闇ツ世界 第十話 謀(はかりごと)

♂相田 蒼哉(アイダ ソウヤ):25歳。
政府特務機関「クガタチ」のトップ。
切れ者で若くして政府機関の責任者となっている。
戒斗を組織に引き入れた張本人。
現在では事務職に力を注いでいるが、もともとは前線で闘う武闘派。
何を考えているのか分からないとらえどころのない人物。
良く言えばひょうひょうとしたキャラクター。悪く言えば不真面目。
風を扱う異能者。武器は鉄扇。


♂ジャック:見た目20歳前後。
不気味な雰囲気を持つ人物。本名不詳。
見た目は人付き合い良さげな人物だが、その内面は冷徹が服を着たよう。
仲間であろうと切り捨てる時は切り捨てる。能力は遮断。


♂蒼哉  :
♂ジャック:

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ジャック:ふふふ・・・ははははっ!なるほどなるほど。そうか・・・そういうことか。クガタチ。
     あの政治家から奪ったちんけな書類が、こんなにも僕の胸を高鳴らせてくれるなんてね・・・。
     どうやら、これは、僕が行かなきゃね。他のみんなに渡すわけにはいかない。
いや、むしろ力不足だな。この仕事に、あのメンバーじゃ。
     会えるかな?いや、会わなければ。キミもそのつもりなんでしょう?クガタチのリーダーさん。
     ククク・・・キミの引導は、僕。この僕が!・・・直々に渡してあげるよ。
     よし、そうなったら準備だ。ああ、楽しくなってきたよ。
     ・・・この見取り図、それに配備状況は・・・なるほど。
     うん。そうだね。明日が都合いい。明日決行だ。
     
     
(間)

ジャック(N):闇ツ世界 第十話 謀(はかりごと)

蒼哉  :さて、そろそろかなぁ・・・。多分、今日あたりだとは予測するんだけど。
     うーん・・・それにしても、暇だ。やっぱり別のプランが良かったかな?でもなぁ、そのプランじゃ、前提が覆っちゃうんだよね。
     土台づくり失敗しちゃったなぁ・・・。
     ん?・・・侵入者?・・・1人か。場所は・・・外周区画Aブロック。正面からの侵入ね。ずいぶん大胆だね。よもや迷子とかじゃないよね?
     人物照合システム起動。・・・あれ?あれあれあれ?・・・まさか、だ。まさかの事態だ。
     まさか敵のリーダーが来てくれるとは。そもそも私の立てたプランに乗ってくれるとは。
     これは意図的な侵入かな?たった1人で来るなんて。それとも伏兵でもいるかな?
     ああ、諜報部を連れてくれば良かった。でも、ここに来たということはあのフェイクを信じたんだよね?
     よろしい。では、手始めにお手並み拝見といこうか。まずは・・・ここら辺でいいかな?防衛システムAパターンっと。
     防衛ロボの機銃をよけられるかな?・・・・っていってる間に壊されちゃった。早いなぁ。
     次、Bパターン。一部隊の個体数を5から10に、部隊数を2から3へ増加。連携機能を強化。これでどうかな?
     お?てこづってるかな?よしよし、それじゃあ、Bパターンを継続させながら、Cパターンを追加。
包囲し、せん滅機動を取るように。
     アルファチームはそのまま正面で弾幕を張って、ブラボーチームは半分に分け左右に展開。チャーリーチームは二階へ。上方から掃射。
     よし。このくらいかな?さて、どう動く?
     うん?特攻?やけくそにでもなったかな?・・・いや。違うな。これは・・・ああ、そうか、そういうことか。中央を突破するわけね。
     それじゃ、あえて下げよう。アルファチームはポイントB6に移動。同時にブラボーを集結させて板ばさみにして・・・。あれ?
     あちゃー。そうきたか・・・。準備いいねぇ。各隊のどれか1機にC4くっつけて、それが合流した時に爆破。頭の回転が速いな。
     よし、それじゃあ、しかたない。いつまでたっても終わらないだろうし、こうしよう。
     残存部隊アルファとブラボー両隊は合同でけん制しつつ撤収。チャーリーチームは内部まで誘導して。
     誘導地点はフォックストロット・フォー・ロメオ・スリー。
     さてと、腰を上げるか。


ジャック:ふう・・・。さすがに手間だった。自立駆動にしてはチームワークがいいガラクタだったよ。いや、むしろこのガラクタを操作してる人物が居るのか。
     となると複数人での制御かな?まぁ、終わった事だし良いとしようか。で、ここでは何が相手をしてくれるのかな?

