闇ツ世界 第七話 「日常」
♂森戸 戒斗(モリト カイト):17歳。
政府特務機関「クガタチ」の中でも十指に入るエリートメンバー。
何事にも柔軟に対応でき、且つ常に熱意をもっている性格。
電気や磁力を扱う事のできる異能者。武器は刀。銘は『雷斬(らいきり)』
♂相田 蒼哉(アイダ ソウヤ):25歳。
政府特務機関「クガタチ」のトップ。
切れ者で若くして政府機関の責任者となっている。
戒斗を組織に引き入れた張本人。
現在では事務職に力を注いでいるが、もともとは前線で闘う武闘派。
何を考えているのか分からないとらえどころのない人物。
良く言えばひょうひょうとしたキャラクター。悪く言えば不真面目。
風を扱う異能者。武器は鉄扇。
♀菱山 馨(ヒシヤマ カオリ):18歳。
政府特務機関「クガタチ」のエリートメンバーであり、戒斗のパートナー。
快活なキャラクターで変人が集まるエリートメンバーの中では常識派。
水を扱う事のできる異能者。武器は槍。銘は『海割(うみわり)』
♀卜部 千里(ウラベ チサト):17歳。戒斗と馨によって暴走しているところを『保護』された異能者。
重量操作の能力を持つ。ほがらかであるが、すこし抜けている。
いわゆる天然。頑張りが空廻ってドジするタイプ。
|配役表|
♂森戸 戒斗:
♂相田 蒼哉:
♀菱山 馨:
♀卜部 千里:
______________________________________________________________________________________________
戒斗:この子か…。暴走を起こしているのは。
馨 :そうみたいね。……怪我させないでね?
戒斗:わかってんよ。さて、行くぜ?
馨 :了解。
千里:闇ツ世界 第七話 「日常」
馨 :かーいーとー!起きろっ!戒斗っ!
戒斗:うーん…。なんだ?馨か?寝かせろよな…。昨日おそかったんだから…。
馨 :そんなこと分かってるっての。でも、出なくて良いの?授業。
戒斗:授業……?げっ!
千里(N):時間は早送りされる。夕方5時。
戒斗:だぁーっ!ツいてねぇっ!なんで怒られるんだーっ!
馨 :学生なんだから勉強するのは当たり前じゃない。
戒斗はいっつも遅刻して、普段の生活態度も悪いわけだし、怒られて当然。
戒斗:だからって、職務で夜中、駆けづり廻ってたやつをだ。朝っぱらからこんな場所に引きずり出さないでくれっ!
というかなんで学校なんかがこの施設に入ってるんだ!
馨 :特務機関とはいえ、所属してるのほとんどが学生じゃない。
そのためにちゃんと、小学校から大学まで、各教育施設が併設してあるわけだし。
戒斗:ちっくしょう!勉強なんて嫌いだぁっ!(欠伸)それにしても……眠い……。今日はなにもなかったよな?俺ら。
馨 :えっと…。うん。今日の本部待機は二班と三班だったはず。
戒斗:うっしゃ。休みだっ!あ、でもあの室長のことだ、どうせ何か厄介ごとを……。
蒼哉:あーあー。マイクテスト。入ってるかな?
森戸戒斗君。菱山馨君。理事長室に来なさい。1分でね?いーち、にーい…。
戒斗:やっぱりな。いくぞ。
馨 :了解。
(間)
蒼哉:いらっしゃい。お二人さん。
戒斗:なんだよ?室長。
蒼哉:ここじゃあ、『理事長』ね?ま、別に良いか、これから言うのは任務だし。
……あのさ、二人にちょっと協力して欲しいことがあるんだ。
馨 :なんでしょう?
戒斗:面倒だけはかんべんな?
蒼哉:面倒じゃないさ。ただ、案内と説明をして欲しいんだ、この子に。
馨 :あれ?あなた…。
千里:あ、こんにちは!あのっ!昨晩はありがとうございました!
戒斗:ああ、昨日の能力暴走してた子か。大丈夫そうで良かった。
千里:はいっ!
