箱庭の世界で 第七十二話 影の裏

シャドウ♂ 27歳
影♂ 27歳 (かげ)
クレア♀ 25歳


簡単なキャラ設定はこちら
世界設定や技説明等はこちら


シャドウ♂:
影♂:
クレア♀:





シャドウ「力の動きが激しい・・・、今日決めるつもりなんだな、兄貴・・・」

影「テメェは動かなくていいのかよ、悲願だったんだろ?」

シャドウ「っ、影!?」


クレア「箱庭の世界で 第七十二話 影の裏」


影「よぉ、久しぶりだなぁ、シャドウ」

シャドウ「お前、何で今になって・・・!」

影「やっと表に出ても問題ねぇくらいに回復したって事だよ、
  あのクソアマが、まさか人格ごと潰されかけるたぁ予想外だぜ」

シャドウ「それで今まで気配も薄かったのか・・・」

影「そういう事だ」

シャドウ「流石は封印師って事だな、・・・何の用だ?」

影「クソ親父のお目覚めがもう少しなんだろ、借り返さなくていいのかよ?」

シャドウ「・・・俺は、あいつを守るって決めたんだ」

影「あのクレアって女か」

シャドウ「あぁ」

影「・・・邪魔だな、消すか」

シャドウ「ふざけんな、テメェが先に消えてぇか」

影「冗談に決まってんだろ、そう凄むなよ副人格様よぉ」

シャドウ「あぁ・・・?」

影「あんなイイ女、勿体無くて殺せるかよ」

シャドウ「影、テメェ・・・」

影「脳みそは一個なんだ、分かるだろうが、言わすな」

シャドウ「・・・」

(ノックの音)

