闇ツ世界 第十八話 狂乱

♂森戸 戒斗(モリト カイト):17歳。
               政府特務機関「クガタチ」の中でも十指に入るエリートメンバー。
               何事にも柔軟に対応でき、且つ常に熱意をもっている性格。
               電気や磁力を扱う事のできる異能者。武器は刀。銘は『雷斬(らいきり)』

♂室井 朝永(ムロイ トモナガ):16歳。
 二番隊隊員。
 熱血漢で猪突猛進。プライドばかり高い残念な子。
               頭で考えるより、身体が動くタイプ。
               異能は磁力。戒斗とは違い電気は使えない(異能のレベルが低いため)。
               戦闘スタイルは、メリケンサックを用いた超接近戦。
 
♀卜部 千里(ウラベ チサト):17歳。戒斗と馨によって暴走しているところを『保護』された異能者。
              重量移動の能力を持つ。ほがらかであるが、すこし抜けている。
              いわゆる天然。頑張りが空廻ってドジするタイプ。

♀早凪 藍子(ハヤナギ ランコ):20代後半。穏やかな性格。だがその実、人に危害を加えるのが大好きな人物。SとMが頻繁にひっくり返る。
               触れた相手に対しての危害を与える『反射』の能力。

♂奥野 鷹平(オクノ タカヒラ):30代後半。筋骨隆々な体格。これと決めたら曲げない固い信念を持つ人物。
               『高速治癒』の異能と、持ち前の筋肉を駆使し、相手の反撃を受け付けない突貫するワンマンな戦闘スタイル。

戒斗:
朝永:
千里:
藍子:
鷹平:

______________________________

戒斗  :そういうアンタは何のために闘ってんだ?

鷹平  :人々の救いのためだ。

朝永  :テロ行為が救いかよ?

鷹平  :何のことだ?我が行っている事はすべて、生きとし、生けるものへの義だ。

戒斗  :はっ、ワケわかんねぇな。そんなもん!

鷹平  :理解されるような訳など無い。ただ我は目的を全うするのみ!ふん!

戒斗  :ぐあっ!

千里  :戒斗さん!

藍子  :余所見してていいのかしらっ!?

千里  :しまっ・・・

朝永  :うらぁぁぁぁぁっ!

藍子  :おっとと。危ない。

朝永  :ぼさっとすんな!ばかっ!

千里  :ご、ごめんなさい。

戒斗  :ちっ・・・詰んだか?こりゃあ・・・。

朝永  :でも、やるっきゃねぇだろ?


戒斗(N):時はすこし遡る。


千里  :馨(かおり)さん。急病ですか?

朝永  :ああ、何でも高熱が引かないんだってよ。

戒斗  :そういうわけで、二人を呼び戻したって訳だ。悪いな。忙しい時に。

朝永  :いいって隊長。やってるたって班入り候補の選定作業だろ。怠いばっかりだったし。

千里 :朝永さん。それ言い過ぎ・・・。

朝永 :だってよ。組み手だって隙ばっかで歯ごたえないだろ?

千里 :それは・・・。そうでしたけど。

戒斗 :俺からしたら、お前等も歯ごたえ無いが。

朝永 :隊長は別格だっての。俺ら二人相手して息上がらないってなぁ。

戒斗 :腕を上げてきたのは評価するがな。最近、お前等から一本取るまで、時間はかかる様になった。

千里 :ホントですか!?

戒斗 :とはいえ、まだまだだぞ?

朝永 :精々、精進しますよ。

戒斗 :そうしてくれ。それで、今回の仕事だが、諜報部がトローノ・コンクエストの人間を追跡中らしい。こいつを確保する。

千里 :了解。

朝永 :腕が鳴るぜ!


鷹平  :闇ツ世界 第18話 狂乱


藍子 :さてと。今日は何しようかしら?ショッピングは昨日したし。映画を観に行こうかしら?それとも・・・

戒斗 :申し訳ないが、俺らについてきて貰えるか?

