箱庭の世界で 第四十一話 フィオの過去

フィオ♀ 18歳&15歳
アンナ♀ 30歳&27歳
クルス♂ 22歳
焔♂ 15歳 (赤い悪魔)
ジェノ♂ 30歳

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フィオ♀:
アンナ♀:
クルス♂:
焔♂:
ジェノ♂:



アンナ「あら、こんな時間に来客なんて珍しいわね、いらっしゃい、フィオ」

フィオ「どうも、・・・・見つけたわよ、赤い悪魔」

アンナ「みたい、ね、私の方でも確認してる」

フィオ「増員はいらないから」

アンナ「そんな事を言いに来たの?」

フィオ「そうだね、邪魔、されたくないから」

アンナ「はぁ・・・そ」

フィオ「そ」

アンナ「・・・・・はぁ、お互い、こうなるなんて思ってもなかったわね、あの頃は」

フィオ「そうだね、現存最強の死神と、管理職、だもんね」

アンナ「ね、覚えてる?三年前、私たちがどんなふうに暮らしてたか」

フィオ「忘れるわけないじゃない、忘れるわけ・・・・」


焔「箱庭の世界で 第四十一話 フィオの過去」


アンナN「当時、私は27、フィオは15歳だった、時間は、赤い悪魔が来る、
    少し前の時間まで遡る」

フィオ「ふぅー、訓練疲れたー」

アンナ「お疲れ様、フィオ」

フィオ「あ、アンナ、お疲れ様ー」

アンナ「あら、今日は大好きなお兄ちゃんとは一緒じゃないの?」

フィオ「ん、お兄ちゃんならまだ修練場の方だよ?」

アンナ「あぁ、なるほど、待ってる所?」

フィオ「そうだよ、お兄ちゃん強いから皆の練習相手して、
    いつも私より長く修練場にいるよ」

アンナ「ふふっ、そうね、面倒見もいいし、断ってる所見たこと無いものね」

フィオ「そうだよー、自分がへばるまでやるんだもん、
    あれは面倒見がいいんじゃなくて、お人よしっていうんだよ、きっと」

アンナ「そんな事言いながら、口元にやけてるわよ、身内にのろ気かしら?」

フィオ「そ、そんなんじゃないよ!」

アンナ「そういう事にしといてあげる」

フィオ「もー」

クルス「ごめんフィオ、待たせた」

フィオ「あ、お兄ちゃん!遅いよー!」

クルス「だからごめんって謝ってるじゃんか」

フィオ「うん、分かってる、許してあげるよ」

クルス「それなら良かった」

アンナ「ふふっ、相変わらず仲いいわね」

クルス「ん、アンナさん、こんばんわ」

アンナ「こんばんわ、クルス君」

フィオ「お兄ちゃん、今日も皆の相手してたの?」

クルス「まぁね、断る理由もないし」

フィオ「えー、私はその理由にならないのー?」

クルス「ん、早く終わらせる理由にはなってるから安心しろ」

フィオ「なるほど、じゃあそれで安心しといてあげる」

アンナ「ふふっ、相変わらずね、話は変わるけどクルス君、
    ジェノは今日来てた?」

クルス「あの人なら今日も来てませんでしたよ」

フィオ「来てないのが当たり前みたいなもんだもんね、
    それがどうかしたの?」

アンナ「ん、なんか最近、様子がおかしかったから気になっててね」

クルス「様子おかしいのもいつもの事かと」

アンナ「いや、そうなんだけど・・・、うん、そうね、いつもの事、か」

フィオ「気にしすぎだと思うけどね、あいつ、何考えてるか良くわかんないし、
    考えるだけ無駄じゃないかな?」

アンナ「私の気にしすぎだといいんだけどね」

フィオ「気にしすぎるとはげるよー」

クルス「女性にはげるはダメだと思うんだけど・・・」

アンナ「そ、そうね、っと、ごめん、連絡入ったわ、はいアンナです、・・・ジェノ?」

クルス「噂をすればなんとやら、か」

フィオ「どこにもいないけど、何でこんな所にいんの!?って場所に出てくるもんね」

アンナ「任務みたい、呼ばれたから行ってくるね」

クルス「了解です、あの人の呼び出しですし、ハードなのは間違いないかと思うので、
    気をつけてくださいね」

アンナ「分かってるわ、それじゃあね」

フィオ「行ってらっしゃい!」

クルス「ふぅ、アンナさんもあの男のどこが良いんだか」

フィオ「だね、強くていざという時に頼りになる、
    かも知れないけど人間的にはどうだかね」

クルス「そうだな、フィオは変な虫に引っかかるなよ」