クレア「シャドウ、入っていい?」

シャドウ「え、あ?ちょ、ちょっと待っ・・・」

影「おぉ、入ってくれよ!」

クレア「それじゃ失礼するわ・・・」

シャドウ「は!?おい、待て!お前勝手に・・・!」

クレア「入れって言ったり待てって言ったりどっちよ!」

影「いいぞ、入ってくれー、俺はお前と直接話してみたかったんだー!」

クレア「・・・どう言う事?」

シャドウ「あー・・・、いいよ、入って・・・」

クレア「んー、失礼します・・・・?」

影「おぉー!待望のご対面だ!待ってたぜ!俺はこの時を!」

クレア「・・・あなた、本当にシャドウ・・・?」

シャドウ「あぁー!もうややこしくなるから少し待っててくれ!
     まず説明すっから!」

クレア「解離性同一症?」

影「あっはははは!説明なんていらねぇってよぉ!」

シャドウ「だぁー!頭ん中で大爆笑すんじゃねぇー!うるせぇー!」

クレア「あなたもうるさいわよ、シャドウ」

シャドウ「うっ・・・、ごめんなさい・・・」

影「ひっひひひ・・・!怒られてやんのー!」

クレア「はぁ・・・、ねぇ、なんてお呼びしたらいい?」

影「おぉ、俺のことだな、影だ、影って呼んでくれたらそれで分かる」

クレア「影ね、分かったわ、ありがと、隣座ってもいいかしら?」

影「当たり前だ」

クレア「しょっと、ねぇ影、私たち初めまして、よね?」

影「そうだな、初めましてだ、あんたにこの体が会った時は全部シャドウだった」

クレア「という事は、私がいない時は表に出てたの?」

影「いいや、俺はこうやって表に出てくること自体久々だ、
  娑婆の空気ってのはうめぇもんだ、なぁ兄弟?」

シャドウ「あぁそうだな、こっちの空気は美味いぞ、あっちと違って」

影「あっははは!ちげぇねぇ!比べて初めて分かる差って奴だなぁ!」

クレア「本当に久しぶりなのね」

影「なんだ、疑ってたのか?」

クレア「あぁそういう意味じゃないの、とても久しぶりなんだろうなぁって意味よ」

影「ははは!素直だなぁ、いいぞ、そういう人間は嫌いじゃねぇ」

シャドウ「全部まともに取り合ってたら疲れるぞ」

クレア「ふふっ、大丈夫、慣れてるわ」

影「へぇ、俺みたいな奴にか」

クレア「えぇ、だってお医者さんだもの」

影「おいおい、そんじゃそこらの多重人格と一緒にして貰っちゃ困るぜ、
  俺たちは筋金入りだ、一生治らねぇ、いや1人が不自然なんだ」

クレア「どういう事?」

シャドウ「俺たちは生まれた時からこの状態だ、途中で分かれた訳じゃない」

影「おい俺が説明してんだろ!横取りすんじゃねぇ!」

シャドウ「あーはいはい、分かったようるさいな」

影「おーやるかテメェやんのか」

シャドウ「俺が悪かったよ、久しぶりだもんな喋りたいだけ喋ってくれよもう」

影「それでいいんだ、よく分かってんじゃねぇか」

クレア「・・・生まれた時からそうなの?」

影「おぉ、賑やかだろ?」

クレア「大変じゃなかった?」

影「生き辛くなる様な事は控えたさ、まぁー俺にとっちゃそれこそが生き辛いってもんだったがなぁ」

シャドウ「よく言うよ、自分のやってない事で頭下げる俺や兄貴の身にもなってくれ」

影「町にいられなくなる様な事はしてねぇだろう?」

シャドウ「あれで控えてたっていうのか・・・」

影「ったりめぇだ!ケイオスと2人で大作戦してる時の事思い出してみやがれ」

シャドウ「あぁそうだった、もう何も言うまい」

クレア「ふふっ、そっか、仲が良いのね」

シャドウ「まぁ、自分だからな」

影「こいつあっての俺っていう存在だ、俺なしじゃこいつは語れねぇし、こいつなしじゃ俺は語れねぇ」

シャドウ「洒落たこと言うようになったじゃん」

影「テメェのせいだテメェの」

クレア「シャドウって意外とロマンティストよねぇ」

シャドウ「意外とってなんだよ!」

クレア「普段はそんな風に振舞わないじゃない」

シャドウ「そりゃそうだが・・・」

影「なんだお前、ロマンティストでいたいのか」

シャドウ「そうありたい時だってあるだろ?」

影「それが今か?」

シャドウ「いや、お前がいる時点でロマンの欠片もねぇ」

影「はぁ!?俺のせいか俺の!」

シャドウ「お前のせいだお前の」

クレア「いいえ、これは浪漫だと思うわ」

影・シャドウ「は?」

クレア「だって今までこんな人見た事なかったもの、生まれつき解離、いえこれは適切な言葉じゃないわね、
    2人内包していて、完全に共存をしているだなんて、これは新たな発見よ!」

影・シャドウ「・・・・・・」

クレア「あ、ご、ごめんなさい、つい興奮しちゃって」

シャドウ「ふっ、いや、やっぱり兄妹だなぁって思ってな」

クレア「尊敬してる兄だけど、こういう所は似たくなかったわ・・・」

影「おぉそういう気質の奴はしょうがねぇと思うぜ、ケイオスの奴もあるからな」

シャドウ「たまにな、やらかすよな兄貴も」

クレア「へぇ、お兄さんも研究する人なの?」

シャドウ「兄貴は趣味だけどな、人間観察が趣味なんだとさ」

影「悪趣味だ、他人観察して何が面白いんだか」

シャドウ「ケンカが趣味よりはマシだと思うけどな」

影「バッカ野郎、俺の趣味はケンカじゃねぇ、殺し合いだ」

シャドウ「あ、バカ」

影「あ?」

クレア「・・・へぇ?」

影「あ、これ怖い奴だ」

クレア「そんな事だからあんな大怪我して転がってるのよー!」

影「あー、悪かった、悪かったよ、これからも止めねぇけど悪かったのは分かったよ」

クレア「今止めないけどって言ったわね?」

影「しょうがねぇだろ、俺はそういう事をする為にあるんだからよ」

クレア「・・・どういう事?」

影「俺の仕事は荒事だ、生まれた時からそれだけは分かってる」

シャドウ「何でもやらされたしやらせてもらえたが、それだけは譲ってくれなかった」

影「それこそが俺の存在意義だ、その為に俺はここにある」

クレア「何よそれ、そんな事」

影「いいんだ、訳あって詳しくは言えねぇが俺はそういう物だからな、
  生まれた時から二つあるってことはそういう事なんだ」

シャドウ「解離性ってのは訳があって分かれる、1人では耐えられない事に対処するために2人になる、
     元々の自分じゃ立ち向かえない事の為に、得意なもう1人が立ち向かう」

