闇ツ世界 第二十二話 裏切り。それから・・・。

♂ジャック:見た目20歳前後。
      不気味な雰囲気を持つ人物。本名不詳。見た目は人付き合い良さげな人物だが、その内面は冷徹が服を着たよう。
      仲間であろうと切り捨てる時は切り捨てる。能力は遮断。
      失われた自己の過去に対する執着がある。


♀生駒 穂乃華(イコマ ホノカ):15歳。
               物腰柔らかに喋るが、非道な事を平気でやってのける人物。
               他の人とは違い産まれた時より異能の力を保持していた。(母親が妊娠時に『ウィジ』を服用したため)
               そのため忌み者として扱われてきた。能力は火炎。武器を持たぬ代わりに両手に炎を纏い篭手として扱う。


♂御堂 玲一(ミドウ レイイチ):22歳。人の視界と聴覚を盗み見る能力を持つ異能者。
                倒錯した異性への愛情から『ウィジ』に手を出した結果、人の視界を盗み見る(ピーピング)能力を得た。
                常におどおどとしている。しかし、欲望には忠実。故に倒錯し、反道徳的なことにも平然とやってのける。


♀井倉 真矢(イクラ マヤ)   :26歳。
                妖艶な雰囲気を持つ女性。ジャックを厚く慕っている。
                触った人物の記憶を掘り起こし、見る(見せる)事ができる能力。


ジャック:
穂乃華:
玲一:
真矢:
______________________________________________

玲一  :ふぅ・・・疲れた。

ジャック:お帰り。玲一君。

玲一  :ジャックさん!どうして!?

ジャック:どうしてって?ここは僕の家だよ?

玲一  :いや、そうですが・・・。つまり・・・。

穂乃華 :どうして、自分が他の人の意識に入っていると分かったのですか?でしょう。

玲一  :え。あ、そうです。

ジャック:そういうことね。分かった理由は2つ。1つは声を掛けても全く反応がないから。
     そして、もう1つはボソボソと何かつぶやいてるから。
     分かりやす過ぎるよ。玲一君。もうちょっと訓練が必要だね。

玲一  :ホントですね。・・・がんばります。

穂乃華 :で、今日は誰の意識に入っていたんですか?

玲一  :今日は・・・。

ジャック:当ててみようか?・・・尚でしょ?

玲一  :えっと。はい、そうです。

ジャック:そんなきょとんとしないでよ。
     
玲一  :なんで、そんな事分かるんですか?

穂乃華 :逆に問います。なんで、玲一さんは尚とシンクロしてるんですか?

玲一  :それは、えっとですね・・・。

ジャック:ケイのことかな?

玲一  :・・・そうです。

ジャック:なるほど。君らで考えて、僕の為に動いたってことか。

玲一  :はい。・・・あのっ!

穂乃華 :ジャック。

ジャック:なんだい?穂乃華。

穂乃華 :席を外します。

ジャック:うん。お願い。

穂乃華 :後で呼んで下さい。

玲一  :・・・勝手なことをして、ごめんなさい。

ジャック:いいんだよ?なんせ、君は良い事をしてくれたんだから。

玲一  :ジャックさん。

ジャック:怯えなくて良いよ?君には、手を出すつもりはないから。
     その代わり、何を見たか教えてくれる?

玲一  :はい。ケイは二人の男性と会話をしていました。
     内容は、次の行動について。

ジャック:その内容は?

玲一  :クガタチの無効化と言ってました。

ジャック:ああ、あのことね。

玲一  :何かあるんですか?

ジャック:そうだね。このあと話すつもりなんだ。
     他にない?見たこと。

玲一  :候補生がどうの、と。

ジャック:候補生?

玲一  :変革や、進化っていう単語も出てきてました。

ジャック:候補生、変革、進化・・・。つまり、僕らとは別の意図があるんだね?

玲一  :はい。

ジャック:そう。ありがとう。良くやってくれたね。玲一君。

玲一  :いえ。そんな事は。

ジャック:それじゃ、リビングに来てくれる?玲一君。
     みんなに話すことがあるから。

玲一  :はい。・・・あ、でも、黒井さんはまだ帰ってませんよ?

ジャック:いいんだよ。帰ってきて無くて。ほら、行くよ?


