アウトライン サイドツヴァイ 第二話 劣悪な日常

ジーク♂ 24歳 寒冷地帯にある大国、カルテツォーネの正規軍に所属する騎士、階級は少尉。
若くして小隊長を任されている凄腕。真面目な性格で仲間思い。
アラン♂ 21歳 寒冷地帯にある大国、カルテツォーネの正規軍に所属する騎士、階級は准尉。
戦闘の腕は立つが、部隊を率いるには青い所の残る青年、少し熱くなりやすい。
フレッド♂ 20歳 寒冷地帯にある大国、カルテツォーネの正規軍に所属する狩人、階級は曹長。
明るい性格で無邪気な青年、村では弓の腕を活かし見張りをしている。
ソフィ♀ 22歳 寒冷地帯にある大国、カルテツォーネの正規軍に所属する僧侶、階級は准尉。
呪文も近接もこなす。ジークを尊敬してやまない、真面目だがジークの事になると熱くなる。
エマ♀ 20歳 寒冷地帯にある大国、カルテツォーネの正規軍に所属する魔術師、階級は曹長。
大人しいがはっきりとした意思を持った女性。視野も広く、若いながらも見識も深い。



配役表↓

ジーク♂:
アラン♂:
フレッド♂:
ソフィ♀:
エマ♀:



