闇ツ世界 第三十二話 救われぬ者


♀歌川 真衣(うたがわ まい):16歳。明るくほがらかだが、それは心の傷を隠すためのすべ。
              本心ではいじめられる世界に絶望している反面、死にきれずにいる。

♀加堂 早喜(かどう さき):16歳。真衣のクラスメイトであり、真衣のイジメを先導している張本人。
             どこか人を見下している節がある。

♂稲葉 兼(いなば けん):16歳。真衣のクラスメイト。あとゲス。

♂奥麻泰介(オクマ タイスケ):20代後半から30代前半。人垂らしな喋り方をする人間。とある理念から行動を行う人物。
               異能は空気などを圧縮して放つ『放出』の能力。

♂先生:ただ数言喋るだけのモブ

真衣:
早喜:
兼&先生:
泰介:
___________________________________________________

早喜:うーたがーわさーん?

真衣:っ・・・はい。

早喜:そんなに急いでどこに行くのかしら?

真衣:これから、先生の手伝いがあって・・・

早喜:へぇ・・・そう。そのまえにさぁ。ちょっと付き合ってよ。

真衣:え?でも・・・

早喜:断るつもり?この私の『お願い』を。

真衣:っ・・・。

早喜:来てくれる、よね?

真衣:・・・はい。

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早喜:アハハハハッ!面白い面白い!

真衣:い・・・たい・・・ゆる・・・し

早喜:べっつに私は怒ってないわよ?ただ、あなたが這いつくばってる姿が好きで見てるの。

真衣:もうやめてっ!これ以上踏まれてたらっ・・・頭が割れちゃうっ!

早喜:だぁいじょうぶ。人間って案外頑丈だから。この程度じゃ壊れたりしないわ。

真衣:いたいいたいいタイイタイイタイイタイ!

先生:おい。誰か居るのか!?・・・鍵がかかってるのか!おい、ここあけろ!

早喜:ちっ・・・これから楽しくなるって言うのに。
   アンタが声を出すから先公来たじゃん。

真衣:っ・・・いた・・い。

早喜:ま、満足したしいいや。それより、真衣〜

真衣:っ!・・・は、い。

早喜:今の事。先公に言ったらどうなるか・・・わかってるよね?

真衣:・・・・。

早喜:返事は?

真衣:・・・はい。

早喜:よろしい。それじゃ、私は先に窓から出て逃げようかな。じゃあねー。

真衣:・・・・くっ。

先生:おい。大丈夫か!?大丈夫か歌川!何があった!?

真衣:・・・・です。

先生:なんだ?イジメか?この怪我はどうした?

真衣:何でもないですっ!!

先生:・・・そ、うか?

真衣:何でもないです!ただ、ちょっと転けただけですから。

先生:でも、このアザは・・・

真衣:大丈夫ですから!!

先生:お、おい!歌川!


泰介:闇ツ世界 第三十二話 救われぬ者


早喜:今日も、『お願い』聞いてくれる?

真衣:もう止めてよこんなこと!

早喜:どうしたの?いきなり。

真衣:なんで私にこんなことするの!?

早喜:それはもちろん。楽しいからよ。

真衣:私は楽しくなんか無い!

早喜:そうでしょうね。楽しんでくれちゃあ私が面白くないもの。

真衣:なにを・・・言ってるの?

早喜:なにって。単なる私の趣味嗜好よ。
   そうねぇ・・・止めてあげなくもないわ。

真衣:本当!?

早喜:本当。これからお願いを聞いてくれたら止めてあげる。
  
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兼 :なに?用事って。

真衣:えっと、その・・・

兼 :なに?その手に持ってるヤツ。

真衣:手紙、だけど。

兼 :これは俺に?

真衣:あっ・・・

兼 :勝ってに読ませてもらうぜ?で、誰からの手紙?

真衣:それは・・・えっと

兼 :・・・へぇ?そう言うこと、か。
   俺に犯して欲しいって?歌川さん。

真衣:えっ?

