アウトライン サイドアイン 第一話『第二の世界』

クロス♂ 17歳 ダイブインシステムを利用したMMORPG『ツヴァイト・ヴェルト』のプレイヤー。種族はヒューマン(人間)。
ゲームの事になるとテンションが上がるが、基本的には淡々としている。
紅蓮♂ 19歳 ダイブインシステムを利用したMMORPG『ツヴァイト・ヴェルト』のプレイヤー。種族はフィンスター(魔族)。
飄々として総じてテンションが高い。そしてうるさい。
チセ♀ 14歳 ダイブインシステムを利用したMMORPG『ツヴァイト・ヴェルト』のプレイヤー。種族はゲシュヴィント(小人)。
静かで大人しめ、オドオドした喋り方をするがしっかりはしている。






―配役表―

クロス♂:
紅蓮♂:
チセ♀:


―――――――――――――――――――――――――――――――――


紅蓮:「おい!聞いたか!?なんかこのゲーム大型アップデートされるらしいぜ!」

クロス:「は?どこで聞いたんだよそんな話」

紅蓮:「お前遅れてんなぁ〜、今街はその話題で持ちきりよぉ!」



クロス:アウトライン サイドアイン 第一話『第二の世界』



チセ:「でも…本当なの…?本当ならどこかでログアウトしなきゃ…」

クロス:「あ〜、そっか、アップデート前のメンテで強制アウトか…
     でもシステムメッセージとか無いし大丈夫じゃないかな?」

紅蓮:「お前らなぁ、アップデートするって噂を聞いただけで
    誰も今日とは言ってねぇぞ?」

チセ:「あ……そっか…」

クロス:「しょうがないだろ、
     俺らみたいなダイブしっぱなしの人間にとっては
     現実世界に戻らなきゃってだけで鬱になるんだからさ」

紅蓮:「ま、そこは否定しねぇけどな!
    でも流石にメンテ前はシステムから何かあるだろうし、
    それまでは普通に遊んでりゃ良いんだよ」

クロス:「紅蓮は楽観的で良いよな〜」

紅蓮:「当たり前!何が悲しくて
    ゲームの中でまで悲観的にならなきゃいけないんだよ
    チセもそう思うだろ?」

チセ:「あ…あの…私は…その……リアルでもこのままだから……
    あ……でも……紅蓮君のそういう所は……良いと……思う…」

クロス:「はいはい、どうせ俺は悲観的なダメ人間ですよ」

紅蓮:「拗ねるなって〜、男が拗ねても可愛くないから」

クロス:「誰もお前に可愛いとか思われたくないね」

紅蓮:「思われたいとか思ってたら笑うっつーの」

チセ:「あ!あの!………あの……」

クロス:「ん?」

紅蓮:「どした?チセ?」

チセ:「あ…の………喧嘩……ダメ……」

クロス:「あ、いや、喧嘩してたわけじゃ」

紅蓮:「ハハッそだな、ごめんなチセ」

チセ:「ううん……」

クロス:「なんかただでさえ種族がゲシュヴィントのチセに泣かれたら
     凄い悪いことしてる気分になるな」

紅蓮:「小人の名は伊達じゃないよな〜、小さくて可愛いし♪
    その点ヒューマンなクロスは……」

クロス:「フィンスターが良く言うよ」

紅蓮:「魔族良いじゃないか魔族!確かに可愛くはないがかっこいいだろ!」

クロス:「禍々しいよな」

紅蓮:「禍々しいって言うな!魔族は気高い種族なんだぞ!」

クロス:「特化型よりバランス型の方が俺は扱いやすくて好きだ」

紅蓮:「何もゲームの中でまで人間じゃなくてもな」

クロス:「お前はリアルと切り離し過ぎなんだよ」

紅蓮:「良いんだ!俺は今この世界に生きてるんだから!」

クロス:「はぁ……」

チセ:「で…でもこのゲームって凄いよね…本当に別世界に来たみたい…
    アウトしたくない気持ち……凄く分かるかも」

紅蓮:「だよな〜すげぇよなこのダイブインシステム!
    完全体感ゲームってだけでも凄いのにMMORPGと来ちゃぁな」

クロス:「確かに、実際問題画期的な発明だったと思うよ。
     今まで体感ゲームって結構あったけど、
     完全に意識をゲームの中に持ってくるって、
     思いついても出来なかっただろうし。
     科学力の進歩って目ざましいよ」

