闇ツ世界 第十四話 疑惑の芽

♂ジャック:見た目20歳前後。
      不気味な雰囲気を持つ人物。本名不詳。見た目は人付き合い良さげな人物だが、その内面は冷徹が服を着たよう。
      仲間であろうと切り捨てる時は切り捨てる。能力は遮断。
      失われた自己の過去に対する執着がある。


♂ケイ:40代後半から50代。人よさげだが、実は腹黒な狸親父。異能は『刷り込み』幻覚を見せることも可能。
    そして、人を従わせることも可能。しかし、服従させられるのは1人のみ。
    自身の視界から外れると服従させることはできない。

♀早凪 藍子(ハヤナギ ランコ):20代後半。穏やかな性格。だがその実、人に危害を加えるのが大好きな人物。SとMが頻繁にひっくり返る。
               触れた相手に対しての危害を与える『反射』の能力。

♂黒井 尚(クロイ ナオ):25歳
            連続通り魔として世間を騒がせた人物。そして、異能者。
            トローノ・コンクエストの中でもダントツのサイコパス。
            人を傷つけたいという衝動が彼の行動理念。
            能力は圧縮した空気を相手にぶつける「波動」の能力。

ジャック :
ケイ   :
早凪 藍子:
黒井 尚 :

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ジャック:(眠たげに)おはよう。・・・あれ?尚だけ?

尚   :お。珍しく遅いな、大将。・・・今んとこ俺だけだな。コーヒー飲むかい?

ジャック:もらおうかな。・・・穂乃華と玲一君は?

尚   :穂乃華の嬢ちゃんは買い出し、玲一は知らねぇ。多分、まだバイト中じゃないか?

ジャック:そうか。頼みたいことがあったんだけどな。

尚   :俺でよければ付き合うぜ?暇だしよ。ほれ、コーヒー。ミルク多め、砂糖無し。

ジャック:ありがとう。うーん。どうしようかな。

尚   :信用おけねぇってか?どっちでもいいけどよ。

ジャック:別にそんなつもりじゃないよ。そういえば、手紙はどこにある?

尚   :全部いつもの所にあるぜ?

ジャック:いつもの・・・所?

尚   :おいおい、大将。呆けるのは、もうちょっと歳を食ってからにしてくれ。そこだよ。キャビネットの上。

ジャック:キャビネットの・・・。ああ、これか。ありがとう。

尚   :毎回思うが、よくこんなに手紙が来るもんだな。もしかして、俺が知ってるより、協力者とか仲間はもっといるのか?

ジャック:そうだね。協力者は・・・うん。そうだった。ダメだね。うん。居るけど居ないかな?

尚   :あ?どういう事だよ?詳しく教えろよ。

ジャック:それは内緒。自分で考えてみてよ。よし、じゃあ、背に腹は代えられないし。尚、僕についてきて。

尚   :背に腹はって・・・納得いかねぇなぁ。そもそも、言動がさっきからおかしいぜ?どうしたよ?ジャック。

ジャック:まぁ、気にしないで。さ、行くよ。

尚   :お、おう。・・・ひとつ聞くが。パジャマのままか?

ジャック:うん?

尚   :その格好。着替えてこいよ。大将。みっともねぇからよ。

ジャック:ああ、うん。そうだったね。そうする。じゃあ、三分待ってて。

尚   :あいよ。・・・背に腹ねぇ。ちょっと行い見直すか。あの人にも顔向けできないしな。

ジャック:あ、そうそう、尚。

尚   :な、なんだよ?

ジャック:見ちゃダメだからね?手紙。

尚   :わかってるっての! 


藍子  :闇ツ世界 第十四話 疑惑の芽


ケイ  :さて、時間だ。皆揃っているのかな?

ジャック:レーヌさんは?

尚   :まだ姿は見えないな。鬼電してやろうか?そいつの電話番号教えてくれよ。

ジャック:放って置いても大丈夫だよ。
     いずれくるだろうし。

ケイ  :おやおや。彼女はまた遅刻か。それは仕方ないな・・・気長に待つとしよう。
     ・・・それで、今日の集まりはなんなんだい?いつものように内容を教えて貰えてないんだが?

ジャック:今回の集まりは、この後の対策ですよ。クガタチに対する。

尚   :なぁ、ジャック。はやく暴れさせてくれよ。うずうずして仕方ねぇんだ。

ケイ  :君の部下は血の気が多いな。実に若者らしい。

ジャック:ええ。凄く力になってくれてますよ。少々厄介ですが。
     尚。今回は、その暴れる予定を決めるための会議でもあるんだよ。もう少し待ってて。

尚   :あいよ。早めにお願いするぜ。暇すぎなんだ。

ジャック:君には定期的にお仕事あげてるのに・・・。まだ暇なの?

尚   :あったりまえだぜ。大概やり合う相手って言っても、警官やクガタチの一般隊員じゃねぇか。しかも、班にさえ所属してない雑魚。
     かったるすぎてやってられないんだよ。

ジャック:わがままだねぇ・・・。

ケイ  :ふむ、それにしても対策かね。全て今のところ、順調に進んでいるはずじゃないのか?

