闇ツ世界 第28話『調整と告白』


♂相田 蒼哉(アイダ ソウヤ):25歳。
               政府特務機関「クガタチ」のトップ。
               切れ者で若くして政府機関の責任者となっている。
               戒斗を組織に引き入れた張本人。
               現在では事務職に力を注いでいるが、もともとは前線で闘う武闘派。
               何を考えているのか分からないとらえどころのない人物。
               良く言えばひょうひょうとしたキャラクター。悪く言えば不真面目。
               風を扱う異能者。武器は鉄扇。


♂ジャック:見た目20歳前後。
               不気味な雰囲気を持つ人物。本名不詳。
               見た目は人付き合い良さげな人物だが、その内面は冷徹が服を着たよう。
               仲間であろうと切り捨てる時は切り捨てる。能力は遮断。


♀伊藤 常葉(イトウ トキワ):20代後半。「クガタチ」三班隊長。冷静沈着な性格。クガタチの戦闘班の中でも頭脳派。
              でも戦闘も出来るオールマイティ(体育会系とも言う)。武器は大槌。能力は物質振動。

♀壬車 沙耶(ミグルマ サヤ):19歳。四班隊長。傲岸不遜な態度。室長以外には上から目線で物を言う。四班は特例で、彼女しかいない。
               能力は『氷結』。氷で作り出した武器や騎士で闘う。


蒼哉:
ジャック:
常葉:
沙耶:
____________________

蒼哉  :さて、これでテストは終了。お疲れ様。

ジャック:この程度、テストって程じゃないね。

蒼哉  :だろうね。ほぼ、コンプリートだ。

ジャック:で、合格なんでしょ?

蒼哉  :そうだね。実力、知力の両方とも合格点を優に越えてるからね。不合格にする意味はない。

常葉  :私は、反対ですけどね。

ジャック:アハハ。以前の因縁かな?ナイトさん。

常葉  :黙りなさい。

蒼哉  :はいはい。喧嘩しないのー。
     それで、戒斗(かいと)は見つかった?

常葉  :すみません。一足遅かったようです。
     現場には森戸(もりと)隊長の姿は無く、二班の班員全員は戦闘不能状態でした。

蒼哉  :そう・・・。

ジャック:取られたね。ルークを。

蒼哉  :そうだね。手痛い失態だよ。

常葉  :申し訳ありません。

蒼哉  :君が謝ってどうするのさ?
     これは事故。しかたないの。

常葉  :そうですが・・・。

ジャック:ほんと律儀なんだねぇ。いや、むしろ愚直なのかな?

常葉  :貴様・・・。

蒼哉  :ほれほれ。また、喧嘩してる。
     仲良くしなさいってば。

常葉  :・・・失礼します。

ジャック:どこか行くの?

常葉  :貴方には関係無いでしょう。

ジャック:・・行っちゃった。

蒼哉  :君がイジメ過ぎなんだって。
     ま、後で僕が機嫌取っておこう。それじゃ、次の部屋に行こう。付いてきて。

ジャック:まだ、入隊テストって続くの?

蒼哉  :いや。もう入隊テストは終了。これからは、君の装備品を調達するの。

ジャック:調達?どっかから拾ってくるの?

蒼哉  :違う違う。探すのには違いないんだけどね。
     ちょっとだけ手間なんだよ。

ジャック:手間?どういう意味かな。

蒼哉  :んー。そうだね。ま、コレはその部屋についたら分かるよ。


ジャック:闇ツ世界 第28話『調整と告白』


常葉  :・・・ふぅ。

沙耶  :神妙な顔してなにやってんのかしら。

常葉  :壬車隊長・・・。貴女でしたか。

沙耶  :沙耶でいいっての。その呼ばれ方嫌いなの。前も言ったでしょ?

常葉  :ですが、コレで慣れてしまっているモノで。

沙耶  :めんどくさいわねぇ。アンタ。いらつくわ。

常葉  :それは失礼。

沙耶  :・・・・・。

常葉  :・・・・・。

沙耶  :ったく。辛気くさいったら無いわね。

常葉  :何がですか。

沙耶  :アンタのこと。さっきからずっと一点ばっかり見つめてぼーっとしちゃって。
     暇があれば溜め息なんてね。気色が悪いにも程があるわ。

常葉  :気分を害されるなら私はどこかへ・・・

沙耶  :あーっ!もう!そういう意味じゃないっての!

