闇ツ世界 第十五話 炎上

♂奥麻泰介(オクマ タイスケ):20代後半から30代前半。人垂らしな喋り方をする人間。とある理念から行動を行う人物。
               異能は空気などを圧縮して放つ『放出』の能力。

♀生駒 穂乃華(イコマ ホノカ):15歳。
               物腰柔らかに喋るが、非道な事を平気でやってのける人物。
               他の人とは違い産まれた時より異能の力を保持していた。(母親が妊娠時に『ウィジ』を服用したため)
               そのため忌み者として扱われてきた。能力は火炎。武器を持たぬ代わりに両手に炎を纏い篭手として扱う。

♂森戸 戒斗(モリト カイト):17歳。
               政府特務機関「クガタチ」の中でも十指に入るエリートメンバー。
               何事にも柔軟に対応でき、且つ常に熱意をもっている性格。
               電気や磁力を扱う事のできる異能者。武器は刀。銘は『雷斬(らいきり)』

♀菱山 馨(ヒシヤマ カオリ):18歳。
              政府特務機関「クガタチ」のエリートメンバーであり、戒斗のパートナー。
              快活なキャラクターで変人が集まるエリートメンバーの中では常識派。
              水を扱う事のできる異能者。武器は槍。銘は『海割(うみわり)』

※配役でナレーションを振っていますが、あくまでナレーションとして読んでキャラ読みはしないで下さい。

泰介:
穂乃華 :
戒斗  :
馨   :

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穂乃華(N):戒斗と馨は、深夜のショッピングモールにいた。
      電灯が消えた店内。闇に沈むこの場所は、二人の緊張感を増長させていた。

戒斗 :それにしても、何でこんな場所を見回らなきゃいけねぇんだよ。

馨  :室長がなんか掴んだんでしょ。・・・それにしても、気味が悪い。

戒斗 :マネキンが並ぶだけでこんなに不気味とは・・・。なぁ、動いたらどうするよ?

馨  :ちょ・・・ちょっと!そんな事言わないでよ!

戒斗 :はははっ。びびりすぎだっての。そんなことありえねぇよ。動いたとしたらそいつは人間だ。

馨  :そうだろうけど・・・やっぱり怖いって。

戒斗 :槍をぶんまわして闘ってる人間が言う台詞かよ。

馨  :う、うるさいなぁっ!

戒斗 :さて、どうしたものかな?これと言った指示も室長からはでてないしなぁ・・・。

馨  :そうだね。珍しく、詳細の指示がなかったね。

戒斗 :それに、どっかおかしくなかったか?なんかボーっとしてるっていうか。

馨  :そうかな?・・・つかれてたんじゃないの?

戒斗 :そんなもんか?

馨  :そんなもんだよ。

戒斗 :どうでもいいや。とりあえず、見回って不審者警戒するか。


馨  :闇ツ世界 第十五話 炎上


泰介 :おやおや。可愛らしい女の子がこんな場所に何用だい?

穂乃華:誰ですか。あなた。

泰介 :君こそ誰だい。ここはとっくに閉店してるはずだよ?悪い子だねぇ。

穂乃華:あなたにそう言われる理由はないですね。あなたも不法侵入した口でしょう?

泰介 :まぁ、そういえばそうなるか。で、君はなにしてるの?

穂乃華:黙りなさい。殺しますよ?これ以上首を突っ込んだら。

泰介 :へぇ、どうやって?

穂乃華:退く気は無いんですね?では、行きます。ヴェデーレ。フィアンナ・マーノッ!はぁぁぁぁっ!

泰介 :おっと!怖い怖い。やっぱり異能者だったんだね。君。

穂乃華:異能を知ってる・・・。じゃあ、あんた。クガタチ?

泰介 :違うよ。クガタチじゃない。

穂乃華:でも、異能を知ってるってことは、私達の敵ってことでいいね。殺す。

泰介 :可愛い子が殺すって言う言葉を吐くのは、どうかと思うんだけどね。

穂乃華:黙りな、優男(やさおとこ)。私はあんたみたいな人間がだいっきらいなんだよ!

泰介 :そう。じゃあ、口説くのもそろそろやめよっか。お仕事もあるし。現界せよ、ルジョー!

穂乃華:銃!?

