闇ツ世界 第27話 全ての王

♂森戸 戒斗(モリト カイト):17歳。
               政府特務機関「クガタチ」の中でも十指に入るエリートメンバー。
               何事にも柔軟に対応でき、且つ常に熱意をもっている性格。
               電気や磁力を扱う事のできる異能者。武器は刀。銘は『雷斬(らいきり)』

♀菱山 馨(ヒシヤマ カオリ) :18歳。
               政府特務機関「クガタチ」のエリートメンバーであり、戒斗のパートナー。
               快活なキャラクターで変人が集まるエリートメンバーの中では常識派。
               水を扱う事のできる異能者。武器は槍。銘は『海割(うみわり)』


♂室井 朝永(ムロイ トモナガ):16歳。
               二番隊隊員。
               熱血漢で猪突猛進。プライドばかり高い残念な子。
               頭で考えるより、身体が動くタイプ。
               異能は磁力。戒斗とは違い電気は使えない(異能のレベルが低いため)。
               戦闘スタイルは、メリケンサックを用いた超接近戦。
 
♀卜部 千里(ウラベ チサト):17歳。戒斗と馨によって暴走しているところを『保護』された異能者。
              ほがらかであるが、すこし抜けている。いわゆる天然。頑張りが空廻ってドジするタイプ。
              能力は、『重量移動』から『重力操作』にまで発展した。

♂ケイ:40代後半から50代。人よさげだが、実は腹黒な狸親父。
              国を代表する製薬会社の社長でもある。
              異能は『異能を統べる異能』異能の能力を持つ人間を洗脳可能。
              かつ、全異能保持者の能力を使用可能。
    

戒斗:
馨:
朝永:
千里:
ケイ:
_______________________________________________

戒斗  :すまないな。遅れた。

朝永  :遅いぜ隊長。

千里  :まだ、対象は動いていません。

馨   :どこにいるの?

朝永  :3時の方向。手前のテラス。スーツの老人。

戒斗  :あいつか。

千里  :一般人が多いので、ここで手を出すわけにはいきませんね。

戒斗  :追跡する。一人になったところを抑える。

朝永  :とっつかまえるのか?

戒斗  :できることなら。だが、不可能なら。

馨   :殺害もやむなしね。

戒斗  :ここでヤツを潰せば全てが終わるんだ。いいな?

千里  :はい。

朝永  :了解。

馨   :じゃあ、いこうか。戒斗。

戒斗  :おう。全員・・・散開。


ケイ  :闇ツ世界 第27話 全ての王


朝永  :こちら、朝永。配置についた。

千里  :千里です。10時方向に対象を目視。

馨   :前方は抑えた。

戒斗  :了解。対象が路地から出る前に抑えるぞ。
     3・2・1・・・ゴー。

ケイ  :おや、これはこれは。皆様どうしましたかな?道にでも迷われましたか?

朝永  :すっとぼけてんじゃねぇよ。お前、俺らをハメやがっただろうが。

ケイ  :さて、なんのことやら。

馨   :抵抗はせずに。我々と共に来てもらいます。

ケイ  :なぜ君たちについて行かねばならない?

千里  :あなたが犯した罪を精算するためです。

ケイ  :ほう、精算ときたか。これはまた、横暴を正当化するには良い言い訳だな。

戒斗  :横暴はどちらがやっているんだ?

ケイ  :フフフ。では、勝った方が官軍となるのだな?良いだろう。

馨   :あくまでも抗うつもりですか?

ケイ  :抗えばどうなると?

千里  :その時は・・・分かるでしょう?

戒斗  :大人しくついてこい。さもなくば・・・

ケイ  :殺す。ということかね。いやはや、乱暴は嫌いなのだがな。

朝永  :やる気か・・・。

ケイ  :そうだな。たまには闘争も良いか。

千里  :隊長!

戒斗  :くるぞ!気を抜くな!

ケイ  :穴は貴様だな。潰す。ショック・ブラスト!

朝永  :俺かよっ!?

馨   :水柱・壁(すいちゅう・へき)!

朝永  :ナイスフォローっス!

戒斗  :雷塵爪(らいじんそう)!

ケイ  :グランド・ウォール

千里  :壁を作った!?

戒斗  :防がれたか。・・・ぼさっとしてんな!卜部!

千里  :す、すいません!

馨   :氷弾・散!(ひょうだん・さん)

ケイ  :無策に押し切るなど、愚の骨頂だ。

戒斗  :そいつはどうかな?

朝永  :上がお留守だぜ?馬鹿野郎。

ケイ  :なにっ!?

千里  :押し・・・つぶすっ!重量崑(じゅうりょうこん)

ケイ  :ぐっ!?

