闇ツ世界 30話 従者


♂森戸 戒斗(モリト カイト):17歳。
政府特務機関「クガタチ」の中でも十指に入るエリートメンバーだった。
               現在はケイの洗脳によりトローノ・コンクエスト側に居る。
何事にも柔軟に対応できる冷静さを持つが、同時に淡泊でもある。
電気や磁力を扱う事のできる異能者。武器は刀。銘は『雷斬(らいきり)』

♂ケイ:40代後半から50代。人よさげだが、実は腹黒な狸親父。
    国を代表する製薬会社の社長でもある。
    異能は『異能を統べる異能』異能の能力を持つ人間を洗脳可能。
    かつ、全異能保持者の能力を使用可能。

♀伊達 千晶(ダテ チアキ):17歳。あまり積極的に人と関わろうとしない。異能のスキルは高く、それもあり、他者からねたみも買いやすい。
             異能は「細胞変化」。

♂柳原 光(ヤナギハラ ヒカル):17歳。傲岸で、見下した発言をよくする。しかし、その傲岸に似合う戦闘スキルと能力を持っている。
               異能は「エネルギーの吸収・放出」


戒斗:
ケイ:
千晶:
光 :
___________________________________

ケイ:戒斗。どこへ向かっているか分かるか?

戒斗:さあね。どこなの?父さん。

ケイ:少し見せたいモノがあってな。

戒斗:・・・めずらしい。

ケイ:なに?

戒斗:めずらしいね。俺に何かを見せようとするなんて。

ケイ:ま、たまには良かろう?

戒斗:家族ごっこも、ね。

ケイ:手厳しいな。戒斗。

戒斗:ま、いいけど。それで、どこに行くの?

ケイ:私の経営する孤児院だ。異能者を育てる、な。

戒斗:そんなもの作ってたんだ。で、そこでなにするの?

ケイ:そこで、お前の側近を選ぼうと思ってな。

戒斗:側近?

ケイ:そうだ。今や、クガタチに追われ、お前も危険がつきまとう立場だ。盾は必要だろう?

戒斗:足手まといとも言うけどね。

ケイ:まぁ、そう悪く言うな。もちろん、今の戒斗に勝てる者はおらんだろう。
   だがな、今後、お前だけでどうこうできぬことがあるだろう。
   手を打ちたくとも、打てない。そんな事の無いように手数は増やせ。

戒斗:それもそう、か。わかったよ、父さん。
   それで、その候補はもう決めてるとか言わないよね?

ケイ:いや、まだ決めては居ない。お前に選んでもらおうと思ってな。

戒斗:それならいい。父さんの言う孤児院に行こう。

ケイ:・・・決めてあったら行かないつもりだったのか?

戒斗:そうだよ。行く意味なんて無いしね。

ケイ:顔は見たくなかったのか?

戒斗:別に。どんなのが来た所で、使えるなら使うだけだし。

ケイ:なるほどな。・・・とりあえず、いざ選別の為に向かうとするか。

戒斗:うん。いこう。


ケイ:闇ツ世界 30話 従者

  
光 :よぉ、化け猫女。

千晶:っ・・・。

光 :おいおい、この俺を無視していこうってか?あ?

千晶:・・・なんですか。光君。

光 :お前、また異能のスキルを応用出来るようになったらしいな。

千晶:そうですけど、それがなにか?

光 :見せてみろよ。ここで。

千晶:訓練室以外での異能を使った行為は・・・

光 :今更、規則なんてどうでも良い。今、俺はお前の能力に興味がある。

千晶:出来ません。

光 :あ?

千晶:ここで、見せることは処罰の対象になります。
   御父様に迷惑は・・・

光 :御父様ねぇ。俺らを拾ってくれたありがたいお人だったか?
   あんなクソ爺に尻尾振ってどうすんだ?

千晶:光君!