フィオ「大丈夫、お兄ちゃん知ってたら変な虫になんて興味向かないって」

クルス「じゃあ俺も安心できるな」

フィオ「それに、私よりヘボイ男になんてね」

クルス「同世代には見つかりそうにないな・・・」

フィオ「ねぇ、皆弱っちぃもんねぇ」

クルス「フィオに比べたらだけどな、お前が強すぎるんだ」

フィオ「えー、そんな事ないよー」

クルス「俺が直接指導してるんだ、弱い訳ないだろ」

フィオ「うん、そうだねっ」

クルス「さて、そろそろ帰るか」

フィオ「そうだね、っ、爆音?」

クルス「大きいな、魔界の門、からか」

フィオ「っ、悲鳴!?」

クルス「あの声は、ロメオとシャルル?まさかあいつらが、くっ」

フィオ「ちょっと、お兄ちゃん!」

クルス「様子を見てくる、念のため避難してろ」


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ジェノ「おぅ、遅かったじゃねぇの」

アンナ「ごめんなさい、任務、間に合う?」

ジェノ「あ?あぁ、余裕だって、んじゃ、行くぜ」

アンナ「ちょ、待ちなさいよ!」

ジェノ「なんだ、時間ねぇんだよ、走りながら話せ」

アンナ「どこに行くのか、どんな任務なのかぐらい教えなさいよ」

ジェノ「行きゃ分かるよ、行きゃあな、おら、遅れるなよ」

アンナ「あっ、もぅ人のペースを考えないんだから・・・、くっ」


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ジェノ「この辺りまで来れば大丈夫か」

アンナ「はぁ・・・はぁ・・・、大丈夫って、何が・・・?」

ジェノ「ん、気にすんな、それじゃあな」

アンナ「じゃあなって、任務はどうしたのよ!」

ジェノ「あぁ、無しになった」

アンナ「・・・・何、考えてるの?」

ジェノ「別に」

アンナ「嘘、知ってるのよ、怪しい奴と連絡取ってるの」

ジェノ「・・・・・チッ、めんどくせぇ、誰にも言ってねぇだろうな」

アンナ「誰にも言ってない、ジェノ、貴方、何をしようとしてるの?」

ジェノ「俺がしようとしてる訳じゃねぇ、今回も、俺が何かする訳じゃねぇよ」

アンナ「俺が・・・、じゃあ、誰が、何をしようとしているの?」

ジェノ「知らねぇよ、俺は生かしときたい奴がいるなら里から離しとけって・・・」

アンナ「里で人が死ぬのね、それも沢山」

ジェノ「だから知らねぇって言ってんだろうが!」

アンナ「生かしときたい奴がいるなら里から離しとけ、そう言われたんでしょ?
    そこから読み取れるじゃない、容易に」

ジェノ「・・・・・・」

アンナ「戻るわ」

ジェノ「待てよ、あいつがそう言うなら間違いなくヤベェ、・・・死ぬぞ」

アンナ「私だって、里に死なせたくない人がいるの、それじゃ」

ジェノ「おい、待ちやがれ!」


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クルス「・・・・・これ、貴様がやったのか」

焔「他にいるように見えるか、愚問だな」

クルス「魔族め、魔界で大人しくしていれば良いものを、許可なく立ち入った事、
    器物破損、殺人その他多数、罪は重い、ここで殺す」

焔「やれるものならやってみろよ死神」
        ナンバーゼロワン
クルス「ゲートNo.01 デスサイズ、その首、頂く、はっ!」

焔「遅い、エクスプロード」

クルス「っ、早い、くぅ!」

焔「あそこからかわすか、中々やる」

クルス「直撃すれば粉微塵だな、仕方ない、ゲートNo.02 死の羽衣」

焔「仕事着に着替えた所で、何が変わる訳でも・・・」

クルス「死神を舐めるな」

焔「っ、後ろかよ」

クルス「はぁ!」

焔「ちぃ、当たるかよ」

クルス「逃がさない」

焔「なっ、ここまで変わるものかよ」

クルス「チェックだ、死ね!」

焔「チェック?甘い」

クルス「っ、受け止めただと」

焔「武器捕まれてれば逃げれないだろ、チェックはお前だ、
  エクスプロード」

クルス「くっ、背に腹は変えられんか、ふっ」

焔「おぉ、よく逃げたな、ご褒美だ、鎌返すぜ、そらよ!」

クルス「流石に、これまでは避け切れんか、ごめん・・・」

フィオ「諦めないでよ!」

