箱庭の世界で 第二十一話 犯人の軌跡
ハザニ♂ | 20歳 | いたって普通の青年、いじめられっこ |
セリカ♂ | 21歳 | いたってありふれたいじめっ子リーダー、ノナとは恋人関係。一部ナレあり |
ノナ♀ | 21歳 | いたって普通ないじめっ子リーダー♀、セリカにはデレ |
マリス♂ | 42歳 | 今回はナレーターの殆どをこなします。 |
ケイオス♂ | 27歳 | 今回の事件の元凶。 |
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ハザニ♂:
セリカ♂:
ノナ♀:
マリス♂:
ケイオス♂:
ケイオス「兄さん、やっぱり計画に遅れが生じてる」
マリス「あぁ・・・、確かにペースは以前より遅い、な」
ケイオス「どうするんだい、いくら教団が残っていようとあれだけの数の信者が死んだんだ、
現状止まる事はありえないけど、このままじゃ予定より数年は遅れる」
マリス「そうだな、このまま・・・ならばな」
ケイオス「何を呑気な事を!時間がないとは言わないけど、のんびりもしていられないでしょうが!」
マリス「だから、このままならば、と言っているだろう」
ケイオス「くっ、だけどねぇ、あそこで奴らを殺さなかったのは誤算だと思うんだよね」
マリス「いや、あれでいい」
ケイオス「どこをどう見たらそうなる!僕のモルモットを壊したのも、信者たちを殺したのも同じ一派だろ!?」
マリス「確かに、奴らは我らの計画の最大の障害だろう」
ケイオス「だったら何故!?」
マリス「だが、最大の道具にもなる」
ケイオス「・・・・どういう事?」
マリス「奴らは強い、そこらの連中より遥かにな、だが、それ故に面白い境遇の奴が多い」
ケイオス「ふむ・・・、なんとなく分かってきたよ」
マリス「そう、これからの作業のベクトルを奴らに向けるぞ、神経を逆撫でる様な」
ケイオス「要するに、連中に恨まれればいいんだろ?」
マリス「あぁ、簡単であろう?並みの激情ではないからな」
ケイオス「良いね、楽しめそうだよ、これでしばらくは目的から目を背けれそうだ」
マリス「手段に集中できるのはいいことだ」
ケイオス「そうだね、それじゃあ、また次のモルモットを探してくるよ、
あれだけ良いのを見つけるのは、骨が折れるだろうけどね」
マリス「ふっ、東区に流したあいつ、だな?」
ケイオス「うん、・・・似たような奴、でも行けるかな?えっと、あいつはどんなんだったけなぁ・・・」
ハザニN「これは、ケイオスのモルモット、東区を恐怖に陥れた殺人鬼の、そこへ至る話・・・」
セリカ「箱庭の世界で 第二十一話 犯人の軌跡」
マリスN「東区、とある大学の一室、一人の男を、数人の人間が囲んでいる」
ノナ「ほら!なんとか、言ってみなさいよ!」
ハザニ「ぐぅ!ゲホッゲホッ!だ、だから誤解だって言って、ぐっ!」
マリスN「女の蹴りが、腹部に刺さる」
セリカ「なぁにが誤解だぁ、このストーカー野郎・・・」
ハザニ「だから・・・、俺はストーカーなんかじゃ!」
セリカ「うるせぇ!正直に言ってみな?俺の女のこと、どう思ってたかよぅ?」
ノナ「そう、私のことどんな目で見てたか、正直に言いなさいよ」
ハザニ「そ、それとこれは関係ないだろ!?」
セリカ「関係なくねぇだろ?なんとも思ってねぇ奴のストーカーなんざしねぇからなぁ」
ハザニ「くっ、言えばいいんだろ・・・、そりゃ、可愛いと思ってたし、皆の中心だから、よく目に付いたけどさ・・・」
ノナ「そぅそぅ、なんか、イヤ〜な視線を感じると思ってたのよねぇ」
ハザニ「そ、そんな見方なんてしてねぇ!」
セリカ「見てたんだろ?好きだったんだろ?やらしい姿想像してセンズリ扱いてたんだろ?」
ハザニ「そんな事してねぇって!」
セリカ「じゃあテメェのカバンから出てきたこれをどう説明すんだよ!?」
マリスN「眼前につきつけられたのは女物の下着だった、周りからはクスクスと笑い声も聞こえる」
ハザニ「知らない、そんなの見たこともない!」
ノナ「いい加減に認めなさいよ、この・・・ヘンタイ野郎!」
ハザニ「ぐぅ!」
ノナ「ねぇセリカぁ、もぅこんな奴、同じ空気吸うのもイヤだぁ、早く帰ろ?」
セリカ「あぁ?お前がそういうんだったら別に良いけど・・・」
ハザニM「良かった・・・、やっと解放される・・・」
セリカ「おぃ、ハザニィ・・・、こいつは優しーからこう言ってッけどな?