常葉  :では・・・。

沙耶  :しゃきっとしなさい!何があったか知らないけど、そんな顔で居られたらこっちが滅入るの!
     
常葉  :そうですか・・・。

沙耶  :なに?二班のこと?

常葉  :まぁ・・・。そう言う事にしておきます。

沙耶  :あれはどうしようもないわ。戒斗が勝手に先走ってヘマしたの。
     そして、守るべき隊員を守れなかった。それだけよ。

常葉  :・・・・慰めてるんですか?

沙耶  :え?

常葉  :私のことです。・・・慰めてるんですか?

沙耶  :わ・・・悪いっ!?私がそんなことするのが!

常葉  :ふふふ。いえ、良いんです。ありがとう。

沙耶  :ったく・・・。調子狂うわ。

常葉  :私が悩んでいるのは、森戸隊長の事ではないのです。

沙耶  :え?

常葉  :いっそのこと話してしまおうと思いまして。

沙耶  :・・・そう。

常葉  :私が本当に悩んでいるのは。自分の事です。

沙耶  :自分の事?

常葉  :異能障害。もう、予断を許さないレベルまで上がったのかもしれません。

沙耶  :どういう事よ?

常葉  :見て下さい。この手。

沙耶  :手?手がどうかし・・・っ!ちょっと、コレっ!

常葉  :震えが止まりません。止めようとしても止まらない。
     この頃に至っては、周期など無く震えます。足も、ろくに立ってはくれない。

沙耶  :それじゃ・・・さっきまでどうやって立ってたの。

常葉  :さっき?・・ああ、共に森戸隊長を捜しに出た時ですか。
     あの時は、コレを呑んでたんです。

沙耶  :これって・・・。

常葉  :ダウナー・ピル。一時的に異能自体を抑える薬です。

沙耶  :そんなこと知ってる!・・・貸しなさい。それ。

常葉  :いいですよ。はい。

沙耶  :・・・・アンタ。これ、いつ開けた?

常葉  :昨日の夜です。

沙耶  :この摂取量・・・O・D(オー・ディー)。過剰摂取じゃない!

常葉  :そうでもしないと。立てません。

沙耶  :死ぬわよアンタ!

常葉  :死んでも良いです。彼のためならば。

沙耶  :愚かにも程があるわ!理解出来ない!

常葉  :してもらいたいとは思いませんよ。私の我が儘ですから。

沙耶  :あいつ・・・。蒼哉がそれを望んでいるとでも思う?

常葉  :いえ。思いません。・・・でも、彼に約束しましたから。いつまでも側にいると。

沙耶  :馬鹿なの?それとも阿呆なのかしら。
     ・・・伊藤 常葉。彼の意志をちゃんと理解しているの?

常葉  :しています。だからこそ・・・。

沙耶  :逃げてんじゃねぇぞ。テメェ!

常葉  :づっ!?

沙耶  :テメェがぶっ壊れても、彼の為ならかまわないって?下らないにも程がある。
     お互いに好きなんだろうが。だったら、お互いをいたわり合うのが当然だろうが!
     どちらかの命をすり減らして成り立つ愛は愛じゃねぇ!

常葉  :私には・・・コレしかないのです。

沙耶  :それが甘えなんだよ。テメェは!

常葉  :・・・お兄さん。

沙耶  :あん?

常葉  :お兄さんのこと・・・まだ、トラウマですか?

沙耶  :話を逸らしてんじゃねぇよ!

常葉  :自分は愛するものを壊してしまった。だから怒っているのですね。貴女は。

沙耶  :・・・黙って。

常葉  :五班隊長。貴女のお兄さん。あの人の事故の原因は・・・。

沙耶  :それ以上言うんじゃねぇっ!

常葉  :殺しますか?私を。その氷の剣で。

沙耶  :・・・済まない。

常葉  :・・・ごめんなさい。言葉が過ぎました。

沙耶  :・・・・・。

常葉  :私は、弱いのです。だから、こうしている。

沙耶  :それが、彼を傷つける事でも?

