Night/Knight(ナイト・ナイト) 第2話 BEGINNING(ビギニング) 作:福山漱流
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夜巳 鎮(やみ まもる):純血の吸血鬼。見た目17歳くらいだが、実年齢は200オーバー。感情の起伏が浅く、常に怒っているように思われる。
水原 裕美(みずはら ひろみ):夜巳に仕える吸血鬼。20代の見た目をしている。人間との混血である故に、捨てられて居たところを鎮に拾われる。
瀟洒で人付き合いの良いタイプ。
鬼島 涼 (きじま りょう):鬼の一族を率いる族長。人間界では17歳と偽っているが200歳を優に越えている。楽観的で浮ついた性格だが、仲間思い。
鬼島 美嘉(きじま みか) :涼の双子の妹。いささかブラコンの気がある、小悪魔少女。15歳と偽っているが兄と同じく200歳を越える。
ブランドン・マールスフェルト:20代後半。聖十字協会所属の魔術師。男爵の爵位を持つ。
鎮とは腐れ縁のライバルであり、しょっちゅう小言をいう保護者の様な存在。
術式形態はアゾット剣を用いた魔術を織り交ぜた近接攻撃。及びアゾット剣に封印された人工魔獣をつかったもの。
マリアン・グロリア・シサリーザ:20代後半から30代。聖十字協会所属の魔術師。伯爵の爵位を持つ。
聖十字協会の幹部であり、普段の仕事はもっぱらのデスクワークである。
ブランドンの直属の上司。若くして聖十字協会の幹部となっただけあり、頭の回る策師。
常に冷静であるが冗談も言える社交的なタイプ。
結界術に長け、護身術式である結界術であっても中位魔族相手に苦戦しないほど。
♂鎮:
♀裕美:
♂涼:
♀美嘉:
♂ブランドン:
♀マリアン:
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マリアン :ブランドン。いるか?
ブランドン:ほいよ。どうしたよ?シサリーザ。
マリアン :いや、用事という用事ではないんだがね。
ブランドン:どうしたよ。やけに歯切れが悪いな。
マリアン :これを見ると分かる。
ブランドン:居住魔族の危険度ランクか?
マリアン :更新があったらしくてな。それが今朝送られてきた。
ブランドン:特に変わったところは無さそうだけどな。
マリアン :Bランクまではな。つぎ、見てみろ。
ブランドン:・・・なんだよ。これ。
マリアン :吸血鬼四名家及び、鬼島組はそろって一段階アップのA(えー)ランク。
そして、唯一のA+(えーぷらす)に。
ブランドン:夜巳 鎮(やみ まもる)だと・・・?
マリアン :なにか情報はあるか?こうなる原因になりそうな事件はあったか?
ブランドン:んなもん、あるわけねぇよ。
俺も今驚いてるくらいだ。
マリアン :これは・・・少しおかしいぞ。
ブランドン:上が何かしでかそうとしてやがんのか?
マリアン :わからん。・・・だが、調べてみる価値はある。
ブランドン:今日、奴に逢いに行ってくる。このことを本人に聞いてみるわ。
マリアン :私も使い魔を飛ばして街を探ってみることにしよう。手分けして情報を集めよう。
ブランドン:了解だ。あー、ちなみに。悟られないようにな?他の魔術師のヤツらに。
マリアン :それは、どういう意味だ?私が悟られるヘマをするとでも?
ブランドン:念を押したまでだっての。まぁ、心配はしてねぇよ。
マリアン :形だけ感謝しておくよ。
ブランドン:それじゃ、行ってくるわ。後でまた来る。
マリアン :情報待って居る。
美嘉 :Night/Knight(ナイト・ナイト) 第2話 BEGINNING(ビギニング)
鎮 :嫌だ。父さん、母さんっ!だめ・・・っ!?夢か。(溜め息)久しぶりに見たな。あんな夢。
裕美 :マスター。起きてらっしゃいますか?
鎮 :ああ、何だ?裕美。入って良いぞ。
裕美 :失礼します。マスター、鬼島さんの所から使い魔が。
鎮 :使い魔か・・・。なんだって?
