Arc Jihad(アークジハード) -王の矜持と騎士の誇り- 後編
水騎剣♂ | (みずき けん) | 21歳 | 大学生、真面目かつお人よし、剣術を学んでいる。 |
テオドール・ブランシェ♂ | 25歳 | フランス人、自称サイコ寄りの人間、人で遊ぶのが好き。 | |
ランスロット♂ | 27歳 | ランスロットのパーソナリティをインストールされた男性。 実直で固い性格。 |
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アーサー♀ | 21歳 | アーサーのパーソナリティをインストールされた女性。 真面目で丁寧、曲がった事が嫌い。 |
剣♂:
テオ♂:
ランス♂:
アーサー♀:
テオ「なぁ、殺し合いってのは向き合う前から始まってるんだ、
どういう事か分かるか?」
ランス「もちろん、私も軍の指揮を取った事のある身だ」
テオ「そうだったな、では今回、俺は既に策を弄している、
それが何なのかは分かるな?」
ランス「主が弄した策・・・、それは今日に入ってからの事か?」
テオ「おいおい、質問を質問で返すなよ、せめてひとつはこれだと思う物を出してみろ」
ランス「む・・・、んー、昨日ドアを壊さずに鍵を開けて踏み入った事か?」
テオ「いや、それは騒ぎになるのが面倒だっただけだ」
ランス「・・・ヒントは貰えないのだろうか?」
テオ「ではさっきの質問に答えてやろう、その通り、今日に入ってからの事だ」
ランス「今日・・・、起床し、食事を取り、少し早めに約束の地へ到着した・・・」
テオ「あぁ、そうだな、今日した事といえばそれくらいだな」
ランス「この中にあると言うのか・・・」
テオ「正しくその通りだ、よし、難しいだろうからな、
理由は分からずとも正解としてやろう、最大限の譲歩だぞ」
ランス「んー・・・、少し早めにここへ来た事、か?」
テオ「正しくその通りだ!素晴らしいぞお前、ちなみに理由は分かるか?」
ランス「すまないが、そこまでは」
テオ「まぁそうだろうな、それくらいでいい、それくらいがいい」
ランス「それはどういう意味だ?」
テオ「理由はその内分かるさ、それその物が策だと分かっていればいい、
さぁ、そろそろ来るぞ、宿縁の相手が」
ランス「む、主、気配が読める様に?」
テオ「いいや、時間さ」
アーサー「Arc Jihad(アークジハード)-王の矜持と騎士の誇り- 後編」
テオ「ボンジュール、ケン、遅かったじゃないか、待ちくたびれたぞ」
剣「え、遅かったってまだ約束の三十分前じゃ・・・」
テオ「その通り、まだ定刻じゃない、なのに待ちくたびれた、
っという事はそれだけ早く来ていたと言う事さ」
剣「いったい何時からここに?」
テオ「それは内緒だ、それを話してしまってはこっちの手の内がバレてしまうかもしれない」
アーサー「っ、まさか先回りして、罠を!?」
テオ「さぁ、それはどうだろうな?」
アーサー「くっ、剣、あの契約者、要注意です!」
剣「あぁ、分かっている!」
ランス「主」
テオ「お前の言いたい事は分かる、が余計な事に気を取られていると足元をすくわれるぞ?