クルス「フィオ!?」

フィオ「はぁ!」

焔「増援か、ちっ」

フィオ「はぁ・・・はぁ・・・、はい、お兄ちゃん、鎌は仕事道具なんだから、
    簡単に手放しちゃダメだよ」

クルス「フィオ、避難してろって」

フィオ「皆を避難させてきた、だから助けに来た、
    今だって私がいなかったら死んでたじゃんか」

クルス「・・・・分かった、けど危なくなったら逃げろ、いいな」

フィオ「ならないから大丈夫」

焔「二人に増えた程度で勝てると思ってるのかよ」

フィオ「当たり前でしょ、数の強さって言うのを見せ付けてあげる」

焔「ふん、フレイムウエイブ、薙ぎ、払う!」

フィオ「いっ、逃げ場が!」

クルス「落ち着け、モードイート、はっ」

フィオ「お、おぉ」

クルス「自分の出来る事ぐらいきちんと把握してすぐ使えるようにしとけ、
    便利だし、使いこなせない力ほど無意味なものはないぞ」

フィオ「う、うん!」

焔「そういえば死神にはそんな便利な道具があったな、なら、飽食にしてやるよ」

フィオ「ふん、二人でやれば強い攻撃だって!」

クルス「ダメだ、避けろ」

フィオ「え?」

焔「エクスノヴァ、シュート」

フィオ「なっ」

クルス「ちぃ、フィオ!」

フィオ「きゃあ!」

焔「避けたか、けど、本当に避けて良かったのか?」

クルス「何?」

フィオ「あぁ、里が!」

クルス「っ・・・・・、貴様・・・・・!」

焔「次は、どうする?」

クルス「フィオ、次は止めるぞ」

フィオ「あれを!?そんな無茶な!」

クルス「二人でやれば何とかなる」

フィオ「くっ、分かったよ、やってみる」

焔「ふん、くだらない、無駄だと分かってやるか、
  里もろとも消してやるよ、エクス・・・・ノヴァ!」

クルス「モードイート」

フィオ「くっ、モードイート!」

焔「どれだけ喰えるか見物だ、鎌の胃袋と俺の魔力の比べ合いと行こうか」

フィオ「くっ、ぅ、ダメ、持たない・・・・!」

クルス「まだだ、まだ・・・!」

焔「そろそろ限界だろ、そらっ」

クルス「っ、まだ強くなるのか・・・!」

焔「これで終わりか、呆気なかったな・・・」

フィオ「ここまで、なの・・・?」

クルス「クソ、こんな所で・・・・、っ、あれは、フィオ、まだ、戦えるぞ」

フィオ「え、っ、あ、アンナ!」

アンナ「イージス!」

焔「ちぃ、気で盾を作ったか、面倒な増援だな・・・」

アンナ「ふぅ・・・・遅くなってごめんなさい」

クルス「任務、終わったんですか?」

アンナ「なかったのよ、任務なんて、ね、ジェノ?」

ジェノ「うるせぇよ、さっきからグチグチ」

フィオ「げっ、ジェノまで・・・」

クルス「アンナさん、なんにせよ助かります、二人じゃ辛かった」

ジェノ「ハッ、俺は馴れ合いなんざごめんだ、殺るなら俺一人で殺るぜ」

焔「少しはやるのが来たみたいだな、死神の本気はこれからだって?」

ジェノ「たった、ほんの少し覗いた程度で語るんじゃねぇよ、クソ餓鬼」

焔「あ?何、お前から死にたいの?」

ジェノ「ハン、テメェみてぇに世界と無理心中しようとするような
    坊ちゃんにゃ殺られねぇよ」

焔「なんだと、テメェ・・・」

ジェノ「期待外れだぜ、あいつがヤベェって言うくらいだからどんなんかと思ったが、
    とんだアマちゃんが出てきたもんだ」

焔「初対面のテメェに何が分かるよ」

ジェノ「分かるぜ?何もかも絶望して自暴自棄になった顔だ」

焔「知ったような口を聞くな、地上でぬくぬく生きてきた癖に」

ジェノ「テメェよりは詳しいぜ?年食ってる分だけこの世の仕組みにはよ!」

焔「うるさい、うるさい!分かってたまるか、望まれず生まれ、望んでくれたものは自らの炎で焼き!
  疎まれるだけの存在の気持ちが、分かってたまるか!」

アンナ「分かってもらおうとしてない人の気持ちなんて知りたくもないわ、
    貴方はただの駄々っ子よ、それも史上最低のね」

焔「くっ・・・、もういい、お前ら全員焼き尽くしてやる、
  暗き焔は終焉の調、世界を焦土へ誘う炎なり、
  宿すは罪人を裁く地獄の業火、我が身へ降りろ、黒焔龍!」

↑の詠唱の難読漢字です
(焔=ほむら、調=しらべ、焦土=しょうど、誘う=いざなう、黒焔龍=こくえんりゅう)


