう。内密に。
瑞枝 :ウス!やろうぜ、姫っち!
蒔絵 :行きましょう。
======================================
敏彌 :親父。
輝久 :どうしました。
敏彌 :今、外の奴らから連絡がありました。目標が、現れたと。
輝久 :予測通りですね。数は?
敏彌 :三人で。若頭と、その護衛二人。
輝久 :わかりました。敏彌、持ち場へ付きなさい。狩りを始めましょう。
敏彌 :はい。親父。失礼します。
輝久 :すべて計算通りでここまで来ましたか。さぁ・・・出てきたらどうです。いるのでしょう?若頭。
美嘉 :なっ・・・
瑞枝 :姫っち・・・ばれてっるっぽい
美嘉 :仕方がない・・・。堂々としたものですわね。輝久。
輝久 :若頭、ようこそいらっしゃいました。こんな埃っぽい場所に。
美嘉 :輝久。貴方。何を企てているのかしら。
輝久 :はて、なにをでしょう?
美嘉 :もう、調べはついているのよ!貴方の悪事は。
輝久 :おやおや、そうでしたか。それは失敗しました。
美嘉 :この一連の黒幕は貴方なのでしょう、輝久。
輝久 :言質(げんち)を取るつもりですか?
美嘉 :吸血鬼のシモーヌ家とつながり、この街を壊そうとしている。
輝久 :黙秘しますよ。
美嘉 :許されないことをしようとしているのがわからないのです?
輝久 :・・・・甘いんですよ。鬼島組は。
美嘉 :輝久?
輝久 :人間や吸血鬼に尻尾を振って。力がすべてのこの世の中で、媚びを売った時点で弱者に成り果てた。
美嘉 :この街の安定のためよ。
輝久 :それがくだらないんですよ。安定なんてもの、くそくらえだ。
瑞枝 :てめぇ!黙って聞いてりゃあふざけたことを言いやがって!
輝久 :若頭の懐刀。貴女ならわかるでしょう?血を流し、奪い取ることがこの世のシステムだと。
蒔絵 :それは、歪んだシステムです。鬼島組はそんなものを求めません。
輝久 :くだらん茶番はよしてください。
この街は所詮、アウトローの掃き溜めの街、平和だ安定だなんてものにすがるだけ無意味だ。
美嘉 :狂ったわね。輝久。貴方を、ここで殺します。それがこの街のため、そして、鬼島組のため。
輝久 :そうですか。では、やってみてください。この人数を相手に。
瑞枝 :なっ・・・!
蒔絵 :これは・・・っ!
美嘉 :伏兵・・・!
輝久 :ノコノコと来てくださってありがとうございます。
貴女を黙らせるために、情報を流した甲斐がありました。
美嘉 :罠だった・・・。というわけね。
輝久 :貴女は勘が鋭い。それは、今後の動きに支障が出るのでね。
ここで、少し退場してもらいます。
美嘉 :私を殺せば、貴方はウチで居場所を失うわよ?
輝久 :大丈夫です。殺しません。ただ、表舞台から消えてもらうだけですから。
瑞枝 :マッキー。これ、大体、数は何人くらい?
蒔絵 :さぁ?とりあえず、50くらいはいるんじゃないかな。
瑞枝 :そっか。んじゃ、マッキー。姫っち任せた。
美嘉 :瑞枝?
瑞枝 :姫っち。ここは私が足止めするから、ダッシュで逃げて。
蒔絵 :一人でできる?
瑞枝 :やってみねぇとわかんねぇけど、やってみる。
美嘉 :無茶よ!そんなこと
瑞枝 :そう言っても、姫っちが無事に脱出するためにはこうしなきゃなんねぇっしょ?
蒔絵 :・・・頼んだわよ。瑞枝。
瑞枝 :うい。了解。
美嘉 :蒔絵!?
蒔絵 :行きましょう!姫様!
槞 :おう!オメェら!逃がすな!追え!
瑞枝 :超一撃ぃっ・・・激っ怒っ・・・パンチィぃぃっ!
槞 :ぐあっ!?拳圧で・・・風がっ!?
輝久 :フフフっ・・・地面が揺れるほどの拳の一撃ですか。さすがは懐刀。
瑞枝 :テメェらは姫っちのところには行かさねぇ。死にてぇ奴からかかってきなぁっ!
輝久 :槞。ここは任せましたよ?
槞 :うす。わかりました。親父。
・・・いいじゃねぇか。『懐刀』がどんだけか、見せてもらうぜ!お前ら!やっちまえ!
瑞枝 :ふっ!はぁっ!だらぁっ!せあっ!雑魚どもが寄って集った処で!はぁっ!
槞 :俺も雑魚だってか!?あぁっ!?(殴る
瑞枝 :(ガードしつつ、カウンターを放つ)ちっ!邪魔くせぇんだよ!
槞 :魁村組がただのインテリ集団じゃねぇってトコ、みせてやらぁっ!(ラッシュをしかける)
瑞枝 :なっ!こいつ・・・っ!くっ!づっ!ふっ!・・・狙いが鋭いな!
槞 :伊達に、魁村組の若頭補佐じゃねぇんだよ!
