Knight/Night 第5話 家族 作:福山漱流

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鬼島 涼 (きじま りょう):鬼の一族を統率する組織『鬼島組』の組長。人間界では17歳と偽っているが200歳を優に越えている。
              楽観的で浮ついた性格だが、仲間思い。ヘブリニッジを統括していた鬼の一族、鬼島家の現当主。

鬼島 美嘉(きじま みか) :涼の双子の妹。いささかブラコンの気がある、小悪魔少女。
              15歳と偽っているが兄と同じく200歳を越える。

西魅 孝征(にしみ たかゆき):鬼島組最高顧問。古くから鬼島家を補佐してきた。見た目30代。
               性格は義に厚く、真面目。これと決めたらそれを貫くタイプ。
               実質、次期組長となる実力はあったが、その座を前組長の遺志だったこともあり涼にゆずった。

魄稜 摩季(はくりょう まき) :鬼島組直系 魄稜会 会長。妖艶であり、頭の回る狡猾な女性。見た目30代前半。
               実力のみでのし上がってきたタイプで、高い向上心を持つ。
               
魁村 輝久(かいむら てるひさ):鬼島組直系 魁村組 組長。インテリタイプで神経質。見た目30代前半。
               元々二次団体の組だった魁村組を一代で直系にまで押し上げた実力者。
               
犀魏 拓臣(さいぎ たくみ):鬼島組直系 犀魏組 組長。30代の見た目。
             脳筋という言葉が似合う気性の戦闘狂。横柄な態度で人と接する事が多く、周囲から反感を買うことが多い。
             刃向かうものは全て力ずくでねじ伏せてきており、『鬼島の暴龍』のあだ名が付くほど。龍の由来は右の肩から腕にかけて彫られた刺青から。

樋高 郁(ひだか いく):鬼島組若頭補佐。見た目20代。涼や美嘉と腹違いの姉で人間との混血。母親の死によって鬼島家に引き取られ、現在の地位に。
           父親との確執はあるが、涼や美嘉との関係は良好。性格は温厚であり争い事はなるべく避ける。

♂涼:
♂孝征:
♂輝久:
♂拓臣:
♀美嘉:
♀摩季:
♀郁:
______________________________________________

郁 :涼くん、起きてる?

涼 :ああ、起きてるよ。義姉さん。

郁 :今日でしょ?鬼島組引継ぎの幹部会。

涼 :そうなんだけどね・・・。はぁ・・・。

美嘉:憂鬱そうね。お兄様?

郁 :あ、美嘉ちゃん。おはよう。

美嘉:おはよう。お義姉様。今日は進行よろしくね。

郁 :うん。荒事にならないといいけどね。(苦笑)

涼 :そこは、西魅さんがなんとかしてくれるだろ。

美嘉:そこはお兄様がなんとかするのではなくって?

涼 :そうだけど・・・うーん。

美嘉:お兄様は自信を持ってくださいな。次からこの鬼島組を率いるんでしょ。
   それとも、鎮さんに啖呵(たんか)切っておきながら、尻尾を巻いて逃げますか?

郁 :美嘉ちゃん。あまり嫌味言わないであげて。

美嘉:これくらいが丁度良いの。お義姉様は甘過ぎなんです。

郁 :もう・・・。

涼 :はぁ・・・。ま、うだうだしててもしょうがないか。時間もないし。

郁 :それじゃあ、行こうか。


孝征:Knight/Night 第5話 家族


美嘉:でも、上手く纏めてくれるか不安だったりするのよね。義姉様って。

摩季:ん~?なんか言った?美嘉ちゃん。

美嘉:いえ、なんでもないです。

摩季:あー、もしかして、お兄さんが緊張してないか不安だったりするのかなぁ?

美嘉:えっと、まぁ、そんなものです。

摩季:やーん。かわいいー。けなげに兄を思う妹キャラって私、萌えるのよねぇ。

美嘉:そ、そうですか(苦笑

輝久:遅くなりました。

摩季:あ、テルちゃんだ。おひさぁ~。

輝久:どうも、魄稜さん。妹様も。ご無沙汰しております。・・・おや?犀魏は?

拓臣:あ?オレがどうかしたか?(威圧)

輝久:ああ、居たのですか。これは失礼。

拓臣:分かったならさっさとそこをどけや。邪魔なんや。入れへんやろが。

輝久:そうですね。あなたは無駄に図体がでかいですし?

拓臣:あぁ?喧嘩うっとんのかワレ。

輝久:そう思いますか?

拓臣:どうやら、痛い目みぃひんとわからんようやのぉ?

孝征:そこまでだ。やめろ、二人とも。

摩季:あ、西魅さん。やっほー。

孝征:ここを何処だと考えてる。鉄火場じゃないんだぞ。

輝久:分かってますよ。

拓臣:ふん。命拾いしたのぅ。

輝久:あなたがね。

拓臣:言ってろ小僧が。

孝征:・・・皆、揃ったようだな。

輝久:次期当主はどうしたんです?

