アウトライン サイドツヴァイ 第三話 イレギュラー

ジーク♂ 24歳 寒冷地帯にある大国、カルテツォーネの正規軍に所属する騎士、階級は少尉。
若くして小隊長を任されている凄腕。真面目な性格で仲間思い。
アラン♂ 21歳 寒冷地帯にある大国、カルテツォーネの正規軍に所属する騎士、階級は准尉。
戦闘の腕は立つが、部隊を率いるには青い所の残る青年、少し熱くなりやすい。
フレッド♂ 20歳 寒冷地帯にある大国、カルテツォーネの正規軍に所属する狩人、階級は曹長。
明るい性格で無邪気な青年、村では弓の腕を活かし見張りをしている。
ヘリオト♂ 24歳 村に突然現れた小柄な男、異国の装いでナイフを腰に携えている。
意味深な言い回しをし、戦いを楽しんでいる節がある。
ソフィ♀ 22歳 寒冷地帯にある大国、カルテツォーネの正規軍に所属する僧侶、階級は准尉。
呪文も近接もこなす。ジークを尊敬してやまない、真面目だがジークの事になると熱くなる。
エマ♀ 20歳 寒冷地帯にある大国、カルテツォーネの正規軍に所属する魔術師、階級は曹長。
大人しいがはっきりとした意思を持った女性。視野も広く、若いながらも見識も深い。





ジーク♂:
アラン♂:
フレッド♂:
ヘリオト♂:
ソフィ♀:
エマ♀:



ソフィ「隊長!ジーク隊長!」

ジーク「どうしたソフィ、何事だ」

ソフィ「敵が、敵が来ています!ただいまアラン、フレッド、エマ、三名で応戦していますが、
    苦戦を強いられております、どうかご助力を!」

ジーク「分かった、すぐ向かおう、敵数は?」

ソフィ「それが・・・・、一名なんです」

ジーク「なんだと?」


ヘリオト「アウトライン サイドツヴァイ 第三話 イレギュラー」


アランN「時は、少し遡る・・・」

フレッド「む、貴方、見ない顔ですね、この村の者では無いようですが、何か御用でしたか?」

ヘリオト「用・・・、あぁ、用と言えば用だな」

フレッド「申し訳ありません、差し支えなければ一度ここでお伺いさせていただいてもよろしいでしょうか?」

ヘリオト「お前一人じゃ話にならない、他の奴も呼んで欲しい」

フレッド「む、ではここでお答えできないような内容なので?」

ヘリオト「伝えたぞ、他の奴も、呼べ」

エマ「どうしたの?フレッド」

フレッド「あぁ、エマ、こちらの方がここに用らしいんだけど、内容を話してくれなくて・・・」

エマ「あ、申し訳ございません、見た所武器をお持ちなので、どうしてもお話出来ないと言うことであれば、
   一度武器をお預かりしまして、身体検査をさせていただきたいのですが・・・」

ヘリオト「・・・・・・二人でも足らない」

エマ「え、どういう事で・・・?」

ヘリオト「最後だ、他の奴を呼べ」

アラン「さっきから見てりゃなんなんだお前、まずは用件を言えって言ってるだろ」

ヘリオト「前衛1、後衛2って所か、多少はマシになるか」

アラン「さっきから訳のわからない事ばかり、つまみ出されたいか、ガキ」

ヘリオト「ガキ?フッ、そう見えるか、まぁそうだろうな、
     一つだけ教えてくれ、お前たちは、こっちの人間か?
     それともここの人間か?」

アラン「は?だからさっきから意味が分からないって・・・」

フレッド「っ、アランさん危ない!はぁ!」

ヘリオト「っと、咄嗟の反応の割りに正確な狙い、いいハンターで良かったな、剣士」

アラン「すまないフレッド、助かった、クソ、舐めやがって、
    人をバカにすると、どうなるか思い知らせてやる!はぁ!」

ヘリオト「一人で突っ込んでくるか、力の差も分からぬ猪め、フッ!」

アラン「なっ、かわした!?」

ヘリオト「馬鹿な前衛を持つ事ほど不幸なことは無いな!あっははは!」

エマ「っ、こっちに!?」

フレッド「エマ、落ち着いて!迎撃だよ!」

エマ「う、うん!フレイムエッジ!」

フレッド「アローレイン!」

ヘリオト「下官の方がむしろ冷静か、だが、弾幕が甘い!シュネルシャッテン」

エマ「消えた!?」

ヘリオト「どこを見ているメイジ」

エマ「っ、後ろ!?」

ヘリオト「まずは、一人!」

エマ「ひっ」

ソフィ「させない、プロテクト!」

ヘリオト「っと、このまま盾を斬るは愚者のすることか、よっ!」

ソフィ「ごめんなさい、遅れたわね」

フレッド「いえ、間に合ってよかったですよ」

アラン「ソフィ!何してたんだよ!」

ジーク「私を呼びに来てくれていたのだ、待たせたな、闖入(ちんにゅう)者よ、私がここの責任者だ」

ヘリオト「いや、構わないよ、いつ介入してくるかと思って楽しみにしていたが、
     思いの他紳士で驚いたよ、本当に勝つ気が、いや生き残るつもりがあるのか?」

ジーク「ほう、という事は我々の存在には気付いていたと?」

ヘリオト「外れに戦えそうなのが一人いた、それが急いでここから離れた、
     となれば増援を呼びに行ったと考えるのが自然だ、
     だが、失策だぞ、クレリック、あそこは仲間を見捨ててでも攻撃すべきだった」