瑞枝 :ハッ・・・。んじゃ、力比べと・・・行こうかクソどもぉっ!
======================================
蒔絵 :姫様。次、左です!
美嘉 :ここを・・・左っ!あっ!
蒔絵 :ここも封鎖されてますか。なら・・・こっちです。
美嘉 :ちょっ!蒔絵!
蒔絵 :・・・誘導されてますね。
美嘉 :え?
蒔絵 :ことごとく、本家へ向かう逃走ルートがふさがれてます。
美嘉 :足止めしてくれてる瑞枝のためにも、逃げ切らないといけないのに・・・。
蒔絵 :こうなったら、プランBです。24区へ向かいます。
美嘉 :えっ?そこって。
蒔絵 :はい。吸血鬼の支配地域です。そこに入ってしまえば。
美嘉 :で、でも今。私たちは、向うにとっては敵なのよ?
蒔絵 :四の五の言ってる場合じゃありません。今を乗り切るためには、こうするしか。
芥 :子ネズミちゃんみぃつけた。
蒔絵 :もう、追手が来ましたか。
芥 :ほら、そろそろ走るのも疲れたろ?終わりにしね?こーいうの。
美嘉 :あなたたちに、捕まるわけには、行きません。
芥 :ハハハッ!だろーネェ!んじゃ、オレと遊んでくれよ。子ネズミちゃぁん?
蒔絵 :姫様。私が突っ込んで相手の足を止めます。その隙にお逃げを。ルートはわかりますね?
美嘉 :蒔絵!?
蒔絵 :正直言って、戦闘は苦手ですが。姫様を守るのが私の役目です。
美嘉 :だったら、二人でここを突破して・・・
蒔絵 :いえ、それは不可能でしょう。時間的な余裕はなさそうですし。
ですから、姫様。どうか。
美嘉 :蒔絵・・・。
蒔絵 :大丈夫です。すぐに、また追いつきますから。
美嘉 :・・・ごめん。
芥 :だぁぁぁぁっっせい!!(パイプ管を引きちぎり、投げつける
蒔絵 :ちっ!
芥 :ぼそぼそ作戦会議なんぞ・・・してんじゃねぇっ!
さっさと来いよ!来やがれよ!暇なんだよ!うぜぇんだよぉぉっ!
蒔絵 :では、ご要望通りに。・・・「業火衝(ごうかしょう)!」
芥 :うおっと!いいねぇ!そうじゃなくっちゃあっ!だらっ!
蒔絵 :くっ!はっ!せいっ!(捌く
芥 :ちぃっ!ちょろちょろとぉっ!
蒔絵 :ぐっ!がはっ!?
芥 :おぉー。イィカンジにぶっ飛んだぁ。・・・あれ?若頭のガキはどこいった?
蒔絵 :・・・ふふっ、計算通りです。
芥 :あ?
蒔絵 :姫様なら、さっきの隙に逃げました。御生憎様、ですね?(微笑
芥 :ちっ!めんどくせぇ。さっさと畳んで追いかけねぇと・・・
蒔絵 :はいだらぁっ!(※注:掛け声なので意味はありません。)
芥 :ぐぅっ!?がっ!?
蒔絵 :誰を畳むって言いました?ここからが、楽しいところじゃないですか。
芥 :へ、へへへへ!いいじゃねぇの、やってやらあ!覚悟しろや!クソメガネ!
======================================
敏彌 :親父。今のところ、予定通り進行中です。
輝久 :いいですね。よい働きですよ。
敏彌 :目標は、24区へ向かって移動中で、そろそろ・・・。
輝久 :こちらの奥の手と接触ですね。
敏彌 :うまくいくんで?
輝久 :でないと、困ります。ですが、心配はいりません。
敏彌 :だと、よいのですが。
輝久 :まぁ、見ていなさい。これからが楽しくなるのですから。
フフフ・・・ハハハッ!アハハハハハッ!
======================================
美嘉 :はあっ!はあっ!はあっ!ここをっ!曲がればっ!24区・・・っ!
謎の女:きゃあっ!
美嘉 :あっ!痛たた・・・ってごめんなさい!
謎の女:あらあら、いいのよ?大丈夫だから。
美嘉 :すみません!急いでて
謎の女:そうでしょうね。あんなに怖い人から追われたら怖いもの
美嘉 :えっ!?がはっ!?(腹部に刺される
謎の女:怖がらなくていいのよ?お嬢ちゃん。すぐに、ヨクなるから。
美嘉 :ぐっ・・・輝久の手下・・・っ!
謎の女:やだ。あんなのの手下になった覚えはないわ。ビジネスの相手よ
美嘉 :傭兵・・・ちっ!
謎の女:そっちは行き止まり。
美嘉 :ぐうっ!?・・・な、なんで・・・身体が・・・っ!?
謎の女:あなたが来るべきは。私の前。
美嘉 :ぐっ・・・な、何をしたっ!私にっ!
謎の女:んー?なんでしょうね?当ててみなさい?