フレッド「あ、少尉!おはようございます!」

ジーク「フレッド、おはよう、今日も早起きだな」

フレッド「ありがとうございます、少尉も昨日遅くまで仕事してたのに、大丈夫ですか?」

ジーク「あぁ、問題ないよ、気遣いありがとう」

フレッド「いえいえ」

ソフィ「隊長、フレッド、おはようございます」

ジーク「ソフィも起きてきたか、おはよう」

フレッド「おはようございます!」

ソフィ「ふふっ、フレッドは寝起きでも元気ね、
    あいつとは大違い」

エマ「アランさんの事ですね、みなさん、おはようございます」

ジーク「エマもおはよう、大違いというと、あいつは?」

アラン「ふぁー・・・・・、あぁ、隊長、みんな・・・、おはようございます・・・・」

フレッド「見事に寝起きですね・・・」

エマ「アランさん、凄くみっともないです・・・」

ジーク「アラン」

アラン「ふぇ、なんですか?」

ジーク「顔を洗ってなりを整えて来い!」

アラン「は、はい!」


ソフィ「アウトライン サイドツヴァイ 第二話 劣悪な日常」


アラン「うぅ・・・・、さみぃ・・・・」

エマ「アランさん、大丈夫ですか?」

アラン「大丈夫、寝癖なりなんなり直すために頭から水被ったからな、
    頭が寒いだけだ」

エマ「ふふっ、ここは本国から離れてるとはいえ、まだ寒い地域ですものね」

アラン「そうだな、雪が常に積もって無いだけまだ住みやすいよな」

エマ「はい、その分敵国に近いのが辛い所ですけどね」

アラン「だからこそ、俺たちが頑張らないとだよな」

エマ「はい」

ソフィ「あらあら、偉そうな事言っちゃって、目は覚めたのかしら」

アラン「げ、ソフィ」

ソフィ「げっ、とは何よ」

アラン「別にー?他意はねぇよ」

ソフィ「ふーん、それなら別にいいのだけれど」

エマ「お二人はやっぱり仲いいですよね」

アラン「はぁ!?」

ソフィ「私がこいつと?ありえないわ!」

フレッド「いや、どっからどう見ても仲いいですよ、
     付き合ってるんじゃないかって思えるくらい」

ソフィ・アラン「それはない!」

フレッド「全力の否定ですね、ありがとうございます!」

エマ「その感謝は二人とも嬉しくないと思うよ、フレッド・・・」

フレッド「そうかな、でも俺は全力でぶつかって貰えるのは嬉しいよ」

アラン「自分の振った話題で盛り上がれたんだ、そりゃ嬉しいよな・・・・」

ソフィ「もう・・・、勘弁して欲しいわ・・・」

エマ「そうですね、ソフィさんは少尉の事が好きですものね」

ソフィ「すっ・・・・!違います!隊長の事は尊敬していますが、れ、恋愛感情なんて・・・・・!」

ジーク「ん、何やら盛り上がっているな」

ソフィ「た、隊長!」

アラン「ナイスタイミングですね、隊長、色んな意味で尊敬します」

ジーク「私の事で盛り上がっていたのか?」

アラン「そうなんですよー、実はソフィが・・・」

ソフィ「な、なんでもないんですよ!そんな事より、食料の件ですよね?」

ジーク「む、あぁ、少しまずいな」

エマ「今日の午前中も遭遇無しですか」

ジーク「無しだな、いや、正確に言うとゼロでは無いのだがな」

フレッド「と言いますと?」

ジーク「鹿の死体はあったのだ、それもかなり無残な物が、な」

フレッド「無残、ですか」

アラン「それは食用に持って帰って来るのは難しそうだった、という事ですよね?」

ジーク「そういう事だ、もちろん、綺麗だったとしても持って帰って来るのには、少しリスクが高いがな」

ソフィ「敵軍も我々が過酷な環境で生活をしている事を知っていますからね」

エマ「何か罠が仕掛けられていてもおかしく無いですね、もし毒を盛られてたりでもしたら・・・」

アラン「ゾッとするな・・・・」

フレッド「だとすると、狩りによる食料調達が上手く行かないのは、敵のせいではなさそうですね」

エマ「確かに、もし兵糧攻めをしようとしているのであれば、死体も残さないはずですし」

ソフィ「死体を残した理由が疫病などを狙ったものだとすれば?」

エマ「少尉、その死体は新しい物だったのですか?」

ジーク「そうだ、恐らく今朝の内の物だな」

エマ「だとすれば疫病の線は薄いと思います、もしそれをやるのであれば、
   あちらのリスクも上がりますが、複数死体を確保した上で、
   ある程度腐らせてから分かりにくい場所に放置するのが定石かと」

ソフィ「なるほど・・・・」

アラン「こっちもゾッとする内容だな・・・・」

フレッド「そうですね、けど、二日続けて収穫なし、それも遭遇すら、
     となると不気味ですよね」

ジーク「昨日の地震と閃光に何か関係してるのかも知れんな」

フレッド「あ、しまった、申し訳ございません、一つ報告漏れが・・・」

ジーク「なんだ?」

フレッド「あの直後、村に魔物が入ってきたんです」

ジーク「魔物が・・・、それで?」

フレッド「はい、直ぐに僕とエマで倒したので村に被害はなかったのですが・・・・」

ジーク「言い辛いことか?」

フレッド「あ、えぇ、まぁ・・・・」

エマ「正直な所、信用してもらえるか自信が無いのです」

ソフィ「もしかして、それ・・・・」

アラン「あぁ、多分昨日の俺たちと一緒だぞ」

エマ「まさか、そちらでも似た様な事が?」

アラン「それよりもっと信憑性ないぜ」

ソフィ「私たちも、自分の目が信じられなくて、報告してなかった部分があるのよ」

フレッド「魔物が、消えたんですか?」

ジーク「その通りだ、それも、死んだ物だけでなく、恐らく生きていた物も含めてな」

エマ「消える魔物・・・・、あの、それは昨日の報告にあったゴブリンとオーガの事ですよね」

ソフィ「えぇ、けれど、それだけじゃないのよ」

エマ「魔物が消えた以外にも?」

ソフィ「そう、あの閃光の直後、私たちの目の前に砦が現れたのよ」

フレッド「え、砦って、あの建造物の砦、ですよね?」

ソフィ「その砦よ、しかも明らかにそこに昔からありましたよ、と言わんばかりの物がね」

フレッド「その中にゴブリンとオーガが・・・・」

アラン「そうだ、戦闘終了後、建物内を探索したんだが、生き残った奴なんていなかった、
    いくら知能がある魔物だとしても、指揮官が死んだ程度で全軍撤退するとも思えない」

ジーク「更に言えば、オーガと戦闘する前、周りのゴブリンをかなり無視して奥に進んだのだ、
    だというのにも関わらず、奴らは部屋の中まで追ってくる事はなかった、
    討伐後もそうだ、気配がスーッと消えていった、逃げる様な音もなく、な」