兼 :この手紙に書いてある。私を犯して欲しいってね。ちゃんと名前もある。歌川真衣って。ほら。

真衣:私・・・そんな事書いてない・・・。これを渡して欲しいって早喜さんに言われて・・・

兼 :でも、それは俺にとっては知らないことだな。

真衣:え?・・・ちょっと、何を・・・。

兼 :ここに書いてあることをやるんだよ。丁度、放課後でイイ時間だしねぇ。

真衣:いや・・・近づかないで・・・

兼 :こんな事を書いておきながらなに怯えてんだよ。

真衣:だから・・・私はそんな事は書いてな・・・

兼 :うっせぇ!お前は黙って俺にっ

泰介:犯されろってか?

兼 :っ!?・・・誰だ。テメェ。

泰介:さー?誰でしょうねぇ。

兼 :ふざけてんのか。

泰介:うん。ふざけてる。いやー、良いモノ見れそうだったからさ。

真衣:た、すけて・・・

泰介:可哀想な子だね。大丈夫。すぐに助けてあげるから。

兼 :おいおい。なにヒーローきどってんだ?あ?

泰介:ヒーローなんて気取ってないさ。むしろ言うなら、ダークヒーローかな?

兼 :何を言って・・・

泰介:ルジョー。

兼 :なっ・・・なんだよそれ・・・

泰介:マスケット銃って知ってるだろ?大昔に使われていた銃だ。
   これを使って、今からお前を殺すんだよ。

真衣:ころ・・・す?

兼 :は、はは・・・なにいってんだお前!トチ狂ったのか!?

泰介:いいや?狂ってなんか無い。これが俺の仕様だ。

兼 :こんな所で銃なんかぶっ放したら・・・お前は捕まるんだぞ!?

泰介:そんなことでビビる人間じゃねぇよ。他に言うことは?

兼 :や、止めてくれ。許してくれ。俺は別に本気でこいつを・・・・

泰介:命乞いが聞きたいんじゃないんだよねぇ。あー、無駄な時間だったなー。

兼 :な、なんだよ。俺は何もしてねぇ!なんで俺が殺されなきゃ・・・

泰介:ゲーム。オーバー。


真衣(N):謎の男性が放ったその一言の後、何かが破裂する音が響いた。
   そして、その一拍後にゴトンという鈍い音と、液体が床に撒かれる音が聞こえた。
   私の位置からでは見えないけれど、起こった事はすぐに理解した。
   死んだ。人が死んだ。クラスメイトが、謎の人間の手によって。
   銃を手に持つ男性が近づいてくる。次は私が殺される。
   そう考えるまもなく、私の意識は暗闇に落ちていった。

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泰介:よっこいせっと。・・・これで準備は万端かな?
   あとは条件がそろえば完璧っ!いやー。楽しみだ楽しみだ。

真衣:ん・・・あれ・・・?

泰介:おー、おはよう。おじょうちゃん。よく寝てたねぇ。

真衣:っ!あなたは!

泰介:さっきぶりー。ダークヒーローなお兄さんですよぉ。

真衣:わ、私を・・・殺すんですか!?

泰介:え?んなことはしないよぉ。そんなことするなら、君が気絶してた時に済ませてるから。

真衣:じゃあ・・・何を・・・

泰介:よーし、それじゃ、丁度良いし取引と行こう!

真衣:な、何を言って・・・

泰介:君は選ばれた人間だ!これからの世界を創る人間だ!

真衣:は、はぁ・・・。

泰介:君は、人に虐げられるのは嫌い?

真衣:はい?一体・・・

泰介:俺は嫌いだ。だいっきらいだ!俺は自由が1番大好きだ!

真衣:つまり、何を・・・?

泰介:あー、自分の世界入ってたか。
   まーいいや。君、いじめられててつらかったでしょ?

真衣:・・・はい。

泰介:そのツライ出来事を、今日で終わらせることが出来るとしたら。どうする?

真衣:終わりに・・・?