分かったらコピーを」
ランス「くっ、堕ちし聖剣の淀んだ輝きよ、今ここに、来い、アロンダイト!」
テオ「メルシー、さぁケン、お前も抜け、始めよう殺し合いを」
アーサー「出でよ、聖剣、エクスカリバー!剣!」
剣「ありがとう!」
アーサー「ランスロットは、私が」
剣「分かった、頼む」
テオ「仲のいい事だな、楽しいか?」
剣「楽しい?」
テオ「主従関係ごっこだよ、楽しいか?」
剣「主従関係ごっこ、だって?」
テオ「その通り、異世界から来た本名すら言わない偉人の紛い物を付き従える、
これをごっこ遊びと呼ばずして何と呼ぶ、
そもそもお前は王を従えるような立場の人間じゃないだろう」
剣「そうさ、俺は一学生だ、人を従えるなんてそんな大層な人間じゃない、
だから俺はアーサーをパートナーだと思ってる」
テオ「パートナーか、ククッ、なるほどなるほど、王と騎士の違いか、
まぁ楽しんでいるのならそれでいい、その方が面白い」
剣「・・・・・」
テオ「おや、だんまりで剣を構えたか、やはりこういう察しは良いようだ、
それじゃ、始めるとしようか、殺し合いを!ふっ、そぅら!」
剣「はぁ!」
テオ「とっ、巧い、素人じゃないな」
剣「よく初太刀で分かるな」
テオ「分かるさ、筋が違う、だが」
剣「っ!」
テオ「綺麗過ぎる、そら!」
剣「くぅ!だっ!」
テオ「おぉっと、よく苦手な角度を返した、だがまだ止まらない、ふっ!」
剣「ちぃ!」
テオ「そらそら!どこまで凌げる!俺の期待を、裏切ってくれるな!」
剣「くっ、勝手な、っ、期待をされて、ふっ、裏切るなと言われても、困る!」
テオ「おっとと、やはり巧い、あれだけ苦手な所を攻められ一太刀で返すとはな」
剣「お前だって、どうしてあそこまで的確に苦手な所が分かるっていうんだ・・・」
テオ「見ていれば分かる、としかな、お前はそれでも少ない方だ、見事な物だよ、
だが気概が足りない」
剣「俺の、気が抜けてるって言うのか」
テオ「戦意は十分さ、足らないのは、殺意だよ」
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ランス「主たちも始めたようだ」
アーサー「そのようですね」
ランス「では私たちも始めるとしよう、
堕ちし聖剣の淀んだ輝きよ、今ここに、来い、アロンダイト」
アーサー「出でよ、聖剣、エクスカリバー、行きます!」
ランス「行くぞアーサー!うぉぉおおおおおお!」
アーサー「はぁぁああああああ!」
ランス「この日をずっと待っていた、なんのしがらみもなく、
ただただ貴様と、斬り合えるこの日を!」
アーサー「ならば私もそれに応えて見せましょう!はぁ!」
ランス「ふっ、ぜぇい!」
アーサー「っ、くぅ!?」
ランス「どうしたアーサー、軽いぞ、貴様の剣の重さは、国の重さはその程度か!」
アーサー「堕落したものですねランスロット」
ランス「なんだと?」
アーサー「初太刀で剣を見極めようなどと、それでも円卓一と呼ばれた騎士ですか!
湖の乙女よ、我が刃にそなたの加護を、エクスカリバー二号、開放!行きますよ!」
ランス「その程度まだ、まだだ!」
アーサー「ふっ!」
ランス「はぁ!」
アーサー「っ、これに何の術もなく打ち合ってきますか、流石はランスロット、ですが!」
ランス「ぬっ!?」
アーサー「コード・ニムエ、レイクド・スラッシュ!」
ランス「っ、ぐぁ!?」
アーサー「これで・・・!」
ランス「っぐ、この程度で倒れて、堪るかぁ!」
アーサー「ぐぅ!?」
ランス「ごほっごほっ、流石は希代の聖剣エクスカリバー・・・、
魔剣の力なくして勝てる物ではないか・・・、ならば・・・」
アーサー「づぅ・・・、ランス、ロット・・・?」
ランス「気をつけるがいいアーサー、創造物は現実を更に悲惨な物として突きつける」
アーサー「あなたは、いったい何を・・・!」
ランス「友の血を吸い堕ちた聖剣よ、思い出せ己が名を!
