♂森戸 戒斗(モリト カイト):17歳。
政府特務機関「クガタチ」の中でも十指に入るエリートメンバーだった。
               現在はケイの洗脳によりトローノ・コンクエスト側に居る。
何事にも柔軟に対応できる冷静さを持つが、同時に淡泊でもある。
電気や磁力を扱う事のできる異能者。武器は刀。銘は『雷斬(らいきり)』

♀伊達 千晶(ダテ チアキ):17歳。あまり積極的に人と関わろうとしない。異能のスキルは高く、それもあり、他者からねたみも買いやすい。
             異能は「細胞変化」。

♂柳原 光(ヤナギハラ ヒカル):17歳。傲岸で、見下した発言をよくする。しかし、その傲岸に似合う戦闘スキルと能力を持っている。
                異能は「エネルギーの吸収・放出」


♂ジャック:見た目20歳前後。
      不気味な雰囲気を持つ人物。本名不詳。見た目は人付き合い良さげな人物だが、その内面は冷徹が服を着たよう。
      仲間であろうと切り捨てる時は切り捨てる。能力は遮断。
      トローノ・コンクエストを率いていたが、ケイの裏切りにより失脚。現在、クガタチに加勢中。
      使用武器は刃のない刀『無銘』

戒斗:
千晶:
光:
ジャック:
_________________________________________________________

千晶  :ん・・・ううん・・・。あ、朝?

戒斗  :おはよう。千晶。

千晶  :なっ!?か、戒斗さん!?

戒斗  :うん、朝早くにゴメンね。

千晶  :ど、どうしたんですか?

戒斗  :いやね。今日一日空いてるかな?

千晶  :一応・・・空いてますけど。

戒斗  :よし、じゃあちょっと付き合ってよ。

千晶  :ちょ、ちょ、ちょっと待って下さい!
     一体何に付き合えば良いんですか?

戒斗  :それはもちろん。訓練だよ。訓練。


光   :闇ツ世界 第三十一話 『雷光 VS 断絶』


戒斗  :ふー。さってと、十分、休憩するかー。

千晶  :なに・・・この訓練。

光   :おい・・・御曹司!テメェ・・・俺らを殺す気か!?

戒斗  :これくらいでへばってたら戦闘じゃあやってられないよ?

光   :って言ってもよぉ・・・。

千晶  :今までここまでのハードなモノをやってきませんでしたから。

戒斗  :なにやってたのさ。あの施設じゃ。

光   :なにったってよぉ。組み手と、走り込みと・・・。

千晶  :後は、異能のレベルを上げる為の訓練ですね。

戒斗  :ふぅん。実際の戦闘訓練なんてこれっぽっちもやってないのか。
     じゃあ、やろう。

千晶  :まさか・・・この後やるんですか?

光   :走り込みと断崖絶壁を登り切った後だぞ!?

戒斗  :これくらいやろうよ。やれるって君たちなら。

光   :殺す気かっ!殺す気だろ!

戒斗  :そんな事無いよ?コレを乗り切ればある程度の相手には対応できるよ。
     それに、これを乗り越えても、これ以上に強い輩はごまんと居る。
     でも、そんな輩達にこの命をくれてやる気はさらさらないでしょ?
     だったら、それすらも越える体力、知力、能力を手に入れよう。
     その手っ取り早い方法がこれだよ。

千晶  :でも、コレはいかに言っても・・・

光   :ツライ・・・。

戒斗  :まぁいいや。じゃあ、気が済むまでしばらく休憩ね。

千晶  :戒斗さんは、どちらに行かれるのですか?

戒斗  :んー?ちょっと、もうひとっ走りいってくる。それじゃね。

光   :まじかよ・・・どんだけの体力持ってんだよ。御曹司。

千晶  :私達・・・本当についていけるのかな・・・

光   :ぜってぇ、越えてやる。アイツをぶっつぶすのが俺の目指す場所だからな!

千晶  :なんで、そうなるのかなぁ・・・。

ジャック:楽しそうだね。夢を語るなんて。

千晶  :だれっ!?

光   :見た事ねぇ顔だ。俺ら側じゃねぇな?

ジャック:うん。もちろん。
     正式に言えば、辞めさせられた人間かな?