深く、ふか〜く傷ついてんだ、だから俺が変わりに慰謝料請求すっからな」
ハザニ「はぁ!?何言ってんだよ!そんな理不尽な・・・」
セリカ「10万だ、いいな?それだけ持ってきたら許してやる」
ハザニ「なっ、まっ・・・」
セリカ「じゃあな!」
ハザニ「ぐぅ!」
マリスN「言葉を遮るかのようにコブシが飛び、ハザニ一人を残し、全員教室から出て行った」
ハザニ「くそ・・・・、なんで俺がこんな目に・・・」
ハザニN「誤解どころの話ではない、完璧にハメられた、俺は無罪だ、全部あいつらが仕組んだことだった・・・」
マリスN「夕暮れ時、ハザニは徒歩で家に向かっていた」
ハザニ「はぁ・・・どうしようかなぁ・・・払ったほうが楽・・・なわけないよなぁ」
ケイオス「どうも、こんにちは、少し良いかな?」
ハザニ「は、俺・・・ッすか?」
ケイオス「そう、君だよ、ハザニ君」
ハザニ「っ・・・、なんで俺の名前を?」
ケイオス「僕はなんでも知ってるんだ、君が今困っている事だって、ね」
ハザニ「そりゃ、このなりだし、どっからどう見ても困ってるだろうさ、別に驚くことじゃない」
ケイオス「それもそうだね、では、明日の10万はどうするつもりなんだぃ?」
ハザニ「なっ、なんでそれ知ってんだよ!?」
ケイオス「さぁね、まぁ、単刀直入に言おうか、君は、力が欲しくないか?」
ハザニ「力?そんなんより10万欲しいよ、10万」
ケイオス「力があれば、そんなもの払わずに済む、むしろ、奴らから搾り取ることも・・・」
ハザニ「は、払わなくて済むのか!?」
ケイオス「そう、今まで、人の底辺を生きていた君が、人を超えるんだ、あらゆる意味でね」
ハザニ「人を・・・超える・・・」
ケイオス「どうだい?興味あるだろ?」
ハザニ「・・・あぁ」
ケイオス「それじゃ・・・・それ」
マリスN「ケイオスの指がハザニの額をつつく、と、糸が切れたかのように崩れ落ちる」
ケイオス「さぁ・・・僕の可愛いモルモット君、これから頑張ってもらうから・・・ね?」
マリス「・・・・・それが被検体か?」
ケイオス「うん、いいでしょ、この普通っぽさが・・・ね?これからどう変わっていくかが今から楽しみだよ」
マリス「クックック、良いだろう、その件は一任する、うまくやってくれ」
ケイオス「もちろんだよ、兄さん・・・」
マリス「さて、憎しみと悲しみの連鎖はどこまで広がる・・・か」
ハザニ「ん〜、よっく寝たぁ・・・って、あれ、俺の部屋?どうやって帰ってきたんだっけ?