アロンダイト、開放、うぉぉぉぉおおおおおおおおお!」
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剣「はっ!そらぁ!」
テオ「ふっ、よっ、そうだ、いいぞ、もっとだ・・・!」
剣「くっ、こ、の!」
テオ「おっと、ハハハッ!巧い巧い!」
剣「ちぃ、人の事をおちょくってぇ!」
テオ「おちょくってなどいないさ、欲しいのは、こういう一撃だ!」
剣「うぁ!?」
テオ「貰った」
剣「っ、まず・・・!」
テオ「オルヴォワール、ケ・・・、っ!」
剣「っく、下がった・・・?」
テオ「いやはや、そんな隠し玉を持っているとはな、全て見る前に殺してしまっては面白くない」
剣「隠し玉、っ、エクスカリバーの二号開放・・・!あいつ、発動する前に感じ取ったって言うのか・・・!」
テオ「性質は違うが、こいつも似た様な物を持っているからな、流石は姉妹剣と言った所だ」
剣「ならそっちが開放する前に・・・!」
テオ「残念ながら、もう遅い」
剣「何、っ!?」
テオ「ちぃ、相も変わらず気に障る力だ、実に煩わしい、
あいつだけならまだしも、俺にまで干渉しやがる」
剣「干渉・・・?」
アーサー「っ、うあぁ!?」
剣「アーサー!?」
テオ「ちっ、こっちまでふっ飛ばしてきたか、全く興ざめする・・・」
剣「大丈夫か?」
アーサー「くっ、えぇ・・・、ですが・・・!」
ランス「おぉぉおおおおおおおおおおお!」
剣「っ、なんだ、あの禍々しい力・・・」
テオ「友の弟を切り、友に死へ繋がる傷を付け、魔へと堕ちた聖剣、
自分の持つ剣の力は知っているだろう、それが負へ反転したと考えてみろ」
アーサー「エクスカリバーの聖と同等の、負の力・・・」
テオ「コピーから漏れる力でも分かるだろう、それと同じだ、ケン」
ランス「何処だ、アーサァァアアアアアアア!」
剣「・・・アーサー、マージ・ウェイクだ」
アーサー「っ、危険です!」
剣「しないと勝てない」
アーサー「ですがこの状況で二対一になっては・・・!」
テオ「あぁ、こちらなら気にするな、俺はとうに興醒めしている、
後は勝手に楽しめ」
剣「アーサー」
アーサー「・・・分かりました」
剣「よし、行くぞ、マージ・・・」
アーサー「ウェイク!」
剣「ランスロット!」
ランス「グゥゥ・・・!」
剣「アーサーならここだ!」
ランス「見つけた・・・、アーサー・・・!うぉぉおおおおお!」
アーサー「彼を止めたいです」
剣「分かった」
アーサー「・・・ありがとうございます!」
剣「狂気で曇った剣なんて怖くもなんともない、行くぞ!
うぉぉおおおおお!」
ランス「ガァ!」
剣「当たるか!だあっ!」
ランス「グゥ、ァァアアア!」
剣「くっ!?」
アーサー「いくら鎧を纏っているとはいえ、よろめきもしないなんて・・・!」
テオ「狂っていても技の冴えまでは鈍らないらしいぞ、気をつけろ」
剣「あいつ、どっちの味方なんだ・・・!」
アーサー「剣、目の前の相手に集中を」
剣「分かってる、はぁ!」
ランス「グルァ!」
剣「づっ!重い・・・!」
アーサー「体の支配権を私に!」
剣「っ、あぁ!」
アーサー「もう好きには、させません!はぁああ!」
ランス「グウゥ!?」
アーサー「コード・エレイン、マルチレイド!」
ランス「グゥゥォォオオオ!?」
剣「やったか!?」
アーサー「まだです、ふっ!」
剣「っ、なんで後ろに下がって?」
アーサー「一号を解放します」
剣「分かった、任せるよ、アーサー」
アーサー「ありがとうございます、楽園の妖精よ、我が最期を見届けし乙女よ、
来(きた)る夜明けを今こそ!エクスカリバー一号、開放!」
テオ「・・・あれが、エクスカリバーの光か・・・、ふっ、噂以上だ、
流石は聖剣の代名詞、魔剣どもが怯えるのも肯ける」
アーサー「ランスロット!」
ランス「グ、ウゥゥ・・・」
アーサー「我々の決着は、こんな形で終わるものではありません、
その様な闇、今すぐ打ち払い、眼を覚まさせてあげます!」
ランス「アーサー・・・、アーサァァアアアアア!」
アーサー「行きます、コードアヴァロン・エクス、カリバァァァアアアアア!」
ランス「グゥゥオオオオオオオオ!?」
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ランス「ぐ、ぅ・・・、ここは、私は・・・」
アーサー「目が、覚めましたか、ランスロット」
ランス「っ!アーサー!づっ・・・!」
テオ「まだ動かない方がいい、いくらアロンダイトによる強化があったとはいえ、
エクスカリバーの直撃を食らったんだ、大人しくしておけ」
ランス「何故だ・・・」
テオ「ん?」
ランス「何故私は未だに生きている!答えろ、アーサー!」
アーサー「貴方は、私との決着があんな物でよかったのですか?」
ランス「っ、だがしかし、あんな醜態を晒し、敵に命を救われ、
どの面下げて生きろというのだ」
