Night/Knight 第6話 1つのシ 作:福山漱流
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夜巳鎮(やみ まもる):純血の吸血鬼。見た目17歳くらいだが、実年齢は200オーバー。感情の起伏が浅く、常に怒っているように思われる。
水原裕美(みずはら ひろみ):鎮に仕える吸血鬼。20代の見た目をしている。
人間との混血である故に、捨てられて居たところを鎮に拾われる。瀟洒で人付き合いの良いタイプ。
マルリス・アヴィラ:純血吸血鬼であり、吸血鬼界の名家『アヴィラ家』の子女。見た目18歳くらいの少女だが、実年齢は200オーバー。
生粋のお嬢様であり、口調もお嬢様。しかし、怒ると地が出てしまい荒い口調になる。
ダレル・ハイド:吸血鬼であり、マルリスの側近。ヘブリニッジの治安維持を務める『アヴィラ家』の重役。筋骨隆々の大男。
見た目30代後半。荒事対応や事件現場整理などの外役の責任者を務める。
荒っぽい口調だが、身内に対して義理人情の厚い人物。
ウォリス・ヒューズ:吸血鬼であり、マルリスの側近。ヘブリニッジの治安維持を務める『アヴィラ家』の重役。細身の男性。
見た目、30代前半。事務処理や、情報管理などの内役の責任者を務める。
折り目正しい人物だが、神経質が欠点。
女性:混血吸血鬼。帰宅途中になぞの人物によって撲殺される。
♂鎮:
♀裕美+女性:
♀マルリス:
♂ダレル:
♂ウォリス:
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ダレル :うー。寒ぃ寒ぃ。なんでこんな日に見回り当番なんだよ・・・。
女性 :(悲鳴)
ダレル :なっ!?なんだよ、今の!ったく、ツイてないぜこんちくしょう!
鎮 :Night/Knight 第6話 1つのシ
マルリス:殺人ですって?
ウォリス:はい。お嬢様。見回りに出ていたダレルが21番街の路地で発見したようで。
マルリス:犯人は分かりそう?
ウォリス:それが、ダレルが着いた時にはもう既に犯人は逃げていたようで。
マルリス:そう・・・。現場に行くわ。案内して。
ウォリス:は。了解しました。こちらへ。
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マルリス:ダレルは居る?
ダレル :あ、お嬢。こっちです。
マルリス:・・・酷い有様ね。
ウォリス:なにか分かったか?ダレル。
ダレル :いんや。全くだ。今、分かってるのは見て分かる範囲のことしかねぇ。
マルリス:撲殺されたの?この被害者は。
ダレル :そうみてぇだわ。んで、その後に磔にされたって訳だ。
ウォリス:身元は?
ダレル :わからん。なんせ、顔のカタチが変わる位に殴られてる。すぐにって訳にはいかんさ。
マルリス:持ち物はなかったの?
ダレル :ああ、彼女の持ち物は一切無い。持ち去られた可能性もあるかもしれんが。
マルリス:そう・・・。ん?ちょっと待って。『彼女の持ち物は』ってどういう事?
ダレル :そのままの意味だぜ、お嬢。このホトケさんの物はない。だが、コレが唯一残ってた。
ウォリス:紙切れ?
ダレル :斬奸状(ざんかんじょう)だよ。
マルリス:また古い手口ね。私怨(しえん)の人殺しを美化する手紙なんて。
ウォリス:しかし、斬奸状にしては、内容が意味不明ですよ?
マルリス:見せて。
ダレル :舞(ま)えや巫(こなぎ) 怒(いか)れや御主(おんあるじ) 我らは正道(せいどう)を照らす焔(ほむら)となりて闇を討つ
ウォリス:意味は?
ダレル :さっぱりだ。通訳(つうやく)は分かっても、その指し示す意味はわからん。
マルリス:意味なんて無いわ。コレにはね。・・・単なる意思表示でしかないわ。
ウォリス:意思表示、ですか。
マルリス:お前等をぶっ殺してやるから覚悟しろって事よ。・・・フン。馬鹿馬鹿しい。
ダレル :お嬢・・・。もしかしてキレてるか?
マルリス:ふん。ほんの少しね。・・・そういえば、鎮様には連絡したの?
ダレル :ああ、一応な。多分もうすぐ来るんじゃネェか?
