闇ツ世界第6話 「ポーンの一歩」

♂速水 佐之(ハヤミ サノ):20代後半。三番隊副隊長。武士道にこだわる堅物。隊長である常葉に忠誠を誓っている。戦闘スタイルは棒術。能力は波動。

♀伊藤 常葉(イトウ トキワ):20代後半。「クガタチ」三班隊長。冷静沈着な性格。クガタチの戦闘班の中でも頭脳派。でも戦闘も出来るオールマイティ。武器は大槌。能力は物質振動。

♀生駒 穂乃華(イコマ ホノカ):15歳。
物腰柔らかに喋るが、非道な事を平気でやってのける人物。他の人とは違い産まれた時より異能の力を保持していた。(母親が妊娠時に『ウィジ』を服用したため)そのため忌み者として扱われてきた。能力は火炎。武器を持たぬ代わりに両手に炎を纏い篭手として扱う。

♂ジャック:見た目20歳前後。
不気味な雰囲気を持つ人物。本名不詳。見た目は人付き合い良さげな人物だが、その内面は冷徹が服を着たよう。仲間であろうと切り捨てる時は切り捨てる。能力は遮断。


穂乃華:
ジャック:
佐之:
常葉:

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ジャック:大々的に報道されたね。これでクガタチは表に出るしかなくなった訳だ。

穂乃華:黒井を動かしていたんですか?

ジャック:うん。切り込み隊長にうってつけだからね。そう言えば、玲一(れいいち)君の調子はどうだい?

穂乃華:そうですね……。能力は安定してきました。特定した人物の視覚と聴覚を盗み見るのはマスターできてます。発動時間と距離は最初の時よりも伸びましたね。

ジャック:そうかい……それはいいね。もっと伸びそうじゃないか、彼は。認識を変えなくちゃいけないな。ルーク?いや、ビショップかな?

穂乃華:……所詮は駒なんですね。

ジャック:うん。そうだよ。ああ……でも、穂乃華は別だからね?なんせ君は僕のものだから。

穂乃華:……はい。

ジャック:本当だよ?だから心配しないでね。おっと、時間だ……ちょっと出掛けてくるね。留守よろしく。穂乃華。

穂乃華:いってらっしゃいませ。


常葉:闇ツ世界第6話 「ポーンの一歩」


ジャック:さて、次の一手を打つためには……うん。まだだね。あっちがどう動くかによって…。

佐之:貴様だな。トローノ・コンクエストのリーダーというのは。

ジャック:うん。そうだけど。……キミ、誰?

佐之:悪には名乗らぬっ!せえいっ!

ジャック:ふーん。棒術か。でも、僕にはあたらないよ。

佐之:くっ!……よく見切るな。

ジャック:そう?よっと…。もっと本気出しても良いよ?暗殺者さん。

佐之:なめるなっ!震破(しんぱ)っ!

ジャック:ふーん。波動系の異能者ね。でも、僕には効かないよ。

佐之:なにっ!?

ジャック:うーん。だめだよ。警戒の手をゆるめちゃ。……ディスペーア。

佐之:ぐあぁぁぁぁぁぁっ!?

ジャック:あれ?片腕だけかぁ…真っ二つにしたと思ったんだけど。

佐之:ま……だ、まだだっ!うあぁぁっ!

ジャック:しぶといね。でも、キミの体術は見切れるんだよね。

佐之:くそっ!ここで……死ぬわけには…。

ジャック:へぇ、飼い主に忠実なんだね。良い子だ。

佐之:バカに……するなっ!

ジャック:うーん、どこの飼い犬なのかな?クガタチ?キミ。

佐之:なにも言わぬっ!

ジャック:ふーん。そっか。キミが一手なのかな?

佐之:だまれっ!

穂乃華:ジャック、何やってるんですかっ!?

佐之:くっ!新手か

穂乃華:呼んで下さいよ。襲われてるんなら。……撃退します。

ジャック:おや、穂乃華?なんでわかったの?