紅蓮:「ま、ゲーム時間と現実時間がずれてる分、
    ずっとゲームしてると普通の人より老けた気になったりとかするけどな」

クロス:「お前は元々老けてるだろ」

紅蓮:「これでもまだ十代だっての!」

クロス:「はいはい」

紅蓮:「テメ!信じてねぇだろ!」

チセ:「紅蓮君……ゲーム内にリアルの個人情報は……マナー違反…」

紅蓮:「いや、ほら、リアルだけじゃなくて、
    このアバターも十九歳で設定してあるし、な?」

チセ:「………でも……」

紅蓮:「っ………あぁ、はい、悪かったって、だからそんな顔するなよ、な?」

チセ:「うん…」

クロス:「チセ、こんなおっさんは放っておいてショップ行くぞ
     ポーションとか調達したい」

紅蓮:「だぁかぁらぁ!」

チセ:「あ…私も欲しい…かも…」

クロス:「チセの分も買ってやるよ。お前まだマニー少ないだろ?」

チセ:「え……でも…」

クロス:「初心者のうちはされるようにされとけって」

チセ:「あ…うん……ありが…とう…」

クロス:「な、紅蓮もそう思うだろ?」

紅蓮:「………」

クロス:「紅蓮?」

チセ:「紅蓮君?……どうしたの…?」

紅蓮:「なぁ、あれ…」

クロス:「ん?」

紅蓮:「あそこの光……どんどんこっちに近づいてきてねぇ?」

チセ:「どれ…?」

クロス:「ん〜?……確かにあっちの方光ってるな」

チセ:「あ…ホントだ…」

紅蓮:「ほら、どんどん光の帯が太くなってさ」

クロス:「言われてみればそんな気もするな」

チセ:「…何かの…イベントかな…?」

紅蓮:「ってか、なんかヤバくないか!?」

クロス:「いやでもゲームの中だしな」

チセ:「でも……ちょっと……怖い……」

紅蓮:「っ…眩し…」

クロス:「チセ、目閉じておけ」

チセ:「…うん…」

クロス:「………」

紅蓮:「………」

チセ:「………」

紅蓮:「収まった……か…?」

クロス:「みたいだな。チセ大丈夫か?」

チセ:「う…ん……ちょっとまだ世界が白い……かも……」

クロス:「それは俺もだ…」

紅蓮:「ってか、マジで何だったんだ??何も変わった感じしねぇけど」

クロス:「バグとか?でもシステムメッセージの方には何もないな」

チセ:「大丈夫…なのかな…?」

紅蓮:「ん〜、あれだ!気にしたって分かんないもんは気にしないって感じで」

クロス:「………強制メンテとか入る気配もないしな」

紅蓮:「他の奴らもだんだん動き始めてるし、やっぱ一時的なバグか?」

チセ:「そっか…」

クロス:「とりあえず何もなさそうだし、予定通り物資調達して狩りに出ようか」

紅蓮:「それがいいな、いつまでも些細なこと気にしててもしょうがねぇ
    パーっと一狩り行こうぜ」

チセ:「…うん…」

紅蓮:「チセ、大丈夫だって!ほら、周りもいつも通り、俺らもいつも通り、だろ?」

クロス:「おい!紅蓮!!」

紅蓮:「お?クロスが声張り上げるなんて珍しいじゃねぇか、どうした?」

クロス:「マップ!マップが変わってる!」

紅蓮:「はぁ?そんなわけ…………本当だ…」

クロス:「この平原はそのままだけど、あんなとこに山なんて無かったし
     あっちには森まで出来てるぞ!」

紅蓮:「すげぇすげぇ!!何だこれ!
    ………あ、もしかして、これが大型アップデートじゃねぇのか!?」

チセ:「じゃぁ…さっきの光は……」

紅蓮:「これだよこれ!ぜってぇこれ!」

クロス:「それなら確かにあれだけのフラッシュアウトも納得出来るな
     アップデートにアウトしなくて良いゲームなんて
     今まで聞いたこともなかったから思いもしなかったけど」