裕美 :遅くなりました。
鎮 :何があった。マルリス。
マルリス:噂をすれば、ですわね。足労ありがとうございますわ。
鎮 :そんな定型文はいらない。必要なのは・・・
マルリス:何があって何をすべきか。ですわね。分かっていますわ。
とはいえ、分かっていることは目の前にあること以外無いですけれど。
ウォリス:混血の同胞が、やられたのです。それで鎮さんに、仲介者としてのご意見を。
鎮 :なるほどな。・・・なにかわかるか?裕美。
裕美 :申し訳ありません。ここまで損傷が酷いと・・・
鎮 :まぁ、そうだろうな。マルリス。他に何か手がかりはないか?
マルリス:手がかりはこの遺体とこの斬奸状しかないですわ。
鎮 :見せてくれ。(受け取る)これは・・・
裕美 :マスター。この文章は・・・。
マルリス:何か知っているの?
裕美 :はい。この文章についてなのですが、これは鬼島(きじま)家に忠誠を誓う時に述べる文言(もんごん)なのです。
マルリス:鬼島・・・?名門の鬼の一族が関与してるってことですの?
ダレル :マジかよ・・・厄介なことになるぞ。
ウォリス:まだ、確定した訳ではないですが・・・。疑いはした方が良いのでしょうか?
マルリス:容疑者の候補って所ね。
裕美 :しかし、鬼島組が我々に関与してくるとは思えません。
我々、吸血鬼と結んだ協定があるのですから。
鎮 :だが、それは近々切れる。
マルリス:ええ。確か来月辺りに。
ダレル :そこを狙ってるってことは考えられねぇか?
鎮 :あり得る話ではあるな。
裕美 :ですが・・・。果たして旨味はあるのですか?
マルリス:鬼島家にってこと?
裕美 :はい。現在のヘブリニッジの平和を崩して利益があるとは思えません。
鎮 :裕美。忘れたか?涼(りょう)に言われたことを。
裕美 :離反のこと・・・ですか?
ダレル :離反?ってことは、今、鬼島組は荒れてんのか?
裕美 :はい。代替わりの際、我々、吸血鬼と融和的である鬼島 涼(きじま りょう)に従わない者達が離反し、徒党を組もうとしていると。
ウォリス:それが、今回の殺人に?
鎮 :可能性はある。
マルリス:なるほど・・・。とりあえず、鬼島組に探りを入れた方が良いのは確かですわね。
鎮 :そのことなんだが、俺に預けてくれないか?マルリス。
マルリス:どういうことです?
鎮 :吸血鬼の中で捜査権を持つアヴィラ家が、対立勢力である鬼島に介入したらどうなるか分かるだろ?
裕美 :鬼島の対面的には面白くない事になります。
ダレル :離反組の怒りを買って、最後には戦争ってことか?
ウォリス:そうなることは必至かもしれませんね。
鎮 :だからこそ、俺が代わりに探りを入れる。
マルリス:大丈夫ですの?
鎮 :一応、向こうの党首とは繋がりがある。
マルリス:・・・なるほど。個人的な付き合いの中で聞くと言う事ですか。
ダレル :あー、そーなりゃあ向こうのメンツを潰さなくて済むか。
ウォリス:しかし、あまりに危険ではないですか?
鎮さんはここに住む吸血鬼の全てにとって欠けてはならない存在ですよ?
鎮 :欠けてはならないなんて誰も思ってないだろう。
ただ、人間との間を取り持つのを嫌ってる奴が多いだけだ。
マルリス:だとしても、鎮様にはまだまだ仲介役を務めて貰わないとこちらとしても面倒になりますわ。
裕美 :それ・・・マスターを気遣ってるのでしょうか・・・(苦笑
ダレル :危険とはいえ、他に手がないんならそうして貰うほかねぇだろ。
鎮 :ああ、ダレルの言う通りだ。だから・・・
マルリス:(遮って)鎮様?
鎮 :なんだ?
マルリス:何を焦っておられるのです?
鎮 :俺は別に焦ってなどいない。
マルリス:いいえ。焦っておいでですわ。
ウォリス:お嬢様?
マルリス:分かり易いですわ。鎮様。隠し事が出来ない顔してますもの。
鎮 :なにがいいたい?
マルリス:いいえ。別段何も。ですが、これだけは言わせて下さいな。
吸血鬼はあなた1人のものではないので。
鎮 :連携しろと?