泰介 :そう。かっこいいだろ?マスケット銃だ。おっと、それもただのマスケット銃じゃないからな?俺の相棒だ。この銀のつやに、凝られた装飾。まさしく俺の・・・

穂乃華:フィアンナ・プーニョ!

泰介 :おっと!人の話は聞くモンだぜ?嬢ちゃん!

穂乃華:あんたと喋ってる余裕はない!

泰介 :心にゆとりを持ちなよ、嬢ちゃん。シュートっ!

穂乃華:クレマツィオーネッ!くっ!?・・・弾丸じゃないのか。

泰介 :そう。この銃から発射されるのは、圧縮された空気の弾。それにしても、炎の壁ね。1発防げても、連弾になれば崩れるよね?バレット・ストーム。

穂乃華:銃が・・・増えた!?

泰介 :この十挺(じゅっちょう)から同時発射される弾丸。頑張って受け止めてね?シュートッ!

穂乃華:くぅっ!・・・お、押し切られるっ!

泰介 :第二波行くよ?そーれっ!

穂乃華:このままじゃっ!・・・。仕方ない。エクスプロージョン!

泰介 :おおっ!?爆発!?やり過ぎたか!?

穂乃華:はぁぁぁぁっ!コッレ・フィアンナ!

泰介 :ぐっ!?あっぶね。嬢ちゃんの両手は火炎放射器かい。視界が遮られるな・・・っと!

穂乃華:ちょこちょこと、鬱陶しいっ!

泰介 :簡単にあたってやる訳にもいかねぇから。死にたくねぇしなっ!

穂乃華:ちっ!ここで時間を稼がれていては・・・

泰介 :ん?なんか言ったか?

穂乃華:フィアンナ・オンダ!

泰介 :おいおいっ!炎で波乗りって・・・

穂乃華:本気で潰す。アンタが何者であろうが、もう知らない。

泰介 :そうかい。とはいえ、こっちもやりたいことがあるんだよね。

穂乃華:後悔しな。優男。そして・・・この、炎の津波を、かわせるならかわしてみせな!いけぇっ!

泰介 :おお、こわいこわい。それじゃ、少し頑張るかな。ルジョー・パヴェーダ

穂乃華:一挺に戻して良かったの?

泰介 :本領は、ここからだ・・・ぜっ!

穂乃華:っ!?飛んだっ!?

泰介 :空気の密度をいじってやりゃあ。人が立つくらい余裕だっての。そんで、もって・・・はっ!

穂乃華:ぐっ!

泰介:加速移動することも可能なんだぜ?

穂乃華:インファイトに持ち込むつもり?そんな長柄(ながえ)の銃で。

泰介 :もちろん。撃つだけが銃じゃないからな。

戒斗 :こっちか!

馨  :戒斗!あそこに居るのって!

戒斗 :ああ。トローノ・コンクエストの一人だ。

穂乃華:邪魔者がっ!・・・消えろ!呑み込め!フィアンナ・・・

泰介 :させねぇよっ!ショット!

穂乃華:ぐあぁぁぁぁっ!

泰介:また、津波でも流されると厄介だ。

穂乃華:どこまでも邪魔を・・・

戒斗:なんなんだ。こいつは。

馨 :とりあえず、トローノ・コンクエストじゃなさそうね。

泰介:あんたらか、クガタチって。えらく遅い出勤じゃねぇか。

戒斗:なんだ、てめぇ。

泰介:さぁ、誰でしょう?ヒントは1つ。俺はあんたらの敵。ショット!

戒斗:あっぶねぇっ!くそ!なんだってんだ!雷斬・展開一式!(らいきり・てんかいいっしき)

馨 :援護する!

穂乃華:展開を変える・・・しかない。全てを燃やす!

泰介 :おやおや?何かする気か。

戒斗:余所見してんじゃねぇ!雷塵爪(らいじんそう)!

泰介:甘いね。読み切れる!

馨 :後ろががら空きっ!せぇいっ!

泰介:おっと!?あぶね。

穂乃華:コッレ・フィアンナ!

戒斗:のわっ!?当たりかけた!

馨 :集中しなって!戒斗!

泰介:嬢ちゃん。もしかして・・・。

穂乃華:フィアンナ・オンダ!この場を、全て呑み込め!

泰介 :やっぱりか!

戒斗 :炎の・・・波!?

馨  :させないっ!・・・戒斗!そこの消火栓壊してきて!

戒斗 :お、おう!