蒼哉:それでね?この子、僕らに協力してくれるってことになったんだけど。所属をね、君の二班にして貰う事にしたよ。
戒斗:うちにですか?
蒼哉:うん。比較的、他の班は人員は足りてるけど二班だけは他と違って人員少ないじゃない?
てか、そもそも二班って試験的に此所が作られた当初からある班だから、所属人員はベテラン揃いで増員は先送りだったじゃない。
ちょうどいいし放り込んじゃえーって感じ?
戒斗:いい加減すぎだろ…
馨 :でも、班員が増えるのは良い事じゃない。私は異議無いわ。
蒼哉:どうだい?戒斗。
戒斗:うーん……。別にいいっすよ?確かに人手不足は否めないですし。
市内探索に狩り出されるよりはマシだ。
蒼哉:じゃ、隊長と副隊長の合意も得たことだしと決まりだね。
というわけだ千里君。彼らが君の所属する班のトップ二人だよ。
戒斗:森戸戒斗だ。
馨 :私は菱山馨。よろしくね。
千里:卜部千里です!よろしくおねがいしますっ!
戒斗:敬語とかいいって。俺ら同い年みたいだしな。
馨 :いいのいいの。私たち堅苦しいの嫌いだし。
千里:はいっ!
蒼哉:じゃ、これからは二人にまかせるよ。僕は他の書類かたづけなきゃ。
ひとしきり施設説明が終わったら此所に戻ってきてよ。ちょっと彼女に渡したいモノがあるしね。
戒斗:あいよ。了解。
(間)
馨 :さて、案内するにしても、どうしようね?
戒斗:大まかな部屋の説明だけで良いだろ?大体は室長がやってるはずだし。
千里:えっと。実をいうと全く聴いてなかったり……。
戒斗:はぁっ!?
馨 :だろうとおもった。
戒斗:(溜め息)しかたない。じゃあ、歩きながらでいいか?えっと……まず、説明するとしたら……。
千里:あの、参加はするんですが、クガタチって何してるんですか?
戒斗:それからかよっ!?
馨 :えっと……私たちって特殊な能力が使えるじゃない?
その能力を使って、悪いことをしてる人たちを逮捕するのが私たちクガタチの仕事。
千里:じゃあ、警察官みたいな仕事なんですね?
戒斗:まぁ、そんなとこだ。でも、俺らが相手するのは普通の犯罪者じゃない。俺らと同じ異能の能力を持つヤツらだ。
怪我をすることはしょっちゅうだし、死ぬヤツだって出てくる。
千里:死ぬ……。
戒斗:でも、まだ卜部は前線には出さないから。そもそも、能力が安定してないからな。安心しな。
馨 :後は、千里ちゃんみたいな能力に目覚めちゃって、不安定な時期の子達を保護して安全に生活できるようにするっていうのもあるわね。
千里:なるほどぉ…。
戒斗:そのために、ここの組織は室長をトップに2つの部署が支えてる。
1つは諜報部。これは異能犯罪者の捜索、調査をやってる部署。
そんで、俺らが所属してるのが実働隊。諜報部からの情報を元に戦闘をメインとするとこだな。
ちなみに実働隊は一班以外にも四つあって全てで五班あるんだ。
班それぞれに特色があるんだが…まぁ、また今度にするか。
千里:ほうほう。
馨 :さっきも言ったとおり。千里ちゃんは前線じゃなくて、まずは訓練からだけどね。
戒斗:びしばし鍛えてやっから、覚悟しとけ?
千里:はいっ!
馨 :ちょっと。戒斗!
戒斗:大丈夫だって!俺だってはなっから無茶はさせねぇって!
馨 :しんぱいだなぁ…。
戒斗:さて、そうこうしているうちに寮の前に到着!ここが俺たち二班の寮。
女子は3階から4階。男子は1階から2階。
卜部の部屋はっと……。お、303。馨の隣か。
馨 :え?そうなの?……あ、ホントだ。
戒斗:これじゃ、夜はヒーヒー言いながら暴れられねぇな?
