Arc Jihad(アークジハード) -王の矜持と騎士の誇り- 前編

水騎剣♂ (みずき けん) 21歳 大学生、真面目かつお人よし、剣術を学んでいる。
テオドール・ブランシェ♂   25歳 フランス人、自称サイコ寄りの人間、人で遊ぶのが好き。
ランスロット♂   27歳 ランスロットのパーソナリティをインストールされた男性。
実直で固い性格。
アーサー♀   21歳 アーサーのパーソナリティをインストールされた女性。
真面目で丁寧、曲がった事が嫌い。







剣♂:
テオ♂:
ランス♂:
アーサー♀:






テオ「なぁ、本当にこんな国にいるのか?」

ランス「あぁ、間違いない、姉妹であるこの剣が反応を示しているんだ、
    奴は、ここにいる」

テオ「お前がそういうなら間違いないんだろうな、
   それならさっさと済ませよう」

ランス「もとよりそのつもりだ、・・・呪われし宿縁に決着をつけるぞ、アーサー」


剣「Arc Jihad(アークジハード) -王の矜持と騎士の誇り-」


アーサー「っ!」

剣「ん、どうしたんだ、アーサー?」

アーサー「い、いえ、なんでもありません」

剣「そっか、ならいいんだけど、最近は魔剣も多い気がするし、
  今倒した魔剣だって二組で行動をしていたから」

アーサー「そうですね、もしかすると、統制を取っている担い手がいるのかもしれませんね」

剣「・・・何か、気配を感じたのなら言ってよ、少し疲れたけど、まだ戦えるから」

アーサー「いえ、大丈夫です、今の所周りに魔剣の気配はありません」

剣「なら良かった、それにしても魔剣のグループ行動か、
  他の国でもあるのかな」

アーサー「あり得るとは思います、この国だけとは考えにくいですから」

剣「だよな、はぁ、なんとか出来ないかなぁ・・・」

アーサー「剣・・・」

剣「今すぐ出来ない事を考えててもしょうがないか、
  よし、ちょっと気分転換に散歩でもしてから帰るよ」

アーサー「分かりました、では私も・・・」

剣「いや、アーサーは先に帰っててくれよ、ちょっとだけ一人になりたいんだ」

アーサー「・・・分かりました、ではまた後ほど」

剣「あぁ、それじゃあまた後で」

----------------------------------------------------------------------------

テオ「担い手と別行動か、何を考えているんだ、あの契約者は」

ランス「戦いを見ていた限りでは、考えなしに行動するような間抜けには見えなかったが・・・」

テオ「戦闘中だけしっかりしている奴だっているだろうさ、
   それで、担い手の方はどうなんだ、例の奴だったか?」

ランス「あぁ、あの剣は間違いなくエクスカリバーだ」

テオ「そうか、で、どうするんだ、今ならどっちを狙っても確実だと思うが」

ランス「手負いではないとはいえ、疲労したアーサーを斬った所でこの宿縁は絶えぬ、
    なれば今日は見送るまで」

テオ「なるほどな、まぁお前がそれでいいと言うなら俺も構わない」

ランス「すまないな、私の我侭につき合わせてしまって」

テオ「だから構わないと言っている、が、日本に着いてまだ遊んでいない、
   少し退屈しのぎをさせてもらうぞ」

ランス「主、何を?」

テオ「安心しろ、お前の興を削ぐような事はしないさ、
   それじゃあまた後でな」

ランス「担い手と別行動・・・・、主は何を考えているんだ・・・」

------------------------------------------------------------------------------

テオ「エクスキューズモイ?」

剣「うん、な、なんですか?」

テオ「おっと、そういう類の警戒をしないでくれ、きちんと日本語の勉強もしてきている」