穂乃華 :闇ツ世界 第二十二話 裏切り。それから・・・


真矢  :久しぶりです。ジャック。

ジャック:いらっしゃい。真矢。どうだった?政治家達の闇は。

真矢  :ええ、満喫しましたわ。人の隠しておきたい過去をのぞき見るのって凄く面白い。

穂乃華 :ジャック。尚から連絡がありました。後、十分もかからないうちに帰れるとの事。

ジャック:そう。なら、早めに事は済ませておこう。

玲一  :なんでしょう。

ジャック:ついに、みんなが待ち望んだ日が来たよ。明日、クガタチにチェックメイトをかけるよ。

真矢  :明日・・・明日で終わるんですね。

穂乃華 :いえ、まだです。クガタチの排除は私達の目的の途中です。

ジャック:そうだね。僕らの目的はあくまでこの国の政府への反逆。そして、日陰者にされてきた僕ら異能者を日の元にあげること。
     でも、ある意味1番の問題点がクガタチの存在だから、明日で終わるって言っても過言じゃないかな?

玲一  :だったら、なぜ、尚さんをのけ者にするんですか?彼だって、僕らと同じ意志の元に動いてきたんじゃ・・・。

ジャック:本当にそうかな?

玲一  :え?

ジャック:今、その話は置いておこう。プランを説明するよ?
     穂乃華、地図出して。

穂乃華 :はい。こちらに。

真矢  :いつの間に本部の場所を特定したの?

ジャック:ケイが入手して来たようだよ?どうやったのかは知らないけどね。

真矢  :信用できるの?あの狸の持ってきたモノなんて。

穂乃華 :少なくとも、今回ケイが私達を罠に引っかける事は無いでしょう。
     必要性がありませんから。

真矢  :そう・・・。でも、用心に越したことはないわよ?

ジャック:コレは僕じゃなく、ケイの発案が元に作られてるからちょっと怖い所はあるけど、大丈夫じゃないかな?
     まず、僕と穂乃華でクガタチ本部へ向かって、この丘から遠距離攻撃をしかける。
     
真矢  :私の出番はなさそうね。

ジャック:それがあるんだよ。
     遠距離攻撃をしかける際に、クガタチ本部の防御システムをマヒさせなきゃいけない。
     あそこの防御は、自立攻撃ロボットと、異能の存在を探知するレーダーで構成されてる。
     それをハッキングして誤作動させて欲しい。

真矢  :私にできるかしら?

ジャック:できるよ。元プロハッカーの君ならね?

真矢  :おだててもなにも出ませんわ。

玲一  :僕はどうしましょう?

穂乃華 :御堂さんは、可能な範囲で良いので、警邏(けいら)中のクガタチ隊員の意識を覗いておいて下さい。
     こちらに気付きそうであれば、意識にジャミングを掛けて戦闘不能に。

玲一  :わかりました。

ジャック:その後、ケイが率いる突撃部隊の後方にまわり、援護射撃するんだ。

玲一  :突撃部隊?

ジャック:そう、突撃部隊。そして、これが、クガタチ無効化の重要なポイントなんだ。

真矢  :また、姑息な手を使うんでしょう?

ジャック:そうみたいだね。官憲(かんけん)の一部を洗脳して、突撃部隊に仕立て上げたみたいだよ?

穂乃華 :あの人の洗脳範囲は一人分じゃないんですか?

ジャック:そう・・・だったはずなんだけどね。どうやら隠していたみたい。

穂乃華 :信用なりませんね。

ジャック:早めに潰すかな?

玲一  :できますか?

真矢  :隙はありますね。あの人。・・・狙えるかと。

ジャック:そう。じゃあ、どさくさに紛れて潰そう。
     そして、尚もね。

穂乃華 :やっと踏み切ったんですか?

玲一  :どういう事なんですか?

ジャック:実は、僕たちの行動はクガタチに駄々漏れだったんだよ。

真矢  :そうなの?初耳ね。

玲一  :スパイをしていたってことですか?

ジャック:そう。実に巧妙な隠し方してたから、なかなか気づけなかったよ。

玲一  :それでも、彼を放置していたんですか?

ジャック:もちろん。

真矢  :なにか引き出そうとしてたんですね?いいじゃない。それで実があれば。

ジャック:引き出すなんてできる訳無いよ。

真矢  :じゃあ、何のために?

ジャック:ミスリードを誘うためだよ。
     だけど、あまり上手いこと罠には引っかかってくれなかったなぁ。

玲一  :それは・・・まぁ。

ジャック:でも、今回でミスリードは取れる。もう少しで彼が帰ってくるだろうし。

穂乃華 :ここで襲うつもりですか?

ジャック:だめ?

真矢  :後処理が面倒ですよ?

ジャック:大丈夫。僕の異能で処理するよ。

玲一  :僕は・・・

穂乃華 :・・・今更戸惑うのですか?