千里:……え?
馨 :ちょっ!?戒斗!勘違いさせるような言い方しないでよ!
戒斗:実際そうじゃねぇか
馨 :そ、そうだけどそうじゃないからっ!
千里:なにか……やってるんですか?
馨 :いや……その……ね。
戒斗:こいつよくストレッチしてんだよ。
それもな?ストレッチなのに誰かと乱闘してるような音がしてくるんだぜ?笑えるだろ?
馨 :戒斗……後で覚えときなさいよね。
戒斗:はぁ?これも教えておくべき情報だろ?
馨 :今日、戒斗の晩ご飯抜きね。
戒斗:はぁっ!?なんでお前が決められるんだよっ!
馨 :だって今日料理当番の1人になってるモン。二班の。
戒斗:横暴だぁぁぁ!
馨 :当然よ。人の恥ずかしいことをばらしたんだから。ねー。千里ちゃん。
千里:ですねー。
戒斗:卜部も流れに載るんじゃねぇぇぇぇっ!
蒼哉:あー。頭に響く〜。……元気に叫んでるとこ悪いね。まだ掛かる?
馨 :あ、室長。これから戻ろうかと。
蒼哉:そっか、じゃ、ちょうどいいや。これ、千里君の隊員章。
千里:雷(いかづち)の紋章?
蒼哉:戒斗の能力が電気だからね。それをモチーフに。
あと、ここの班は素早い電撃戦が得意な班だし。すばやく戦場に展開し、相手を殲滅する。
班の気風に似合ってるじゃないか。
千里君、これをこっちの制服に付けといて。ワッペンになってるからね。付け方分かる?
千里:はいっ!大丈夫ですっ!
蒼哉:ならよし。もし、難しければ馨君にでも押しつければいいから
馨 :わたしですかぁっ!?戒斗の方が上手いのに!?
戒斗:家事できないと、女子力下がるぜ?いや、女子力というか、人間力?
馨 :うっ、うるさいなぁっ!私だってやればできるんだからっ!
蒼哉:あ、そうだ。ついでだし、戦闘訓練してみたら?千里君の。
戒斗:は?もうかよ?まずは能力の安定からじゃねぇの?
蒼哉:それはもう大丈夫だよ。なんせ今日一日僕が訓練したからね。
馨 :めずらしい。室長が直々に訓練手伝うなんて。
蒼哉:丁度暇だったしね。
戒斗:暇じゃないだろ。
朝からアンタの部屋に書類が山のように積まれてたの知ってるぜ?
馨 :そう言えば、夜の出動から全く減ってなかった。……現実逃避ですか。
蒼哉:ま、そうとも言うね。そう言うわけだからもう千里君は軽い戦闘ならできるよ。
戒斗:「そう言うわけ」じゃないだろ。全く……。
まぁ、いいや。それじゃちょっくら運動するか。
蒼哉:十番道場を空けといたから、そこ使って。
戒斗:あいよ。んじゃ、行くか。
千里:がんばりますっ!……あ、でもお手柔らかにおねがいしますね?
馨 :手加減しなかったら私が制裁下すから。
千里:あ、じゃあ大丈夫ですねっ!
蒼哉:じゃあ、僕もその制裁に参加しようかな。
戒斗:なんでこうなったし…。
蒼哉:いやぁ、それにしても仲良くなったようでなにより。
戒斗:なんか疲れた…。
(間)
馨 :さて、ここだよ。十番道場。
千里:広いんですね。ここ。
戒斗:一応道場だしな。いろんな作りしたのが他にもあるんだが……。
まぁ、軽いのだったら何もないベーシックな道場でいいだろ?
馨 :うん。そうだね。さて、ルールはどうする?
戒斗:俺が1回、卜部は3回死亡判定されたら終わりにしよう。
こんなんで良いだろ。
馨 :了解。木刀は要る?
戒斗:おう。卜部も何か選べよ。実戦訓練だしよ。
千里:えっと……じゃあ、これで。
戒斗:模造の大剣か……。お前に扱えるか?