裕美 :何でも、話したい事があるらしくて。
鎮 :そうか、なんだろうな。
裕美 :それは、行って見ない限り分からないですね。
鎮 :無駄足を踏みたくはないんだがな。
裕美 :断りますか?
鎮 :・・・いや、行こう。しばらくぶりの再会にもなるしな。
裕美 :では、お供いたします。
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美嘉 :ねぇ、お兄さま。
涼 :なんだ?美嘉。
美嘉 :来ると思う?鎮さん。
涼 :さぁな、多分来るんじゃないか?
美嘉 :多分なの?
涼 :気まぐれなヤツだからな。どう転がるか分からない。
美嘉 :そっか、私は会いたいんだけど。鎮さんに。
涼 :いっそのこと家に押しかけてみるか。
美嘉 :それもいいかもしれない。そうなれば、お兄様。さっそく・・・
涼 :ってそんな事をいってたら来たみたいだな。あいつ。
美嘉 :あら?そうみたいですね。
鎮 :・・・何なんだ?鬼島。俺を呼び出すなど。
涼 :つれないなぁ。折角幼なじみがデートのお誘いをしたって言うのにぃ。
鎮 :知らん。俺はお前と違って忙しいんだ。用もなく呼び出したのなら帰るぞ。
涼 :まてまてまて、そうカリカリするなよ。鎮。別に全く用がなくて呼び出したんじゃないからよ。
鎮 :それじゃあ、早く用件を言ったらどうだ?
涼 :ったく。俺も言いたいのは山々なんだが、どうにも言い出しづらくってなぁ。
鎮 :ならば、血でも吸って記憶を引き出してやろうか?
涼 :それはカンベンだ。・・・よし、言うからな?行くぞ?
俺、今の一族を率いる事にした。
鎮 :そうか、それは良かったな。
涼 :・・・あれ?
鎮 :用件はそれだけか?
涼 :おいおい。待ってくれ。もうちょっと何か反応あってもよくねぇか!?
鎮 :お前の一族が誰を族長にするかなんてものは、一切興味ないからな。
涼 :冷血め!お前の血は何色だ!
鎮 :もれなく赤いがどうかしたか?
涼 :いや・・・そういう意味じゃなくって・・・。
美嘉 :お兄様は、鎮さんに褒めて欲しいのですよ。
鎮 :ん?お前は確か・・・。
涼 :おう、妹の美嘉だ。ガキの頃一緒になって遊んだろ?
美嘉 :お久しぶりですわ。鎮さん。
鎮 :ああ、そうだな。それで、俺が褒めたら何かなるのか?
涼 :いや、こう、何かなるんじゃ無くってだな。その・・・
裕美 :要は、マスターと同じ立場になったから、種族は違っても、今と同じように仲良くしようと言う事ですよ。
涼 :そう!そうそうそう!そういうことだよ鎮!
鎮 :だったら、回りくどく言わず、さっさとそういえば良いだろう。
裕美 :マスターが、鈍感すぎるんですよ。
美嘉 :そうそう、裕美さんの言うとおり。
涼 :やべ。俺、味方に恵まれてる気がする!
鎮 :相変わらずおめでたいな。涼。
涼 :なんか凄く心に刺さるんですけど・・・
鎮 :どうでもいいが、とりあえず、お前の要望は聞き入れた。
こちらとしても、お前達の一族と正面切って喧嘩はしたくないからな。
美嘉 :当たり前ですわ。一昔前の血みどろの争いは繰り返したくないですから。
裕美 :確かに、それは言えてます。私自身、その争いは聞いた程度ですけど。
涼 :何事も平和が一番!ウィー・ラブ・ピースっ!普通そうだろ?・・・でもなぁ。
鎮 :なにかあったのか?
涼 :あー、これまた、言いづらくてな。
美嘉 :お兄様に人望が無くって一族の一部が離反したの。
裕美 :離反ですか。・・・ぷっ。
涼 :笑われたっ!?