真矢  :戸惑う理由はある?邪魔なんだから排除しないと。

玲一  :う・・・。

穂乃華 :再度聞きます。今更、戸惑うんですか?

玲一  :それは・・・。

ジャック:はいはい。二人とも落ち着いて。
     玲一君は別のお仕事。この買い物にいってらっしゃい。
     三人も居れば十分だから。

玲一  :えっと・・・。あの。はい。

真矢  :それじゃあ、準備始めましょう?
     明日の事もあるし、早めに終わらせたほうがいいわ。

穂乃華 :そうですね。作戦は立てますか?
     
ジャック:もちろん。この部屋に招き入れてからが決戦だよ。

玲一  :なんで・・・。そんなに嬉しそうなんですか?

真矢  :うれしそう?誰が?

玲一  :あなた達がです!

穂乃華 :なにをいってるんですか?

ジャック:・・・・。玲一君。君はどっち側にいるんだい?(ト。あきれて)

玲一  :え?

ジャック:最近の君は凄く曖昧だ。何がしたいんだい?玲一君。

玲一  :僕は・・・。

ジャック:世界を変えるために。僕はそのために君を誘った。
     君はイエスと答えた。だからこの闇に生きている。
     でも、最近の君は段々とまた、日の元に帰ろうとしている。
     ただのちっぽけな異能犯罪者であった時の君に戻ろうとしている。
     
玲一  :そんな事は・・・っ!

ジャック:そうだよ。今更、倫理(りんり)を持ち出すのが良い証拠だよ。
     それに、君はここ最近僕に異論を持ちかけてばっかりだ。

穂乃華 :次は無いと言いましたよね?玲一さん。

真矢  :ねぇ、ジャック。本当はこの子なんじゃないのスパイって。
     いや、二人って言う事もあり得るわね。

ジャック:落ち着きなよ。二人共。

玲一  :人を信じられない人間が、この国を変えられるとは思えません。
     駒にしか見られない人間が、この国を背負ってたてるとは思えません!

ジャック:そのこころは?

玲一  :僕らは、存在を消された。生きているのにこの国に消された。そんな理不尽を無くすために立ち上がったはずでしょう!
     でも、ここで行われていることは、この社会がやっていることと同じじゃないですか!

ジャック:そう・・・。それだけ?

穂乃華 :浅いですね。

真矢  :子どもね。

玲一  :・・・・え?

ジャック:その顔。自分が、さもこの場では、大人びていると言わんばかりだけど。
     一体どっちが子どもなんだろうね?玲一くん。

穂乃華 :確かに、貴方の言うとおりの現象が起きているかもしれません。
     しかし、決定を固める人間が居なければこのようなことは成功しません。
     そして、その決定が不服だからと駄々をこねる人間は、行動を遅らせる危険分子です。

真矢  :私達が社会に対してやってる事はその我が儘かもしれない。
     でも、ここで行われている我が儘と目的も理由も違う。

玲一  :僕が・・・悪いんですか。

ジャック:悪いとかじゃないね。理解出来ないんだ。君を。
     
玲一  :僕は・・・間違ってないはずです!

真矢  :もう、いいんじゃない?ジャック。

穂乃華 :覚悟は出来ているようですし?

ジャック:そう。なら手始めだ。コレに消えてもらうしかないか・・・な。

穂乃華 :代わりはどうします?

ジャック:代わりは居るよ。どうとでもなる。じゃ、消えてね。

玲一  :くっ!

玲一(M):殺される。そう思った瞬間。部屋の電気が一斉に消え、直後、僕が背にしていたドアが蹴破られた。

真矢  :何がおこったの!?

穂乃華 :コッレ・フィアンナ!

真矢  :・・・玲一君はドコに?

ジャック:ふむ・・・。逃げられたか。

真矢  :ジャック。どうするの?

穂乃華 :彼一人で逃げたとは思えません。

ジャック:おそらく、攫ったんだね。

真矢  :誰が?

ジャック:尚が。うーん。どこから聞かれてたかな?

真矢  :消した方がいいお話ね。

穂乃華 :すぐに出ましょう。

ジャック:いや、いいよ。重要な事は聞かれてないはず。
     それに、アレがすんなり喋るとは思えない。

真矢  :そうなの?

ジャック:いろいろ仕込んだからね。喋らないよ。アレは。

穂乃華 :じゃあ、今は。

ジャック:明日に備えよう。後、この部屋の電気の復旧かな?


玲一  :次回の闇ツ世界は

真矢  :混乱の創造。

穂乃華 :行動は開始される。

ジャック:闇ツ世界 第二十三話 悪夢、または地獄のような

玲一  :これが、正義?




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