ソフィ「そんな事、出来る訳無いじゃない!」

ジーク「フッ、五人全員生き残ってお前を倒せば良いだけの事だ、
    失策ではなかった事を見せてやろう」

エマ「いくら貴方が強くても、この人数に勝てる訳がありません」

ヘリオト「人数を集め強くなったつもりでいる、いかにも弱者の考えだな、
     その考え、改めさせてやろう」

ソフィ「ふん、こっちこそ、貴方の天狗の鼻、叩き折ってあげるわ、
    行くわよみんな、シャープネス!」

ジーク「こちら側の人数が多すぎるのは流儀に反するのだが、
    そうも言ってられまい、行くぞ、アラン!」

アラン「はい!今度は外さない、グリッターダブル!」

ジーク「コメットブレイク!」

ヘリオト「イルズィオン」

アラン「棒立ちかよ、取った!」

ジーク「はぁ!っ!?手応えが・・・」

アラン「無い!?」

フレッド「そうそう似たような手にはかからないよ、マグナムブレッド!」

エマ「シューティングスター!」

ヘリオト「優秀な後衛だ、これはクエストを受けてくるべきだったかな・・・、
     フェアシュテルクング」

ソフィ「やった、直撃!」

ヘリオト「と、ふぅ、服が汚れてしまった、この装備を整えるのに何Mしたと思っているんだい」

フレッド「なっ、矢を、手で受け止めたって言うのか・・・・」

エマ「そんな、速さ重視の術とはいえ、直撃で全く応えないなんて・・・」

ヘリオト「俺に強化スキルを使わせるなんて大したもんだよ、賞賛に値する」

ソフィ「何よこいつ、見た事も聞いた事もない技ばかり・・・・」

ヘリオト「それはお互い様だろう、まぁ、凡人には今のこの状況、理解が出来るとも思えないけど」

ソフィ「この状況・・・・、まさか一昨日の、貴方、何か知ってるの!?」

ヘリオト「くくっ、お前たちも見たか、異常を」

ソフィ「何か知ってるのかって聞いてるのよ!」

ヘリオト「この世界の大多数よりは詳しいと自負している」

アラン「なら、ここで捕らえて、洗いざらい吐かせてやる」

ヘリオト「野蛮だな、もし仮に捕まったとして、俺が話すような人間に見えるかい?」

ジーク「意外とそういう人間ほど苦痛には弱いものだ」

ヘリオト「それには同感だ、経験がない訳じゃない」

フレッド「皆さん、あれは異質な物です、存在だけじゃない、精神も、
     話していては我々が飲まれるだけです」

ヘリオト「精神も、か、ククッ、あっはははは!そうだろうねぇ、
     じゃなきゃ現状を受け入れるなんて事出来ないだろうさ、
     ・・・さて、それじゃあ相容れないもの同士、殺し合いを再開しようか?」

ジーク「アラン、捕らえる事は念頭に置くな」

アラン「どうしてですか?」

ジーク「剣が鈍る」

エマ「私は、初めからそのつもりです、あの人、フレッドを、アランさんを、殺そうとした・・・・!」

ヘリオト「少なくとも過半数は俺を殺したいと思ってくれてるようだ、嬉しい事この上ない、
     ゲームなんかじゃない、リアルがここにはある、それはなんて素晴らしいことなのだろうか!」