光 :この世界は弱肉強食なんだろ?拾ってくれた恩があったからって何だ?
   欲しけりゃ、ぶっつぶして、かっぱらう。それだけだ。

千晶:それは、道徳に反します。

光 :ハッ、聖人君子にでもなるつもりかよ。くだらねぇ。

千晶:私達は、御父様に受けた恩を返すために色々と鍛錬を続けてきたんでしょう。

光 :すっかり洗脳されてんのか?え?お偉い御父様になら喜んでヴァージン捧げますってか?
   
千晶:言葉が過ぎてます。いい加減にして。

光 :ま、お前がそれで良いんならあのクソ野郎の相手でも何でもすりゃあいいんじゃねぇか?
   俺はまっぴらごめんだな。

千晶:ここでのこと、言いつけますよ。

光 :暴言の数々をか?どうぞご自由に。言ったところで、俺にゃ関係ねぇ。
   なんせ、もうすぐここを出て行くからな。

千晶:出て行くって・・・。

光 :あ?もしかして知らねぇのか?我らが御父様が今、来てること。

千晶:御父様が?

光 :あぁ、それも御曹司まで連れて来てるらしいぜ。何でも側近を選びたいとかなんとか。
   くだらねぇな。

千晶:・・・光君。もしかして、あなた。

光 :ハッ。感づいたか?そう、その通りだ。戦闘訓練を観覧中の御父様と、御曹司をもろとも潰してやる。
   訓練中の事故にかこつけてな。

千晶:そんな事、出来ると思っているの?

光 :出来ると思うだって?出来るに決まってんだろうが。
   見てろ。ヤツらを潰して、俺が頂点に立ってやる。

千晶:・・・・・。

光 :なんだァ?その目。

千晶:そんなこと絶対に・・・させません。

光 :そうかい。んじゃ、今のウチに精々御父様んとこ行って、ケツでも振って、媚びを売っておくこったな。
   
千晶:・・・させはしません。



ケイ:ふむ・・・どうだ?戒斗。

戒斗:なにが?

ケイ:『なにが?』ではないだろう。目に止まった人間はいるか?

戒斗:今のところ無いね。

ケイ:さっきのテレパスの能力者など、そこそこ使えそうだが?

戒斗:あれはダメだよ。行動にムラがありすぎ。
   それに能力を鍛えたところであれ以上は伸びそうもないし。

ケイ:難しいな。お前の側近選びは。

戒斗:決めておいた方が楽だった?

ケイ:いや、いいさ。時間はあるのだから。

戒斗:そう。なら、その時間使わせてもらおうかな。

ケイ:さて、次の訓練者は・・・。ああ、柳原か。

戒斗:ん?どうしたの?

ケイ:いや、癖のあるヤツが来たなと思ってな。

戒斗:へぇ、面白い?

ケイ:そこそこだな。能力は面白いものがあるが、性格がな。

光 :999番。柳原 光。戦闘訓練始める。

千晶:待って下さい。

戒斗:ん?

ケイ:ほう、あの娘は。

戒斗:なに?

ケイ:いや、今一番の成長頭なのだ。あの娘はな。

光 :なんだよ、お前。俺はこれから訓練で忙しいんだよ。
   御父様も見てるんだしなァ。

千晶:・・・僭越ながら、御父様。この光君の戦闘訓練の相手を私にさせていただけませんか。

光 :はぁ?何いってんだてめぇ?

ケイ:控えろ、柳原。
   伊達 千晶。君の出番は後だろう?それとも、AIによる測定では不足かね?

千晶:そういうことではありませんが。

ケイ:では、なんだ?

千晶:すこし、彼とは因縁がありまして。

光 :ハハッ、何を言いだしてんだ?

千晶:ここで、決着をつけたく思います。

ケイ:それは良い嗜好(しこう)かもしれんが、今は選別も兼ねての訓練だ、そのような我が儘を・・・

戒斗:いいよ。やって見せて。

ケイ:だが、戒斗。

戒斗:なんか、良いものが観られそうでね。

ケイ:・・・仕方ない。特別に許す。

千晶:ありがとうございます。

光 :何をする気かと思えば、こんな事か。

千晶:光君。私の能力、見たいって言ってたよね。

光 :ああ、そうだな。

千晶:見せてあげる。後悔しないでね?

