アウトライン サイドアイン 第二話『世界の歪み』

クロス♂ 17歳 ダイブインシステムを利用したMMORPG『ツヴァイト・ヴェルト』のプレイヤー。
種族はヒューマン(人間)。ゲームの事になるとテンションが上がるが、基本的には淡々としている。
紅蓮♂ 19歳 ダイブインシステムを利用したMMORPG『ツヴァイト・ヴェルト』のプレイヤー。
種族はフィンスター(魔族)。飄々として総じてテンションが高い。そしてうるさい。
チセ♀ 14歳 ダイブインシステムを利用したMMORPG『ツヴァイト・ヴェルト』のプレイヤー。
種族はゲシュヴィント(小人)。静かで大人しめ、オドオドした喋り方をするがしっかりはしている。



―配役表―

クロス♂:
 紅蓮♂:
 チセ♀:



―――――――――――――――――――――――――――――――――

紅蓮:「おぉぉおぉおお!!普通に森だ!」

クロス:「そりゃ、そうだろ」

紅蓮:「いや、そうだけどよ!な!いや、分かるだろ!?」

クロス:「わかんねぇよ」

チセ:「でも……クロスくん……笑ってる…」

クロス:「べ、別に」

紅蓮:「いやでも実際問題さ、
    これでテンション上がんなかったらゲーマーじゃねぇって!」

クロス:「それは良いから早く入るぞ」

チセ:「…うん!」


クロス:アウトライン サイドアイン 第二話『世界の歪み』



紅蓮:「うっへぇ〜、すげぇ〜、暗ぇ〜」

クロス:「思ったより木が密集してるな、これだけ遮蔽物多くて紅蓮大丈夫か?」

紅蓮:「当たり前よ!遮蔽物に遮られるようなスキルじゃねぇぜ?」

チセ:「けど…狙い……付けにくそう……」

紅蓮:「大丈夫だって!逆に近づかれる心配が少ない分俺にとってはかなり有利
    少なくとも山よりはな!」

クロス:「ま、本人が大丈夫って言うなら大丈夫だろ」

紅蓮:「おうよ!任せとけって!」

クロス:「さて、このままじゃちょっと暗すぎるよな……チセ」

チセ:「了解……リヒト!」

紅蓮:「おぉ、見える見える」

クロス:「よし進むか!」

チセ:「…うん…」

紅蓮:「行っくぜぇえええ!!」

クロス:「おい、あんまり突っ走るな」

紅蓮:「大丈夫だって!」

クロス:「お前はそうやってすぐ厄介事に足突っ込むだろ」

紅蓮:「平気平気ぃ〜!」

チセ:「あ、あの…!」

クロス:「どうした?」

チセ:「5m先に生体反応…しかも一杯…」

クロス:「な!おい、紅蓮!!」

紅蓮:「んぁ?」

クロス:「止まれ!って……馬鹿……」

紅蓮:「っ……な、なんだこれぇ!」

チセ:「紅蓮君…大丈夫!?」

クロス:「お前後衛の癖に突っ走るなよな!」

紅蓮:「悪い悪い!大丈夫!だが…これ、チセ大丈夫なのか?」

クロス:「何が……………」

チセ:「………」

クロス:「チセ…?」

チセ:「っ………キャァァアアアアアアアアア」

クロス:「これは……キツイ……」

紅蓮:「流石にな……」

チセ:「蜘蛛……なんで……こんな……一杯……」

クロス:「これは、さっさと掃討するしかないな」

紅蓮:「そのようだ」

クロス:「チセ、下がって……って、おい、紅蓮下がれ!!!」

チセ:「ブラント!!ブレンネン!!ヴルカーン!!!」

紅蓮:「うぉぉお!?!?!?」

クロス:「おい、チセ落ちつけ!」

チセ:「プラッツェン!!フォイアー!!」

紅蓮:「チセ!ここ一応森だから!!ダンジョン内だからオブジェクト破壊ありだぞ!」

クロス:「森ごと焼けるって!チセ、落ちつけ!!」

チセ:「はぁっ…はぁっ……はぁっ……ブレン…ぁ…」

クロス:「チセ!危ない!」

紅蓮:「おりゃぁああ!」

チセ:「……あぅ……」

クロス:「大丈夫か?」

紅蓮:「チセ、もしかしてMP…使い尽くした…?」

チセ:「…………………ごめんなさい……」

紅蓮:「いや、うん、良いけどさ、あんま無茶すんなよな」

クロス:「じゃ、残りは俺らで潰すか」

紅蓮:「おうよ!チセは後ろで休んでな!」

チセ:「うん…」

クロス:「フランメクローネ!」

紅蓮:「フランメカノーネ!」

チセ:「クロス君…右から2……紅蓮君……後方から3…」

クロス:「了解!シュタールメルダー!」

紅蓮:「ケッテパトローネ!」

チセ:「紅蓮君…左1……クロス君……前4」

紅蓮:「おぉおおおおおおお!」

クロス:「はぁああああ」

紅蓮:「フランメカノーネェエエ!」

クロス:「はぁ…はぁ…はぁ…」

紅蓮:「はぁ…はぁ…はぁ…」

クロス:「どうだ…?」

紅蓮:「生き残りはいるかぁ?」

チセ:「んと……もう……居ない…みたい……大丈夫……」

クロス:「お、おう…」

紅蓮:「きっちぃ〜!弱いとは言えこれはきちぃ」

クロス:「しっかし、なんだったんだこれ」

紅蓮:「巣に突っ込んじまったとかじゃね?」

チセ:「……あの……」

クロス:「ん?」

チセ:「……また……消えない……」

クロス:「ホントだ…」

紅蓮:「マジかよぉぉおお!!俺らメッチャ頑張ったのにドロップなし!?