千晶  :元、トローノ・コンクエスト。・・・我々への復讐ですか?

ジャック:僕がここに来た理由?うーん。そうかな。
     とりあえずさ。森戸戒斗。彼は居る?

光   :さぁな。どーだったろうねぇ。

千晶  :敵と判別する以上、私達は貴方を殲滅します。

ジャック:へぇ、やる気か・・・。じゃあ、かるーくいなしてあげよう。

光   :なめんじゃねぇよ!ブラスト!

ジャック:おっとっと。危ない危ない。

千晶  :素早いっ!なら・・・トランス・バージョン・ソニック!

ジャック:へぇ、イイ能力だね。だけど・・・甘い!ディスペーア!

千晶  :なっ・・・よけられな・・・

光   :ブラスト!・・・ったく!なにやってんだ!

千晶  :いっつつ・・・ちょっとは手加減してよね・・・でも助かったよ。光君。

光   :さってと、どうしたものだよ。これは。

千晶  :なんとかして、勝つしかないでしょ。

ジャック:力の差。分かってないのかな?君たち。

光   :わかってんよぉ。・・・だがな。

千晶  :ここで退くのは許されないので。

ジャック:犬死にを選ぶのか。下らないよ。

光   :うっせぇ!犬死にかどうかはこれから決めやがれ!

千晶  :先行くよ!トランス、バージョン・ソニック!

ジャック:捉えた。ディス・・・

光   :がら空きだぜ!?ブラスト!

ジャック:おっと、君の存在、わすれてたよ。

光   :馬鹿に・・・すんなぁぁぁっ!

千晶  :ちょっと!光君!前に出すぎ!

光   :おらぁぁぁっ!ブラストォっ!

ジャック:そんな大振り。余裕で躱せる。

光   :ちぃっ!

千晶  :光君。頭下げて!トランス、バージョン・ソリッドエッジ!

ジャック:ディスペーア。

千晶  :ソリッドエッジを・・・撃ち落とした!?

ジャック:あー、なるほど。鏃(やじり)を作りだして打ち込んだのか。けど、射出スピードが遅いから、見切りやすいよ。

光   :悠長に講釈たれてんじゃねぇっ!ブラストォ!

ジャック:よっと。君の場合。技を出すまでが遅い。衝撃吸収と放出のラグが痛手だね。

光   :こんのぉ・・・舐めやがって!

ジャック:しかも、貯蓄した衝撃エネルギー。ほとんど使い切ってるんじゃない?さっきから出力が落ちてるよ?

千晶  :私達の技が見切られてる・・・。

光   :くっそ・・・なんなんだこいつ。

ジャック:トローノ・コンクエストも落ちぶれたねぇ。こんな弱い子達を戦闘に狩り出すなんて。
     
光   :誰が弱いって!?もう一度言って見ろ!

ジャック:ほらそれだ。弱い者ほどよく吠える。

光   :こいつ・・・

千晶  :挑発に乗りすぎ!かき乱されちゃダメ!

光   :うっせぇ!分かってる!

ジャック:チームワークもばらばら。これじゃ、長生き出来ないね。君たち。

光   :もう・・・我慢ならねぇ!・・・やってやる。

ジャック:出来るものなら。

光   :うらぁぁぁぁっ!

千晶  :あっ!だめ!そこに行っちゃ!

ジャック:引っかかったね?ディスペーア!

光   :ぐあぁぁぁぁっ!

千晶  :光君!

ジャック:手加減はしておいたよ。浅い切り傷くらいだから。

光   :何が・・・起こった・・・

ジャック:簡単なことだよ。君は、僕が仕掛けておいた異能のトラップに引っかかったの。
     定位置に入った敵を切り刻むトラップにね。

光   :くっ・・・

ジャック:いやぁ。簡単に引っかかってくれて良かった。おかげで楽しいモノがみれた。

千晶  :許さない・・・。

ジャック:君一人で何か出来るの?

千晶  :してみせる!

ジャック:出来ないと思うけどねぇ。

戒斗  :何やってくれてるのかな。君。

千晶  :戒斗さん!!

光   :なんで来やがったんだ!