剣「ほっ・・・、よかった、外国語は弱いんで、それで、なんでした?」

テオ「いや、俺も契約者なんだ、それで少し話を、と思ってね」

剣「契約者!・・・どっちの?」

テオ「・・・どっちだと思う?」

剣「っ・・・・」

テオ「あっはははは!そんなに身構えないでくれ、今は担い手を連れていない、
   そもそも、どっちだと思うと聞いただけで、どちらかまだ分からないだろう?」

剣「・・・すみません、まだ聖剣の契約者にあったことがないんで」

テオ「なるほど、それなら当然の反応だ、からかってしまってすまなかった」

剣「いえ、大丈夫です、それで、結局どういった・・・?」

テオ「そうだったな、そんな事より堅苦しいぞ、丁寧な言葉は難しくなる、崩してくれ」

剣「わ、分かった、ありがとう」

テオ「よしよし、それじゃあ話していこうか、もちろん、この戦いについてな」

剣「この戦い・・・?」

テオ「そうだ、この聖剣と魔剣を使い、初対面の相手と殺しあうこの戦いについてだ、
   お前はどう思う、主観でいい」

剣「・・・早く終わらせないとって思ってる」

テオ「へぇ、それは何故?」

剣「何故って、そんなの当たり前じゃないか、見知らぬ人が殺しあうなんてダメに決まってる」

テオ「なるほど、なら見知った人同士ならいいと?」

剣「いや、そういう問題じゃ・・・!」

テオ「分かっている、言ってみただけだ、だが、
   この戦いが始まってから逮捕者が出たと聞かないのは何故だろうな?」

剣「・・・・え?」

テオ「もっと大騒ぎになっててもおかしくないと思わないか?
   なのにテレビに取り上げられすらしない」

剣「言われてみれば・・・」

テオ「俺は、何かが裏で動いていると思っているがね」

剣「その何かを倒さないとこの戦いは終わらないって事か・・・」

テオ「さぁ、俺もそこまでは知らないな」

剣「そっか・・・、なら君はこの戦いをどう思ってるんだ?」

テオ「法治世界で人が人を大義名分を持ち斬り合う、
   怠惰な世界に突如訪れた選ばれた者の娯楽」

剣「娯楽、だって?」

テオ「そうだ、娯楽だ、理由を持って人を斬れるなんてそうある事じゃない」

剣「くっ、剣を何だと思ってるんだ!」

テオ「力、武器、人を斬る道具」

剣「っ・・・!」

テオ「言い返せないか、そうだろうさ、間違った事は言っていない」

剣「そうじゃない、剣をそうとしか思ってないことに絶句したんだ、
  確かに剣は斬るための武器だ、力だ、けど、力は思いをこめて初めて意味を持つ、
  ただただ意味もなく斬る、それじゃ剣が可哀想だ!」

テオ「・・・・なるほどな、やっぱりお前は面白い」

剣「なんだって?」

テオ「いや、結構、なんとなくだがお前の人となりは分かった、満足だ、
   後は決まり通り殺し合うだけ」

剣「決まり通り・・・、まさかお前・・・!」

テオ「あぁ、魔剣だよ」

剣「っ!」

テオ「ふっ、あっはははは!お前は面白いな!実に素直な反応をしてくれる!」

剣「くっ、馬鹿にしているのか!」

テオ「そうとらえたか、それならお前の勘違いだ、遊んではいるが馬鹿にはしていない、
   今日は挨拶をしに来ただけなんだ」

剣「挨拶?」

テオ「その通り、すぐ近く、また来る、今度は相棒と来る、その時は殺し合いだ」

剣「・・・分かった、水騎 剣だ」

テオ「ん?」

剣「探す時に名前を分かっていた方が探しやすいだろ?」

テオ「なるほど、あいつに探させるつもりでいたからそこまで考えが行っていなかったな、
   これは失礼、俺はテオドール・ブランシェだ、ケン、覚えておく、それでは」

剣「テオドール・・・、いったい何のつもりで・・・」

-------------------------------------------------------------------------------------