フレッド「召喚術だという可能性は?」

エマ「ありえません、それほどまで大規模なものであれば、メイジである私が気付く筈です」

ソフィ「同意見です、それに、もし意図して呼び出した物だとするのであれば、
    村にもっと沢山の魔物が押し寄せていたとしてもおかしくない」

アラン「なら、砦も、村に来た魔物も、この村を攻める事が目的の物ではなかった、って事か」

フレッド「だとすれば何が目的で・・・・」

アラン「あれがここに現れた事自体には目的が無い、とか・・・」

ソフィ「そんな、あんな大掛かりな事に目的が無いなんてあり得ないわ」

エマ「・・・・・いえ、その着眼点は面白いと思いますよ」

ジーク「そうだな、それは常識で考えていては思いつきにくい、流石だな」

アラン「な、なんか褒められてる様には聞こえないんですが・・・・」

ジーク「いや、褒めているぞ、深く考えるな」

ソフィ「あの、すみません、私にも分かるように説明ってお願いできますか?」

エマ「アランさんの言葉そのままですよ、あれを出現させる事が目的では無い、という事です」

フレッド「つまり、何かのついで、って事かな、エマ」

エマ「うん、地震と閃光、あれが何か関係してるとは思うの」

フレッド「そうだね、お三方の話だと、あれの直後に色々発生してるみたいだし、
     タイミングの事を考えると関連性があるのは間違いないと思う」

アラン「あの地震と閃光を起こす事が目的、とかか?」

ジーク「それだと、その後に起きた事の説明が付きにくい、
    あれ自体も何かの副産物だと考えたほうがいいだろう」

ソフィ「なるほど、大きな何かをしようとし、それが地震と閃光を発生させた、
    そして、砦や消える魔物は大きな何かの副産物、という事ですね」

アラン「じゃあ、その大きな何かってなんだよ?」

ソフィ「それが分かってたら最初からこんな話してないわよ!」

アラン「それもそうか・・・」

フレッド「今分かってる情報だけだと、もうこれで推理は打ち止め、ですかね」

ジーク「私もそう思う、なんにせよ情報が少なすぎるな」

エマ「他にも発生してる事が分かればもう少し分かるのだろうけど・・・」

ソフィ「そうね・・・、ただ一つ分かってるのは、他の場所にも同じ事が起こっているって事、か」

アラン「断言できるのか?」

ソフィ「二度ある事は三度ある、それが立証されちゃったじゃない」

ジーク「ゴブリンと村に入ってきた魔物、そしてこの地に発生させる事が目的とも考えにくい」

アラン「そうか、こんな事が出来るなら本国近くにもっと大きくやれば、そういう事ですね」

ジーク「あぁ、ただ、そうだとすると、これ自体が我々に対する事なのかも疑わしくなるな」

エマ「他に大きな意思が動いてるのかもしれないですね、この戦争とは別の物が」

フレッド「流石にそれを断言するのは早いと思います、本国近くに何もなかったのか、
     まだその情報が入ってきていません」

ジーク「そうだな、確かに早計過ぎる、か」

アラン「じゃあ分かんない事に頭使うの止めましょう、
    足動かして他にも何かあるのか探す方が建設的ですよ!」

ソフィ「アラン、考えるのがめんどくさくなっただけでしょ?」

アラン「けど本当の事だろ、どっちにしても食料を探さなきゃいけないしな」

ジーク「あぁ、アランの言う通りだ、ここで考えていても何も生まれまい」

エマ「それじゃあまた探索しに行きましょう」

フレッド「あ、それなら今日は僕に行かせてください」

ジーク「構わないが、今日はどうした?」

フレッド「きっと何かあった事に、動物たちは人間よりも敏感に受け取ってると思うんです、
     だからきっとどこかに隠れてると思うんですよ」

エマ「それなら、動物に詳しいフレッドが適任ですね」

ソフィ「そういう事なら私が代わりに村に残るわ、ちゃんと守るから安心して行ってきて」

フレッド「ありがとうございます!」

エマ「それなら、私も行きたいです、今回の事が魔術的な物だとすれば、
   私が調査した方が確実だと思うので」

ジーク「なるほどな、ではアラン、二人を率いて探索に出てくれ」

アラン「え、俺がリーダーですか!?」

ジーク「そうだ、どうせお前は村に見張りで残っても文句しか言わないだろうからな」

ソフィ「間違いないですね、アラン、適材適所よ、行ってきなさい」

アラン「そ、そうですね、分かりました、任せてください!」

エマ「ならアラン隊長ですね、よろしくお願いします」

アラン「やめてくれ!違和感しかない!普通に呼んでくれ!」

エマ「ふふっ、分かりました、アランさん」

フレッド「頼りにしてますよ、お願いしますね」

アラン「よし、分かった、そうと決まれば善は急げだ、エマ、フレッド準備をして出発だ!」

エマ・フレッド「はい!」


ジークM「この日、フレッドの知識のおかげか、普段よりも沢山の収穫があった、
     動物だけではなく果実や山菜など、ハンターの知識はやはり素晴らしいな、
     しばらくは動物の動きも大人しいであろうし、普段とは違う仕事は刺激にもなる、
     アランもいつまでも私の下で働いていては勿体無い腕がある、
     こうして役割をローテーションさせるのも、悪く無い物だな」


エマ「次回予告」

ソフィ「この世界に訪れた異変、それは人々に暗い影を落とし始める」

アラン「変化は、建造物や、野生生物だけではなかったのだ」

ジーク「次回、アウトライン サイドツヴァイ 第三話 イレギュラー」

フレッド「この時僕たちは、事の本当の怖さに、気づいてなかったんだ」




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