美嘉 :相手を意のままに操る・・・呪言(じゅごん)か
謎の女:正解。よく知ってるわね!ご褒美に・・・跪きなさい。
美嘉 :ぐっ・・・!ふ、ざ、けるなぁぁぁっ!
謎の女:きゃあっ!?
美嘉 :この私を、簡単に操れると思わないことね!
謎の女:私の、呪言を、はねのけたというの!?
美嘉 :伊達に、若頭じゃないの。これくらいどうってこと・・・
謎の女:ない・・・訳ないんじゃないのぉ?
美嘉 :っ!?今度は・・・なにが・・・
謎の女:力が抜けるでしょ?実はね?さっきあなたに刺したナイフにね?ちょっとした「呪言」をかけておいたの。
私に敵対すると「無気力」になるっていう呪言。
美嘉 :このっ・・・!
謎の女:あぁ・・・!いい表情!何が何でも抗うつもりなのね!すばらしく芸術的よ!
美嘉 :狂ってんの・・・?あんた。
謎の女:ええ、そうね。狂っているかもね。でもいいじゃない。だって今、私はこんなに楽しいのだから!
さぁっ!もっと抗って!もっと私の「呪言」に反発して!あがいてあがいて足掻きぬいてみせて!
美嘉 :狂人がっ!なら・・・望み通りにしてやるっ!
謎の女:(恍惚として)・・・美しい!その高い魔力の放出で、呪言を引きちぎるなんて・・・なんてすばらしい!
美嘉 :はぁっ!はぁっ!・・・あなたと遊んでいる暇はないの!
謎の女:そんなこと言わずに。もっと、見せて!あなたのすごいところ!
美嘉 :そんなに、見たいなら見せてあげる・・・すぅ・・・はぁ・・・(構え、呼吸を整える)
「覇王海神衝(はおうかいじんしょう)!」
謎の女:きゃぁぁぁっ!
美嘉 :魔力を込めた正拳の一撃。これで満足でしょ。
謎の女:・・・すばらしい。とても、マーベラス!
美嘉 :っ!?直撃を受けたのに!?
謎の女:でも足りない!まだ、満足できない!まだまだ輝くはずよ!あなたは!
美嘉 :なに・・・この女・・・
謎の女:・・・あら?もしかして、怯えた?(一気に醒めて
美嘉 :っ!?
謎の女:興ざめしちゃった。なにそれ、つまらない。せっかくノッてきたのに
美嘉 :あなた・・・一体・・・
謎の女:「混濁見界(こんだくけんかい)知慮放逸(ちりょほういつ)」
美嘉 :あっ・・・あう・・・?うあ・・・あ?
謎の女:無駄よ。今のあなたには何もできない。どう?知性はそのままに力や能力は幼児まで退化した気分は。
美嘉 :あう。あうあ。うああうあっ!
謎の女:哀れね。言葉も、私を倒せるはずだった力も失って。
ほんと、無様で哀れ(さげすむように
輝久 :終わりましたか?
謎の女:ええ、この通り。
美嘉 :あう・・・うあー
輝久 :元に、戻せるんでしょうね?
謎の女:当たり前よ。
輝久 :なら、いいのです。
敏彌 :親父。よろしいですか。
輝久 :どうしました。
敏彌 :側付き(そばづき)の二人ですが、一応確保しました。
輝久 :ほう?こちらの被害は?
敏彌 :総勢100の内、重症73、軽傷11。思いのほかやられました。
輝久 :さすが、といったところですか。槞や芥は?
敏彌 :二人とも怪我を負いましたが、一応、軽傷で済んでいるようで。
輝久 :数で押しただけあって、それで済んだといった感じですね。
敏彌 :しかし・・・派手に動きすぎじゃありませんか?
輝久 :そこは上手くことを動かしています。隠れ蓑はあります。
敏彌 :・・・若頭はどうするんで?
輝久 :一先ず、ウチのセーフシェルターに運んでおいてください。
くれぐれも丁重に。
敏彌 :では、そのように。おい、お前ら、連れてけ。
美嘉 :あう!うああ。うあー(抱えられ、連行
輝久 :では、あなたにはあともう少しだけ、付き合ってもらいますよ?
謎の女:さっさと済ませてよね。つまらないことは勘弁だから。
輝久 :ええ。わかっています。ですが、これからが楽しくなるので、少々お待ちを。
謎の女:そう?なら、また用があったら呼んでね。私は帰るから。
輝久 :ええ、それでは。
敏彌 :親父。
輝久 :わかっています。これから忙しくなります。さぁ、天秤を動かすことにしましょう。
シモーヌ家に対し伝令を。頼みますよ?
敏彌 :はい。命に代えて。・・・失礼します。
輝久 :さぁ、これで手は打った。私の手に・・・鬼島が落ちる!
ははっアハハハハッ!
======================================
蒔絵 :次回予告
瑞枝 :鬼の一族の動乱が加速する一方
槞 :吸血鬼側でも、混乱が起きつつあった。
芥 :そこへ、魔術師も加わり、混迷は極まる。
敏彌 :次回、Night/Knight 第17話 怒りの矛先
輝久 :憎悪は奔り
美嘉 :血を流す。
もどる
前の話へ/次の話へ