泰介:俺は今日いじめっ子の一人を殺した。でも、それで君のイジメは終わる訳じゃない。
   じゃーどうする?多分、今日よりもイジメは加速するだろうねぇ。
   なんせ、君が関わった身内が殺されたんだからね。

真衣:それで・・・取引?

泰介:この薬。ウィジっていうんだけどさ。これを飲んで欲しいんだ。

真衣:これを・・・飲む?

泰介:そう、そうすれば良い事が起こる。もう、君はいじめられない。

真衣:その代わり、私は何かすればいいの?

泰介:いや、何も。ただ、飲んだ後、そこに掛かってる布を取ればいい。

真衣:あの・・・・布?

泰介:そう、あそこにもう1つのプレゼントがあるからさ。
   さぁ、どうする?飲む?飲まない?

真衣:・・・・飲みます。

泰介:よろしい!ナイスチョイスだ!では、一気に飲んじゃって!

真衣:(錠剤を飲み、むせる)・・・苦い。

泰介:他に何か感想は?

真衣:なんだか・・・身体が熱くって・・・

泰介:熱くて・・・それで?

真衣:なんか、すごく、奥から何か力が・・・

泰介:いいねぇ・・・いいねいいねぇ!じゃあ、その気持ちを持ったまま、あの布を取っ払ってみようか!

真衣:あの・・・布を・・・取る・・・

早喜:眩しっ・・・

真衣:さ・・・き・・・?

早喜:な、何よこれ!どうして私が縛られてるのよ!

泰介:んー?ちょっとした喜劇のヒロインになってもらおうかなって。

早喜:な、何言ってるのよ。真衣、真衣!早くこの紐をほどいて!

真衣:さ・・・き・・・あなた・・・

早喜:ちょっと、真衣アンタ、何をぶつぶつと・・・

真衣:(早喜の頬を叩く)・・・ゆるさない。

早喜:ちょ・・・やめっ・・・

真衣:許さない!・・・・許さない許さない許さない!(殴り続ける真衣)

早喜:や・・・め・・・まゆ・・・やめ・・・・

泰介:いいねぇ。君は筋力強化の異能者かぁ。今までに無いタイプだから興味そそられるねぇ。

早喜:ゴメンナサイゴメンナサイ!真衣ゴメンナサイッ!

真衣:っ!

泰介:おやおや?何で止めちゃうのさ。ほら、止めることは無いよ?憎いんでしょ?最後までその怒りをぶつけてちゃってー

真衣:ユルサナイユルサナイユルサナイ!

早喜:ぎ・・・あが・・・ま・・・やめ・・・い・・た・・

真衣:うわあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!

泰介:キタキタキタキタぁっ!楽しいセレモニーの始まりだぁ!

真衣:ぐあ・・・あ・・頭・・・が・・・ワレル・・・痛い・・・痛いっ!

泰介:あれ?あれあれ?もしかしてコレはまずいパターンか?

真衣:頭が・・・焼ける・・・イヤだ・・・熱い・・・怖いっ!

泰介:あーあ。使い物にならないヤツだ。失敗だ。コレ。

真衣:あ・・・が・・・ぎあ・・・・

泰介:脳が焼き切れちゃったか・・・ごめんねー選ばれてない人だったみたいね。

真衣:あ・・・う・・・あ・・・

泰介:じゃあね。ばいばい。エアシュート。

真衣:ぐあっ・・・あ・・・。

泰介:さってと。こっちも用済みなんだけどさぁ・・・

早喜:あが・・・い・・・たい・・いたい・・・

泰介:脳挫傷(のうざしょう)までしてるなぁ・・・こりゃ、もう助からねぇわ。
   ま、このまんまにして帰ろ。
   大将に実験結果教えないとイケナイしなぁ?
   


兼 :次回の闇ツ世界は

早喜:戦争の幕が上がる。

真衣:闇ツ世界 第三十三話 It's just begun.(イッツ・ジャスト・ビガン)

泰介:くく・・・あははははっ!あーたのしかった!




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