光 :ハハッ!言うじゃねぇか!後悔させてみろ!

ケイ:始め!

千晶:トランス!バージョン・ソニック!

光 :見慣れた技だなっ!高速移動で流れを乱させる気か?

千晶:トランス。バージョン・スマッシュ!

光 :吸収してやる。アブソーブ!からの、リリースッ!

千晶:ソニック!

光 :ちっ!ちょこまかと

戒斗:何?あの女の子の能力。

ケイ:細胞変化だ。あの娘は自分の細胞を変化させることが出来る。
   ソニックだと、脚の筋繊維を強化しての瞬発的な行動が可能になる。

戒斗:スマッシュは腕力向上して、打撃?

ケイ:そんなところだな。

戒斗:ふーん。でも、それじゃあの光とかいうのには勝てないね。

ケイ:見抜いたか?

戒斗:まあね。エネルギー吸収と放出が彼の能力でしょ。

ケイ:正解だ。光の場合、受けたエネルギーを倍にして攻撃者に返すことも可能だ。

戒斗:そんな相手に肉弾戦は無理だよ。負けたね。彼女。

光 :どうした?さっきからちょこまかと逃げてるだけじゃねぇか。
   それも、見知ったスキルだ。つまらねぇにもほどがあるぞ!?

千晶:だから、なに?そんな見知ったスキルでも、捉え切れてない癖に。スマッシュ!

光 :づっ!アブソーブ!・・・捉え切れてねぇか、見せてやる!

千晶:トランス。バージョン・ソニッ・・・。

光 :遅いんだよ!うらぁっ!

千晶:なっ!?ぐうっ!?

戒斗:へぇ、吸収したエネルギーを移動に当てたんだ。

ケイ:しかも、全てのエネルギーを移動に当てるのではなく、攻撃で使用する量を計算し、移動分を配分したようだな。

光 :なんだなんだぁ?口先だけかぁ?息あがってんぞ?

千晶:ソニックは・・・肺にも負担掛けるんで。

光 :はいはい、強がりはそこまでにしとけ。マジで潰すぞ?

千晶:潰せるものなら。

光 :ふざけんじゃねぇっ!

千晶:ぐ、ああっ!

ケイ:決まったな。

戒斗:いや、まだだよ。父さん。

千晶:トランス・・・バージョン・ソリッド。

光 :身体硬化だと?

千晶:だけじゃないですよ。トランス。ソリッド・エッジ!

光 :くっ!・・・あっぶねぇ!!なんだ今のはっ!?

戒斗:あの子、面白いね。

ケイ:どうした?

戒斗:いや、硬質化した皮膚を鏃(やじり)にして飛ばすなんて、そうそう考えつかないなって。

光 :鏃(やじり)作って飛ばす・・・ねぇ。姑息な手を使うんだなっ!それがお前の新しいスキルだってか!?

千晶:だったら、なんですか。

光 :くだらねぇんだよっ!ブラストっ!

千晶:止めきれなっ・・・あああぁぁぁっ!

光 :きれーに吹っ飛んだなぁ。よぉ、化け猫女。

千晶:・・・かはっ!?な・・にがっ?

光 :俺も新技習得してんだよ。溜め込んだ衝撃エネルギーを波動の形にして放出する技。ブラストだ。
   それにしても、お前のは小手先の技かよ。つまらねぇ。

千晶:く・・・あ・・。

光 :てめぇじゃ、俺には勝てねぇな。ここで潰れとけ。じゃあなっ!

千晶:くっ!

戒斗:そこまでだ。

ケイ:な、戒斗。いつの間に降りたんだ!

光 :なんだ。御曹司。

戒斗:テストは終わりだ。止めろ。

光 :生憎、やめろって言われた所で、やめる人間じゃないんでね。

戒斗:紫電掌(しでんしょう)

光 :ぐあぁぁぁぁっ!?