フィオ「っ、なに、これ」

アンナ「本当に困った駄々っ子だこと、辺り一面火の海ね」

ジェノ「本体は常時炎に包まれて近づけないと来たもんだ」

クルス「事体がより悪い方向に・・・」

焔「この術から逃げられると思うなよ、はぁ!」

クルス「くっ、散ろう」

フィオ「うん!」

アンナ「私が穴開けるから、行けそうな人よろしく」

ジェノ「こっち見て言ってんじゃねぇよ!」

クルス「隙があれば僕も行きますよ」

フィオ「わ、私も・・・」

アンナ「貴方じゃ無理」

フィオ「なんでー!?」

焔「調子乗ってられるのは今の内だけだ、業火よ、薙ぎ払え!」

アンナ「イージス、その程度?簡単に防げるわよ」

ジェノ「ハッ、ぶっ放した分こっちが薄くなってんぜ!」

焔「ふん、薄かろうと、突破できる炎だと思うな」

ジェノ「ぐぅ!ちっ、めんどくせぇな畜生」

クルス「モードイート、これで!」

焔「そんなもので突破できるわけないだろうが!」

クルス「よっ、やはり近接じゃ突破は難しいか」

アンナ「皆どいて、行くわよ、グングニル!」

焔「集まれ、っ、ふん、届くわけがないだろう」

ジェノ「けど、そこだけ炎は全くねぇな」

焔「なっ、そこに飛び込んでくるか」

ジェノ「おぅら!」

焔「ぐぅ!」

フィオ「やった!」

クルス「いや、まだだ」

フィオ「え?」

焔「ちぃ、良い切れ味だ、っ、ぐぅぅうううううううう!」

フィオ「傷を、焼いて塞いだ!?」

ジェノ「処置としては適切だがな」

アンナ「そうね」

フィオ「そうなの!?」

クルス「違う、変な事教えないでください」

アンナ「どうして?この状況で生き残るならあれが一番適切よ、
    傷の処置としては間違っているけどね」

ジェノ「躊躇いなくあれが選べる、ハッ、おもしれぇじゃねぇの」

焔「はぁ・・・はぁ・・・、まだ、足らないか・・・」

クルス「まだ、まさか」

焔「はぁぁぁぁぁああああああああ!」

フィオ「くっ、まだ火力が上がるっていうの?」

アンナ「けほっ、これ、息すると喉が焼けるわね」

クルス「人間で戦える相手じゃない・・・」

ジェノ「人間、ねぇ、なら、軽く超えていこうじゃねぇの」

クルス「っ、殺気、これが人の出せる殺気かよ・・・」

フィオ「ひ・・・・ぁ・・・・」

クルス「大丈夫かフィオ」

フィオ「だ、大丈夫・・・」

アンナ「守っててあげて、近づくと危ないわよ」

ジェノ「遅れんじゃねぇぞ」

アンナ「当たり前でしょ」

焔「これでも飛び込むか、人間」

ジェノ「ただの人間だと思ってると痛い目あうぜ化け物!」

アンナ「死ぬの怖がってたらこの仕事務まらないのよ」

焔「ふん、そんなに死にたきゃ殺してやる、来いよ」

ジェノ「ハッ、おもしれぇ、俺に見せてくれよ、終焉とやらを!」

焔「あぁ、終わらせてやるよ、ドラゴブレイズ!」

アンナ「凄い火力だこと、そんなものと真っ向から戦ってたまるもんですか、
    エクスカリバー!」

クルス「炎が割れた」

フィオ「道が、出来た・・・」

ジェノ「今度は貰うぜ、その首!」

焔「させるかよ、ぐぅ!」

