闇ツ世界 第三十六話 Look me, if you can.(ルックミー・イフ・ユー・キャン)


♂黒井 尚(クロイ ナオ):25歳。クガタチ諜報部、部長。
            藤堂隆がトローノ・コンクエストに忍び込むために作った仮の人格。少々荒っぽい性格。
            しかし、現在ではこの人格が定着してしまったため、名前を変えることなく再びクガタチへ編入。
            異能は人の視覚情報に介入し攪乱させる能力。武器はダーツ。

♂御堂玲一(ミドウ レイイチ):22歳。人の視界と聴覚を盗み見る能力を持つ異能者。
              倒錯した異性への愛情から『ウィジ』に手を出した結果、人の視界を盗み見る(ピーピング)能力を得た。
              常におどおどとしている。しかし、欲望には忠実。故に倒錯し、反道徳的なことにも平然とやってのける。
              トローノ・コンクエストから離脱し、現在クガタチの諜報部の1人として活動中。

♂近衛 雄馬(コノエ ユウマ) :24歳。
               人を小馬鹿にした喋り方をする人間。所謂ピエロ。
               能力は自身の過ごす時間を早め、瞬間移動に近い行動を可能とする「時間操作」と
               自身の身体を瞬間的に固くさせる「身体硬化」の二重能力。


♂警備長:研究所を守る警備隊のリーダー。異能者ではない普通の人間。いわゆるモブ。

尚:
玲一:
雄馬:
警備長:
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玲一  :・・・なに・・・してるんですか?

尚   :あ?見たら分かるだろ。イタズラしてんだよ。

玲一  :イタズラって・・・。どういうことですか。

尚   :うっせぇなぁ。ちょっと黙ってろ。つか、見張りやれ、見張り。

玲一  :やってますよ。周囲に敵はいません。

尚   :目に見える範囲以外もか?

玲一  :そうですよ。丁度見張りの交代時間みたいです。

尚   :なら、もう1つイタズラを増やしておくか。

玲一  :早く終わらせて下さいよ。ひやひやするんで。

尚   :もっと大胆に行こうぜ?大胆に。

玲一  :・・・つらい。

尚   :あ?なんか言ったか?

玲一  :別に。なにも言ってませんよ。

尚   :ならいい。・・・よーし、これでいい。完成だ。それじゃ、乗り込むとするか。

玲一(N):これは偵察を行う事になった僕と尚さんの逃避行のお話。


警備長 :闇ツ世界 第三十六話 Look me, if you can.(ルックミー・イフ・ユー・キャン)


雄馬  :ったくよぉ。暇だ。暇すぎる。なぁ、なんかオモシロイ事ないかねぇ?

警備長 :そんな事言ってると、また所長に怒られますよ?

雄馬  :所長?・・・あー、ケイの老いぼれにか。別に怖くもなんともないねぇ

警備長 :・・・やりづらい。

雄馬  :んー?何か言ったかい?

警備長 :いえ、何でもありません。

雄馬  :ならよろしーい。あーあ、どこかで一暴れ出来ないかねぇ。このままじゃジッとしすぎて苔が生えて来るなァ。

警備長 :平和なら良いじゃないですか。

雄馬  :よかねぇよ。楽しみが減るってもんだろ。・・・ん?

警備長 :なにか、ありましたか?

雄馬  :今、この監視カメラなぁんか変な動きなかったか?

警備長 :さぁ?よく見えませんでしたけど・・・多分、磁場の所為で画面にノイズが走ったんでしょう。
     この研究所は電磁波を放出する機械が一杯あるので影響を受けるんです。

雄馬  :へぇ。じゃあ、そういう事にしておくか。

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尚   :案外なぁんも無く潜り込めたな。この研究所。

玲一  :でも、油断はできませんよね?

尚   :一応、監視カメラには別の動画を流しているけどな。単なるループ動画だからいつかは気付かれる。

玲一  :なら、早めに見つけるべきですね。目的の情報を。

尚   :どうやらここら辺が怪しいとは思うけどな。

玲一  :データラボ?

尚   :あからさまに書いてあるし、フェイクって場合もあるが、見ない訳にはいかねぇだろ。

玲一  :そうですね。じゃあ、行ってみましょう。

尚   :お前が一人でな。

玲一  :ひ、一人で!?

尚   :おう、一人で。

玲一  :な、なんで。

尚   :手分けして探した方が早いだろうが。俺はこっちの研究スペースを探索する。

玲一  :だ、大丈夫ですかね・・・。

尚   :大丈夫だっての。俺の認知錯乱能力を舐めんなよ?

玲一  :本当に、見えてないんですかね?

尚   :見えてないからさっき研究員とすれ違った時に何も無かったんだろうが。

玲一  :それは、そうですけど。

尚   :ったくよぉ。じゃあ、これでも着てろ。

玲一  :これは?