戒斗:止めないなら、抑えるしかないな。

千晶:速い。いつ攻撃したのが分からなかった・・・。

光 :な、なにが起こった・・・?

戒斗:柳原・・・だったか?力に固執するのはいいが、注意力が無いのが難点だな。
   だが、力の流し方、反撃スピードはよかった。

ケイ:予備動作なしの掌底を注意力どころで回避はできんだろうに。

戒斗:あと、お前。・・・伊達さんだっけ?

千晶:なん・・・ですか。

戒斗:スキルの応用や策は良いものがある。あとは、どれだけ発動までのレスポンスが速くできるのかにかかってる。
   良いものを見せてくれてありがとう。

千晶:あ・・いえ、あの。ありがとう・・・ございます。

戒斗:さて、と。父さん。決めたよ。

ケイ:ん?なんだ?

戒斗:この二人を側に置きたいんだけど。

光 :なっ・・・なんだと。

戒斗:いやか?

光 :俺はテメェなんかに頭を下げるつもりなんかこれっぽっちもねぇんだよ!

戒斗:そうか。なら、君の願いを叶えてあげる。何が良い?

ケイ:勝手なことを・・・

光 :俺の願いだって?・・・んなん決まってる!俺の願いはたった1つ。俺より強いヤツと戦って!そして勝つこと!俺が最強になることだ!

戒斗:そう。なら、こういう契約ならどうだ?お前は俺に従え。そのかわり、お前は何時でも俺の首を狙っていい。

光 :テメェ・・・何言ってるのかわかってんのかっ!?

ケイ:止めよ戒斗!それは・・・

戒斗:大丈夫だって、父さん。ねぇ?光クン。良い契約じゃないか?俺は君より強い。俺を倒せば誰よりも強くなれるんじゃないか?

光 :てめぇ・・・。ハハッ・・・アーハハハハハッ!テメェは馬鹿だ!大馬鹿だ!分かった!その契約に乗ってやる!
   いいか!?俺は、お前を潰すつもりでいるんだ!寝首掻いてもしらねぇからなっ!?

戒斗:ハハッ楽しみだ。是非、やってみてくれ。

光 :くそっ!

戒斗:君は、いいか?

千晶:えっと、はい。私で良ければ・・・。

戒斗:ありがとう。伊達・・・えっと名前は?

千晶:千晶です。伊達 千晶と言います。

戒斗:森戸 戒斗だ。よろしく。怪我は大丈夫?

千晶:あ、はい。この程度なら、自分の能力で治癒できますから。

戒斗:便利だな。細胞変化のスキルは。

千晶:そう・・・でしょうか。

戒斗:ん?

千晶:あ、いえなんでもないです。

ケイ:伊達、柳原。後ほど私の執務室に来い。

千晶:はい。御父様。

光 :ちっ・・・わーったよ。

ケイ:戒斗。先に戻っておいてくれないか。

戒斗:なにか用事?

ケイ:簡単な手続きがな。表向き、彼らを引き取った人間が必要なんだ。

戒斗:なるほどね。それが手間だと。

ケイ:そうなる。だから、先に戻ってコレを鷹平(たかひら)に渡して貰えないか。

戒斗:なに?この封筒。

ケイ:鷹平に与える次の指令だ。頼んだぞ。

戒斗:わかった。それじゃ、また後で。・・・あ、父さん。

ケイ:なんだ?

戒斗:俺のモノになるんだよね。その二人。

ケイ:まぁ、そうだな。

戒斗:変なこと、しないでね?

ケイ:何を言い出すかと思えば。する訳無かろう。

戒斗:うん。そっか、ならいいや。じゃ、またね。お二人さん。

千晶:失礼・・・します。



戒斗:次回の闇ツ世界は

ケイ:従者の訓練。

光 :そこに現れる招かれざる客。

戒斗:闇ツ世界 第三十一話 『雷光 VS 断絶』

千晶:私の力は、彼の人のために。




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