戒斗  :ちっ。かわしたか。

朝永  :あいつ逃げやがった。

千里  :馨さん!そっちに行きましたっ!

馨   :分かってる。任せて。

ケイ  :ロック・スパイク!

馨   :はぁっ!その程度。突き崩せるわ。

朝永  :おいおい。まじか!?岩を切り伏せたぞ!

戒斗  :副隊長の力量なめるなって事だな。

ケイ  :くっ!・・・ま、参った。降参だ。

朝永  :最初っから大人しくしとけってんだ。

千里  :隊長。どうしますか?

戒斗  :もちろん。本部に連れて・・・ぐっ!?あぁぁぁぁっ!?

千里  :隊長!?

ケイ  :フ・・フフフ。ハハハハハッ!さぁ、戒斗。私を守れ。

戒斗  :はい。父さん。・・・雷塵爪!

朝永  :っ!?おい!何やってんだよ!?隊長!

馨   :戒斗!?貴様!何をっ!?

ケイ  :何か、忘れておらんか?私の本当の能力のことを。

千里  :まさか、洗脳能力!?

朝永  :ちっ・・・デュアル・スキルかよ。

ケイ  :そんなチャチなもんじゃないな。私のものは。

朝永  :とりあえず、隊長を抑えないと!

千里  :それなら、私が行動不能にっ!

馨   :待って!千里!

千里  :加力崑・重!(かりょくこん・じゅう)これで止め・・・

戒斗  :雷針・散(らいしん・さん)

千里  :止まらない!?

朝永  :針を・・・蹴散らす!磁力掌波(じりょくしょうは)!

ケイ  :ほう。なかなかやるではないか。

千里  :助かりました。

朝永  :先走りすぎんなっての!
     ・・・さて、どうしたもんかねぇ?

馨   :そんなの、どうするったって。

ケイ  :考えずともいいのだ。さあ、やれ。戒斗。

戒斗  :はい。雷斬・展開終式(らいきり・てんかいしゅうしき)

朝永  :終式!?そんなん見たことねぇぞ!?

馨   :しまった!二人とも私の後ろに!永氷壁(えいひょうへき)!

朝永  :それだけじゃ、止まらねぇ!威力を削る!磁力掌波!

ケイ  :その程度の相殺力で果たして止めきれるかな?

戒斗  :豪雷天撃(ごうらいてんげき)

馨   :ぐうっ!?止まらない・・・っ!

朝永  :マジかよ・・・コレってまずいぞ?

千里  :馨さん!朝永さん!

ケイ  :さぁ、終わりにしろ。戒斗。

戒斗  :氷柱連剣(つらられんけん)

朝永  :これ以上受け切れねぇっ!

馨   :盾が・・・割れっ!?

千里  :戒斗さん・・・ごめんなさい!三式重量球(さんしきじゅうりょうきゅう)!

戒斗  :ぐっ・・・!?なにっ・・・。

ケイ  :特定座標に重力場を作って戒斗を抑えたか。一応は、これで止まる。だが。

朝永  :やべ・・・力が・・・はいらねぇ・・・。

馨   :ごめん・・・千里ちゃん・・・。

ケイ  :戦闘不能が二人。後、動けるのは君だけだな。

千里  :くっ。

ケイ  :いや、正式に言えば君も戒斗を抑えるので精一杯か。

千里  :逃げる・・・つもりですか

ケイ  :逃げる?いいや。逃げはしないさ。君を倒し。戒斗を連れて帰る。

千里  :なっ・・・?

ケイ  :私が意味もなく君たちの隊長を洗脳したと思ったかね?
     立ち位置からしても一番自分に遠かったはずの人間を洗脳したんだぞ?意味があるに決まっている。

千里  :そんな事は、させません!

ケイ  :どうやって?今、君は能力維持で動けないじゃないか。離せば戒斗が起き上がるからな。
     それとも、そこで伸びている二人が起き上がるとでも思っているのか?

千里  :そ、それは・・・

ケイ  :諦めろ。小娘。さもなくば、死ぬぞ?

千里  :それでもっ!私はあきらめないっ!

ケイ  :そうか・・・なら死ねっ!グランド・・・。

戒斗  :殺・・させるかぁぁぁぁぁっ!

ケイ  :ぬっ!?なにっ!?・・・洗脳が解けただと!?

戒斗  :卜部・・・すまねぇ。

千里  :戒斗・・・隊長。

戒斗  :とりあえず、能力解いてもらっていいか?重いんだが。

千里  :す、すみません!

ケイ  :なるほど。なるほどなるほど。今の洗脳で、目覚めたか。息子よ。

戒斗  :あ?何言ってんだ。てめぇ。

ケイ  :お前は、私の息子としてしっかりと目覚めたのだ。全ての異能者を救う力を持ってな。

戒斗  :全ての異能者を救う?お前の息子だぁ?