泰介 :彼らが何をする気か知らないけど。この間に退散・・・っと!?

穂乃華:逃がさない!

泰介 :女の子に抱き留められるのは好きだけど・・・。これは不味いかな?

穂乃華:燃えろ!クレマツィオーネ!

泰介 :ですよねーっ!おりゃっ!

穂乃華:ぐっ・・・はな・・さないっ!

泰介 :しつこい女は苦手・・・だっ!

穂乃華:っ!しまった!

泰介 :バレット・・・。

馨  :私を忘れてないかしらっ!?はぁぁぁっ!

泰介 :ちっ!ガチで忘れてたぜ、こんちきしょう!

戒斗 :壊せたぜ!・・・ってかびしょびしょ・・・。

馨  :後は任せて!この場の水を全て・・・操って見せる!

穂乃華:その程度の水で、押し返せると思ってるの!?

馨  :押し返しはしないわ。ただ、受け止めるだけ!
    水柱・壁(すいちゅう・へき)!

泰介 :おお、ホントに受け止めやがった。

穂乃華:ちっ!だが、押し切る!

戒斗 :させるかっての!雷針(らいしん)!

穂乃華:コッレ・フィアンナ!

戒斗 :相殺しやがったか・・・。

馨  :火が弱まった・・・押し切れる!荒狂爆流(こうきょうばくりゅう)

穂乃華:押し切られた・・・。これじゃ、きりがない。退く!

馨  :させない!はっ!

穂乃華:ちっ!しつこいね。クガタチ。前は手も足も出なかった癖に。

馨  :言ってなさい!氷弾・散(ひょうだん・さん)!

泰介 :燃えてるねー。こういう若者って見てて飽きない・・・っておわっ!?

戒斗 :アンタも敵だろ?余所見してんじゃねぇよっ!

泰介 :あらら、こっちも燃えてるのね。じゃあ、お兄さんも燃えちゃおうか。バレット・ストーム!シュートッ!

戒斗 :雷斬・展開三式!(らいきり・てんかいさんしき)雷針山雨(らいじんさんう)

泰介 :うぉっと!?さすがに、空気で実体物は防ぎきれないな。ならっ!

戒斗 :突っ込んでくる!?

泰介 :インファイトに持ち込む!おらっ!

戒斗 :ぐっ・・・。一撃が・・・重いな。

泰介 :良く防ぐな、少年。よほどの剣士に仕込まれたと見るぜ?

戒斗 :はっ!残念ながら、独学だっ!雷塵爪(らいじんそう)!

泰介 :おおっと。独学でここまでって、なかなかに強い・・・なっと!

戒斗 :そういうてめぇも、ただの銃使いじゃないな。元は剣士だったか?

泰介 :ははっ。どうだか・・・ねっ!

戒斗 :っ!?しまった!体勢がっ!?

泰介 :もらったぜ?はぁぁぁっ!

穂乃華:エクスプロージョン・ドゥーエ!

馨  :きゃぁぁぁっ!

戒斗 :うおあっ!?

泰介 :あー・・・。ナイスショットだ。お嬢ちゃん。クガタチ二人、ストライクだ。

穂乃華:(荒い息づかい)ここまで、手間取るとは。それに、そろそろ現界が近いか・・・。

泰介 :あら、もう帰っちゃうのか。

穂乃華:言ったはず。あなたたちに関わっている暇はないと。目的が達成できなかったのは悔やまれますが・・・。
    今は良しとしましょう。では。

泰介 :あらら。ホントに帰っちゃった。

戒斗 :で、残ったアンタはどうすんだ?

泰介 :あ?起きた?案外タフだね。君ら。どうするねぇ・・・。
    とりあえず、仕事はあんたらの力量見るだけだったしな・・・。どうすっかな。

馨  :随分と余裕ね。

泰介 :まぁ、今の感じじゃ。案外まだ、やり合えると思うしな。

戒斗 :とりあえず、聞く。自分が何者で、どうしてここに居るかを吐け。さもなくば、俺らにボコられた後に全部吐くか。

泰介 :うーん。とりあえず、どっちも無しかなー。

戒斗 :じゃあ、決まりだな!雷塵爪(らいじんそう)!

泰介 :おわっ!?炎の嬢ちゃんよりもおっかないかもな。キミ。

馨  :水鞭!(すいべん)

泰介 :水の鞭(むち)って・・・おわっ!?