涼 :遅れて済まない。此所にいる。

郁 :こ、こんにちは。

摩季:へぇ、見違えたねぇ。涼君も羽織着たら一人前に見えるわ。

輝久:魄稜さん。次期当主にそのような口の聞き方は失礼です。

摩季:かったいなぁ。いーじゃんねーぇ?別に。

涼 :え、ああ。まぁ。それは・・・

孝征:よくない。こういう場所では敬意を払え。

摩季:ちぇっ、はいはーい。

孝征:それでは、これより当主選定の儀を行う。
   まず、候補者だが、通例により、前当主の実子である鬼島涼が候補者に上がっている。

拓臣:なぁ、相談役。ちょっとええか?

孝征:どうした。犀魏。

拓臣:先代の子供が次期当主ってのは理解しとる。
   だがよぉ、実子の中で一番の年長者な郁ちゃんが何でハブられとるんや?

摩季:べっつにどうだっていいじゃない。

郁 :あの・・・その件は私から説明させてもらいます。

輝久:聴かせていただきましょう。

郁 :皆様ご存じの通り、鬼島家は血統を重んじています。
   それは、実子の中でも同じです。・・・私は、その・・・人間とのハーフなので。

拓臣:だから、ハブやということか。可哀想やのぅ。

涼 :誤解が無いように言うが、ハーフだからといって俺の姉には変わりない。
   それに、俺は義姉さんをないがしろにしているつもりは無い。

摩季:それはよく知ってるって。優しいもんね。涼く・・・じゃなかったわ。次期当主はさ。

輝久:質問はそのくらいで良いか?進めたいのだが?

拓臣:ああ、すまんの。もう、ええわ。

孝征:本題に戻す。候補者は鬼島涼の一人である。よって、必然的に当主として選出される訳だが、異論はないな?

摩季:異論なーし。

美嘉:私は言わずもがなです。

拓臣:ええんちゃうか。

輝久:認める前に、質問よろしいですか?

孝征:なんだ?

輝久:先代の頃、吸血鬼との抗争があったことはご存じですよね?
   また、その抗争終結のとき、相互領域への武力的不可侵協定が結ばれたことも。

拓臣:んなことがどうかしたんか。

輝久:今年でその不可侵協定が終わるのです。そこで、お聞きしたいのですが。
   次期当主。あなたは吸血鬼、特に『夜の王』と称される夜巳 鎮(やみ まもる)とも親交があるとか。

涼 :そうだが。それがどうかしたか?

美嘉:それが何か問題でも?

摩季:誰とツルもうがいいわよねぇ。

輝久:いいえ、問題になり得るのですよ。
   次期当主。貴方は、我ら鬼の同胞が連続して殺害されていることをご存じですか?

涼 :一応、知っているが。それが何か関係しているのか?

輝久:先日。ウチの組員が殺されまして、調べたんですよ。遺体を。
   そうしたら、在ったんですよ。噛み跡が。

拓臣:噛み跡だぁ?

輝久:ええ、噛み跡です。吸血鬼のもつ独特な歯形がくっきりと。

摩季:なにかの間違いじゃないの?

輝久:いいえ、間違いではありませんよ。しっかりと鑑定した結果です。
   なんなら、証拠でももってこさせましょうか?

孝征:輝久。お前は一体何が言いたいんだ?さっきから言っていることと次期当主認定にどう関係が在る。

輝久:ああ、回りくどいですか。すみません。
   私が言いたいのはこういう事です。吸血鬼が同胞を殺している現状、次期当主は戦争をするおつもりはありますか?ということです。

郁 :戦争だなんて・・・。

孝征:そんなことは今、決めることではないだろう。

輝久:決めるのではないですよ。あくまでお考えを聞きたいのです。
   どうなのです?次期当主。

涼 :俺は・・・。俺は、戦争はしたくない。

拓臣:だがよぉ、お坊ちゃん。こっちは身内を殺されてんだ。それを黙って見とけいうんかい。

涼 :そうじゃない。たしかに、身内が殺されているのは問題だ。それに黙っている訳にはいかない。
   だが、むやみに『やられたからやり返す』ってのも違うはずだ。

郁 :そうです。今、吸血鬼達と変に事を荒立てるのはこの土地、ヘブリニッジに住むの魔族全体にとって良い影響は与えません。

摩季:たしかにそうねぇ。一応、私達と吸血鬼はこの土地を二分する一大勢力だしね。

涼 :だから、まずは事実関係をしっかり確認して・・・

拓臣:事実関係はもうわかっとるやろが!吸血鬼どもが身内を殺したんやぞ!

