闇ツ世界 第十一話 緊急招集

♂森戸 戒斗(モリト カイト):17歳。
              政府特務機関「クガタチ」の中でも十指に入るエリートメンバー。
              何事にも柔軟に対応でき、且つ常に熱意をもっている性格。
              電気や磁力を扱う事のできる異能者。武器は刀。銘は『雷斬(らいきり)』

♀菱山 馨(ヒシヤマ カオリ):18歳。
              政府特務機関「クガタチ」のエリートメンバーであり、戒斗のパートナー。
              快活なキャラクターで変人が集まるエリートメンバーの中では常識派。
              水を扱う事のできる異能者。武器は槍。銘は『海割(うみわり)』

♂相田 蒼哉(アイダ ソウヤ):25歳。
              政府特務機関「クガタチ」のトップ。
              切れ者で若くして政府機関の責任者となっている。
              戒斗を組織に引き入れた張本人。
              現在では事務職に力を注いでいるが、もともとは前線で闘う武闘派。
              何を考えているのか分からないとらえどころのない人物。
              良く言えばひょうひょうとしたキャラクター。悪く言えば不真面目。
              風を扱う異能者。武器は鉄扇。

♂速水 佐之(ハヤミ サノ):20代後半。三番隊副隊長。
             武士道にこだわる堅物。隊長である常葉に忠誠を誓っている。
             戦闘スタイルは棒術。能力は波動。

♀伊藤 常葉(イトウ トキワ):20代後半。「クガタチ」三班隊長。冷静沈着な性格。クガタチの戦闘班の中でも頭脳派。
              でも戦闘も出来るオールマイティ(体育会系とも言う)。武器は大槌。能力は物質振動。

♂藤堂 隆(トウドウ タカ):22歳。政府特務機関「クガタチ」のエリートメンバーの一人。冷静沈着で感情を表にあまり出さない。
              諜報戦に長ける人物。なので、表だった戦闘はせず、敵地での情報操作をメインに行っている。
              人の視覚認識を操ることのできる異能者。武器はダーツ。



戒斗♂:
馨♀ :
蒼哉♂:
常葉♀:
佐之♂:
隆♂ :
___________________________________________________________

戒斗:緊急招集だぁっ!?

馨 :ええ。それも第一種の緊急招集。

常葉:第一種緊急招集。各班の隊長、及び副隊長は、いかなる状況下であろうとも即刻、議会に出頭すること。ですよ。二班隊長。

戒斗:常葉さん!?それに、佐之さんまで。

佐之:お久しぶりです。森戸隊長。それに、菱山副隊長。

馨 :ど、どうも・・・。

常葉:・・・どうやら、お伝えに来るのが一歩遅かったようですね。

戒斗:はい?

佐之:いえ、こちらの話です。気にしないで下さい。

馨 :は・・・はぁ。そうですか。

常葉:緊急招集がかかる条件。ご存じですか?森戸隊長。

戒斗:えっと・・・。本部の活動に於いて緊急を要する事例が発生したとき。でしたっけ?

常葉:その通りです。そして・・・佐之。

佐之:はい。今回の第一種については、先の要綱にこれから言う文面が追加されます。
   「室長、もしくは複数班が行動不能状態に陥った場合にのみ、第一種が発令される」

馨 :それって・・・。もしかして、室長が。

戒斗:やられたってことか!?

常葉:かも、しれませんし、違うかもしれません。なんせ、室長があれですからね。

馨 :・・・スッパリ言いますね。

佐之:それが、伊藤隊長の性格なので。

常葉:なにか、問題でも?

戒斗:いや、思うことは色々あるが・・・。まぁ、いいや。それで、会議室に行くんですよね?

馨 :そ、そうですよ。ここで油売っていても仕方がありません。行きましょう!

常葉:・・・そうですね。


隆 :闇ツ世界 第十一話 緊急招集


戒斗:で。結局集まってるのは二班と三班だけかよ。

馨 :そんな感じ・・・だね。(苦笑)

常葉:規律がなっていない証拠ですね。・・・たださねば。

戒斗:かったいなぁ・・・。

馨 :・・・やっぱり私、伊藤隊長苦手だ・・・。

常葉:ですが、これは規律以前の問題です。招集をかけた室長まで来てません。

佐之:伊藤隊長。もしかして・・・。

常葉:悪いことがおこったかもしれませんね・・・。

蒼哉:いやぁ。遅くなった、遅くなった。ごめんねぇ。みんな。

戒斗:やっと来たか、室長!・・・って、え!?