ジャック:そうですね。しかし、だんだんとほころびが生じ始めました。

ケイ  :ほころび?例えばなんだね?

ジャック:すこし、気になっている程度なのですがね?僕の手紙が、何者かによって読まれている可能性があるのですよ。

尚   :おいおい。怖い者知らずがいるもんだな。

ケイ  :それがどう問題だと?

ジャック:アレの中には、少し知られてはならない内容が入っているので・・・ね?

尚   :なんだ?恥ずかしいポエムとかか?

ジャック:なにをいってるのかな?君、知ってるんじゃないの?

尚   :あ?いんや、まったく。ちんぷんかんぷんだぜ。

ジャック:一度見たことあったじゃない。

尚   :あったっけか?・・・。あったとしても、どうせ、大将の書く手紙だ。何かいてんのかさっぱりだぜ。
     それよりも、俺の扱い、もっと優しくしてくれよ。

ジャック:十分優しいはずだけどね?子どもに接するように。

尚   :あーあ、どうせ俺はおこちゃまですよー。

ケイ  :よく分かった。とりあえず、重要事項なのだな。
     それが解読されるとなにが起こるのかね?

ジャック:我々の計画。そして、今後の展開が読まれてしまいます。

ケイ  :偽装は?

ジャック:一応はしてますが。解かれる時は解かれますからね。

藍子  :おまたせー。

ケイ  :ひどく遅れたな。レーヌ。

藍子  :その名前で呼ばないでって何度も言ってるじゃない。私の名前は早凪 藍子よ。

尚   :はじめまして。って一応、言っておくべきか。

藍子  :あら、今日は穂乃華ちゃんじゃ無いのね。残念。あの子、からかい甲斐があるのに。

尚   :穂乃華の嬢ちゃんじゃなくって、俺で悪かったですねー。

藍子  :すねないの。お話は聞いてるわ、黒井 尚君。

尚   :どうせ、悪い噂なんだろうな。

ジャック:そんな事はないさ。そして、レーヌさん。本名を晒すなんて不用心ですね。
     どこで誰が聞いているか分からないじゃないですか。秘密は守られるためにあるんですよ。

藍子  :仲間内で疑心なんかおこしても、結局やることは変わらないじゃない。
     全て壊して作り直すのよ。この世の中を。

尚   :簡単に言いやがって。

藍子  :あら。だってそうじゃないの?
     この世界は欺瞞(ぎまん)に満ちてる。それをゼロに戻すのが私達の使命じゃないの?

ジャック:まぁ、目的はどうあれ。先の手を読まれるのは、非常に厄介です。いくら我々の方が、能力的に上回っていても。

尚   :そうなのか?自信満々だな。

ジャック:もちろんだよ。彼らよりも僕らの方が上じゃなけりゃ、今頃みんな死んでるから。

藍子  :それは言えてるわね。それに、向こうがバカだからこそ、ここまで私達が、自由に動けてるわけだし?

ケイ  :だが、あまり甘く見すぎていると足元をすくわれるぞ?

ジャック:今のところは大丈夫ですよ。要注意するべきなのは、クガタチのトップの頭脳と、諜報活動をしている人間の動きかな?

藍子  :その、『諜報活動をしている人間』はさ。目星は付いてるわけ?

ジャック:ええ。幾分かは。

尚   :あ、そうなのか!?じゃあ、そいつを、この俺がぶっつぶしてくるわ。

ジャック:そんなこと、できるの?

尚   :なにがだよ?俺が力不足だってか?

ジャック:いや、そうじゃないけど・・・。うん。まぁいいや。
     それの行動如何によって動きを変えなければいけません。

藍子  :それって、今まで以上に指示の手紙が多くなるって事かしら?

ジャック:もうしわけないですが。

ケイ  :レーヌはもう少し解読のスキルを上げた方がいいな。いつまでも遅刻されちゃ、かなわないからな。

藍子  :じゃあ。私のだけ優しい物に変えといてよ。頭がおかしくなりそうなんだから。

ケイ  :おかしいのはいつものことだろうに。

藍子  :そんなこと言わないの。これでも傷ついてるんだから。

ジャック:では。今まで通りのスタイルで伝達します。そして、行動ですが。
     まず、レーヌさんは今まで通り、自由に動いて下さい。指示があればそれに応じて動いていただければ結構です。

藍子  :はいはーい。わかったわ。

ジャック:ケイは、少しここに残って貰えますか?お伝えしたいことが。

ケイ  :うむ、この後は特になにもないからな。いいぞ。

ジャック:ありがとうございます。・・・そして、尚。

尚   :おう、なんだよ。

ジャック:ここに向かってくれる?

尚   :コインロッカー?

ジャック:そう、B-32番に必要なモノが入ってるから。それを取りに行って。
     決して鞄の中をあけちゃだめだからね?鍵はコレ。なくさないでね。

尚   :了解。今からか?