千里 :抵抗はしないで下さい。でないと・・・

藍子 :武力で制圧するって所かしら?女の子なのに乱暴なのね。貴女。

朝永 :んなことは聞いてねぇ。言う事聞くか、それとも。

藍子 :もちろん。嫌よ。論外だわ。

戒斗 :じゃあ、力ずくだな。行くぜっ!雷斬・展開一式!

藍子 :やれやれね。血の気が多いのは好きじゃないのよね。

朝永 :余裕ぶっこいてんじゃねぇぇぇっ!おらぁっ!

藍子 :ほいっと。

朝永 :おわっ!?・・・ぐはっ。

千里 :朝永さん!

藍子 :こういうの嫌いだけど、体術ができない訳じゃないの。甘く見ないでよね?

戒斗 :油断しすぎだバカっ!雷塵爪(らいじんそう)!

藍子 :リフレクション!持ち主に返りなさい!

戒斗  :ちっ!異能だと返ってくるのか!?

千里  :はぁぁぁっ!

藍子  :おっと・・・。ショートソードなのね。貴女の得物は。

千里  :よく、かわしますねっ!しかし!

藍子  :っ!?暗器ですって!?

千里  :誰も、この剣だけとは言ってません!

藍子  :くっ!危ないわねっ!はっ!

千里  :ぐっ・・・。防いだのに手がしびれるっ!

藍子  :これでも太極拳の達人なのよ?私。

戒斗  :だからなんだって?おらぁっ!

藍子  :遠距離が駄目なら接近戦?

戒斗  :だけじゃねぇぜ?

朝永  :磁力掌波(じりょくしょうは)!

藍子  :リフレ・・・

千里  :隙有りっ!

藍子  :ちぃっ!・・・やるじゃないの。さばき切れないわ。

朝永  :これで決めるぜ!おらっ!磁力しょ・・・

鷹平  :フイシン!

朝永  :ぐあぁぁっ!?

鷹平  :苦戦しているようだ、な。

藍子  :だれ?あなた。

鷹平  :それは知らなくともよい。戦士に言葉は無用。

千里  :大丈夫ですか!?朝永さん!

朝永  :大丈夫だ・・・。くそっ、何だあいつ・・・。

戒斗  :増援か・・・。厄介だ。

朝永  :手分けするか?隊長。

千里  :でも、戦力が削がれますよ?

戒斗  :仕方ないだろ。一人に集中しても、かき乱されて終わるのが関の山だ。
    卜部。女の方を相手してくれ。相性はお前の方が合ってる。朝永、俺と一緒にあのでっけぇオッサンを押さえるぞ。

朝永  :了解だ。やってやろうぜ?隊長。

鷹平  :作戦は組めたのか?

戒斗  :はっ!俺らをバカにすんじゃ、ねぇぇぇぇっ!

朝永  :磁力・・・掌波っ!

鷹平  :ふんっ!ただのごり押しか。この程度・・・ぬるい。

朝永  :おいおい、俺の全力だぞ!?今の!

戒斗  :ひるむな!いくぞ!

鷹平  :次はお前か。何をする気だ?

戒斗  :雷塵爪!

鷹平  :それも、効かん!ふんッ!

戒斗  :からの、紫電掌(しでんしょう)!

鷹平  :ぐぬっ!?

戒斗  :直に身体の中に電流が流れたら、効くだろ?

鷹平  :・・・効かんな。

戒斗  :なにっ!?うおっ!?

朝永  :隊長を片手で持ち上げた!?

鷹平  :小手先の技で、この我を倒す事はできん!

戒斗  :おわぁぁぁっ!?

朝永  :ごへっ!?

千里  :隊長!朝永さん!

藍子  :何が、なにやら分かってないけど。邪魔者は排除するに限るわねっ!

