闇ツ世界 第十二話 電撃
♂森戸 戒斗(モリト カイト):17歳。
政府特務機関「クガタチ」の中でも十指に入るエリートメンバー。
何事にも柔軟に対応でき、且つ常に熱意をもっている性格。
電気や磁力を扱う事のできる異能者。武器は刀。銘は『雷斬(らいきり)』
♀菱山 馨(ヒシヤマ カオリ):18歳。
政府特務機関「クガタチ」のエリートメンバーであり、戒斗のパートナー。
快活なキャラクターで変人が集まるエリートメンバーの中では常識派。
水を扱う事のできる異能者。武器は槍。銘は『海割(うみわり)』
♂室井 朝永(ムロイ トモナガ):16歳。
二番隊隊員。
熱血漢で猪突猛進。プライドばかり高い残念な子。
頭で考えるより、身体が動くタイプ。
異能は磁力。戒斗とは違い電気は使えない(異能のレベルが低いため)。
戦闘スタイルは、メリケンサックを用いた超接近戦。
♀卜部 千里(ウラベ チサト):17歳。戒斗と馨によって暴走しているところを『保護』された異能者。
重量移動の能力を持つ。ほがらかであるが、すこし抜けている。
いわゆる天然。頑張りが空廻ってドジするタイプ。
ケイ :40代後半から50代。人よさげだが、実は腹黒な狸親父。異能は『刷り込み』幻覚を見せることも可能。
そして、人を従わせることも可能。しかし、服従させられるのは1人のみ。
自身の視界から外れると服従させることはできない。
幹部 :典型的な893さん。そして、モブ。以上。
戒斗:
馨 :
朝永:
千里:
ケイ:
幹部:
注:テクニカル:荷台に重機関銃を据え付けた軽トラックのこと。
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朝永:卜部。聞いたかよ?室長の件。
千里:なにか、あったんですか?
朝永:なんか、俺ら差し置いて敵の頭(かしら)とガチンコ勝負したらしいぜ?
千里:えっ!ホントですか!?
馨 :そうね。なんせ、肋骨二本と足の骨折って帰ってきたから。
戒斗:それでピンピンしてるとか、どんな魔王だ、室長・・・。
朝永:俺、ぜってー室長に勝てる気がしないっすわ。
戒斗:お前じゃ無理だ。
室長とやり合いたいんなら、その前に俺を、倒せるようにならないとな。
朝永:へいへい。わーってますよ。そういや、隊長って室長と闘ったことあったよな?
戒斗:うん?ああ、あったな。
馨 :こてんぱんにやられてたけどね。あれは観てて面白かった。
戒斗:あったりまえだ!あんなチート仕様な相手に勝てるかっての!
千里:そんなに強いんですか・・・。
朝永:多分、隊長全員 対 室長でも勝つ勢いだと思うぞ・・・。
馨 :たしかに。それはいえてるかも。
戒斗:それより、今回の仕事はなんなんだ?班員全員でって、めずらしいな。
馨 :諜報部がね。トローノ・コンクエストの内部情報を握る人物を発見したらしいの。
朝永:で。そいつの身柄確保って訳か。
馨 :そういうこと。場所はこの山の奥。別荘があるんだって。
千里:その捕まえる相手の名前は?
馨 :本名は不明。ただ、ケイって呼ばれてるみたい。
朝永:どっかのスパイ映画かよ。
戒斗:コードネームなんてそんなもんだろ。
千里:なにか、特徴とかは?
馨 :男性。それだけ。
朝永:情報が少なすぎねぇ?普通、『異能持ちがどうの』とかじゃねぇのか?
戒斗:つべこべ言うなよ。俺らは俺らの仕事をすればいい。
千里:はい。その人を捕まえればいいんですね。
朝永:でも、そう簡単には捕まってはくれねぇだろうな。
戒斗:それなりの抵抗はあるだろうな・・・。だからこその俺らじゃねぇか。
千里:電撃戦ってやつですね!がんばります!
馨 :作戦は立ててある?戒斗。
戒斗:まぁ、現地の状況をみてからだな。
ケイ:闇ツ世界 第十二話 電撃
朝永:配置についたぜ?