馨 :車いすって・・・なにがあったんですか!?

蒼哉:ああ、これ?大丈夫だよ。ちょっとしくじっちゃってね。肋骨と足の骨が少し折れちゃった。

馨 :折れちゃったって・・・そんな軽く言っていいんですか!?

蒼哉:心配性だなぁ。馨くんは。・・・常葉くん。久しぶり。佐之くんも。

常葉:ご無沙汰しております。

佐之:室長、早速ですが。この会議に現れていない隊長は今どこに?

蒼哉:ほんと早速だね。えっとねぇ。四班の壬車(みぐるま)くんは相変わらず音信不通だよ。何やってんだかね?
   そして、五班は、総員復帰が見込まれていない。

常葉:その五班の件についてなのですが、なぜ、我々にも秘匿されているのですか?
   そもそも、班全員の戦闘不能状態なんて、あり得ませんよ。

蒼哉:でも、そのあり得ない事が実際は起こってるんだよ。詳しいことは解析中だから待っててよ。
   そして、今回の会議だけど。こんな事を話に来た訳じゃない。・・・本題に入って良いかな?

戒斗:ちょ、待てよ室長!1人まだ来てないぜ?隆はどうしたよ?

蒼哉:ああ、忘れてた。隆は事情によりここに来られないから・・・これで会議に参戦して貰う事にした。

馨 :パソコン?

蒼哉:そう、パソコン。『コンタクトリンク』っていうソフト知ってる?

戒斗:ああ、知ってる。アレだろ?ネット回線があって、相手同士がコンタクトリンクに登録してたら無料通話し放題ってやつ。

蒼哉:そうそう、それを使って会議するよー。隆くーん。見えてるー?

隆 :はい。大丈夫です。問題ありません。

馨 :愉しそうで何より・・・。

戒斗:愉しいんなら良いやって言いたいんだが・・・問題しかないだろ。

蒼哉:そう?たとえばなに?

戒斗:そもそも、ネット環境ってのが危険だろ。ハッキングされたら内容丸聞こえじゃねぇか。

蒼哉:あー、そこは大丈夫だよ?

隆 :諜報部が責任を持って改ざん作業をしている。

戒斗:才能のムダ使いすぎるだろ・・・。というか、暇人かよ。諜報部。

隆 :・・・室長命令だ。

蒼哉:まぁ、細かい事は良いじゃないの。

常葉:さて、そろそろ茶番は終わりにしても良いでしょうか?本題に入りましょう。

馨 :・・・そうですね。

蒼哉:はいはい。じゃあ、やろう。今日、招集したのは他でもない。トローノ・コンクエストに対する今後の作戦についてだ。
   まず、ほぼ全班はトローノ・コンクエストに出会ったようだね。実は、僕も昨日、向こうさんの大将と闘ったんだよね。いやぁ疲れた疲れた。

戒斗:まさか、それで骨を折ったのか!?

蒼哉:うん。そうなるかな?

佐之:なぜ我々に話を通してくれないのです?

蒼哉:うん。だって、力不足だし、君ら。

常葉:それは・・・

蒼哉:あの手合いは君らじゃ無理。高威力の技に知性形の戦術スタイルを組み合わせた相手に、いくら人を注ぎ込んだって倒せやしないよ。

戒斗:だからって、室長自身が突っ込んで下手をしたらどうにもならないだろうが!

蒼哉:大丈夫。そこら辺も考えて動いてる。で、本筋だ。
   みんな一度出会ってるってことで彼らの厄介さは知ってるとおもう。
   諜報部もかなり頑張ってくれているけれど、なかなか掴めない。
   実働隊は巡視中、偶然の接敵って言うのを望んで、近頃は今まで以上に巡視を増やしてもらってたけど。
   それもそろそろ意味が無くなってきてる。

馨 :じゃあ、打つ手なしってことですか?