千里  :くっ!リーチはこっちが上なのに・・・

藍子  :届かないのが悔しいかしら?はぁっ!

千里  :ぐふっ・・。

藍子  :丹田(たんでん)を殴ったから。暫く身体が言う事きかないわよ?

千里  :ははっ、ホントですね。でも、それでも、貴女は私が相手をするんです!

藍子  :まだ、立ち上がるの?タフねぇ・・・。あきれちゃう位に。

千里  :伊達に隊長にしごかれてませんからっ!

藍子  :ああ、あのビリビリ少年ね。そんなに強いとは思えないけど、ねっ!

千里  :くっ。強い、ですよ。ウチの隊長は。少なくとも、貴女よりはっ!

藍子(M):左からショートソードの横薙ぎがくるわね。ここは、さばいて・・・

千里  :しまった!さばかれたっ!?

藍子  :もらったわっ!

千里  :・・・ええ、私がですが。

藍子  :なんですって?・・・ぐっ!?

千里  :ふふっ。甘いですね。

藍子  :・・・いつの間に。すり替えたの?左手で剣を握ってたはず。

千里  :さっきの一撃をもらったときですよ。上手く引っかかってくれました。

藍子  :とっさに避けなかったら危なかったじゃない。髪の毛切れちゃった。

千里  :貴女、異能は使わないんですか?

藍子  :私の異能はちょっと癖があってね。今の貴女には使えないの。

千里  :なるほど。だから、私ですか。

藍子  :彼の采配通りって所ね。でも、その彼だけど・・・

戒斗  :ぐあぁぁぁぁぁっ!?

鷹平  :遅い。ぬるい。弱い!この程度か!

朝永  :なんだ、このオッサン。ばけもんかよ・・・。

戒斗  :んなわけあるかよ。なにか、あるはずだ。

鷹平  :貴様等は。何のために闘っている?

朝永  :いきなりなんだよ?

鷹平  :この救いのない世界を護るためか?

戒斗  :闘うときに問答するのが最近のはやりか?・・・そうだよ。悪いか?そういうアンタは何のために闘ってんだ?

鷹平  :人々の救いのためだ。

朝永  :テロ行為が救いかよ?

鷹平  :何のことだ?我が行っている事はすべて、生きとし、生けるものへの義だ。

戒斗  :はっ、ワケわかんねぇな。そんなもん!

鷹平  :理解されるような訳など無い。ただ我は目的を全うするのみ!ふん!

戒斗  :ぐあっ!

千里  :戒斗さん!

藍子  :余所見してていいのかしらっ!?

千里  :しまっ・・・

朝永  :うらぁぁぁぁぁっ!

藍子  :おっとと。危ない。

朝永  :ぼさっとすんな!ばかっ!

千里  :ご、ごめんなさい。

戒斗  :ちっ・・・詰んだか?こりゃあ・・・。

朝永  :でも、やるっきゃねぇだろ?

戒斗  :そうだな。なんにせよ。敵はぶっつぶす!

千里  :負けるわけには行きませんからね!

藍子  :あっついわねぇ。ホント。

鷹平  :貴様は何に対して闘う?女。

藍子  :あら、私?・・・そうねぇ。ただ自分の為かしら?

鷹平  :自己の悦楽の為か。

藍子  :悦楽って言うと聞こえ悪くない?ただ、やりたいことをやってるだけよ。私は。

鷹平  :そうか。そこに他者に対するものは?

藍子  :厄介な問答をするつもりはないんだけど?

鷹平  :無いのか。ならば、貴様も敵だ!

藍子  :っ!?ちょっと!危ないわね!

鷹平  :義無き者は排除する。

戒斗  :偏見の塊じゃねぇか、よっと!展開・三式(てんかい・さんしき)!雷針(らいしん)!

鷹平  :それに当たるわけにはいかぬな。

藍子  :ちょっと!離しなさいっ!くっ!リフレクション!