・・・・・・・・・ま、いっか」
ハザニN「やたらと軽い体、気分もすこぶる良かった、この時、すでに変化は始まっていたのだ・・・・」
マリスN「そして・・・放課後・・・」
セリカ「よぅ、ハザニィ・・・、ちゃんと持ってきたかよ、10万」
ハザニ「そっちこそちゃんと持ってきた?お財布」
ノナ「当たり前でしょ?慰謝料入れるためにいつもより軽めなんだからね」
ハザニ「軽め?なぁんだ、じゃああんまり入ってないのかよ」
セリカ「あぁ?かんけーねぇだろうが、どうせこれから重くなるんだからよ」
ノナ「そぅそぅ、ごたくは良いからさっさと出しなさいよぉ」
ハザニ「そんな大金、俺が払えるわけないだろ?そんな事も分かんないの?あんたら」
セリカ「テメェ、さっきから黙って聞いてりゃ・・・、舐めてんのかよ!?」
ハザニ「そうだ・・・って言ったら?」
セリカ「テメッ、フザケテんじゃねぇ!」
マリスN「怒りに任せられたコブシが顔面に飛ぶ、が、それはいとも簡単に受け止められてしまった」
ハザニ「あははっ!セリカぁ、お前のパンチってこんなに遅かったけ?」
セリカ「なっ、クソッ、離しやがれ!」
ハザニ「やーだねっ、これ、思いっきり握ったらどうなんのかなぁ?」
セリカ「っ、や、やめっ」
ハザニ「そーぅれっ!」
セリカ「あぁぁぁぁあああああああ!!」
ノナ「ひっ、ちょ、ちょっとハザニ!何やってんのよ!離しなさいよ!」
ハザニ「えぇ?じゃあ昨日の慰謝料、頂戴よ、そーだなぁ、一人1万で許してあげるからさ」
ノナ「わ、分かったから、分かったから離してあげてよ!ほら、みんな!早く出してよ!」
マリスN「周りの連中も、しぶしぶ財布から一万札をとりだし、ハザニに渡していく」
セリカ「はぁ・・・はぁ・・・、くっ、お、覚えてろよな!」
ノナ「バァカ!あんたなんて死んじゃえ!」
ハザニ「あはっ、あははっ、アッヒャッハハハハハ!すっげぇ、人を超えるって、こういう事なんだ!」
ハザニN「昨日と同じ頃、俺は家路についていた、だが、気分は、全く違っていた・・・」
ケイオス「あれ、ご機嫌だね?」
ハザニ「あったりまえじゃんか!何したかしんねぇけどありがとうな!払うどころかマジで金貰えちゃったよ!」
ケイオス「だろうね・・・、君は人を超えたのだから、訳もないはずさ」
ハザニ「そうだよなっ、俺、人超えたんだもんなっ、ありがとう、感謝してるよ!」
ケイオス「ククッ・・・、こちらこそ、感謝してるよ・・・」
ハザニ「は、何それ?またそれも不思議なあれだなぁ」
ケイオス「近いうちに分かるよ、きっとね、それじゃ、道中、気をつけて帰ることだね」
ハザニ「おぅ、ありがとう、じゃあなっ」
ハザニM「その日、気分も体調も良かったのに、何故か、食欲はなかった・・・、
シャワーで汗を流し、そうそうに布団に入ったまでは・・・、良かったんだ・・・」
ハザニ「う、ぐぁ・・・・、はぁ・・・はぁ・・・、ちく、しょぉ・・・・、なん、だよ、これぇ・・・」
ハザニM「痛い、痛い、痛いイタイイタイ、とにかく痛い、全部イタイ、ありえないくらいイタイ!」
ハザニ「あ゛、あ゛ぁ・・・、づ、あぁっぐぅううううう!なんで、なんでこんなぁああああああ!」
ハザニM「俺は、超えたんじゃなかったのかよ!?人を超えたんじゃなかったのかよ!?」
ハザニ「っ!・・・・ハァ、ハァ・・・、収まった・・・?」
マリスN「彼は、ふらりと布団から這い出し、窓を開ける・・・」
ハザニ「腹・・・減った・・・、食い物・・・」
マリスN「食料なら家の冷蔵庫にもあった、だが、それに手をつける気は、起きなかった、
何を求めているかは分からない、だが、それは家にはないものであった」
ハザニ「さが、さなきゃ・・・、飯、このままじゃ・・・、俺・・・死んじゃう・・・」
マリスN「東区、とある公園・・・、そこに、一組の男女が歩いていた・・・」
ノナ「ねぇ・・・、手、大丈夫?」
セリカ「あぁ、なんとか、な」
ノナ「あいつ、ムカつくよねぇ、何様?って感じ、明日、絶対仕返ししてやるんだから」
セリカ「落ち着けって、あいつ、多分気が狂ってなんかヤクにでも手ぇ出したんだぜ?きっと」
ノナ「でもー、このままじゃ、私の気がすまないよぉ」
セリカ「だぁかぁらぁ、何もしないとは言ってねぇだろ?ちゃんと準備してから、
死にたくなるくらい後悔させてやんだ、その方がおっもしろいぜ?」
ノナ「そっかぁ、別に明日じゃなくても良いって事だね?」