アーサー「先に戻ってきたのはいいのですが、やはり心配ですね・・・、
     先ほどの気配も気になりますし・・・」

ランス「それならば安心してもらっても構わない、私ならばここにいる」

アーサー「っ、誰です・・・!ランスロット・・・ですか?」

ランス「如何にも、久しいな、アーサー」

アーサー「久しい、と言うのにも違和感がありますね、私の覚えている姿とは全然違うのだから、
     なのに一片の疑いもなく貴方だと分かる、不思議なものです」

ランス「そうだな、だがそれ故に在りし日の事が脳裏に甦るのも事実」

アーサー「貴方が思い返しているのは、いつの頃の記憶なんでしょうね」

ランス「相変わらず人の心を読めぬ人だ」

アーサー「かつての友が魔剣を携え現れたと言うのに言葉を交わしてくれている、
     一縷の望みを、信じてはいけませんか?」

ランス「今この時だけは許そう、だがアーサーよ、お前は聖剣の担い手、
    そして私は魔剣の担い手なのだ、油断している隙に殺されかねないぞ」

アーサー「・・・決別した後も、貴方は騎士の鑑でした、例え魔に堕ちようと揺るがぬ物、
     違いますか?」

ランス「何故だ」

アーサー「え?」

ランス「何故あの時その様に信じてくれなかった!何故彼女を責めた!
    少し違えば、あの結末は迎えなかったはずだ!」

アーサー「・・・私は王でした、王がそれを許してしまっては、民に示しがつかないんです」

ランス「・・・やはり心を読めないのではなく、読まないが正しいか」

アーサー「意に介さぬことであろうと、飲み込むことが必要な事だってある、
     人の上に立つと言うことはそういう事、違いますか?」

ランス「知らぬ、私は騎士だ!やはり人として会ったのは間違いだった、
    これならば時を待ち、ただ敵として立ち会えばよかったのだ!」

アーサー「我が国無きこの地であれば、再び分かり合えると思ったのですが・・・」

ランス「そうさせぬのは貴様だアーサー!」

アーサー「・・・そうかもしれませんね、では言葉で分かり合えぬのであれば」

ランス「剣で語るのみだ」

アーサー「では、出でよ・・・!」

ランス「待て、その状態で私とやりあえるとでも思っているのか」

アーサー「っ、どういう事です?」

ランス「先ほどの戦い、見させてもらった、万全でない貴様を倒した所で何も意味はない、
    明日だ、明日までに完全な状態にするのだ」

アーサー「ランスロット、貴方は・・・」

ランス「それ以上は聞かぬ、次に語るのは、剣戟の響きよ、では、次会うのは戦場でだ」

アーサー「・・・聖剣を手に取ったあの日から覚悟はしていましたが、思った以上に辛い物ですね・・・」

--------------------------------------------------------------------------------------