蒼哉  :相手は私だよ。テロリストのリーダーさん。

ジャック:あなたは?

蒼哉  :知ってるはずだけど?クガタチ室長兼第一班隊長、相田蒼哉。

ジャック:アハハハハ。本当に室長だけなんだね。信じてきてよかったよ。それとも、伏兵が控えているのかな?

蒼哉  :それはそちらにも言えるけれどね。・・・それにしても、一人であれだけの防衛ロボを相手にして無傷とはなかなかやるね。

ジャック:あの程度、さばけないとね。でも、骨はおれたよ。布陣に隙が見えないから。よっぽどいい策士が操作してたみたいだね?

蒼哉  :おほめにあずかり光栄だよ。で、こんな無駄話をしにここに来たわけじゃないでしょう?

ジャック:うん。そうだったね。それじゃあ、本題に入ろう。おとなしく殺されてくれない?室長さん。

蒼哉  :それで、おとなしく死ぬと思うのかい?この私が。

ジャック:だったら、実力行使だね?いくよ?・・・ディスペーア

蒼哉  :風塵暴砂!(ジャックの「ディスペーア」のセリフにかぶり気味で)
     
ジャック:砂嵐・・・。視認できないね。

蒼哉  :風裂(かぜさき)!

ジャック:くっ!この切り傷。かまいたちか・・・     

蒼哉  :どうしたのかな?そんなに驚いた?

ジャック:扇・・・なるほど。風の異能者・・・。

蒼哉  :ほら、どうしたの?私を殺すんでしょ?

ジャック:そうだよ。殺すんだよ!

蒼哉(N) :突っ込んでくる?この暴砂は単なる目隠しじゃないんだけどね。

ジャック:ディスぺーアッ!

蒼哉  :なっ!?爆砂が消えた!?

ジャック:なるほど。砂の粒子が皮膚を裂くんだね。無謀な突貫は死を招くのか。

蒼哉  :さっそく見抜かれたか。それにしても、どうやったんだい?あの爆砂を消すなんて・・・さっ!

ジャック:おっと、それは秘密だよ。・・・それにしても、あなたは、体術もできるんだね?

蒼哉  :伊達に隊長は張ってないから、ね!

ジャック:くうっ・・・。やりづらいなっ!

蒼哉  :それは、どう、もっ!

ジャック:ちっ!距離を・・・

蒼哉  :とったな?読み通りっ!

ジャック:なにっ!?

蒼哉  :風裂・円陣(かぜさき・えんじん)!

ジャック:風の、檻ッ!?避けられなっ・・・ぐあぁぁぁぁぁっ!・・・・・なんてね。

蒼哉  :・・・ふん。仕留められないか。

ジャック:危ない危ない。まさか、奥の手使わされるとはね。

蒼哉  :そんな物残しておいたのか。案外やるね。

ジャック:もちろん。残しておくから奥の手でしょう?ちなみに、奥の手はまだあるから期待しておいてよ。

蒼哉  :では、それを見せぬままに事を終わらせよう。

ジャック:そうなの?つまらないな。まだ僕はあなたの能力を細かく知らないんだけど。

蒼哉  :私には教える理由は持ち合わせてないからね。後、私はキミの能力はある程度見切ったよ。

ジャック:・・・へぇ。例えば?

蒼哉  :キミの能力は、遮断。それも高等位の能力発現が起こってるね。
     能力有効範囲は、視界に入るもの限定。さっき私が、目隠しの砂嵐を出したとき、能力攻撃してこなかったのはその所為でしょ?
     技発動には距離に応じた数秒のラグが現れる。こんな所かな?