ジャック:うん。そうして貰えるかな?

尚   :あいよ。いってくる。

藍子  :私も用事がないなら、もう帰ってイイかしら?寝不足なのよね。

ジャック:いいですよ、といいたいところですがまだ用事があります。もうすこし付き合って下さい。

藍子  :はいはい。わかったわ。

ケイ  :・・・で?何だね。

ジャック:もう、そろそろ教えて貰えませんか?

藍子  :あら?なんのことかしら?

ジャック:しらばっくれるんですか?

ケイ  :ああ、レーヌ・・・いや、藍子はしらない。

ジャック:・・・・。

藍子  :2人でなんの話をしているのかしら。全く分からないんだけど。

ケイ  :言っていいか?

ジャック:あなたが良いと判断するなら。

ケイ  :わかった。・・・藍子。ジャックはな、過去の記憶を持っていないんだ。

藍子  :過去の記憶を?

ケイ  :そうだ。ジャック、記憶が欠落している部分はどこだ?

ジャック:7歳から18歳までの間ですよ。

藍子  :11年間ねぇ・・・。それは、つらいわねぇ。

ジャック:それを。その空白の時間を、あなたは知っているんですよね?ケイ。

藍子  :そうなの?

ケイ  :そうだな。一応言っておくが、私が知っているんじゃなく、思い出すきっかけになりそうなツテを持っているというだけだ。

藍子  :なら、それを見せてあげればいいじゃない。

ケイ  :それが、すぐに手配できるモノではないからな。

ジャック:嘘でしょう?

ケイ  :本当だ。そもそも、そのモノは人間だしな。

ジャック:ならば。なぜ、その場所を教えてはくれないので?

ケイ  :なにをそんなに焦っているんだ?ジャック。落ち着け。

ジャック:僕にはもう、時間が無い!どんどんと記憶が抜け落ちていく・・・。全てを知らないと!僕は!

藍子  :どうしたの?顔色悪いわよ?

ケイ  :わかっている。不安なのは十分分かってる。だが、こらえてくれないか。事は凄くデリケートなんだ。

ジャック:わかってなんかない!僕が・・・僕が何をしたんだ!僕はなにを恐れてっ!

藍子  :ちょっと!ジャック君!暴れないで!・・・怪我したくないし。

ケイ  :ふぅ・・・これはまずいな。落ち着け。ゆっくりと事は運ぼうじゃないか。

ジャック:僕は落ち着いている!僕は・・・ぼくは・・・あ、あぁぁぁぁっ!

藍子  :暴走するわね。このままじゃ。

ケイ  :藍子。外に出ておきなさい。ここは私が押さえるよ。

藍子  :わかったわ。よろしく〜。あ、というか帰ってイイ?

ケイ  :ああ、帰っていい。後で連絡は行くとおもう。

藍子  :りょうかーい。それじゃね?

ジャック:あぁ・・・あぁぁぁぁっ!

ケイ  :・・・ふむ。遮断の能力が暴走するとこんなにも近づけんのか。そもそも、この場、全ての物体を呑み込むつもりか。

ジャック:イヤだ。独りは・・・あぁぁぁぁぁっ!

ケイ  :おっと、これは危ない。・・・これでは、まともな話は通じないな。では、少し、相手をしてやるかな。こい、小童。


藍子  :あーあ、なんか暇になっちゃったわね。もうすこし・・・あら?

尚   :お、レーヌ・・・はイヤだったんだよな、アンタ。藍子だっけか?終わったのか?

藍子  :ええ。彼方、お遣いに行ったんじゃないの?

尚   :そうだけどよ。これで、どうやって開けろっていうんだよ。コインロッカー。

藍子  :あら、これ、自転車の鍵ね。それじゃあ無理だわ。

尚   :だろ?だから本物をもらいに来たんだが、どうも入りづらくってなー。

藍子  :それで、立ち聞きね。・・・趣味悪いわよ?

尚   :立ち聞きしてるわけじゃねぇっての。

藍子  :じゃあ、そういうことにしてあげる。とりあえず、今は入らない方が良いわ。ちょっともめてるから。

尚   :まじかよ・・・。なにやってんだよ。大将。

藍子  :そうね・・・。ケイが出てきたら、入っても良いかもしれないわね。ま、そこら辺は任せるわ。それじゃ、私は帰るわぁ・・・眠くって。

尚   :おつかれさん。そうするわ。情報ありがとさん。

藍子  :それじゃ、ジャックによろしく伝えといてねー。

(間)

ジャック:う・・・あ・・・。イヤだ・・・。

ケイ  :ふん。少し手間取ったが・・・何とか押さえつけられたな。それにしても、厄介だ。
     コレは、少し手順を早めねば・・・。
     それにしても、伝えたいこととはなんだったのやら。


ジャック:次回の闇ツ世界は

ケイ  :厄災は小さな火種から広がる。

藍子  :それを止める事は、できるか否か。

ケイ  :闇ツ世界 第15話 炎上

尚   :やーれやれ、どうすっかなぁ。




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