美嘉 :普通そうなりますわよね。美嘉は遠くから応援してますわ。お兄様。
涼 :味方が一気に敵側に!?
鎮 :代替わりすると離反が起こりやすくなるのは、そう珍しいことではないだろう。何がいけない?
涼 :いや、離反自体はどうでも良いんだ。信頼に足る人間じゃないって思われても仕方ないと、俺自身思ってる。
裕美 :自覚有るんですね。フフっ。
涼 :揚げ足をとらないでくれっ!・・・だから、離反は別にどうでも良いんだが。離反組の思想がな。
裕美 :なにか気になることでも?
美嘉 :それが、過去の栄光を取り戻すとか。
鎮 :過去の栄光ねぇ。人に恐れられて生きてく道は終わったはずだろ。
涼 :『劣等種に支配されるのは許せない』んだと。一時期人間に憧れてたヤツらがよく言うぜ。
鎮 :それを俺らに言ってどうするんだ?まさか、同盟を組む以上協力しろと?
美嘉 :いいえ。そういう意味じゃありませんわ。ただ、注意してくださいと一言伝えたくて。
裕美 :注意・・・ですか。
鎮 :そいつらが、俺らに手を出すって言う事か。
涼 :もしかするとの話だよ。過去の栄光を取り戻すって言ってるんだ。
外来種であるお前等、吸血鬼に対しても『滅ぼすべき敵』として向かってくる。
鎮 :向かってくるのならば、何であろうが撃滅する。それだけだ。
涼 :なぁ、どうしてそんなに暴力的なんだ?お前の家って融和派だったろ。
鎮 :それは、親の代までだ。これからは違う。
美嘉 :・・・鎮さんも、人間を消し去るべきって考えてるのかしら?
裕美 :そうじゃありません。こちらへ手を出すのであれば、それは容赦しないという意味です。
鎮 :甘過ぎな融和は自らを殺すんだ。
涼 :・・・なぁ、お前の方こそ、何かあったのか。昔はそんな冷たいヤツじゃなかっただろ。お前。
鎮 :さぁな。お前の目が節穴なのかもしれない。
美嘉 :あら、お兄様の目は節穴なんかじゃありませんわ!ちょっと、お馬鹿なだけです!
涼 :美嘉・・・それ、フォローになってないぞ?
美嘉 :あら?そう?この位がお兄様にとっては丁度良いのではなくって?
涼 :俺はドMじゃねぇっ!
鎮 :とりあえず、情報はありがたく受け取る。
裕美 :用心させていただきますね。それでは。
美嘉 :ええ。ありがとう。また、家に遊びにいらしてね?
涼 :ちょっとばっかり気が荒いヤツらが多いが、お前らだったら歓迎するからよ。
鎮 :気が向いたら、な。・・・時に。いつまでそこで見てるんだ?ブランドン。
ブランドン:なんだよ。ばれてたのか。だったら最初から誘えっての。
涼 :不穏な感じがすると思ったら、お前だったのか。
ブランドン:オレじゃ悪いかよ。
美嘉 :趣味が悪いですわ。立ち聞きなんて。
涼 :いつものことだけどな。
ブランドン:職務だからしかたねーんだよ。こっちも好きでやってる訳じゃない。
鎮 :で、なんの用事だ?ブランドン。
ブランドン:それは秘密だ。
涼 :相変わらずの秘密主義か。
ブランドン:そういう組織だからな。しかたねぇよ。諦めろ。
鎮 :だが、大体わかる。お前がなにをしに来たか。
涼 :さすが、ツーカーの仲なだけはあるな。
鎮 :コイツと俺はそんなんじゃない。
ブランドン:・・・なるほど。化け猫亭の親父が言ってたのはこういうことか。
裕美 :マスター。どうしますか?排除しましょうか?
ブランドン:おいおい。止めてくれ。オレは争いに来た訳じゃねぇ。
美嘉 :あーあ。なんか色々めちゃくちゃになってしまいました。
ブランドン:俺の所為かよ!