ジャック:ククク・・・ハハハハハッ!さすがだ。さすが、クガタチのトップ。なかなかにいい目をしているじゃない!
     これは・・・ここで殺しとかないとねっ!

蒼哉  :能力が見抜かれて接近戦に持ち込む魂胆かい?それはミスだよ。私の予定調和だっ!

ジャック:そんなプラン!壊してあげるよ!ディスぺーアッ!

蒼哉  :風塵暴砂!

ジャック:雲隠れなんかさせないよっ!懐にもぐりこめばっ!

蒼哉  :ちっ!風弾・散!

ジャック:つぅっ・・・。ハハッ!距離を詰められると目隠しの砂嵐は出せないよねっ!

蒼哉  :止まらない!?・・・苦手だっ!戦略も何もなくっ、突っ込んでくるなんてっ!

ジャック:戦略だよっ!これすらもっ!

蒼哉  :ぐっ!くそっ!

ジャック:良い位置に飛んでくれた。その首、切り取ってあげる。

蒼哉  :なっ!?しまったっ!?

ジャック:ディスペー・・・ぐっ!?

蒼哉  :・・・ふぅ、やっと効いてきたね。タイミング良くて良かったよ。

ジャック:な・・・なにが・・・。

蒼哉  :マヒ毒だよ。キミが手を突っ込んだあの砂嵐の砂にはちょっとしたマヒ毒を仕込んでおいたんだ。

ジャック:・・・狡賢いんだね。あなたは。

蒼哉  :もちろん。じゃないと、謀略にならないじゃない。

ジャック:でも、それもうちこわすっ!

蒼哉  :やっぱり、一時的か。遮断の能力を体内の毒素に対して使ったか。

ジャック:ふふふ・・・まだまだ。行くよ?

蒼哉  :いや。そのまだは無いよ。

ジャック:・・・どういう事かな?

蒼哉  :こういうことさ。

ジャック:!?飛び降り・・・なっ!?爆発!?・・・フフフ、そうか。そう言うことか。
僕を瓦礫で押しつぶす寸法か・・・。これを狙ってたか・・・。
     ハハハハハッ!やってくれるじゃないか。クガタチィィィィ!

(間)

蒼哉  :ふぅ。危なかった。あそこまでやりづらい相手だとは思わなかった。
     考えてたプランの半分以上潰されちゃった。
     どうせ、最後の策もつぶされたんだろうね。
     いや、見抜かれてたって方がただしいか。僕もまだまだだ。
     今後の課題だ。僕はやっぱりインファイトに持ち込まれたら弱いんだよね。能力的には。どう、改善していこうか。
     いや、今はそれよりもやることがあったんだ。すぐに隊長各位を招集しなきゃ。
     後、諜報部に即時通達をして。そろそろ・・・Bプランに移行しなくちゃね。
     よし、そうと決まればさっそく行こうか。
     
(間)

ジャック:(咳き込む)ふぅ・・・。あぶなかった。
     とっさに、遮断結界をつくってよかった。
     相田蒼哉・・・なかなかに切れ者だ。
     わざわざこんな場所に招くから何かあるとは思ってたけど。基地ごと倒壊させて僕を殺そうとするなんて。
     それに、戦闘中に彼はいろんな戦闘プランを立ててたようにみえる。
     お飾りのデスクワーカーじゃないんだ。・・・天才って所か。
     よし、ちょっとこれからは動き方を変えて行かなきゃ・・・いけ・・・。あれ?身体が・・・。
     ああ、そうか、マヒ毒・・・。抜けてないんだ。
     すこし、休むとしよう。もう少ししたら、穂乃華達も・・・来る・・・かも・・・。



蒼哉  :次回予告。
     頂上の闘いは引き分けに終わった。

ジャック:両者は、ひとまずの休戦状態に入る。

蒼哉  :しかし、闘いはまだまだ続く。

ジャック:闇ツ世界 第十一話 緊急招集

蒼哉  :さて、次の作戦を練ろうか・・・。
     






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