ジャック:やはり居たね森戸戒斗。探したよ。

戒斗  :なんで探されてるのかな。

ジャック:それはもちろん。君を連れ戻すため。

戒斗  :クガタチの人間か。

ジャック:元々はトローノ・コンクエストの人間だけどね。

戒斗  :元・・・あぁ、そうか。お前が父さんが言っていたジャックか。じゃあ、ここで消しておかないといけないだな。

千晶  :戒斗さん逃げてください。こいつは私達で・・・

戒斗  :断る。彼、ここで消すつもりだから。君たちのこと。

ジャック:そんなタチの悪いことはしないよ。

戒斗  :口ではそう言ってるけど、目はそうは言ってないね。

ジャック:あれ。わかっちゃった?

光   :こいつ・・・殺してやる。

戒斗  :無理だよ。光じゃ。ここは、俺がやる。

ジャック:やる気だねぇ。それじゃ、僕もコレ抜こうかな。

千晶  :刀・・・?

光   :なにか・・・来る!

ジャック:行くよ?ちゃんと避けなよ?・・・『瞬斬』

戒斗  :二人とも3時方向に退避。

千晶  :は、はいっ!

光   :っ!?なんだよ、あの技!

千晶  :空間が・・・割れた!?

戒斗  :切断。いや、遮断か。存在を有ろうが無かろうが切り伏せる能力か。

ジャック:よくわかったね。それで、勝てそうかな?君は。

戒斗  :舐めるなよ。雷塵爪!(らいじんそう)

ジャック:『絶縁線(ぜつえんせん)』

戒斗  :はぁぁぁっ!

ジャック:っ!?速い!

戒斗  :ベクトル演算が間に合わないなら、異能を使う事はできないよね?

ジャック:なるほど、よく分かってる。でもっ!

戒斗  :ぐっ!しまったっ!

千晶  :戒斗さんの剣が・・・

光   :雷斬(らいきり)が折れた!?

ジャック:この刀が纏ってる力は僕の遮断の能力。全てのモノを切り伏せる絶対の力だ。そんな薄っぺらい鋼では受けきることさえ出来ないよ。

戒斗  :ふ・・・くはははは。面白い!こんな事は初めてだ!

光   :おい、トチ狂ったか!?御曹司!

千晶  :光くん!私達で戒斗さんを・・・

戒斗  :待って。折角面白くなったんだから、最後までやらせてよ。

ジャック:最後まで?折れた刀でどうするのさ?

戒斗  :折れた刀?・・・そう、君にはコレが。折れた刀に見えるんだ?

ジャック:なに・・・?

千晶  :元に戻ってる!?

光   :おい。どうなってんだ!?さっき確かに折れたのに・・・

戒斗  :さぁ、続きをやろう。これから俺は本気を出すからね?

ジャック:・・・へぇ。なるほど。それじゃあ、その本気がどこまで通用するのか。見てあげるよっ!

戒斗  :光、千晶。お前等の技。使わせてもらうぞ。

光   :使うっておい!んなことできる訳・・・

戒斗  :トランス・バージョンソニック。

ジャック:速度が上がった?

千晶  :私の異能!?

ジャック:ちっ・・・この刀では捕らえきれない・・・なら体術でっ!はぁっ!

戒斗  :アブソーブ!

ジャック:全力で殴ったのに・・・手応えがない!?

光   :俺の技かよっ!

戒斗  :どうしたよ?この程度か?

ジャック:くっ・・・これが『異能を統べる異能』というやつか。
     厄介だねぇ。本当にっ!!『瞬斬』!

戒斗  :おっと、危ない。雷斬・展開三式!これは避けられるか?『雷針(らいしん)』

ジャック:電気を帯びた針か・・・。到達させないさ。『絶縁線』!そして・・・

光   :何か来るぞ!

千晶  :戒斗さん!回避をっ!

ジャック:させない!『瞬斬乱刀』(しゅんざんらんとう)

戒斗  :ちぃっ!

ジャック:不規則な、居合い太刀筋の、一閃だっ!どこまで、避けきれるかい?

戒斗  :このまま避けててもきりがないな。

ジャック:でも、突出も出来ないでしょ?さぁ、どうする?

戒斗  :こうするっ!フレイム・ウォール!

ジャック:しまった!視界が・・・っ!

戒斗  :出来たな?隙が。・・・『瞬斬』

ジャック:くっ!?

光   :アイツの技まで!?