朝永  :うおっ!?針がこっちに飛んできた!

戒斗  :ふん。筋肉バカじゃないらしい。

藍子  :離せって・・・言ってるでしょうが!

鷹平  :ぐっ・・・なかなか効いたぞ。女。ふん!

藍子  :投げ飛ばすなんて、レディに対してする事じゃないわよっと。

千里  :たぁぁぁぁっ!

鷹平  :脆い!

千里  :刃が通らない!?

鷹平  :ツァンレン!

千里  :なっ!?剣が、折れ・・・

鷹平  :フー!

千里  :ぐああっ!

朝永  :千里!てめぇ、このやろぉぉぉ!

鷹平  :良い突きだ。だが、愚直!ツァンレン!

朝永  :ぐっ・・・く、そが

戒斗  :卜部!朝永!てめ・・・

鷹平  :イノシシ武者の相手はもの悲しいものがあるな。

戒斗  :ぐっ・・・かはっ。

藍子  :どれだけ殴られても平気な顔してるアンタには言われたくはないわね。

鷹平  :次は貴様か?女。

藍子  :遠慮しとくわ。・・・今日はオフのはずだったのに。何で運動しなくちゃいけないのかしら。
    それじゃ、ばいばーい。

鷹平  :ふん。去ったか。元よりあれは指示の対象外だ。後は。

戒斗  :てめぇ、何しやがる・・・。

鷹平  :何てことはない。始末を付けるだけだ。

戒斗  :殺すなら、俺を先に・・・。

鷹平  :部下思いだな。だが、これも指示なのでな。

戒斗  :やめろ。てめぇの相手はこのお・・・ぐっ!?

鷹平  :ん?始まったか?

戒斗  :あ・・・あぁぁぁぁぁぁぁ!

千里  :たい・・・ちょう?

戒斗  :こ、ろす。殺す殺す殺す!

鷹平  :面白し!その殺気!我を傷つけられる・・・な!?

戒斗  :傷、つけた。

鷹平  :氷の槍、だと?いつの間に増援が

戒斗  :氷柱連剣(つらられんけん)

鷹平  :貴様、デュアルスキルだったか。

戒斗  :死ね。

鷹平  :ぐぬっ!・・・しかし、我は死なん!臓腑を貫かれようとも。我は死なん!フイシン!

戒斗  :氷壁(ひょうへき)

鷹平  :くっ、これでは、いかん。血を失いすぎる。一度、引かねば。

戒斗  :逃げるなよ。なぁ。逃げるなよ。・・・づっ!?

鷹平  :残念だが。貴様の時間切れの様だな。またいずれ会おう。若者。

戒斗  :ま、て・・・。

朝永  :隊長!やべぇ、肋骨が折れてる!

千里  :戒斗さん!しっかり!

戒斗  :こ、ろす。にげ、るな。

朝永  :千里!隊長担げるか!?

千里  :実は私、腕イってます。

朝永  :俺は足だ。くそ、しゃあねぇ。奥の手だ!

千里  :奥の手?

朝永  :これやったら隊長に怒られるんだが、意識無いし、非常事態だカンベンな!
     えっと、番号は、確か090・・・。

千里(M):朝永さんがどこに電話したのか分からなかったが、この後、すぐにやってきた救護班に私達は救助された。
     隊長に起こった変化。電気とは違う別の異能を使った戒斗さん。なんとか敵を撃退できたのはいいけれど・・・。
     デュアルスキル。それに、あの相手が言っていた指示や目的とは一体何なのだろう。
     本部へと運ばれる中、そう考えていた私はいつの間にか泡沫の夢の中に落ちていった。

戒斗  :次回の闇ツ世界は

朝永  :力の制御

藍子  :全ての基礎であり、護るために大事な修練。

鷹平  :闇ツ世界 第十九話 基礎の習練

千里  :私も、負けてられません!




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