セリカ「そぅそぅ」
マリスN「その時だった、茂みの方から草木を揺らす音・・・、異様な気配・・・」
セリカ「っ!誰だ!?」
ノナ「出て、こないね・・・」
セリカ「チッ、おぃ!誰かいんだろ!出て来いよ!」
マリスN「声に反応したのか、草木を掻き分け、それは姿を現した・・・」
ノナ「ひぃ・・・!」
セリカ「ば、バケモノ・・・」
ハザニ「ひ、どい、じゃないか・・・、いくら学校で、
あんなことがあった、からって、バケモノ呼ばわりは・・・」
ノナ「しゃ、喋った!?」
セリカ「待てよ、この声・・・、ハザニ?てめぇ、ハザニなのか!?」
ハザニ「そう、だよ・・・、どっからどう見ても・・・、俺だろ?ハザニ・・・だろ?」
セリカ「テメェ・・・、ふざけんじゃねぇ!なんのつもりだ!」
ハザニ「ふざけて、なんて、ない・・・、俺は、腹が減った、だけなんだ・・・」
ノナ「・・・あんた、いくら昨日ムカついたからって・・・そこまでする必要ないでしょ!?」
ハザニ「知らない・・・、俺は、人を超えた、だけなんだ・・・」
セリカ「何わけわかんねぇ事!・・・・あ、れ・・・?」
ノナ「うっぷ・・・、なに、これぇ・・・、急に・・・、空気が・・・」
ハザニ「あ・・・、ちょっと、気分、よくなってきた・・・ぞ」
セリカ「て、めぇ・・・、なに、しやがった・・・」
ハザニ「俺は何もしてないよ、お前らこそ、なにやってんだ?」
セリカ「こん・・の、舐めやがって・・・」
ハザニ「舐めてなんかないさ、俺は・・・人を超えたんだからさぁ!」
マリスN「一足、一瞬だった、ハザニの右腕はセリカの頭を砕き、初めて、肉塊を作り上げた」
ノナ「は・・・、え、ちょっと、待ってよ・・・、せり、か・・・?」
ハザニ「あっれぇ?死ん、だ?こんな簡単に・・・?」
ノナ「あ・・・、あぁ・・・、せり、かぁ・・・、せりかぁ!」
ハザニ「はは・・・ひは、ヒャッハハハハ!ころ、ころころころ、殺しちゃったよ!?俺、人をぉお!?」
ノナ「いやぁ、せりか、せりかぁ!なんで、なんでぇ・・・、くっ、このバケモノ!せりかを、セリカを返せよぉ!」
ハザニ「バケモノ・・・、俺、俺なのか・・・?」
ノナ「あんた以外に誰がいるってのよ!」
ハザニ「・・・・・へぇ、そっか」
ノナ「っ、きゃあ!」
マリスN「彼が軽く払いのけると、ノナは数メートル飛ばされた」
ハザニ「確かに、これはバケモノかもねぇ・・・、そんなことより、これ、美味そうだなぁ・・・」
マリスN「そう言って拾い上げたのは、飛び散った肉片の一つ、彼は、それを口に運び・・・」
ハザニ「美味い・・・、こんな美味いもん、初めてだ!」
マリスN「肉塊に飛びつき、貪り食うハザニ・・・、あっという間に平らげた彼は、ノナを見た」
ハザニ「・・・・こいつでこんなに美味かったんだ・・・、さぞかし、お前は美味しいんだろうな・・・」
ノナ「いや・・・、止めて・・・、おねがぃ・・・、ひっ、イヤ、イヤァアアアアアアアアアアアア!!!」
ケイオス「クックック・・・、アッハハハハハハ!傑作、傑作だよ!実験は大成功だ!
結界も上手く出来た、闇を増強し、それ以外を狂わせる結界・・・、百点満点だよ!」
マリス「良い・・・見世物だったよ、ケイオス」
ケイオス「兄さん・・・、どうだい、上手く行っただろぅ?これから、東区は面白くなるよ・・・」
マリス「あぁ、これで、これで目的がまた近くなった・・・」
ケイオス「うん・・・そうだね・・・」
マリス「はぁ・・・、そういえば、なんの変哲もない奴・・・だったな・・・」
ケイオス「・・・・・うん、被検体としては最高だったんだけどね、・・・没個性、かぁ」
マリス「所詮は、モルモットだ、気にせず普通に探せ・・・」
ケイオス「そう・・・だね・・・」
セリカN「これは、邪教の祖にそそのかされ、自らを狂わせ、東区を恐怖に陥れた、哀れな男の話・・・」
ハザニ「ヒャッハハハハハハ!俺は、俺サマはぁ!ヒャッハハハハハハハハ!!」
ノナ「次回予告」
セリカ「水面下で着々と事を進めるマリスたち・・・」
ケイオス「分かっていながら止められない歯痒さを胸に抱き、彼らは新たな日常を過ごす」
マリス「次回 箱庭の世界で 第二十二話 備えの時」
ハザニ「それが、今出来る最善だと信じて・・・」
とぅーびー・こんてにゅーど
もどる
シナリオの感想とか演じてみて台本としての感想とかいただけると作者がよろこぶかも・・・w