クレア「っ」

シャドウ「最初から2人いて、俺自身でも出来る事を独占するって事はそういう事なんだ」

クレア「シャドウ・・・」

影「以上ケイオスの受け売り」

シャドウ「あ、ばらしやがって」

クレア「貴方たち、隠し事出来ないのね」

シャドウ「お互いにばらしあうからな」

影「まぁ俺はバラされて困る事なんてねぇけどな!」

シャドウ「あーケンカしかしないっていいご身分だなぁ」

影「まぁ俺様だからなぁ」

シャドウ「この野郎・・・」

クレア「分かった、じゃあもうそれに対しては何も言わない」

影「物わかりのいい女は好きだぜ?」

クレア「ありがと、それで、貴方は何をする為に出てきたの?」

影「へっ、察しもいいだなんて最高じゃねぇか」

シャドウ「おい影」

影「いいじゃねぇか、俺を免罪符にしちまいなよ兄弟、
  テメェは何もしてねぇ、不可抗力だ、そうだろ?」

シャドウ「だけど・・・!」

クレア「いいのシャドウ、なんとなく分かってたから、貴方が最初に私の前からいなくなった時からずっとね」

シャドウ「クレア・・・」

クレア「きっと私より大事なものが、大事なことがある人なんだなって」

シャドウ「・・・・・・」

影「いいや、こいつに取って優劣はねぇぜ」

クレア「影・・・」

影「だが俺にとってより優先すべきなのがあっちなだけだ」

クレア「それ、何の慰めにもなってないわよ」

影「あ?」

クレア「貴方達はそれぞれを欠いては語れないんでしょ?」

影「あー、そう言ったなぁそうだった」

クレア「だからいいの、シャドウ、一つ約束して」

シャドウ「っ、なんだ、約束って」

クレア「必ず帰ってきて」

シャドウ「・・・あぁ、分かった、必ず」

影「おぉなんだよ、俺にはねぇのかよ」

クレア「シャドウが帰ってきたら貴方も一緒にいるんでしょ?」

影「へっ、そういう事だ、残念か?」

クレア「んー、それはもっと一緒にいないと分からないかな、
    だって私たち知り合ったばかりだもの」

影「言ってくれるじゃねぇか、じゃあ残念だったって証明してやるよ」

クレア「証明するのはそっちなのね」

影「当たりめぇだ、俺を誰だと思ってやがる」

クレア「はいはい、そうでした」

影「・・・おいシャドウ、こいつ俺の扱い慣れるの早いぞ」

シャドウ「そりゃそうだろ」

影「ちっ、惚気やがって」

クレア「え、惚気?」

シャドウ「なんでもねぇよ、それじゃ、すまねぇ、少し空けるわ」

クレア「・・・そういう事か、えぇ行ってらっしゃい、気を付けてね」

シャドウ「あぁ、行ってくる」

影「それじゃ、またなぁー」

--------------------------------------------------------------------

シャドウ「ありがとな」

影「あぁ?何がだよ?」

シャドウ「色々だ」

影「おぉそうか、そんじゃ礼はあれでいいぞ」

シャドウ「あれって何だよ」

影「あの女抱かせてくれや」

シャドウ「殺すぞ」

影「やれるもんならやってみろ」

シャドウ「やれるならやってる」

影「あっはっは!本気だ、こいつ本気で言ってやがる!」

シャドウ「あんなイイ女、テメェにやるかよ」

影「ずりぃなぁ、イイ女だ、イイ女モノにしやがって」

シャドウ「お、なんだ女には興味なかったんじゃねぇのか」

影「お前が本気で惚れた女だぞ、俺が惚れねぇ訳がねぇ」

シャドウ「それもそうだ、そんじゃ生きて帰るぞ」

影「おう任せとけ、サクッとケイオスの復讐手伝ってさっさと戻ろうぜ兄弟」


クレア「次回予告」


シャドウ「混沌が時を待つ儀の最奥」

影「全ては思惑通りに進んでいる、はずだった」

クレア「次回、箱庭の世界で 第七十三話 表のまま裏返る」

影「それはずっと不安定なまま、ただ一人で立っていた」



とぅーびー・こんてにゅーど


もどる

シナリオの感想とか演じてみて台本としての感想とかいただけると作者がよろこぶかも・・・