ソフィ「狂ってる・・・・」

フレッド「少尉、指示を」

ジーク「あぁ、アランは私と前衛を、ソフィは中衛でサポート、フレッド、エマは後衛から援護を」

アラン・フレッド・ソフィ・エマ「了解」

ヘリオト「ククッ、敵役というのはこういう気分なのか、おもしろい、さぁ、始めよう、リアルを!」

エマ「もう油断はしない、アイシクルトーネード!」

フレッド「次は、外さない、必殺必中、スナイプモード」

ヘリオト「やはり優秀な後衛はやっかいだ、タンツ・クリンゲ!」

アラン「へっ、どこに投げてやがる、戻ってくる前に片付けてやる、はぁ!」

ジーク「空拳の今がチャンスか、ぜぇい!」

ヘリオト「俺の武器が一つだって、いつ言った!」

アラン「くっ!隠し武器かよ、だが、そんなナイフ一本で俺の双剣を捌けると思うなぁ!」

ソフィ「アラン、加速させるわよ、ギアーアップ!」

アラン「サンキュー!これでテメェのスピードにも!」

ヘリオト「確かにその手数は面倒、だが、ヴァッフェ・ブレッヒェン」

アラン「な、俺の剣が!?」

ヘリオト「一本に減らしてしまえば戦力は半分以下だ、そして、っと、借りるぞ、
     お前の折れた刃、タンツ・クリンゲ!」

ソフィ「まさかあれ・・・!エマ、フレッド!」

ヘリオト「気付いたか、だが、遅い、クリンゲ・クーゲル!」

ソフィ「くっ、間に合え・・・、っはぁ!」

エマ「ぁ、フレッド!」

フレッド「っ、か、はっ・・・・」

エマ「フレッドぉぉおおおおおお!」

ヘリオト「他人の心配をしてる暇があると思ったら、大間違いだ」

エマ「っ、シューティング・・・・!っぐぅ!?」

ソフィ「そんな、弾いたはずなのに!?」

ヘリオト「殺す時は、急所を一撃で、だ」

アラン「フレッド!エマ!クソ、てめぇええええええええええ!」

ジーク「っ、熱くなるなアラン!」

ヘリオト「他人の事で死ぬのは面白く無いぞ、剣士」

アラン「うるせぇ、テメェで殺しといて、ふざけんじゃねぇ!」

ヘリオト「聞こえていないか、失望したよ」

ジーク「くっ、かわせよアラン、グランゲイル・ブレイドォォォオオオオ!」

ヘリオト「っ、このタイミングで大技か、いい思い切りだ、だが・・・・」

アラン「はぁああああ!」

ヘリオト「ふっ!」

アラン「っ、ぐぅ!?」

ジーク「アラン!?くっ、これではあいつに当たって・・・・」

ソフィ「隊長!技を止めてはダメ!」

ヘリオト「言っても無駄だ、死ね」

ジーク「ぐぅぅぅううう!?」

ソフィ「っ、隊長ぉぉおおおおおおお!」

ヘリオト「だから、失策だと言ったんだ」

ジーク「ごふっ・・・・、すま、ない・・・・・、アラン、ソフィ・・・・」

ソフィ「あ、あぁ・・・・」

ヘリオト「戦意喪失、か、甘いな、俺が快楽殺人者だったら全滅だったな、
     それじゃあ、またどこかで戦えたらいいね」


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アラン「ぐ・・・・・、ここ、は・・・・・?」

ソフィ「宿舎の中、よ・・・・・」

アラン「っ、敵、は!」

ソフィ「帰ったわよ・・・」

アラン「隊長、ジーク隊長は!?」

ソフィ「・・・・・・・」

アラン「おい、隊長はって聞いてんだろ」

ソフィ「・・・・・・死んだわ」

アラン「・・・・・嘘、だろ?」

ソフィ「・・・・・・」

アラン「おい、そんな冗談いらねぇぞ、隊長は最強なんだぜ、死ぬわけが無いだろ?」

ソフィ「そんな冗談、私が言うわけ無いじゃない・・・・・・」

アラン「嘘だ・・・・、嘘だ・・・・!」

ソフィ「嘘じゃないわ!隊長は、あんたを生かすために技を止めて、
    あいつに刺されて死んだのよ!」

アラン「俺を生かすために・・・・・?」

ソフィ「そうよ、あのままだったらあんたは隊長の攻撃で死んでた」

アラン「それじゃあ・・・・、俺が殺したようなもんじゃないかよ・・・・」

ソフィ「エマも、フレッドも・・・・、私が、もっと早く気付いてれば・・・・」

アラン「・・・・・・・なぁ、俺たち、これからどうすりゃいいんだ?」

ソフィ「分からないわよ・・・、そんなの・・・・・」

アラン「くそ、隊長じゃなくて、俺が、俺が代わりに死ねばよかったんだ、畜生、畜生!」

ソフィ「止めてよ!隊長はあんたを生かすために死んだのよ!?
    あんたがそんなんじゃ、死んだ隊長が報われないじゃない!」

アラン「けど、けど・・・・!俺、隊長がいなきゃ、何もできねぇよ・・・・」

ソフィ「そんな、弱音、聞きたくないよ・・・・、私だって、隊長がいないと・・・・」

アラン「・・・・そうだ、隊長の剣」

ソフィ「ぇ・・・?」

アラン「隊長の剣は?」

ソフィ「隊長の、部屋に・・・・」

アラン「隊長が成し得なかったことを、俺が」

ソフィ「・・・・・・」

アラン「隊長がいなきゃ何も出来ない、けど、隊長の意思は残ってる、
    話なら沢山聞いただろ、夢も語っただろ、その夢を、代わりに叶えるんだ」

ソフィ「・・・・・・考えるの、めんどくさくなったんでしょ?」

アラン「それもあるけどよ、弱音、聞きたくないんだろ、
    隊長が報われないんだろ」

ソフィ「ふふっ・・・・、少し、あんたが羨ましい・・・・」

アラン「まずは、情報を集めよう、他の部隊も同じ目に合ってるかもしれない、
    だから、まずは合流して、それから、あいつを追おう・・・・」

ソフィ「・・・・・うん」



ヘリオト「次回予告」

エマ「二人の予想は間違っていなかった」

フレッド「他の村でも、同じ様に、襲撃があったのだ」

ジーク「次回、アウトライン サイドツヴァイ 第四話 襲撃者の激変」

ヘリオト「理解していなければ、そうなるのは当然、だな」





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