戒斗  :うーん。やっぱり、イマイチ出来なかったか。

ジャック:・・・どこまで万能なんだい。その力。

戒斗  :失敗だっただろ?万能じゃない。

ジャック:そうだね。だけど、そのおかげで僕は生き残れた。これはラッキーかな。

戒斗  :次は、決めるさ。

ジャック:その前に切り刻む。はぁっ!

戒斗  :素直に切り込んでくるか。受けて立つ!

ジャック:そりゃあね。中距離の異能戦じゃ、分が悪いから、ねっ!

戒斗  :でもっ、いつまでも、こうしてっ!打ち合っててもっ!しかたないよねっ!

ジャック:そうかなっ?はっ!

戒斗  :よっと!もらった!

ジャック:僕がね?

戒斗  :なっ?ぐあっ!?

千晶  :戒斗さん!

戒斗  :な・・・に・・・?

ジャック:今の切り上げをかわされた後、僕がこっそり背後で刀を左手に持ち替えたの、気付かなかった?

戒斗  :ははっ・・・トリックスターだね。

ジャック:それほどでも?

戒斗  :でも、俺が偽物ってことは気付いてないよね?

ジャック:なに?

戒斗  :雷塵爪!

ジャック:ぐっあぁぁっ!・・・くっ・・・後ろかっ!

戒斗  :甘いね。つくづく甘い。

ジャック:馬鹿にされるのは凄く腹立たしいね。
     でもっ!まだだっ!『瞬斬乱刀』!

戒斗  :こればっかりはっ・・・にがてだっ!

光   :おい。俺らも突っ込むぞ。

千晶  :行こう。トランス。バージョンソニック!はあぁぁぁっ!

ジャック:来たね?もらったよ。その首。

千晶  :えっ・・・?

光   :伏せろ!千晶!

ジャック:瞬斬!

戒斗  :・・・っと。間に合ったかな?

千晶  :戒斗・・・さん。

ジャック:しくじった・・・か。やっぱりずるい刀だよ。それ。

戒斗  :こっちの方が万能だろ?

ジャック:刀身が自在に伸びるとか。あり得ないでしょ。

戒斗  :普通ならね。でもコレは特注だから。

ジャック:砂鉄でしょ?その刀身。

戒斗  :そう。俺の異能で創り上げた刀だ。ちなみに、常に砂鉄が高速振動してるから切れ味は普通の刀より高いぞ?

ジャック:チートだね。イライラするくらいに。

戒斗  :それはどうも。で、どうする?これじゃ、お互いにじり貧だよ?

ジャック:そうだね。ここは退く事にする。なんせ、僕も勝手にきてるしね。
     ここでのことは次までお預け。いい?

戒斗  :ははっ・・・それまで死んでなければいいな?

ジャック:君がね?・・フフ、それじゃ、ね。

光   :なんだよ・・・アイツ。

千晶  :あんなのと戦うんですか?

戒斗  :もちろん。あれがもう10人いると思ったらいい。

光   :なんだそりゃ!

千晶  :今の私達じゃ・・・

戒斗  :死ぬのがオチだね。そのためには、みっちり訓練しなくちゃ。

光   :やられっぱなしは性にあわねぇ。・・・やってやる!

千晶  :私も。

戒斗  :その意気だ。よしそれじゃあ・・・

光   :ちょっとまて、もしかしてまた変なハードワークじゃあねぇだろうな?

戒斗  :違うよ?今日はもう日が暮れるから帰ろうって言いたかったの。

千晶  :よかった・・・。

戒斗  :まだやりたいなら、やる?

光   :断る!

千晶  :流石に遠慮します・・・。

戒斗  :そう。残念。・・・それじゃあ、帰ろう。


千晶  :この日、私と光君は無力感を感じていた。
     レベルの差。それは絶対的に目の前に壁として存在していたのだ。
     守るために存在しているのに守られている。
     それが悲しくて仕方なかった。
     絶対に強くなってやる。そう決意して、私達は今日を終えた。

戒斗  :次回の闇ツ世界は

光   :怒りの火は燃え上がる。

千晶  :しかし、その火は今だゆっくりとくすぶる

ジャック:闇ツ世界 第三十二話 救われぬ者

光   :訓練しんでぇっ!



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