剣「話が変わってるよ、ランスロット」
ランス「貴様に何が分かる!」
剣「何も分からない、けど、生きてるなら取り返しは付くだろ」
ランス「っ・・・!」
剣「次は醜態を晒さないようにすればいい、敵に命を救われたくないのなら、
勝てばいい、勝てなかったとしても、生きて還ればいい」
ランス「敵に、背を向けろというのか・・・?」
剣「死ぬことが騎士道だっていうならもう何も言わない」
ランス「・・・・・・」
テオ「お前の負けだ、戦闘も、口でもな」
ランス「主・・・」
テオ「悪かったな、寝具を借りてしまって」
剣「構わないよ、戦いが終われば、聖剣も魔剣も関係ないだろ?」
テオ「クックク、本当にお人よしだ、いつか寝首をかかれるぞ、
と言いたいが、その心配はないか、戦闘の事になるとお前は意外と隙がない」
剣「ありがとう」
テオ「本当はもう少しからかってやろうと思っていたのだが、
あまりに斬り合いが楽しくて忘れていたほどだからな」
アーサー「・・・そうです、いったい罠とはなんだったのですか?」
テオ「俺の口から説明しろというのか、王は中々酷な事をおっしゃられる」
ランス「私もそれは気になっていたのだが・・・」
テオ「ふむ、ケンは分かったか?」
剣「罠があるように見せかけて警戒させる事、それその物が罠って事か」
テオ「その通りだ」
ランス「それその物が、罠・・・?」
アーサー「剣、どういう事なのですか?」
剣「余計な事に気を取られていると、剣が鈍るからな」
テオ「正しくその通り、いやはや、流石というべきか」
アーサー「・・・なんというか、小ズル賢いというか」
ランス「そんな、小さい策だったのか、主・・・」
剣「いや、戦闘中の会話で臭わすような言葉があれば、相手によっては効果的だと思うぞ」
テオ「敵の失敗した策を補うような会話はやめて欲しいものだ」
剣「あ、ご、ごめん」
テオ「さてと、おい、そろそろ動けるだろ、行くぞ」
ランス「あ、あぁ」
テオ「世話になった、この借りはいずれ返しに来るぞケン、ではおさらばだ」
ランス「・・・失礼する」
剣「あぁ、それじゃあ・・・・、これでよかったんだな、アーサー?」
アーサー「はい、あの形で決着をつけるのは、彼も本当に望んでいる事ではないでしょうから」
剣「そうだな・・・」
アーサー「・・・本当に、ありがとうございます」
剣「何が?」
アーサー「剣は、いつも一言だけで察してくれる、
私にとって、それはこの上なく有難い事です」
剣「俺はそんなに察しよくないよ、ただ、それがその時必要だって思っただけ」
アーサー「・・・そうでしたね、だとしても、ありがとうございます、ですよ」
剣「・・・うん、どういたしまして」
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テオ「どういうつもりだ」
ランス「・・・何が、だろうか?」
テオ「捜し求めていた相手だったんだろうが、何故理性を手放した」
ランス「あれは、そうしなくては勝てないと判断したからだ」
テオ「そうだろうさ、それは間違った思考ではない」
ランス「主だっていつも言っていることだ、それが一体・・・?」
テオ「ならばお前の口癖は何だった、言ってみろ」
ランス「っ、呪われし宿縁に、決着を・・・」
テオ「その宿縁とやらは、あんな戦いで終わるものなのか」
ランス「それは・・・」
テオ「お前がいつ何処でどう死のうが俺は構わない、興味もない」
ランス「・・・・・・」
テオ「だが信念は曲げるな、譲るな、死ぬまで貫き通せ、
それが貴様の存在証明だ」
ランス「すまなかった・・・・」
テオ「そう思うのなら魔剣を使いこなせ、そして制御しろ、
あの力は気に障る」
ランス「分かった・・・、では、次、奴らと相見えるその時までに、必ず」
テオ「それでいい、さて、そうと決まれば仮宿へ帰るぞ、
渡航先を考えなくちゃならない」
ランス「そうだな、そうしよう」
テオ「日本語は難しかったからな、次はもう少し簡単な言語の国がいい、
ドイツ、イタリア、イギリス、アメリカ辺りは習得済みだから気が楽だぞ」
ランス「・・・この世界の国のことはよく分からない」
テオ「そうかそうか、なら地図で見て決めろ、母国は却下だ、飽きたからな」
ランス「そうだな、あの国で戦った担い手たちは大したことなかった」
テオ「そういう話ではないのだがまぁいい、さぁ今日の夕食は何にするかね」
to be continued...
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シナリオの感想とか演じてみて台本としての感想とかいただけると作者がよろこぶかも・・・w
こちらの台本はコンピレーション企画「Arc Jihad(アークジハード)」にて
書かせて頂いたものです。
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