佐之:これでは、後手に回りすぎている。策を考えなければ・・・。

蒼哉:いや、打つ手はあるんだ。隆?

隆 :はい。では、私から。知っている情報をお伝えします。
   現状、トローノ・コンクエストは拠点を持たず行動しています。
   集まる場所も、流動的。次に何が起こるかわかりません。
   メンバーの行動も全てばらばらで、各々に通達されている情報や、指示は他のメンバーには伝わりません。
   連携をとることは滅多になく、一斉に取り押さえるのも無理です。
   しかし、1つだけ隙があります。トローノ・コンクエストの誰かが定期的に郵便を受け取り、投函しています。
   宛先の特定を試みましたが、途中で情報改ざんが行われており、特定には至りませんでした。
   ですので、ここで提言するプランは1つ。郵便の受取を襲撃し、受取手の確保。そこからトローノ・コンクエストの実体を把握する。

佐之:それは・・・。いくらか、無理が生じそうなプランですね。
   その受け取り場所は固定なのですか?

隆 :固定です。公共の郵便を使っていますので、その場に行かねば受け取りはできません。
   ちなみに、この受け取り場所は把握済みです。

常葉:その、手紙の内容は?

隆 :それは・・・。把握できていません。その郵便物の一部を複製して、現在解読中ですが、ワンタイムパッドでの暗号化がされていて未だに内容は。

戒斗:まぁ、そうなるわな・・・。

隆 :書面の調査は継続し、実態把握を進めてはいますが、現時点ではこれが限界です。

佐之:では、今提示されたプランが一番の情報入手策といったところですか。

蒼哉:ま、そうなるね。あ、そうそう、隆。言い忘れてたんだけど。現時点をもってBプランを発動させるから。その時になったらよろしくね。

隆 :了解。指示を待ちます。

馨 :なんです?Bプランって。

蒼哉:まだ内緒。言えないんだ。ごめんね。

戒斗:なんだよ。連絡を密にって言ってるのに俺らには何も無しかよ。

蒼哉:とある事情でね。うーん。まぁ、いいや。この際だから言っちゃおう。
   この中、クガタチ内部に、密偵が居る。

戒斗:そんな!?

馨 :それは・・・本当なんですか!?

蒼哉:本当だよ。ね?常葉。

常葉:はい。私と佐之が、以前トローノ・コンクエストと接敵したとき、相手は室長からの撤退命令の電話が鳴るのを知ってました。

蒼哉:そういうこと。僕が撤退命令を出したのは三班の被害を押さえるためで、これは突発的な情報。
   あらかじめプラン立てて何か通達してたわけでも無いのに、知っている。これは密偵が居るとしか考えられない。

戒斗:じゃあ、下手に何かを喋るわけにはいかないんだな。

馨 :隣に敵がいる状態なんですね・・・。

隆 :こちらでも、密偵の情報は随時あさってはいますが、無理に等しいかもしれません。

蒼哉:特定が不可能である気色(けしょく)がつよいからさ。慎重に動かなくちゃ、こっちがやられちゃうんだ。
   注意して情報を伝えなきゃ。
   でも、まぁこのメンバーの中には密偵は居なさそうだし。ちょっと安心したかな?

戒斗:なんで、そうわかるんだよ。

蒼哉:その椅子。実は嘘発見器なんだよね。

常葉:・・・私たちのもですか?

蒼哉:もちろん。だって、やられたのが演技だったかもしれないし、そもそも、接敵したっていうのも、嘘の報告だったかもしれない。
   まぁ、全ては用心だよ。用心。警戒しとくことに損はないでしょう?
   ・・・それに、君たちの表情からは焦りの兆候は見られなかったし。大丈夫か。

馨 :読み取れるものなんですか?

蒼哉:もちろん。僕はなんでも知ってるから〜。
   くだらない事から、知的なことまで。行動心理学なんて僕にかかればたやすいもんだよ。

戒斗:なんか腹立つ・・・。

蒼哉:戒斗君こわい〜。

戒斗:ブリッこするな!気色悪い!

隆 :では、室長。これから、私が得た情報は、ここにいる皆さんに伝達してもよろしいでしょうか?