戒斗:了解だ。こっちも準備はいい。
馨 :確認するね。戒斗がこの家の電気を落としたら千里ちゃんと朝永君が、表から進入。
戒斗が裏口から侵入。私は、遠距離からの狙撃でバックアップ。いい?
朝永:了解。
千里:了解しました。
戒斗:それじゃ、始めるぞ。全員暗視ゴーグルは持ってるな?装備しろ。突入だ。
3,2,1・・・GO
(間)
ケイ:やあ、久しぶりだな・・・。・・・ああ、よく動いてくれた。さすがは、世を賑わす人物なだけはある。
これほどまで駒をそろえてくれるとは思わなかった。全部使い切っていいのか?・・・ふふふ、君らしいな。ジャック。
・・・では、心ゆくまで使い捨てるとしよう。君の作戦通りに。本当に頭が良いな。・・・おお、そうか。済まなかった。
なるべく早めに動く。・・・ああ、そうだ。いちいち相手をするほど私も暇じゃないからな。
それでは、後はよろしく頼む。
幹部:お話は終わったのか?依頼主さん。
ケイ:いや、申し訳ない。友人が急に今回のことについて、電話をしてきたんでね。
首尾はどうなって?
幹部:もちろん。あの家のまわりに、部下を伏せてある。後はタイミングだけだ。
ケイ:なるほど、仕事が早いですな。
幹部:報酬がかかっているからな。ウィジ。ちゃんと準備はしてあるんだろうな?
ケイ:もちろん。これが上手く片付いた暁(あかつき)には差し上げますよ。
幹部:よし。・・・絶対にトンズラこくんじゃないぞ?
ケイ:それは貴方達にも言えること。侮ってはいけないですよ。彼らは手練れですから。
幹部:たかだかガキ共を殺すのに、時間はかからねぇよ。アンタからもらった銃がごまんとあるしな。
ケイ:これは、素晴らしい自信。結果が楽しみですな。・・・では、私は傍観させていただきましょう。
(間)
千里:廊下、大丈夫です!
戒斗:キッチンクリアだ。
朝永:階段を発見。どうする?隊長?
戒斗:上がるぞ、卜部は1階の捜索を続けてくれ。
千里:了解。
戒斗:上がるぞ。朝永。
朝永:あいよ。
戒斗:死角に気をつけろよ?
朝永:わかってる。・・・・右手に部屋を発見。
戒斗:突入しろ。スリーカウントだ。3,2,1・・・GO
朝永:うらっ!・・・なにもないじゃないか。
戒斗:ハズレか。隣の部屋に行く。カバーしろ。3,2,1・・・うらっ!
朝永:こっちもハズレか。どこに隠れてんだ?
戒斗:一応、キャビネットとか、人が隠れそうな場所も探すんだ。
千里:1階の捜索完了しました。誰もいません。
朝永:倉庫とか押し入れとかも見たか?
千里:はい。でも、あるのはガラクタばっかりで、目標は居ません!
戒斗:どういうことだ・・・。
馨 :こちら馨。一足遅かったのかな?
戒斗:いや、何か、おかしい。全員、警戒を厳に・・・っ!?銃撃!?
朝永:なんなんだ!?
戒斗:伏せろ!朝永!
朝永:もう伏せてるっての!
馨 :何があったの!?ここからじゃ見えない!
戒斗:罠だ!情報がエサだった!
千里:この家、取り囲まれてます!銃撃が!
朝永:んなこたぁ、分かってる!・・・おい。隊長。どうするんだよ。
戒斗:どうするもなにもない!撤退だ!
朝永:どうやってだよ!?こんな鉛玉の嵐ん中突っ切るのか!?
戒斗:ここで3人固まっててもしかたない!1階に下りて迎撃だ。
千里:相手はなんでしょう?
戒斗:おそらく、トローノ・コンクエストにそそのかされたヤクザの類だ。
異能の攻撃じゃないからな。
馨 :ちょっと!?1階下りたってどうするの!?
戒斗:迎え撃つ!俺と朝永で1階の玄関にバリケード作るぞ!
馨 :でも戒斗!迎え撃つって私たち銃とか持ってないよ!?
異能も私以外近距離特化だし!
戒斗:俺に策があるんだよ!とりあえず。時間を稼ぐんだ!