常葉  :ええ、これが、私のできる、彼に対する我が儘。

沙耶  :そうか。じゃあ、誰かがあいつを叱り飛ばしてやらねぇといけないわね。
   
常葉  :そうですね。

沙耶  :その役。私が買って出るわ。この私が。

常葉  :そうですか。

沙耶  :感謝しなさい。これの借りは大きいんだから。

常葉  :はい。覚えておきます。

沙耶  :じゃあ・・・ね。



蒼哉  :おつかれさま。ここだよー。

ジャック:ここは?

蒼哉  :武器庫。ここから君の好きな武器を掘り起こしてよ。

ジャック:これは・・・武器庫と言えるのかい?

蒼哉  :そうだよねぇ・・・。

ジャック:これは単なる武器の山だよ。

蒼哉  :はは・・・。整理できなくってねぇ。

ジャック:ったく・・・。で、この中から探すのか。骨が折れるね。

蒼哉  :ゴメンね。でも、これも重要な手順なんだ。

ジャック:神のお導きってヤツ?

蒼哉  :そんな事にしておこうか。深い意味はないんだけど。

ジャック:とはいえ、どう探して見たモノか・・・ん?

蒼哉  :イイの見つけた?

ジャック:これ・・・なに?

蒼哉  :お、お目が高いね。これは・・・

ジャック:刃がない。

蒼哉  :うん。刃はない。ただの模造刀。

ジャック:でも、これはそれだけじゃないね?

蒼哉  :大当たり。・・・君との相性は良いかな。この刀。
     
ジャック:本当?

蒼哉  :試しに振ってみる?

ジャック:ここで?

蒼哉  :うん。いいよ?

ジャック:じゃ、遠慮無く。はっ!

蒼哉  :・・・・。あれ?

ジャック:・・・なるほど。

蒼哉  :あっれー?こんなんだっけ?えっと・・・。

ジャック:これ、僕のにしていい?

蒼哉  :それはいいけど・・・あれ?不発なのかな・・・。

ジャック:あれ、気付いてない?

蒼哉  :え?

ジャック:後ろ。見てみてよ。

蒼哉  :後ろ・・・なっ!?

ジャック:モノは試しで切り伏せてみた。

蒼哉  :強化装甲パネルが・・・。真っ二つって・・・。
     これ、ロケットランチャー打ち込んでも壊れないんだよ!?

ジャック:気に入った。だから、これ。僕のにしていい?

蒼哉  :あ・・・ああ、いいよ。それは君のだ。

ジャック:ありがとう。

蒼哉  :細かいスペックを一応教えておくね?その刀の名は『無名(むめい)』

ジャック:銘があるのに、無銘?どういう意味?

蒼哉  :言い換えると『NoNamed(ノー・ネームド)』っていう名前になるかな?

ジャック:『NoNamed』ね。僕らしいかな?

蒼哉  :それ、自嘲してるの?

ジャック:どうでしょう。それで?スペックは?

蒼哉  :さっきも言ったけど、刃が無いから単なる撲殺武器みたいなもの。
     だけど、波動や、君の使う切断スキル。それがあれば話は別。

ジャック:へぇ?というと?

蒼哉  :波動や、切断っていうスキルは範囲指定が難しいスキルだよね?
     それを簡易化させるのがその刀。振った先にスキルの力を放てる。

ジャック:なるほど。指示棒みたいなものか。

蒼哉  :そんなモンだね。

ジャック:なるほど、なるほどなるほど。いいね。更に気に入った。

蒼哉  :じゃあ、君の専用武器は『無名』ってことで・・・うん。よし、なにはともあれ、これで決まったね。

ジャック:後はお披露目?

蒼哉  :みんなビックリするぞー?

ジャック:別の意味でね。

蒼哉  :それじゃ、もう少しで会議だから。そろそろ行こうか。

ジャック:了解。・・・室長様。

蒼哉  :くすぐったいね。君からそういわれると。

ジャック:そう?いずれ慣れるよ。

蒼哉  :そうだね。・・・愉しくなりそうだ。うん。



常葉  :次回の闇ツ世界は。

蒼哉  :全てのカードが開かれる。

ジャック:運命の歯車を回すのは。

沙耶  :闇ツ世界 第29話 王族

常葉  :彼らを止めるため、彼の為、止まる訳にはいきません。



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