馨  :捕まえた!

戒斗 :馨!そのまま掴んどけよ!?紫電掌(しでんしょう)!

泰介 :喰らうわけにはっ・・・!チェルピエーニエ!

戒斗 :おらあぁぁぁぁっ!

泰介 :ぐっあぁぁぁぁぁぁっ!

馨  :やった!?

泰介 :あっぶねぇ・・・。これは、ホントに死ぬ勢いじゃねぇか・・・。

戒斗 :ちっ・・・防ぎやがったか・・・。

泰介 :へっへーん。俺には勝利の女神さまがついてるからな。

馨  :格好つけ・・・。

泰介 :なんか、ぼそっとけなされた気がするけど・・・まぁいいや。ちょっといたずらしてやるか。
    クガタチのお二人さん。問答(もんどう)だ!なぜ、あんたらは、この国の肩を持つ?

戒斗 :愚問だな。日常を護るためだ。

泰介 :じゃあ、更に問う。その日常は誰のものか。

馨  :もちろん。私達の・・・

泰介 :否。それは見も知らぬ他人のもの。
    問う。果たして、その異能をもって誰かの日常を護るに足る世界か、否か。

戒斗 :もちろんだ。他人とはいえ、人の日常を壊すことで、混沌は導かれることになる。

泰介 :混沌を導く?どうしてだ?日常なんてものは変化していくものだ。それに、現在、何もせずとも混沌と化してきているこの世の中だ。
    ついて行けぬものとなった社会、システム、人間。それらを改めることがなぜ、混沌となる?

馨  :力業(ちからわざ)すぎる。それじゃあ、ついて行けない人々が排他されるだけじゃない!

泰介 :そう、排他だ。排他してなにが悪い!進化をやめたとき、万物はそこで絶える!人間とてそれは同じこと。

戒斗 :・・・あんたは一体何がしたい?

泰介 :俺達は、この世界を作り直す、進化させる!そのために異能を使う。

馨  :進化ですって?

泰介 :そうだ。国家をどうこうしたところで、何も変わらない。さっきの嬢ちゃんが所属してる、どこぞのテロリストは、国を変えたらそれで満足なようだが。
    俺は違う!壊さねばいけない!そして創り上げなければならない!
    ・・・考えて見ろ。この世界がそのまま生き残ったとして、最後に見えるのは、人間という種としての破滅だろう?
    進化論に抗い、折角と言われてもいいほどの機会を棒にふるのか?

戒斗 :意味がわからねぇよ。あんたの言ってること。

馨  :あなたの言う進化は、ただのエゴにしか聞こえないわ。

泰介 :そうか。まぁ、『君たちに聞いたところで』だったな。だが、いずれ知るさ。
    この国、つまらない日常にしがみつくことが、どれほど愚かなことか。
    あっと、いけね。時間だ。そろそろ帰るかねぇ。

戒斗 :あ?そんな事させるかよ!

泰介 :だけど。逃がしてもらうよ。聞こえるでしょ?この音。

戒斗 :あ?この音・・・。

馨  :パトカー?

泰介 :そう、ちょこっと小細工させてもらいました。っと。
    いくら政府機関とは言え、公的に動いてない任務で、ここまで派手にやらかしたら、やっかいだよねー?

戒斗 :てめぇっ!

泰介 :おっと、それじゃ俺は雲隠れさせてもらうぜ?じゃな!

戒斗 :逃がすかっ!追うぞ!馨!

馨  :だめ!戒斗。ここは退かなきゃ!私達がいくら政府の独立機関とは言っても、警察と揉める訳には。

戒斗 :だから、あいつを捕まえて事情を説明すれば・・・

馨  :捕まえたところで、警察にとっては不審者でしかないの!逃げよう!

戒斗 :・・・ちっ!わーったよ。

(間)

泰介 :やれやれ。何とかなったか・・・。それにしても、クガタチのお二人さん。まだまだ若いなぁ・・・。
    やりようによってはこっちに引き込めるか?
    まぁ、そこら辺はリーダーにまかせよう。


戒斗 :次回の闇ツ世界は

穂乃華:彼の者は、厄災を招く。

泰介 :彼の目的はなにか?

馨  :闇ツ世界 第十六話 トーク・イン・ザ・ナイト

泰介 :秘密のことは、こっそりとやらなきゃな。





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