ランス「主」

テオ「ん、おぉ、お前か、やっと見つけてもらえたか、いや失敗だったな、
   集合場所くらい決めておくべきだった」

ランス「本来であれば単独行動を避けるべきなのだが・・・」

テオ「問題ないだろう、今の所、聖剣持ちで契約者を狩るような奴には遭遇していない、
   悪意を持って暴れまわっていれば別だろうがな」

ランス「魔剣に同族狩りがいないとは限らない、そういう意味では警戒すべきだ」

テオ「いや、そういう輩は俺と同類だ、担い手のいない契約者には手は出さない、
   殺しがしたいのではなく、殺し合いがしたいのだから」

ランス「一般人を襲う契約者もいないとは限らない、
    そういう手合いに遭遇したらどうするつもりだったのだ?」

テオ「その時はお前か他のペアが介入してくるのを抵抗しながら待つさ、
   間に合わなければ俺自身がそれまでだった、それだけのこと」

ランス「そこまで言うのであれば今回はここまでにしておこう、
    だが今後は気をつけていただきたい」

テオ「ククッ、分かっているさ」

ランス「所で主よ、退屈しのぎは出来たのか?」

テオ「あぁ、面白いモノを見つけられたおかげでな、
   殺し合いがより楽しみになったよ」

ランス「まさか、アーサーの契約者と・・・」

テオ「その通り、いや、実に面白い男だった」

ランス「はぁ・・・、自ら危険を冒しに行くとは・・・」

テオ「それはお互い様さ、お前だって担い手と話してきたんだろう?」

ランス「・・・そうだな、まさしくその通りだ」

テオ「さて、何はともあれ宿を探そう、明日は荒れる」

ランス「む、私は明日が戦いの日と伝えたか?」

テオ「たった今な、それなら尚更だ、さっさと行くぞ」

ランス「あ、あぁ」

--------------------------------------------------------------------

剣「ただいまー」

アーサー「剣、おかえりなさい、遅かったですね」

剣「ごめん、ちょっと外で他の契約者と話してて」

アーサー「契約者と・・・、もしかして聖剣のですか?」

剣「いや、魔剣のだけど・・・」

アーサー「魔剣の!?」

剣「あ、あぁ、でも、担い手は一緒にいなかったんだ、だから戦闘もしなかったし、大丈夫だよ」

アーサー「なら良いのですが、気をつけてくださいね、魔剣陣営は知っての通り血気盛んな者が多いので・・・」

剣「分かってるよ、今まで戦ってきた相手で嫌って言うほどね」

アーサー「なら良いのですが・・・」

剣「だから急に襲われたときでも大丈夫なように、護身用のナイフを持ち歩いてるんじゃないか」

アーサー「そうですね・・・、本当は剣(つるぎ)を持てれば良かったんですけどね」

剣「流石に日本じゃなぁ、そういう意味ではコピーを出したり消せたり出来るのは便利だよな」

アーサー「偶然なのか、それとも必然なのか、この世界に適合した機能になっている・・・、
     だとしても、来たばかりに想像したほど騒ぎにならないのも・・・」

剣「やっぱり、アーサーもそう思うか?」

アーサー「私も、というのは」

剣「今日話した契約者も同じ事を言っていたんだ、この戦いの裏で何かが動いているって・・・」

アーサー「・・・だとすれば、最近魔剣の担い手と頻繁に遭遇するのも肯けるかもしれませんね」

剣「そうだな・・・」

アーサー「魔剣、か・・・」

剣「何か、あったのか?」

アーサー「えぇ・・・、実は・・・」

テオ「ムシューミズキ!イマスカー!」

剣「っ、この声!?」

アーサー「まさか!」

剣「あぁ、さっき話してた契約者だ」

アーサー「くっ、まさか家まで来るなんて、剣、武器を渡します!
     出でよ、聖剣、エクスカリバー!」

剣「ありがとう」

テオ「ん、いるじゃないか、入らせてもらうぞ!」

剣「鍵は閉めたはず、まさか壊してまで・・・」

テオ「っと、甘い鍵だな、ケン、もっといい物に変えたほうがいいぞ」

アーサー「なっ!?」

剣「ぴ、ピッキング!?」

テオ「その通り、っとやはり既に臨戦体勢か、今日は約束を取り付けに来ただけだ、
   収めてくれるとありがたい、ここではやりづらいしな」

剣「なんで、ここが分かったんだ?」

テオ「答えを見せよう、おい」

ランス「はっ」

アーサー「っ、ランスロット!?」

ランス「・・・その日の内に会うとは思ってなかったな」

アーサー「私もですよ」

剣「アーサー、後で詳しく聞かせてもらうから」

アーサー「分かっています」

テオ「建物さえ分かれば後は部屋を探すのは簡単だったぞ、日本人はお人よしだな」

剣「どういう事だ?」

テオ「ムシューミズキの部屋はドコデスカー?って聞いたらすぐに教えてくれたぞ」

アーサー「・・・・」

剣「よ、よくやるな・・・」

ランス「あのような主を見たのは私も初めてだ」

テオ「滅多にやらないからな、だがしかし時々やると楽しいぞ、道化も」

剣「そ、そうなのか・・・、ってそうじゃなくて、何の用なんだ!」

テオ「あぁ、明日の待ち合わせをしておこうと思ったんだ」

ランス「時間と場所が分からないと大変だと言うことが分かってな」

アーサー「それは同感ですね」

剣「空き地だ」

テオ「ほう?」

剣「見ていたんだろ?今日俺が魔剣と戦っていたあの空き地に昼過ぎの1時、それでどうだ?」

ランス「そちらから場所を指定とは、何か企みか?」

アーサー「剣はその様な卑劣な真似をする者ではありません、見くびらないでください」

ランス「大した信頼だな、アーサー」

アーサー「当然です、エクスカリバーを託すに相応しいと私が判断した人ですから」

テオ「フッ、いいだろう」

ランス「主?」

テオ「心配するな、問題ない、その様な小細工が出来るような人間じゃないのは分かっている、
   むしろ俺の罠を警戒してのことだろう、やはりこういう気は回るらしい」

剣「了承してもらえた、って事でいいのか?」

テオ「もちろんだ、クックク、今から楽しみだ、・・・・逃げるなよ?」

剣「当たり前だ」

テオ「よし、それでは俺も仮宿に戻るとしよう、行くぞ」

ランス「御意、・・・アーサーよ、明日こそ、この呪われし宿縁に決着を」

アーサー「ランスロット・・・」

剣「・・・アーサー、食事にしよう、明日に備えないと」

アーサー「そうですね、・・・ありがとうございます」

剣「どういたしまして」



後半へ続く




もどる

シナリオの感想とか演じてみて台本としての感想とかいただけると作者がよろこぶかも・・・w


こちらの台本はコンピレーション企画「Arc Jihad(アークジハード)」にて
書かせて頂いたものです。
他の参加者様の台本はこちら