アウトライン サイドアイン 第三話『システムアウト』

クロス♂ 17歳 ダイブインシステムを利用したMMORPG『ツヴァイト・ヴェルト』のプレイヤー。種族はヒューマン(人間)。
ゲームの事になるとテンションが上がるが、基本的には淡々としている。
紅蓮♂ 19歳 ダイブインシステムを利用したMMORPG『ツヴァイト・ヴェルト』のプレイヤー。種族はフィンスター(魔族)。
飄々として総じてテンションが高い。そしてうるさい。
チセ♀ 14歳 ダイブインシステムを利用したMMORPG『ツヴァイト・ヴェルト』のプレイヤー。種族はゲシュヴィント(小人)。
静かで大人しめ、オドオドした喋り方をするがしっかりはしている。
ケイン♂ 24歳 寒冷地帯にある大国、カルテツォーネの正規軍に所属する騎士、階級は曹長。
曲がった事が大嫌いで戦いは神聖なものだと思っている。良い意味で頑固。



―配役表―

クロス♂:
 紅蓮♂:
 チセ♀:
ケイン♂:



―――――――――――――――――――――――――――――――――

紅蓮:「戻るなら早く戻ろうぜ」

クロス:「そうだな、いつまでも此処に居て別のと会っても困るしな」

チセ:「………こっち………出口……」

紅蓮:「お、了解!」

クロス:「それにしても、バグは置いといて結構良いんじゃないか?
     アップデート」

紅蓮:「だな!アレだけ手応えあるのがあっちこっちに実装されたとなりゃ、
    皆大騒ぎだぜ」

クロス:「此処に来たのは俺たちだけみたいだし、
     街に戻ったら他の場所に行った奴らと情報交換だな」

紅蓮:「くぅ〜〜〜、他にはどんなんが居たんだろな、テンション上がるな!」



チセ:アウトライン サイドアイン 第三話『システムアウト』



ケイン:「お前達!何者だ!」

紅蓮:「あ?なんだぁ?」

ケイン:「森が騒がしいと思って来てみたら……
     貴様ら、あちこちに出没してるという異形か!」

クロス:「森が騒がしいと思って来てみた…か……
     さっきの蜘蛛に連動したクエストか何かって事か」

紅蓮:「みてぇだな…大歓迎…って言いたいところだが
    流石に疲労が溜まってるぜ?」

チセ:「離脱………する?……」

クロス:「話だけでも聞いてみよう。もし戦闘になるようだったら、
     離脱出来るように準備しといてくれ」

チセ:「了解……」

ケイン:「貴様らは何が目的だ!何故我らの土地へ踏み入る!」

紅蓮:「何故?何故って言われてもなぁ〜、そういうゲームだからだろ?」

ケイン:「ゲーム……?我々の土地を踏み荒らし、
     戦うのがゲームだと言うのか!?」

クロス:「今回はNPCとのやり取りも凝ってるな」

チセ:「ホント……まるで本物の人みたい…」

紅蓮:「そうだよ、ゲームだ。それ以上でもそれ以下でもない。
    って事だから何かあるなら早く言ってくれない?
    俺ら早く街に戻りてぇんだけど」

ケイン:「貴様ら……舐めやがって!ソニックエッジ!」

チセ:「紅蓮君…!」

ケイン:「貴様らの様な者を生かしておく訳にはいかない!
     此処で死んでもらう!」

クロス:「チセ、離脱の準備を」

チセ:「了解……」

ケイン:「ゲーム感覚の戦いで一体何人の民を殺めた!!答えろ!!」

紅蓮:「はっ、何が言いてぇか知らねぇが、
    いくら疲れてても売られた喧嘩を買わなきゃ男じゃねぇぜ!」

クロス:「紅蓮、ほどほどにして離脱するぞ!」

紅蓮:「俺が一発お見舞いしたらにしてくれよ」

ケイン:「離脱?………そこの小さい奴、貴様か?させぬ!はぁ!」

チセ:「キャッ!」

紅蓮:「チセ!!」

クロス:「マズイ、チセが集中出来ないと帰れないぞ」

ケイン:「貴様らの様な奴を見逃す訳にはいかんのだ!」

紅蓮:「チセから離れろぉぉお!!フランメカノーネ!!」

クロス:「フランメクローネ!!チセ、大丈夫か!?」

チセ:「うっ……ゴホッ……なんとか…」

ケイン:「見たことの無い術……手加減は出来ん、全力で叩き潰してくれる!!」

チセ:「いやっ!シャイン!」

ケイン:「くっ!ブレイブタックル!」

チセ:「キャァァア!!」

ケイン:「っ!いくらオナゴと言えど戦場で情けはかけん!」

紅蓮:「くっ!ブリッツカノーネ!」

クロス:「チセ!下がれ!」

チセ:「ぁ………」

ケイン:「ソニックエッジ!」

紅蓮:「チセ!」

チセ:「紅蓮…君……クロス…君…」

クロス:「ちっ、カルトクローネ」