フィオ「踏み込んで、体で柄を受けた!?」

ジェノ「武器の弱点を良く知ってんじゃねぇか」

焔「そんなもの、見れば誰にだって分かる、ディスチャージ!」

ジェノ「まずっ、うぁぁぁぁぁああああああ!」

アンナ「ジェノ!」

ジェノ「ぐっ、舐めるなぁ!」

焔「逃がすかよ」

アンナ「させない、ミョルニル!」

焔「っ、ちぃ!」

ジェノ「づぅ・・・、やっぱり楽に死ねねぇな、俺」

アンナ「楽に死にたい訳じゃないものね、貴方」

ジェノ「うるせぇよ」

クルス「あの二人、本当に人間か?」

フィオ「化け物に決まってるよ!あんなの、あんなのおかしいよ・・・」

クルス「っ、フィオ落ち着け、周りの気に乱されるな」

フィオ「分かってるけど、分かってるけど、手が、足が震えて・・・」

アンナ「15歳の子にこれは早かったかもね」

ジェノ「俺の気に触れて正気が保ててるだけマシじゃねぇの」

アンナ「それもそうね、それよりも、どうしようかしらね、あれ」

ジェノ「あぁ、確かにやべぇな、本気で殺せる気がしねぇぞ」

クルス「珍しく弱気だな、ジェノ」

ジェノ「うるせぇ、冷静って言え」

フィオ「っ、あいつの様子がおかしいよ、嫌な予感がする・・・」

焔「撃っても切られて潜り込まれるだけか、なら・・・・、
  集え炎、我が身に、収まれ!」

アンナ「周りの火が、消えた・・・?」

クルス「フィオ、ちゃんと動けるか?」

フィオ「え・・・?」

クルス「奴が動く」

焔「行くぞ、爆ぜろ」

アンナ「っ、ノーモーションで、しかも速い!?」

ジェノ「魔力を体内で爆破させてその勢いで飛んだのか」

焔「どこ見てんだ?」

ジェノ「げっ、マジかよ!?」

焔「はぁ!」

ジェノ「ぐぅ!」

アンナ「くっ、アロン・・・」

焔「遅い」

アンナ「きゃぁ!」

クルス「ジェノ!アンナさん!」

焔「後、二人」

フィオ「ひっ」

焔「その体で耐え切れるか?」

フィオ「いや、たすけ・・・」

焔「さぁ、死ね」

クルス「くっ、フィオ!」

フィオ「お兄ちゃん!?」

クルス「ぐぅ!」

フィオ「お兄ちゃん!」

焔「クソ、退け!」

クルス「がっ、げほっ、げほっ」

ジェノ「ちぃ、調子乗ってんじゃ、ねぇ!」

焔「それで、奇襲のつもりか!」

ジェノ「ぐっ!」

アンナ「これはまずいわね、皆引きましょう」

焔「させると思うか?」

クルス「させて、みせる、さ」

焔「へぇ、腹貫かれてまだ立ち上がるか」
  
クルス「当然だ、この程度で、まだ死ねるか」

アンナ「ここは任せてもいいのね?」

クルス「はい、二人はフィオを頼みます」

ジェノ「ハッ、自己犠牲精神ねぇ」

フィオ「え、え?どういう、ねぇ、お兄ちゃん!」

クルス「俺は、もう助からない、だからここで足止めをする」

フィオ「そんな、嫌だよ、お兄ちゃんも一緒に・・・」

アンナ「行くわよ」

ジェノ「よっと」

フィオ「きゃぁ!お、降ろしてよ!」

クルス「フィオ、ぐふっ、さよう、なら」

フィオ「いや、お兄ちゃん、お兄ちゃん!」

ジェノ「よっ!」

アンナ「それじゃさようなら、赤い悪魔さん」