尚   :研究者の白衣だ。さっきシバいた研究員のヤツをもらってきた。

玲一  :いつの間にそんなことを・・・。

尚   :情報工作員には必要な事だ。敵地に潜り込む時にゃあ、必要なカモフラージュは現場で入手するんだ。

玲一  :・・・なんでレクチャーされてんだろう。

尚   :お前は弟子だからな。

玲一  :いつの間に・・・

尚   :ま。そういうことだ。とりあえず、お前はデータラボを見てこい。後でこの場所で落ち合おう。

玲一  :はぁ・・・分かりました。


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雄馬  :なぁ、この映像おかしいだろ。

警備長 :おかしいとは?

雄馬  :さっきから同じ画像しか映ってない気がするんだよねぇ。

警備長 :なぜ、分かるのです?

雄馬  :勘だよ勘!

警備長 :・・・はぁ。そうですか。では、一応、連絡を取ってみましょうか。

雄馬  :いや、連絡を取っても無駄だと思うなぁ

警備長 :と、言いますと?

雄馬  :何も異常がないって返ってくるだけだよん。これは楽しくなりそうだ☆

警備長 :ちょ、ちょっと待って下さい。今すぐ貴方に動かれますと・・・

雄馬  :なぁにぃ?・・・邪魔するっての?

警備長 :いえ・・・そう言う訳ではなく・・・ですね。警備を一任されているこちらとしても面目が。

雄馬  :あーそう。じゃあ、とりあえず、好きにやると良いよ。俺は俺で動くよぉ。じゃね☆

警備長 :あ、ちょっと!・・・ったく、やりづらいな。・・・ブロック・ファイブ。状況を報告せよ!

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玲一  :あった。これだ。プラン・クイーンの進行について。ウィジ発展プロジェクトの経過。

尚   :よぉ!なんかめぼしい情報あったか!?

玲一  :わっ!?ちょっ、尚さん!驚かさないで下さい!あと、無線先で大声出さないで下さい!

尚   :はいはい。わりぃわりぃ。・・・んで?どうだ?なんかあったか?

玲一  :プラン・クイーンって言う情報とウィジ発展プロジェクトっていう二つの情報が。

尚   :ほぉ?良いもん見つけたじゃネェか。こっちはミサイルの設計情報と訳のわかんねぇ容器の設計図だ。

玲一  :これは・・・何が何でも持って帰らなければなりませんね。

尚   :おう、とりあえず、予定通り資材倉庫で落ち合うぞ。そこから搬出資材と一緒に外に出る。

玲一  :分かりました。データは既に取り終えたのですぐにそちらに向かいます。

尚   :おう、分かった。それじゃ、俺も動くわ。早く来いよ。

玲一  :ふう・・・よし、この調子で資材倉庫に・・・

雄馬  :ネズミちゃん・・・みぃつけた☆

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尚   :おーおー。玲一の奴。さっそくバレタか。やっぱり長い間持ちこたえられねーか。あんな子供だましじゃ。
     ってなると、警戒度が上がる訳なんだが・・・ん?

警備長 :監視カメラに細工がされていたとは・・・。全ブロックに通達!侵入者の形跡があった。総員警戒を厳にしろ!

尚   :お、ありゃあ、警備のお偉い方か。ここはちょっと騙して活路を開くかな?たしかここに警備隊のユニフォームが・・・っと。

警備長 :・・・にしても、あの所長の懐刀は何処に消えたんだ・・・。

尚   :警備長殿!

警備長 :どうした!?

尚   :ブロック・スリーで不審者が居たという情報がありました!

警備長 :なに!?それは本当か!・・・ブロック・スリー。そちらに侵入者が紛れている可能性がある。注意せよ!

尚   :それでは、私は持ち場に戻ります!警備長殿!

警備長 :よく知らせてくれた。ご苦労。

尚   :はっ!失礼します!

警備長 :・・・・。おいお前!ちょっと待て!

尚   :は・・・はっ!なんでしょう!

警備長 :・・・持ち場に急げよ。ブロック・ツー。そっちはどうだ!?異常無いか!・・・。

尚   :はっ!急いで戻ります! 
     ・・・あっぶね。バレタかと思った。よし、とりあえずこの情報錯乱でここから資材倉庫までの道のりはクリア。
     あとは、合流して逃げるだけってね。さっそく行くとするか。

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雄馬  :逃がさないぜぇ?ネズミちゃぁぁぁん!

玲一  :しまった・・・こんなタイミングで発見されるなんて・・・。だから嫌だったのに・・・。

雄馬  :流石ネズミだ。逃げ足速いなぁっ!しゃーない・・・。グランツ!

玲一  :この角を曲がったら・・・なっ!?

雄馬  :曲がったら?・・・俺がいましたぁっ!捕まえたよぉん?ネズミちゃん!
     死ぬ準備はオッケーかい?

玲一  :死ぬ訳にはいかないんだっての!ロック・・・フォーゲルッ!!

雄馬  :足掻くのなんて無駄ぁっ!!リュッケンシュルト!頭ブチ割ってやんぜぇっ!おらぁっ!・・・・あ?

玲一  :よし、上手くいった!今度はこの角を・・・

雄馬  :なんでだぁ?俺が攻撃を外す訳ねぇってのになんで外したぁ?