鎮 :それ以外に何がある。
美嘉 :まったく、これじゃ話が進まないわね。
ブランドン:はいはい。俺が悪かったよ。お邪魔虫は帰ることにするわ。
お嬢さんたちにも嫌われてるみたいだしな。
涼 :女運がないな。おまえって。
ブランドン:何とでも言えばいい。
・・・あー、そうそう。最後にこれだけ聞いておくぜ。お前等、戦争する気か?
美嘉 :縁起でもない事を言わないで。
裕美 :そんなに戦争がしたいのですか?貴方たちは。
ブランドン:ンな訳ないだろ、ただ、火の粉が降りかかって来ない様に見計らってるだけだっての。
涼 :昔から知り合いな俺らが戦争なんかする訳ねぇだろ?なぁ、鎮。
鎮 :さぁな。どうなるだろうな。
涼 :おい、そんな事言うなって。
鎮 :言ったはずだ。俺らは向かってくる敵は全て撃滅する。
それまでは、争う気は無い。
ブランドン:・・・理解した。それじゃ、もう1つ質問だ。
お前等、この街でなにかやらかしたか?
美嘉 :はぁ?なんでです?
裕美 :そうする必要性が皆無ですが?
ブランドン:そりゃあ、俺も分かってるんだよ。だがな、上はそう思っちゃいねぇ。
美嘉 :それはどうしてです?
ブランドン:お前等に危険度がランク付けされてるのは知っているな?
裕美 :もしかして、ここにいる。誰かの危険度が上がったと?
ブランドン:此所にいる全員だ。
美嘉 :はぁ?心当たりが無いにも程があるのだけど。
涼 :なにもしてないのにAランクってどういうことだ?
鎮 :・・・フン。当然だな。
ブランドン:心当たりがあると?
鎮 :いや、無い。だが、この状況をみれば当然だろう?
ブランドン:えらく、冷静だな。これから狙われ始める可能性がでかいんだぞ?
鎮 :覚悟の上だ。
ブランドン:覚悟・・・ね。分かったよ。本当に俺は帰ることにするわ。んじゃな。
涼 :なんだったんだよ。アイツ。いきなり現れたかと思ったらさっさと帰りやがって。
鎮 :涼。
涼 :ん?なんだよ?
鎮 :当主になるのなら、覚悟をしておけ。友人だとかそんなことは通用しない。
特に、この世界はな。
美嘉 :成長しないとね。お兄様?
涼 :はいはい。がんばりますよ。
裕美 :マスター。よろしいですか?
鎮 :なんだ?
裕美 :そろそろ夜が明けます。
鎮 :もうそんな時間か。そろそろいいか?涼。
涼 :ああ、長々と悪かったな。
美嘉 :また、会いましょう?鎮様。
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ブランドン:帰ったぜ。シサリーザ。
マリアン :どうだった?ブランドン。
ブランドン:どうもこうもねぇ、ランクが上がる理由はない。
マリアン :ではどういう事だ?
ブランドン:鬼島組の代替わりが近いからって事だとしてもおかしいのは確かだ。
マリアン :・・・私の方でも探りを掛けてみるか。
ブランドン:封滅騎士どもは来ると思うか?
マリアン :来る。必ずな。タカ派共が潰したくてうずうずしている街だからな。
ブランドン:なんとかして防げないか?時間稼ぎ程度で良い。
マリアン :難しいが・・・やってみるさ。
ブランドン:頼むぜ。支部長様。
マリアン :そう呼ぶな。気持ちが悪い。
ブランドン:へーへー。とりあえず、俺は暫く街に潜ることにする。
マリアン :マシューも連れていけ。
ブランドン:ああ、そのつもりだ。連絡はそっちに『犬』をやる。
マリアン :ああ、わかった。よろしく頼む。
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涼 :次回予告
美嘉 :今宵の闇に潜むは日の元に生きるモノ。
裕美 :その力は世の安寧の為に在れ。
鎮 :次回 Night/Knight 第3話「光の傀儡(かいらい)」
ブランドン:闇に舞うは、鎧
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