焔「逃がすか、っ、ぐぅ!」

クルス「お前の相手は、俺だよ」

焔「ち、死に損ない程度で俺を止められると思ってるのかよ、
  しかも、腹に風穴開いたその状態で」

クルス「死に損ないだから出来る戦い方だって、ある」

焔「なら、やってみろよ、ディスチャージ」

クルス「炎を展開すれば近づけない、その思い上がりが、お前の弱点だ、行くぞ」

焔「なっ、これに突っ込むだと!?」

クルス「ぐっ、あ、あぁぁぁあああああああああああ!」

焔「くっ、エクスプロード!」

クルス「ぐぁああああ!っ、どうした、まだ、俺は生きているぞ、
    それに、炎で傷からの出血も止まった、生存時間が、延びたな」

焔「くっ・・・・、ふっ、甘いな、お前は放っておけば勝手に死ぬ、
  真っ向からぶつかる必要なんて」

クルス「ふん、させるか、よ!」

焔「っ、クソ、来るんじゃ、ない!」

クルス「とうとう逃げたか、お前は負けたんだ、俺に、心で、はぁ!」

焔「ふざけるな、戦いなんて、生きるか死ぬかしか、ないんだよ!」

クルス「っ、ぐぁあああああああああ!」

焔「はぁ・・・はぁ・・・、利き腕を切り落とした、もう、諦めろ」

クルス「ぐ、はぁ・・・、死人に、諦めるって言葉があると、思ってるのか?」

焔「なんでだ、なんでお前はそこまで出来る!?」

クルス「死なせたくない奴が、いるからだ」

焔「っ!」

クルス「どうした、俺の目的は、時間稼ぎだ、早く、殺さなくても、いいのか?」

焔「・・・・・・・」

クルス「やらないなら、俺が、お前を殺す、だけだ・・・!
    はぁぁぁあああああああああ!」

焔「くっ、クソ、はぁあああ!」

クルス「ぐぅ!まだ、死んでない、ぞ・・・」

焔「なんだよ・・・、腕なくして、体ボロボロになって、まだ起つのかよ」

クルス「当たり前だ、あいつが、安全なところに、行くまでは・・・、あ、れ?」

焔「・・・・はっ、当然だ、動ける事の方がおかしかったんだ、はは、あっはははは!」

クルス「く、そ、動けよ、俺の体、まだ、まだ、そんなに時間、稼いで、ないんだぞ」

焔「諦めろ、充分過ぎるほどやったよ、お前」

クルス「・・・・ふっ、そう、だな、ギリギリ、間に合った、って感じか」

焔「間に合った?」

クルス「お前なら、気配で、分かるだろ・・・?」

焔「何、・・・・っ、もぬけの殻?」

クルス「ははは・・・、死神は、異空間に身を隠せる、あの三人が逃げてきたんだ、
    他の奴も、逃げるに決まっている・・・」

焔「・・・・・・そうか、ならここは用済みだ」

クルス「そう、か、良かった、フィオ・・・、無事、で、いて・・・」

焔「・・・・・・感傷は捨てろ、俺は、俺は・・・・!」


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アンナN「しばらく身を潜め、里に戻った私達の目に入った光景は、異界に入る前と同じものだった、
     あいつが戦えば場が荒れるのは必然、荒れていないのは、
     そのまま通り過ぎていったからに他ならなかった」