玲一  :なっ・・・なんで、先回りされてるんだよ・・・。

雄馬  :テメェ、なにやった?この俺に。ぶっ潰す前にそれを聞かせてくれよ。なぁっ!

玲一  :やばい・・・これはやばいって!ロックフォーゲ・・・

尚   :これでも喰らえっ!はっ!

雄馬  :なっ・・・新手。ネズミは二匹だったかぁ。

尚   :大丈夫か?玲一。

玲一  :た、助かりました!

尚   :で、また厄介な奴に捕まったんだなお前。

玲一  :ど、どうしましょう・・・

尚   :ここは・・・とりあえず、こうするっ!

雄馬  :ぐっ!?・・・煙玉だとっ!?

尚   :玲一。こっちだ!

玲一  :は、はいっ!

雄馬  :くっそ・・・シュライッ!
     ちっくしょう!逃がしたかっ!
     だが・・・追い詰めてやる。

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尚   :くっそ・・・息が上がるなんて・・・俺も歳か?

玲一  :ど・・・どうします?この後。

尚   :プランががらっと変わったからな。ここからはプラン・Bだ。

玲一  :な、なんですか?プラン・Bって?

尚   :とりあえず、敵さんが来るまでここで休むとしようぜ。

玲一  :はいっ!?敵を待つんですか!?

尚   :そうだ。その間に俺はちょっと準備をすっから。

玲一  :あの・・・僕は一体なにを・・・

尚   :敵が近づいた来たら教えてくれ。よし、そんじゃあひと仕事〜。

玲一  :は、はい・・・大丈夫かな・・・?

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雄馬  :くっそ。何処いったぁ!?ネズミぃ!

警備長 :近衛様!

雄馬  :あぁん?なんだ、お前か。俺は今ネズミ探しでいそがしぃんだよ!後にしろ!

警備長 :それが、例の不審者は資材倉庫に隠れているようです。今、情報が入りました!

雄馬  :なんだってぇ・・・?それは本当かっ!?

警備長 :はっ!今、五チームを制圧に向かわせてます。

雄馬  :俺が行くまで潰すんじゃネェぞ?俺のエモノだぁっ!待ってろネズミィィィっ!

警備長 :・・・なんなんだ。あの人は。戦闘狂にも程がある・・・。

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玲一  :敵二十人ほど向かってきてます!

尚   :グッドタイミングだぜ!うっし、敵さんを迎えるぜ?

玲一  :本当にやるんですか?

尚   :おう、もちろん。

雄馬  :みぃつけたぁ・・・ネズミぃっ!

警備長 :抵抗せず、降伏しろ!そうすれば命までは・・・

雄馬  :さぁっ!ぶっ殺される準備はいいかぁっ!?

警備長 :こ、近衛様っ!?

雄馬  :この俺を出し抜きやがったんだ。褒美としてぶっ殺すに決まってるぅっ!
     あと、なんか情報もって逃げようとしてるみたいだし?殺しとかないとダメでしょ!

警備長 :しかし・・・

雄馬  :しかしもカカシもねぇんだよぉっ!

玲一  :揉めてますね。

尚   :そろそろか。タイミング合わせろよ?

玲一  :はい!了解です!

雄馬  :なぁにぶつぶつ言ってんだぁ!?

尚   :俺らを殺すにはタイミングが遅すぎたなって喋ってンだよ

雄馬  :なにっ!?

玲一  :3・・・2・・・1・・・今です!

警備長 :衝撃!?損害箇所はどこだ!?

雄馬  :天井を吹っ飛ばしやがっただと!?

尚   :ほーれ。余所見注意だバーカ。そんじゃサイ、ナラ。

玲一  :遊んでないで逃げますよ!

雄馬  :くっ・・そぉぉぉっ!この俺が・・・ネズミを逃がしたぁぁぁっ!?

警備長 :天井の一部を吹き飛ばして我々との間に壁を作るなんて・・・なんて無茶な。

雄馬  :テメェ・・・敵を褒めんのか!?

警備長 :そ、そう言う訳では・・・

雄馬  :あーっ!ウゼェ!俺より目立つのもゆるせねぇ!殺す!次会った時はぜってぇコロすぅぅぅっ!

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尚   :なんとかなったな。

玲一  :間一髪でした・・・。それにしても・・・。

尚   :あ?なんだ?

玲一  :あの天井を壊した一撃。あれは尚さんの能力ですか?

尚   :ちげぇよ。俺じゃない。室長に頼んでおいたバックアップからの攻撃だ。

玲一  :なるほど。それで、そのバックアップって誰ですか?

尚   :驚くなよ?・・・そこにいる奴。だーれだ?

玲一  :そこにいるって・・・。あ・・・あの人はっ!




警備長 :次回の闇ツ世界は

雄馬  :帰還した影の者。

尚   :徐々に統合される闇の計画

玲一  :闇ツ世界 第三十七話 プラン51(ファイブワン)

警備長 :見えるは深い闇のほんの一片




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