ケイ  :全ての異能者を従え、全ての異能者を導く力。それをお前は持って生まれたのだ。私の子として。

戒斗  :何を言ってやがんだ?

千里  :隊長。話は連行してからも聴けます。今は捕らえることに集中しましょう。

戒斗  :そうだったな。そこで伸びてる馨たちも心配だしな。二人で抑えるぞ。

ケイ  :それは、できぬよ。

戒斗  :さっきから凄い自信だな。その理由を是非とも聞きたいな。

ケイ  :ああ、そうか、この顔では会っていないものな。戒斗。

戒斗  :命乞いならもっとマシな言い訳しろよ。

ケイ  :見せよう。私の本当の姿。

朝永(N):そういうと共に、ケイの姿が一度歪み、新しい姿を創り上げる。

戒斗  :てめぇ・・・まさか。

ケイ  :思い出したか?息子よ。

千里  :隊長・・・?

戒斗  :どうしてテメェが生きてやがる!和匡(かずまさ)!

ケイ  :自分の親を呼び捨てとはどういう事だ?戒斗。
     そんな息子に育てた覚えはないぞ?

千里  :親って・・・どういう?

戒斗  :こいつは・・・俺と母さんを捨てたクズ野郎だ。
     自分の研究のためになっ!

ケイ  :捨てた覚えは無い。勝手に逃げたのはあの女の方だ。

戒斗  :いいや、アンタが捨てたんだ!俺や、母さんを捨てた!

ケイ  :フン、だが、私はお前を育てたぞ?お前の異能を発展させたのはこの私だ。

戒斗  :黙れっ!氷柱連剣!

ケイ  :遅いな、戒斗。グランド・エッジ。

戒斗  :ちっ!

ケイ  :ほら。相殺だ。このままでは私には勝てんぞ?

戒斗  :やってやる!

千里  :待って下さい!隊長!

戒斗  :止めるな!卜部っ!

千里  :朝永さんと馨さんの救護が先です。ここは一旦退きましょう!

戒斗  :退くかよっ!ここでこいつは殺さなきゃいけねぇんだ!

ケイ  :はっは、できるかね?息子よ。

戒斗  :息子と・・・呼ぶな!

千里  :隊長!

ケイ  :遠距離が無理と察して突っ込んでくるか。イノシシにも程があるな。戒斗。

戒斗  :はあぁぁぁぁっ!

ケイ  :『止まれ。』戒斗。

戒斗  :ぐっ!?・・・また、洗脳かっ・・・。

ケイ  :洗脳?違う。これは私の能力だ。『異能を統(す)べる異能』のな。
    
千里  :異能を統べる・・・?

ケイ  :ウィジ第一号被験者の私が得た能力だ。ふさわしいだろう?他の異能者を思うままに操れる。
     つまりは、だ。卜部 千里(うらべ ちさと)。能力を暴走させろ。

千里  :なに?これ・・・いや・・・いやあぁぁぁぁぁぁ!

戒斗  :卜部!テメェいい加減にしやがれ!

ケイ  :いい加減にするのはお前だよ。我が息子。
     約束したじゃないか。このヤマイに犯された世界を直そうと。
     そして、そのためには絶対の忠誠を私に捧げてくれると。

戒斗  :そんな覚えはない!

ケイ  :いいや。思い出すさ。戒斗。
     キーコード認証。『ノブレス・オブ・リージュ』

戒斗  :っ!?・・・なんだよ。この感じ・・・。

ケイ  :さぁ、思い出せ。『私に忠誠を誓う』と。そして、『裏切れ。』クガタチを。

戒斗  :ぐ・・・あぁぁぁぁぁぁっ!

ケイ  :ははは・・・ハハハハハッ!制御チップなんていう小細工が最後の最後で役立つとはな。
     しかし、予測していたが『異能を統べる異能』が突破されたか。この段階で最終覚醒が来たのは幸か不幸か。
     だが、コレで最終調整を終わらせたら、全てをゼロに戻すのだ。
     
戒斗  :・・・父さん。

ケイ  :ああ、戒斗。落ち着いたか。

戒斗  :うん。・・・あいつら、壊すの?

ケイ  :いや、捨て置け。支障にはならないからな。

戒斗  :わかったよ。父さん

ケイ  :さぁ、行こう。新しい幕を開けよう。


馨   :次回の闇ツ世界は。

朝永  :罪の意識。思いの行方。

千里  :それらが、救われる日はあるのか。

戒斗  :闇ツ世界 第二十八話 調整と告白

ケイ  :コレで盤石になった。精々足掻くが良い。クガタチ。


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