紅蓮:「クロス!チセの復活を!」

クロス:「いや、それは後だ。こいつはアイテムを使う隙をくれそうもない」

紅蓮:「ちぃ!チセ待ってろよ!直ぐにこいつ倒すから」

ケイン:「貴様らなんぞに…戦いをゲームと言っている奴らになぞ…負けん!」

クロス:「それはどうかな。シュタールメルダー!」

ケイン:「ふんっ!」

紅蓮:「隙ありだぜ!ケッテパトローネ!」

ケイン:「まだまだぁ!!ファイアーエッジ!はぁぁあああ!」

クロス:「くっ!」

紅蓮:「クロス!サポート頼むぜぇ!照準セット、火力最大!」

ケイン:「させぬ!」

クロス:「おっと、そう何度も好きにさせるかよ!はぁ!」

ケイン:「な!?」

紅蓮:「チャージ完了!ぶっ放すぜぇぇえええ!!!ピュロマーネ!!」

ケイン:「グァァァアアア!!」

紅蓮:「はぁっ、はぁっ」

ケイン:「ぐっ……くそっ……貴様らなんぞに………
     好きに……させ……ぬ……」

紅蓮:「悪いなおっさん、ミッションコンプリートだ」

ケイン:「がっ…………」

紅蓮:「クロス、終わったぜ。早くチセの復活を」

クロス:「あぁ…ヴィーダー・ベレーブング」

紅蓮:「あれ?」

クロス:「なんだ…これ…?」

紅蓮:「どうした?」

クロス:「システムメッセージ、見てみろ」

チセ:このプレイヤーはゲームから除外された為、
   このアイテムは使用出来ません。

紅蓮:「な!?どういう事だよ!」

クロス:「そこだけじゃない、その上もだ」

チセ:プレイヤー名、チセこと山梨智瀬は死亡が確認された為、
   ゲームから除外されました。

紅蓮:「な………これ、チセの本名か?」

クロス:「おそらくな…」

紅蓮:「じゃぁ、なんだ!?これはリアルでのチセが死んだって事か!?」

クロス:「可能性が無い訳じゃないな。
     突発的な事故がリアル側であったか……
     もしくはこのゲームによって死んだか」

紅蓮:「このゲームによって、だと!?」

クロス:「もしリアルでの突発事故だとするならば、不可解な点が多すぎる。
     そもそもそれならシステムメッセージなんて出ないで
     接続切れで落ちる筈、そうだろ?」

紅蓮:「確かに今まで突然の停電やら何やらでゲームと切り離された奴らは
    その場で消えてたけどよ」

クロス:「だが、今回はシステムメッセージという形で原因が明確化され、
     尚且つ死体が消えないまま残っている。
     つまり、何らかの要因でゲームから切り離された訳じゃない」

紅蓮:「って事は、チセが死んだのは今戦ったNPCにやられたからだってのかよ!!」

クロス:「偶然の一致も無い訳ではないだろうけど、
     システムメッセージのタイミング的にその可能性が高いな」

紅蓮:「なっ!!っ!おいクロス!てめぇ何でそんな冷静なんだよ!」

クロス:「あくまで可能性の話だ。実際には只のバグだって可能性もある。
     不確定な事で騒いでも仕方ないだろ?」

紅蓮:「だからって、チセが死んだかもしれねぇんだぞ!」

クロス:「少なくとも現状じゃ確認のしようがない」

紅蓮:「っ!!!俺、ログアウトするわ」

クロス:「してどうする?
     リアルではチセがどこに住んでるかすら知らないんだぞ?」

紅蓮:「本名らしきモノは分かってんだ、警察に協力仰ぐなりなんなり出来る。
    少なくとも此処で何もしてねぇよりマシだ」

クロス:「警察がこんな事で動いてくれると思うか?どうやって説明する?
     ゲームで死んだかもしれないから調べてくれって?
     イタズラとしか思えないだろ」

紅蓮:「だったらどうしろってんだよ!!しょうがねぇだろ!
    今の俺にはこれぐらいしか出来ねぇんだからよ!」

クロス:「まず落ち着け。話はそれからだ」

紅蓮:「これが落ち着いて…っ!」

クロス:「落ち着け!俺が何も考えてないと思うか!?
     俺だって必死に自分に出来る事を考えてんだ!
     一人で取り乱してんじゃねぇ!!」

紅蓮:「……………悪かった」

クロス:「まず、ログアウトする事自体は賛成だ。
     だがそれはあくまでこのゲームで
     どんなアップデートが行われたかを確認する為だ」

紅蓮:「確認…?」

クロス:「そもそも正式な告知の無いアップデートそのものが
     良く考えれば異質なんだ。
     ログアウトすればきっと掲示板なりなんなりに
     アップデートの内容等が書かれてるか確認出来る」