蒼哉:いや、今まで通り、僕だけに渡して。ここに居るみんなもね。
   そもそも、僕に「信用がおけない」ってみんなは思うかもしれないけれど。
   とりあえずこれが、今トローノ・コンクエストに対してできる抵抗なんだ。理解してね。

戒斗:まぁ・・・そう言うことならしかたねぇだろ。

常葉:ですね。我々はトローノ・コンクエストを排除するのが現時点での第1目標。それに必要とあれば。

佐之:隊長に同意します。

馨 :私も。・・・めずらしい。戒斗が素直に従ってるなんて。

戒斗:何小声で言ってんだ!馨!

馨 :いや、だって珍しくって。

戒斗:俺はそんなにガキじゃねぇぇぇ!

常葉:そう言うところが、幼いのですよ。

佐之:同意。

蒼哉:かわいいでちゅねー。戒斗くーん。

戒斗:そろいも揃ってやめろぉぉぉ!

隆 :日頃の行いが悪いんだな。あきらめろ。

戒斗:救いはないのかよぉぉぉっ!?

蒼哉:ま、おふざけはここらにしとこう。
   これから、少し荒事が増えてくる。君たちには無理をさせるかもしれないが頑張ってくれ。
   あと、健康第一。怪我とか、体調不良には気をつけてね?

戒斗:俺はそこら辺に関しちゃ、大丈夫だぜ。

馨 :元気だけが取り柄だもんね。

戒斗:うるせぇっ!

常葉:室長・・・。

蒼哉:うん。伊藤君は後でちょっと検査室に行ってみてよ。僕も後で顔を出すからさ。

馨 :伊藤隊長。なにか、問題が?

佐之:実は・・・。近頃、隊長の異能障害が頻発(ひんぱつ)していて・・・。

蒼哉:異能に目覚めた人間が必ず起こす異能障害。伊藤君は、身体の震えだったかな?

常葉:はい。最近、非道(ひど)いときにはけいれんを起こします。

戒斗:だから、あまり見かけなかったのか。

常葉:恥ずかしい限りです。

馨 :いや、仕方のないことですよ!

蒼哉:そうだね。これはみんなにも言えることだし。
   僕は喀血するし、馨君は血液濃度が高くなる。

佐之:私は、隊長と同じくけいれん症状ですね。

蒼哉:そういえば、戒斗。身体のマヒはどうだい?

戒斗:ああ、今のところは大丈夫だぜ。
   1か月に1回、定期的に来てる。前回が、今月の頭だったから今月中は大丈夫だ。

馨 :ちゃんと薬は定期的にもらっておいてよね?戒斗の場合は死ぬ可能性だってあるんだから。

戒斗:あいよ、わかってる。自分の電気で脳を焼くなんてまっぴらだ。・・・それにまだ、俺は死ねないしな。

蒼哉:とりあえず、体調管理はしっかりと。異能障害が非道(ひど)くなってきているならすぐに検査を受けるように。
   それじゃあ、今日はこの程度かな?他になにか質問や情報は?

馨 :うちの班は特になかったよね。戒斗。

戒斗:そうだな。卜部(うらべ)が、正式にうちの班に入って、今は巡視に朝永と一緒にでてる。それくらい。

常葉:私達の班は、先程言った巡視途中に接敵したこと以外はないです。

蒼哉:なら、作戦は後ほど考えて行くから。それまで待機で。
   いつも通り、巡視や訓練といった業務は続けといて。学生は勉強もね?

戒斗:はいはい。頑張っとくよ。

馨 :宿題、早めに終わらせなよね。

蒼哉:では、解散。

(間)

隆(M):Bプラン。Cプランから1つ、レベルが上がった。ここからは危険が伴う。さらに気を引き締めなければ。
   一歩間違えば、死ぬのはこちらなのだ。・・・大丈夫、私なら大丈夫だ。始めよう。私はこれから影となるのだ。

佐之:次回の闇ツ世界は

蒼哉:その場は暗く

馨 :しかし、灯る火は淡い。

戒斗:汝(なんじ)、決して闇に入る無かれ。

常葉:闇ツ世界 第12話 電撃

隆 :雷鳴は、闇を穿つ。






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