朝永:隊長に賭けるしかねぇな。
千里:分かりました!私たちは何を・・・
戒斗:卜部と朝永はどっからでもいいから導線を持ってきてくれ!
千里:了解です!
馨 :移動完了!ここからなら見える!こっちから攻撃する!
戒斗:いや、馨は待機しておいてくれ。・・・あ、そうだ!相手のいる方向を教えてくれ。
馨 :了解。・・・玄関から10メートル先に機関銃を据え付けたトラックが停車。そのまわりに5人。後、南に3人
東に3人。各チーム1人が、軽機関銃を装備。
戒斗:おいおい。大仰過ぎるだろ。俺らを何だとおもってんだよ!
朝永:テクニカルなんかもってきてんのか!聞いてねぇよ!
千里:朝永さん!喋ってないで働いて!後、邪魔ッ!
朝永:おわっ!?す、すまねぇ!
戒斗:朝永!お前はこっちに来て集めた導線を繋ぐのを手伝え!・・・その線はあの赤い線と繋げ。
できたら、コレを裏口と玄関に這わせろ!ノブにも巻き付けとけ。
朝永:あいよ、了解!って・・・玄関のドア、へこんで来てるんだけど!?
千里:大丈夫ですよ!・・・たぶん。
戒斗:さっさとしろっての!
馨 :戒斗!あいつら、段々と包囲を詰めてきてる!
戒斗:よし!準備完了だ!どっか物陰に隠れるぞ!
朝永:押し入れにでも入っとくか?
千里:えっと・・・。じゃあ・・・どこ入ろう?
戒斗:どっかに入らなくて良い!とりあえず姿を隠しとけ!つーか、緊張感持てよお前らっ!
あ、あと裏口から逃走できる場所に隠れろよ!?
馨 :テクニカル、弾丸の発射停止。玄関に5人。裏口に6人伏せてる。 【※注※】テクニカル:トラックなどの荷台に銃砲を据え付け、車上戦闘を可能にした戦闘車両
戒斗:いいか。物音立てるなよ?
朝永:了解。
千里:了解。
戒斗:馨、裏口のヤツらのうち、一番最後のヤツがドアノブ触ったら言ってくれ。
馨 :うん。わかった。
幹部:うらぁっ!・・・誰もいねぇじゃねぇか。
おい。お前ら、2階調べてこい!
朝永:(小声)おいおい。ガラ悪いのが来やがった。
千里:(小声)ヤクザさん初めて見ました・・・。
戒斗:(小声)馨。どうだ?
馨 :少し待って・・・もう少し・・・。今!
戒斗:おらっ!コレでも喰らえっ!紫電撃(しでんげき)!
幹部:な、なんだぁっ!?
戒斗:裏口から出るぞ!走れっ!
幹部:おい!裏口!逃げられたぞ!なにしてやがる!?・・・くそ、こいつら伸びてんのか。
テクニカル!裏口から逃げてるヤツらを蜂の巣にしてやれ!
朝永:物騒な声が聞こえたんだが!?
戒斗:テクニカルがこっち狙ってきてるぞ!
千里:でも、隠れる場所がないですよ!?
馨 :私に任せて。狙撃する。氷技・二式『降刃』(ひょうぎ・にしき『こうじん』)
戒斗:ナイスサポートだ。馨!
朝永:一瞬で廃車になっちまったな。
戒斗:一応、言っておくが、刺さってる氷の刃には触れるなよ?切れるからな?
千里:は、はい!
幹部:くそっ!逃げられるぞ!追え!追え!
ケイ:いえ。その必要はありませんよ?
幹部:あ?なんでだよ。アンタはあいつらを殺してぇんだろうが!?
ケイ:いえ?私は一度もそんな事は言っておりませんよ?ただ、排除して欲しい。と頼んだだけです。
最低目標は達成されました。お帰り下さって構いません。
幹部:だとしてもだ!ガキ共に小馬鹿にされたあげくに面子もなく帰れって言われても帰れねぇんだよ!こっちは!
ケイ:ヤレヤレ。本当に愚か者だ。こいつらは。
幹部:何だと!?