    これは流石にバグだとしても許せねぇって!」

クロス:「本格的に運営に連絡しないとだな」

チセ:「…もったいない……」

紅蓮:「言ったらこれに見合うだけの謝罪品とか貰えっかなぁ?」

クロス:「可能性はなくはないんじゃないか?
     これだけの数だ、何らかのクエストにかかってる可能性もあるしな」

紅蓮:「貰えないと割に合わねぇよなぁ」

クロス:「だよな…」

チセ:「っ!!二人とも…!凄い勢いで大きな生体反応が近づいてきてる!」

紅蓮:「なに!?」

クロス:「ボスか何かか?」

チセ:「後10m……8……5……3……2……1……っ!!」

紅蓮:「うわぁ、ありがち過ぎてこれは!」

クロス:「でかい蜘蛛…か……チセ…今回は落ちついてくれよ」

チセ:「…大丈夫…」

紅蓮:「おい、ドロップしねぇしここは引くのもありだぜ?」

クロス:「言ってるだけだろ?引く気ない癖に」

紅蓮:「まぁな!バグ云々は置いといて、こんな新MOB(モブ)倒さずに居られるかってーの!」

クロス:「チセ、MP回復は出来てるか?」

チセ:「うん…」

紅蓮:「今回はサポート頼むぜぇ!」

チセ:「わ…分かった…」

クロス:「紅蓮は左からな」

紅蓮:「りょーかい!クロス、しくじるなよ!」

クロス:「チセのスキルに期待してる」

チセ:「え…えっと……頑張る…」

クロス:「チセは回復のタイミングとか上手いから大丈夫だ」

紅蓮:「よし、それなら先手必勝!シュプリツェ!」

クロス:「はぁぁああああああああ!!フランメクローネ!」

チセ:「シャイン!」

紅蓮:「うぉっ!!やべっ!」

クロス:「紅蓮!」

チセ:「レーベン!」

紅蓮:「サンキュー!よっと、こいつは中々手ごわいな」

クロス:「気抜くな馬鹿!」

紅蓮:「おうよ!はぁああああああ!!!」

チセ:「二人とも……弱点……目…狙って…」

クロス:「はぁああああああああ」

紅蓮:「おぉぉおおおおおおおおおお!」

クロス:「フランメクローネ!」

紅蓮:「フランメカノーネ!」

チセ:「やった…っ!」

紅蓮:「ちぃ、まだ動くかよ!」

クロス:「しぶといな」

チセ:「二人とも避けて!……プラッツェン!」

紅蓮:「チセもエンジンかかってんな」

クロス:「負けてられないな」

紅蓮:「当たり前だ、おぉぉりゃぁあぁあああああああああ」

クロス:「シュタァアアアル、メルダァァアアアアアアアア!!」

紅蓮:「もういっちょ!!パトローネ!!」

クロス:「はぁ…はぁ…」

紅蓮:「ふぃいい…」

クロス:「今度こそ……」

紅蓮:「やったな……」

チセ:「………生体反応……なし……大丈夫みたい…」

クロス:「はぁぁあ……」

紅蓮:「まさか森に来てこんな蜘蛛と対峙することになるとはなぁ」

クロス:「想像してなかったわけじゃないけどね」

紅蓮:「いや、これは想像以上だろ……チセの暴走もな」

チセ:「……ごめんなさい……」

クロス:「チセって蜘蛛嫌いだったんだな」

チセ:「…小さい頃に……蜘蛛……頭の上に落ちてきて……」

紅蓮:「うげ、それはいやだ」

チセ:「それから……ずっと…嫌い……なの……」

クロス:「それはしょうがないな」

チセ:「本当に……ごめん……」

紅蓮:「大丈夫だって!チセは女の子なんだしな!」

チセ:「うん……でも……」

クロス:「気にするな、なんとかなったんだし」

紅蓮:「にしてもよぉ、やっぱりこいつも消えねぇのな〜」

クロス:「そうだな」

紅蓮:「ホント、俺たちの苦労どうしてくれんだよ〜
    普通ボス級のドロップって100Kは確実だぜ?」

クロス:「それについては運営に交渉してみよう
     とりあえず此処で何だかんだ言っててもしょうがないしな
     一度街に戻るぞ」

チセ:「魔法…使う…?」

クロス:「いや、良いよ。貴重な触媒は出来るだけ使いたくないし」

紅蓮:「えぇええ、俺もう疲れて歩けねぇよ〜」

クロス:「じゃぁずっとそこに座ってろ」

紅蓮:「ひでぇえええ」

チセ:「………紅蓮君………私も頑張って歩くから……」

紅蓮:「チセがそういうなら俺が歩かない訳にはいかないな!」

クロス:「単純馬鹿…」

紅蓮:「うるせぇ!女の子より頑張らない男とか嫌だろ?な、チセ?」

チセ:「……無理は…しないでね…」

紅蓮:「余裕余裕!!」





クロスM:こうして俺たちは森を後にした。
     消えなかった大量の蜘蛛の死骸。突然現れた森…
     この大型アップデートの本当の意味…
     俺たちは何一つ気付くこと無く見えない先へと歩きだした。
     それが一体、何を意味するのかも知らずに…





チセ:『次回予告』

紅蓮:進みだした道の先、目に映るは異様な気配

クロス:突然訪れたその異様に、俺たちはなすすべもなく崩れていく

チセ:次回 アウトライン サイドアイン 第三話 『システムアウト』

クロス:いつか来る…再開を願って……



もどる




ツヴァイの同話はこちら