紅蓮:「でも此処まで大規模に変わるとマッピングしなおしだな」

クロス:「それが良いんだろ!正直今までのマップじゃ飽きてきてたとこだし」

チセ:「こんなに…テンションの高いクロス君……初めて…」

紅蓮:「所詮こいつもゲーマーってことだな」

クロス:「おい、紅蓮!チセ!早く行こうぜ!」

紅蓮:「はいはい、チセ、行くか」

チセ:「うん…」

クロス:「どうする?山の方行くか、森の方行くか」

紅蓮:「そりゃ、もちろん森だろ!なんたって、俺様のスキルが生きる!」

クロス:「よし、チセ、山に行くか」

紅蓮:「おいぃぃい!良いじゃねぇか森!」

チセ:「……あの……私は……森でも……良いよ…?」

紅蓮:「チセ〜、やっぱチセは俺の味方だな!お前が居て良かったよ俺!」

クロス:「紅蓮うるさいと置いてくぞ」

紅蓮:「ちょ、待てって!おい!」

クロス:「この辺もちょいちょい変わってるな!」

チセ:「あ……みたこと無いのが居る…」

紅蓮:「どうする?倒してくか?」

クロス:「レベル分かんないし、森に行くまでにあんまり消耗したくないな」

紅蓮:「あ〜、そうだな…確かに」

チセ:「じゃあ…見付からないように進まないと……だね…」

クロス:「一応アクティブではないみたいだけどな…ん〜でもな〜
     試し打ちくらいだったらありだよな!」

紅蓮:「お、そうこなくっちゃ!!腕がなるぜぇ〜」

クロス:「一人でやりすぎんなよ!」

紅蓮:「りょーかい!チセは離れてな!」

チセ:「あ…うん…」

紅蓮:「よっしゃ、いっくぜぇ〜、ブリッツカノーネ!!」

クロス:「お、ヘッドショット」

紅蓮:「ちっ、まだ生きてやがる、クロス!」

クロス:「任せとけ、カルトクローネ!」

紅蓮:「チセいけるか!?」

チセ:「ラーゼン!」

クロス:「ナイス、チセ!」

紅蓮:「言う前に準備してたか、流石だな!」

クロス:「死んだ、か?」

チセ:「……動かない…ね…」

紅蓮:「あれ?でも死んだらすぐ消えなかったっけ?ドロップ品も入ってねぇし」

クロス:「バグか?生きてる気配はないし」

紅蓮:「な〜んだ、折角何が出るのか楽しみにしてたのによ〜」

チセ:「アップデート直後は…バグ……多いよね…」

クロス:「そうだな…とりあえず動きはしないし、森に向かうか」

紅蓮:「バグ解消されないようだったら後で運営行きだな」

クロス:「あぁ。じゃ、進むぞ」

紅蓮:「お〜!」







チセM:何で此処で気付けなかったんだろう…私たちの知らないところで、
    もうすでに世界は変わってしまっていたんだ。
    でも、進んでしまった時間は止められない…
    そう…私たちは進む事しか出来ないんだ………。





紅蓮:『次回予告』

クロス:アップデートの期待を胸に森へと向かう俺たち

チセ:しかしその先で待っていたのは、予想だにしない出来事だった

紅蓮:次回、アウトライン サイドアイン 第二話『世界の歪み』

チセ:進みだした歯車は、もう止まらない…



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