紅蓮:「それって…つまり、もしかしたら
    今の現状がアップデートじゃねぇ可能性があるって事か?」

クロス:「突発的なサーバーの不調とかによって引き起こされたバグの副産物って可能性も出てきた。
     明らかにあのフラッシュアウトからゲームに歪みが生じてきているからな」

紅蓮:「だとしたらGMが気付くんじゃねぇのか?」

クロス:「そうなんだよな。普通は。だからそれも含めて確認したい。
     対処中ならそれも何らかの連絡が回ってるだろうから」

紅蓮:「それでチセはどうすんだよ」

クロス:「アップデートの仕様変更によるもの、例えばキャラリセとか、
     一時的なバグなら実際にリアルで何か起きてる可能性は低い。
     それなら時間が解決してくれるだろう」

紅蓮:「そのどちらでも無かった場合は?」

クロス:「その時は……やむを得ない、
     運営に問いかけて返答が無ければ強行手段にでる」

紅蓮:「分かった」

クロス:「悪いがログアウトはお前一人でしてくれ、
     不確定な今の状態でチセの死体を放置するのは危険だ」

紅蓮:「なら俺が残る。俺じゃお前みたいに冷静に事は進められねぇ」

クロス:「良いのか?」

紅蓮:「あぁ、その代わりちゃんと情報集めてこいよ」

クロス:「分かった。………アウト」

チセ:このゲームはログアウトする事が出来ません。

クロス:「!?」

紅蓮:「どうした?」

クロス:「悪い、紅蓮もちょっとアウトしてみてくれ」

紅蓮:「お、おぅ……アウト」

チセ:このゲームはログアウトする事が出来ません。

紅蓮:「マジかよ…アウト、アウト!アウト!!」

チセ:このゲームはログアウトする事が出来ません。
   このゲームはログアウトする事が出来ません。このゲームは……

紅蓮:「何でだよ!!」

クロス:「まさか……な…」

紅蓮:「クロス、これは一体どういう事だ!」

クロス:「もしかすると、俺が想定していた最悪の状態かもしれない…」

紅蓮:「何が一体どうなってるってんだよ!」

クロス:「紅蓮、これは俺の見解だ。確証は無いし、ただの妄想かもしれない。
     だからあまり本気に受け取るな」

紅蓮:「良いから早く話せ!」

クロス:「まず、この状態は一時的なバグではない。あまりに必然が多すぎる」

紅蓮:「じゃぁ…これは意図的にされてんのかよ!」

クロス:「もちろんバグの可能性も残ってるが今はバグじゃないと仮定して話を進めると、
     紅蓮の言ったとおり誰かが意図的にこういう状態を作り出していると考えた方が自然だ」

紅蓮:「なぁ、それって…まさかチセは…」

クロス:「あぁ、その場合実際に死んでいる可能性の方が高い…」

紅蓮:「ふざけんな!!誰かが引き起こした事で
    チセはリアルでも死んだってのかよ!ふざけんな!!!」

クロス:「そして、多分、これはチセに限った事じゃない。
     他の奴らもこのゲーム内で死んだ場合、
     リアルでも死ぬ可能性が高い。
     ピンポイントで一人だけって事は無いだろうからな」

紅蓮:「っ!」

クロス:「そして、アウト出来ない状況的に、
     俺たちはこのゲーム内で生き残り、尚且つ原因を探さなきゃならない」

紅蓮:「くそっ!一体何が目的で!」

クロス:「だが、これはあくまで一つの仮定だ。
     此処がまだ只のゲームで修正待ちって可能性も消し切れない。
     だからあまり鵜呑みにして感情的になるな」

紅蓮:「ちぃ!なら俺は、俺らはどうすれば良い!?
    此処でのうのうとゲームしてろってのか!?」

クロス:「まずは一度街に戻って情報収集だ。
     他のプレイヤーがどうなってるか知りたい」

紅蓮:「くそっ!」

クロス:「それにもしかしたら、今まで戦ってきた相手……」

紅蓮:「あ?相手がどうした?」

クロス:「いや、これは更に確証の無い話だからやめておく。
     とりあえず戻るぞ」

紅蓮:「………あぁ、こんな状態にしやがった奴が本当に居るならぶっ飛ばしてやる!」




チセ:そして二人は急いで街への帰路を辿る。
   ある筈のない死、何でこんな事になっちゃったのかな?
   お願い神様、二人をどうかこれ以上悲しませないで……










ケイン:『次回予告』

クロス:一方そのころ俺たち以外のパーティーも異変に見舞われていた

紅蓮:彼らは何を思い、何を残したのか

ケイン:次回 アウトライン サイドアイン 第四話 『殲滅任務』

チセ:今まで……ありがとう……



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