千里:嘗めないで下さいよ?
馨 :じゃ、私が審判するね。ふたりとも、準備はいい?
戒斗:おう。
千里:はいっ!
馨 :それでは、はじめっ!
戒斗:先手必勝!つっこむぜっ!まずは……突きッ!
千里:か、回避っ!
戒斗:お、反応いいじゃん。さすが、室長が一日仕込んだことはある……なっ!
千里:わっ!くぅ…。剣戟(けんげき)が重い……。
戒斗:防御もばっちりだな。だが……うらぁっ!
千里:きゃっ!
戒斗:握りが甘い。すぐに剣をはじける。ほれ、今のでまず死亡1。
馨 :戒斗。もう少し手加減ってモノを…。
戒斗:してるっての。剣速はいつもより遅いぜ?
馨 :それでもだよっ!
千里:大丈夫です!次、お願いします!
戒斗:だってよ?じゃ、いくぜぇっ!
千里:くっ!
戒斗:いつまでもつばぜり合いしてたってダメだぜ?腹ががら空きっ!
千里:かはっ!
戒斗:人を殴るときはグーより掌底な。やりようによっては指折れるから。
それにしても、さっきより、剣の振り遅れは無いな。良い反応だ。
千里:まだまだっ!はぁっ!
戒斗:おっと、受け流すっ!
馨 :体崩し(たいくずし)までやっちゃって……戒斗。やり過ぎだって。
千里:うわっ!?
戒斗:まだやるか?なんなら能力使ってもいいぜ?
千里:わかりました。後悔しないでくださいね?
戒斗:後悔はしないっての。手加減してても負けねぇよ。さ、来いッ!
千里:はいっ!いきますっ!せいっ!
戒斗:おっと!今の踏み込みはよかったぜ!?
千里:切り上げるっ!
馨 :え!?振りが早くなった!?
戒斗:くっ!……どんな能力か、さっぱりわっからねぇが、むやみに振っててもあたらねぇっ!
千里:むやみに振ってるわけじゃないです!よっ!
戒斗:おわっ!あぶなかった……って、退路がねぇっ!?
千里:これで……きめますっ!
戒斗:振り下ろしで来るか、仕方ない、受け止めるっ!
千里:甘くみないでくださいっ!
戒斗:ぐっ!?剣戟が……重くなった!?
千里:振りきるっ!
戒斗:なっ!?俺が、押し負け……うおぉぉっ!?た、タンマ!
木刀が割れる!メシメシいってるって!
馨 :そこまでっ!
戒斗:あせったぁ…。
蒼哉:分かった?彼女の力。
馨 :わっ!室長!?
戒斗:神出鬼没すぎるだろ、あんた。
蒼哉:そうかい?まぁ、それはいいよ。で、わかった?彼女の能力。
戒斗:いいや。さっぱり。さっきの剣戟が重くなったくらいしか違和感って無かったし。
蒼哉:ってことは上手くごまかせてるんだね。千里君。
千里:そうみたいです!
馨 :どういうことですか?
蒼哉:彼女の能力は重量移動。触れているものの重さを重くしたり軽くしたりできる能力。
戒斗:じゃあ、あの重さは。
千里:戒斗さんの重さと、私の重さと、さっき振り下ろす前にちょっと触ったコンクリートの重さを、全部私の剣に追加したんです!
戒斗:そりゃ、木刀も折れるわ。
蒼哉:で、どうだい?彼女は。スキル的に。
戒斗:訓練のしようにもよるけれど、いいんじゃね?
蒼哉:おめでとう。戒斗が人を認めるなんてそうそうないよ?
千里:ありがとうございます!
戒斗:じゃ、改めてよろしくな。
千里:はいっ!
蒼哉:次回の闇ツ世界は
戒斗:新たな仲間を得たクガタチ
馨 :その一方、闇は悪意の根を広げる。
千里:闇ツ世界 第八話 弾劾(だんがい)
蒼哉:人の罪を裁くのは、神か、人か。
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