孝征:だが、それが本当に吸血鬼の一族のどこかが指示したものとは限らない。
   個人同士の揉め事がこの結果になった可能性もある。

輝久:しかし、連続した殺害事件ですよ?とても、個人で行えるモノとは思えません。

涼 :だから、しっかりと確認がいるんだ。吸血鬼との繋がりを利用して、事実を確認する。
   それから、事件の詳細がはっきりした後に、どうするかを見当する。それが俺の意見だ。

輝久:そうですか・・・。分かりました。

孝征:話がわき道にそれたが・・・。輝久。お前は認めるのか?鬼島涼の当主就任には。

輝久:・・・ええ、いいでしょう。承認しますよ。

孝征:よろしい。では、今をもって鬼島組当主として鬼島涼が就任した。以後、彼に従うように。

摩季:はいはーい。

拓臣:ふん。わかっとるわ。

輝久:承りました。

郁 :それでは、これにて幹部会を終わります。皆様、ご足労ありがとうございました。


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拓臣:ふん。ヒヨッコが。

摩季:どうしたの?犀魏。

拓臣:どうしたもこうしたもあるかい。身内が殺されても、吸血鬼と仲良しこよしが気に食わん。

摩季:べつにいいじゃない。戦争なんて面倒じゃない。

拓臣:アホか、こっちはメンツを潰されとんねん。

摩季:だから、確認しようってことでしょう。すこしは頭を使いなさいよ。

拓臣:小難しいのは嫌いなんや。

摩季:あっそ。

拓臣:お前はどう思っとるんや?

摩季:私?別になんにも、私は私の好きにやるだけだしぃ。

拓臣:ふん。お前、なんか企んどるんちゃうやろうな?

摩季:ふふん。さぁ?どうかしらねぇ?

拓臣:ちっ・・・女狐が。

摩季:なんとでも言えば?あーあ、疲れたぁー。
   ま、今日決まった当主様のお手並みでも拝見しましょう?

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涼 :っだー。つかれたぁ・・・。

郁 :お疲れ様。

涼 :うん。ありがと、義姉さ・・・

美嘉:お兄様?

涼 :み、美嘉・・・?ど、どうしたんだよ。そんな怖い顔して・・・

美嘉:お兄様。なんです?あの幹部会でのヘタレは。

涼 :へ、ヘタレって・・・

美嘉:ヘタレじゃないですか。ろくに喋りもしないで会議のまとめ役はぜぇぇんぶ西魅さんと義姉さんに任せっきり。
   口を開いたと思ったら、子供っぽい説明しかできないなんて。

郁 :ちょ、ちょっと美嘉ちゃん言い過ぎだよ。

美嘉:いいんです。これくらい言ったって。

郁 :でも・・・。涼君すっごい凹んでるんだけど・・・

涼 :へ、ヘタレ・・・。子供っぽい・・・。

美嘉:幾らお兄様のそう言ったところが私の胸キュンなツボを押さえていると言っても、今回ばかりは言わせて貰います!

孝征:それくらいで良いじゃないですか。美嘉さん。

美嘉:あ、西魅さん。

孝征:誰しも、初めはこのようなモノです。先代もそうでした。

美嘉:お父様も?

孝征:ええ、ガチガチに緊張しておられました。だから、今日のことはこれくらいで。

美嘉:西魅さんがそう言うなら・・・

孝征:・・・当主。すこしよろしいですか?

涼 :え、あ、うん。なに?

孝征:どうするおつもりですか?

涼 :どうするって・・・。

孝征:先程、輝久が言っていた件ですよ。

涼 :ああ・・・。あれね・・・。

郁 :先程の会議で決まったんじゃ・・・

孝征:決まった事は『目下、やること』です。その先がまだ決まっていない。

美嘉:その先って・・・。

郁 :それってもしかして、本当に吸血鬼が私達を滅ぼそうとしていたらってことですか?

孝征:もちろん。そういうことです。

涼 :どうするったって・・・そんな今から考えても・・・

孝征:今から考えねばいけないのです。事が起こってからでは、最低限の被害ではすまなくなります。

涼 :でも、だからってダチを疑う訳には・・・

孝征:疑えとは言いません。ですが、非常のことには備えるべきです。

美嘉:西魅さんの言う通り。割り切りなさい。お兄様。

涼 :わ、わかったよ。とりあえず、考えておく。

孝征:お願いします。それでは、私は執務室におりますので。

美嘉:じゃ、私はちょっと出て来ようかなー。

郁 :・・・涼君。大丈夫?

涼 :ああ、まぁ、うん。・・・義姉さん。ちょっと一人にしてくれねぇかな。

郁 :それはいいけど。

涼 :大丈夫。ちょっと落ち着きたいだけだから。

郁 :それじゃ、自室にいるから、用事があったら言ってね?

涼 :うん。ありがとう義姉さん。

(郁。退室)

涼 :はぁ、当主ってしんどいな。
   ・・・鎮。俺は一体どうりゃあいい?


郁 :次回予告

拓臣:街で起こる死の連鎖

摩季:浮かび上がる証拠

涼 :その糸は、友へと繋がる

孝征:刻まれた詩が紡ぐモノは

美嘉:次回 Night/Knight 第6話 1つのシ

輝久:その組織力。見せて貰いましょう。



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