ケイ:所詮は雑魚か。私達の同類になろうなぞ、おこがましいにも程があるな。
幹部:なに、ぶつくさ言ってんだクソじじい!
ケイ:『跪け。小童』
幹部:なっ・・・身体が・・・勝手に・・・。
ケイ:私は、命じたはずだ。帰れと。それを面子がどうのと下らないことではねつけおって。
その振る舞いは死に値する。
幹部:な、何をするんだ・・・。
ケイ:何をする?決まっているだろう?私が君にすることなど1つしかない。ただ命令するだけだ。
『頭を打ち抜け』
幹部:い、イヤだ。やめろ・・・やめてくれ。やめろぉぉぉぉ!
ケイ:・・・うむ。あっけないな。この程度の幻覚で墜ちるか。やはり同列に並ぶには低俗すぎる。
さて、状況確認だ。ジャックは能く動いてくれている様だ。問題は、『レーヌ』の方だ。向こうはどんな状況だろうか?
あやつは非常に不安定すぎるからな。目を光らせておかなくては・・・。やれやれ。骨が折れるわ。
(間)
戒斗:・・・追ってこないな。
朝永:そう・・・だな。
千里:も、もう走れません・・・。
馨 :戒斗。どこにいるの?
戒斗:おう、別荘から1キロ離れた竹藪の中だ。
馨 :よくそんなとこまで走ったわね・・・。まぁ、いいわ。ビーコン付けといてよね。近くまで行くから。
戒斗:了解。早めに頼むぜ?
朝永:それにしても・・・なんで俺らの行動が読まれてたんだ?
千里:そんなの知りませんよ。
朝永:スパイとかいるんじゃないだろうな?
千里:そんな事があるわけ・・・
朝永:いいや。わからねぇ。というか、そうなるとお前がスパイだって事もあり得るんだよな?
戒斗:おい。変なこと言うんじゃねぇよ。人を疑いはじめたらキリがないんだからな。
ケイ:・・・仲間割れですかな?
朝永:だれだっ!?
ケイ:私ですか?私は・・・ケイ。そう呼ばれております。
戒斗:ケイだと!?・・・対象だ。確保するぞ。
千里:了解!
ケイ:それは・・・無理ですよ。若人(わこうど)の方々。
戒斗:どういう事だ?
ケイ:こういうことです。
馨 :氷弾・散!はぁぁぁぁっ!
戒斗:なっ・・・!?馨!?
馨 :戒斗・・・ごめん。
千里:馨さんが・・・スパイだった!?
朝永:まさか・・・そんなことが!
ケイ:この方はスパイじゃありませんよ。ただ。『私の言葉』に耳を貸していただいただけですよ。
戒斗:訳の分からないことをっ!雷斬・展開一式!
ケイ:『彼らの邪魔をしなさい』馨。
馨 :くっ・・・うわぁぁぁぁっ!
千里:馨さん!やめてください!
馨 :やめたくても・・・身体が・・・言う事聞かないのっ!
朝永:じゃあ・・・落とすしかねぇだろぉぉぉっ!おぉぉぉらぁぁぁ!
馨 :水柱・壁!
朝永:ひでぶっ!?
戒斗:ちっ・・・やりづらい。
ケイ:さて、これで私は悠々と次の目的地へ行けるわけですな。それでは、失礼。
戒斗:くっそ。嫌味な野郎がっ!
馨 :か・・・戒斗・・・。
戒斗:なっ!?・・馨!大丈夫か!?
馨 :わかんない・・・身体・・・ホントに言う事を聞いてくれなくて・・・今まで・・・。
千里:コレも異能の力なんですかね?
戒斗:かもな。厄介な能力だ。人を操るなんてな。
そして、厄介と言えば・・・朝永はこれから別メニューで特訓だな。突っ込みすぎだバカ野郎。
朝永:そ、そりゃねぇよぉぉぉ!
ケイ(M):ふふふ。面白い物を見せて貰った。コレは最後まで活用しなくてはなぁ・・・。
戒斗。君は私の物だ。私の・・・。ふふふふ・・・。
幹部:次回の闇ツ世界は
戒斗:想いは人を動かす。
馨 :時には、優しく。
千里:時には、狂ったように。
朝永:闇ツ世界 第13話 反転
ケイ:感情は裏返る
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