マルリス:1人で抱えないでもらえないかということですわ。
こちらも、メンツというものがあるので。
鎮 :・・・なるほどな。
マルリス:では、鬼の件。お任せしました。続報があれば連絡を。
こちらも何か解れば連絡致しますわ。
鎮 :ああ。解ってる。それじゃあな。
裕美 :失礼致します。
(鎮。裕美。去る)
マルリス:それでは。・・・ダレル。ウォリス。
ダレル :なんだい。お嬢。
マルリス:おそらく、コレは鬼の仕業よ。確信したわ。
ウォリス:それは、鎮さんの反応からですか?
マルリス:ええ。それと、最近の街の情勢からね。
ダレル :ヘブリニッジ外縁(がいえん)スラムのことか?
マルリス:あそこで、しょっちゅう小競り合いがあるの知ってるでしょう?
特に最近は、鬼との小競り合いが多いの。
ウォリス:そうなんですか?
ダレル :あー。お前、管轄じゃねぇもんな。
ウォリス:この街の事ながらの無知、申し訳ありません。
マルリス:謝る事じゃないわ。あえて伏せていたの。
変な先入観を持たない様にするためにね。
ダレル :治安維持のお役目の奴が、先入観で捜査なんぞできねぇってか。
ウォリス:それはまぁ・・・たしかに。
マルリス:でも、これじゃ、先入観どころの話じゃ収まりそうにないわね。
対策を練らなければ。家から何人か呼んできて。現場の整理と物品回収急がせて。
ウォリス:了解しました。
ダレル :お嬢はどうすんだ?
マルリス:私は、ブランドンを探すわ。
ダレル :居るかねぇ?あいつ。街の外じゃねぇか?
マルリス:居るわ。この状況で見てない訳無いじゃない。
ウォリス:でしょうね。介入を伸ばさせるのです?
マルリス:事の次第によるけれど。そうするつもり。
ダレル :わかったぜ、この現場は任せな。俺らでやっておく。
マルリス:頼んだわ。後で執務室で教えて。
ウォリス:はい。お気を付けて、お嬢様。
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裕美 :マスター。
鎮 :なんだ?
裕美 :どう・・・お考えなのですか?
鎮 :さっきの件か?
裕美 :・・・はい。
鎮 :鬼が絡んでると考えて良いだろう。
裕美 :では、争うのですか?鬼島の皆様と。
鎮 :次第によっては・・・な。
裕美 :避ける手立ては・・・
鎮 :そのために、俺が動く。
マルリスの奴は気付いてるだろうがな。
裕美 :抑えなくていいのですか?
鎮 :いい。下手に外部から介入されるのを嫌うマルリスの事だ。ブランドンを探して、魔術師の行動を抑えに走ってるだろう。
裕美 :暫くは時間が稼げると?
鎮 :ああ、それに、あのお節介なブランドンが介入しない訳がないからな。
そこで脚を引っ張りあって貰っている間に、俺が。
裕美 :解りました。お手伝いします。
鎮 :ああ。頼むぞ。いろいろすることがある。
裕美 :遺品の事ですね?
鎮 :街の外に情報屋をやる姉妹がいると聞いてる。
そこで何か仕入れたい。
裕美 :街の外ですか?中ではなく。
鎮 :中は、マルリスの手が掛かる。それに、ここらの情報屋とは違うらしい。
だから、外を使う。
裕美 :手配します。
鎮 :俺が直接会いに行く。魔術師共に伝えておいてくれ。
裕美 :昼間に動くので?
鎮 :ああ、そうなるだろう。俺が動くと少し、派手になるからな。
言い訳は出来ないだろう。
裕美 :そのように。
鎮 :フン。また、お節介がうるさくなるな。
裕美 :ブランドン卿ですか?
鎮 :そいつ以外に誰が居る?
裕美 :そうですね。
鎮 :まぁ、奴に関しては気にしなくても良いか。
裕美 :ほどほどになさって下さいね。
鎮 :それはどういう意味だ?
裕美 :形とは言え、戦う事になりますから。
鎮 :解っている。お互いにな。
裕美 :だとよいですが。
鎮 :信用無いな。
裕美 :案じているのです。
鎮 :わかった。気に止めておく。
裕美 :はい。よろしくお願いします。
鎮(M) :さて、早めに動かなければ・・・厄介な事になりそうだ。
マルリス:次回予告
ダレル :2人の魔術師。
ウォリス:彼女らの力は糸口の1つを開く。
裕美 :次回 NIGHT/KNIGHT 第7話 姉妹
鎮 :思念を伝えるは巫女(みこ)の声
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