穂乃華:訓練中の御堂(みどう)が偶然こいつの視界をジャックしたので。

ジャック:ああ、この暗殺者さんの視界をねぇ。彼、ホントに成長したねぇ。

穂乃華:そんなこと言ってる場合ですか。コッレ・フィアンナ!

佐之:くっ!火炎能力者かっ!……このままでは、いかんッ!

常葉:佐之。

佐之:伊藤隊長!

常葉:あなたは下がりなさい。救護班が控えています。

佐之:いえ、大丈夫です。ここは私が……!?

常葉:佐之?

佐之:は、はい……。

常葉:あなたは私の命令を無視するのかしら?

佐之:それは……。

常葉:それとも、あなたは私の槌(つち)の餌食(えじき)になりたいとでも?

佐之:も、申し訳ございません。

常葉:わかったなら戻りなさい。

ジャック:面白いの見せてくれてありがとう。うーん……。キミはナイトかな?

常葉:たとえ話をするつもりは無いです。

ジャック:まあいいや。……それにしても、隊長って言うことはキミを倒せば僕らはやりやすくなるのかな。

常葉:あなたにそれができるのならば、ですが?

穂乃華:逃げたヤツはどうします?ジャック。

ジャック:ほうって置いて良いよ。今はこっちが面白そうだ。

常葉:随分と余裕ですね。

ジャック:もちろん。僕に勝てるかな?キミは

常葉:良いでしょう。相手をします。

穂乃華:コッレ・フィアンナ!

ジャック:大丈夫だって言ったのに。

穂乃華:すいません。でも、ジャックが心配で。

ジャック:うん、わかってる。ありがとう。

常葉:この程度ですか。

ジャック:おや?無傷か。直撃だったと思ったんだけど?

常葉:甘いですね。一刀残心(いっとうざんしん)ができてない証拠です。

穂乃華:じゃあ……本気で行きますよ。ヴェデーレ。フィアンナ・マーノ!

ジャック:おやおや、穂乃華、本気だね。

常葉:炎の篭手(こて)ですか。

穂乃華:……いきますっ!フィアンナ・プーニョ!

常葉:拳に纏った炎は飛ばせるのですか。リーチは関係無いですね。

ジャック:うん。僕は出なくても良いみたいだ。ここは穂乃華に……

常葉:逃がしません。撃槌(げきつい)!

ジャック:おっと……。キミも波動系の異能者だったか。

穂乃華:ジャック!

ジャック:大丈夫。なんともないよ?

常葉:……遮断ですか?あなたの能力は。

ジャック:良く気付いたね。それより余所見はするモノじゃないよ?

穂乃華:アルティーリョ!

常葉:遅いです。……ほら、簡単に防げる。

ジャック:切り取れ、パーテイン。

常葉:くっ!かわすっ!

ジャック:うーん。あざとく狙いすぎたか。首よりも胴をねらえばよかったな。

常葉:反応が遅かったら危なかった…

穂乃華:休ませないっ!はぁぁっ!

常葉:飛びかかりますか。それはっ!

穂乃華:ぐあっ!

常葉:私の槌(つち)でどうにでもしてくれと言うようなものですよ?

ジャック:ふーん。どうしようね。

常葉:どうしようも、私はここであなたを殺します。

ジャック:できないよ?キミはもう今、退くしかなくなってるから。

常葉:なぜ?

ジャック:……3,2,1

常葉:!?……携帯?

ジャック:出ていいよ?

常葉:…はい。なんでしょう。……はい。なっ!?でも、今っ!……はい。了解しました。

ジャック:どうだった?

常葉:……ここは退きます。ですが、次はないですよ。

ジャック:それまでを楽しみにしておくよ。あ、そうそう。腕、忘れてるよ。どうせこれくらい治せるんでしょ?バックアップ隊は。

常葉:よくご存じで。それでは、またの機会に。

穂乃華:(咳き込む)…すみません。ジャック。

ジャック:いいんだよ。……さて、この一手、どうしようか。


佐之:次回の闇ツ世界は

穂乃華:世界は廻る

ジャック:仮初めながらも、それは平穏を保つ

常葉:闇ツ世界 第七話 「日常」





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