フィオN「戻った私は真っ先に戦いの場に戻った、そこに遺されていたのは、
     冷たくなった、お兄ちゃんだった」

フィオ「あ・・・・・、おにい、ちゃん、いや、いや・・・・、いやぁああああああああああ!」

アンナ「フィオ・・・・・」

ジェノ「里があれだけの被害で済んだのは、こいつのおかげ、だな」

アンナ「そうね、私たちが他の人に危険を伝え、皆が姿を隠すまでの時間をくれたのだもの」

フィオ「でも!でもお兄ちゃんはもう帰ってこない!どんなに被害が小さくたって関係ない!
    私のお兄ちゃんは死んだ、褒めてもらったって何にも救われないの!」
     
ジェノ「あぁそうだ、死んだ、それ以上でもそれ以下でもない、死ねばそこで終わりだ」

フィオ「っ、貴様!」

ジェノ「俺に突っ掛かって何になる!殺すか、怒りに任せて関係のない人間を殺すのか!」

フィオ「知るか!お前にお兄ちゃんをバカにする資格があるのかよ!」

ジェノ「ないねぇ、だがお前も吠え散らかすだけで終わりかよ、
    お前が本当にしたいことを考えてみろ!」

フィオ「あいつを、あいつを殺す、それ以外、私には残されていない!」

ジェノ「出来るのか、俺の殺気に怯え身動きすら出来なかったお前にそれが!」

フィオ「やってやる!強くなる、強くなってやる!次あった時に、必ず殺す、必ず、必ず!」

ジェノ「ならまずは俺を殺してみろ!俺に終焉を見せれるくらい強くなってみろ!
    それまでは俺が鍛えてやろうじゃねぇか!」

フィオ「絶対、絶対強くしなさいよ、私は、絶対あいつを、殺すんだから」

アンナ「いずれ、あいつを狩る任務は来るでしょうからね、私も付き合うわよ」

ジェノ「ハッ、後悔すんじゃねぇぞ、死んでも責任はとらねぇからな!」

フィオ「望む所よ、あいつを殺す為なら、なんだってするんだから」

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アンナ「あれから、ジェノの地獄の特訓が始まったのよね」

フィオ「そう、だね・・・」

アンナ「懐かしいわね・・・」

フィオ「アンナは楽しかったかもしれないけど、私は嫌な思い出ばっかだよ」

アンナ「ふふっ、そうね、さてと・・・今日はそろそろ仕事も切りだし、飲む?」

フィオ「未成年を飲みに誘うな」

アンナ「でも、今から帰るには遅いでしょ、家で休んでいきなさいな」

フィオ「・・・・・・そうさせて貰おうかな」

アンナN「この日は、お互いに寝れずにいた、あの日の事を思い出したから、
     裏切ったジェノの事を考えていたから、きっとお互い、違う理由だろう、
     でも、気が逸ってるのは間違いなかった、
     近々大きな動きがある、復讐とかそういうのだけじゃなくて、もっと大きな動きが、
     私は、同時にそんなことも感じていた・・・」


クルス「次回予告」

焔「赤い悪魔に復讐するべくジェノに弟子入りしたフィオ」

アンナ「しかしそれは、新たな争いを招くものに他ならなかった」

ジェノ「次回 箱庭の世界で 第四十二話 殺戮の修行」

フィオ「今思い出しても恐ろしい・・・」


とぅーびー・こんてにゅーど


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シナリオの感想とか演じてみて台本としての感想とかいただけると作者がよろこぶかも・・・w