ソラノキセキ 第1話 『始まりの空』
ベネット:通信名【トーラス1】トーラス隊の一番機。本作主人公。傭兵として活動していたところ正規軍としてスカウトされる。
エレン:通信名【トーラス2】トーラス隊の二番機。空戦の天才。
ケンブル指令官:ベネット達が所属する基地のトップ。威厳在る指令で隊員達からの信頼も厚い。航空機乗りだったが、足を悪くしてからは司令官として活躍。
AWACS(エイワックス):ベネット達の作戦をサポートする管制機。コールサインは【マッドロック】
ガンス1:所属不明の戦闘機部隊の一番機。
ガンス3:所属不明の戦闘機部隊の三番機。
ナレーター
ベネット:
エレン:
AWACS(エイワックス):
ケンブル司令:
ガンス1:
ガンス3:
ナレーター:
_________________________________
ナレーター:1人の男性がタイプライターに向かい、黙々と文章を書き上げている。
せわしなく響くタイプライターの音が耳朶を打ち、窓辺から入る爽やかな夏の風が彼の頬を撫でる。
彼の書き上げてゆく文章にはこう書かれている。
5年前の戦争。キラオ大戦。
小国キラオ帝国が、大国ストマリア共和国に資源強奪のため宣戦布告し、始めた戦争。
当初はすぐに決着がつく戦争だと思われていた。
しかし、その予想は大きく覆される。
独自開発した特殊弾頭ミサイル、イクリプスの存在。
そして、エース集団、ヴァーゲ隊の活躍によりストマリアは首都陥落まで追い詰められた。
これに対し、ストマリア首脳部は隣国、ナピア共和国、キエマラ連合国に救援を依頼。
戦争は4国(よんごく)を巻き込む大きな戦争と成った。
この混沌を、1人の戦闘機乗りが駆け抜けた。
彼の名は、ベネット・ブラックモア。
彼の軌跡を、私はここに記しておくことにする。
2011年、8月。 ジェフリー・マルク
ベネット :ソラノキセキ 第1話 『始まりの空』
ナレーター:時は5年前にさかのぼる。
ナピア共和国エルエスト海上空。
二機の戦闘機『タイフーン』が編隊を組んで飛行している。
先頭を飛ぶ1番機が、少し後方を飛ぶ2番機へと無線を飛ばす。
ベネット :こちらベネット。エレン、聞こえるか?
エレン :はい。どうしました?隊長。
ベネット :いや、特に何もないんだが。この防空任務、だるくね?
エレン :そんなこといってる場合じゃないでしょう。コレも大事な任務ですよ。
AWACS :こちらAWACS。コールサイン、マッドロック。トーラス1へ。それは命令違反行為をすると言う事か?
ベネット :おいおい、冗談だぜ?本気にすんなよ。マッドロック。
ただこのルーティーン、毎度なにもなさすぎてつまらないんだよな。
ナレーター:一番機のパイロットが軽口を叩いたそのとき、彼の機体のレーダーが4機の所属不明機を捉える。
ベネット :・・・・・あ?なんだ?レーダーの故障か?おい、アイリス。そっちどうだ?
エレン :こちらにも反応があります。マッドロック。今日の予定に戦闘訓練はありましたか?
AWACS :まて、確認を取る。・・・・・。いや、その予定は無い。交信を試みる。
当空域を航行中の所属不明機に告げる。貴隊の所属と航空目的を伝えよ。くりかえす、貴隊の所属と航空目的を伝えよ。
目的と、所属が分からない場合、こちらは貴隊を敵と見なし攻撃行動に移行する。
ベネット :おいおい。返事はどうした返事!撃墜するぞ?
AWACS :トーラス1。確認が取れるまで攻撃は許可できない。待機せよ。
ベネット :はいはい。了解。
エレン :戦闘準備。入ります。
ベネット :エレン。先走るなよ?国家問題にしたくないからな。
エレン :隊長こそ、先走らないで下さい。
AWACS :交信がない。本部に確認を・・・。
ナレーター:無線に音声が割り込まれる。それは、所属不明機のパイロットによるものであった。
ガンス1 :作戦行動開始。ガンス1から各機。攻撃に移れ。ガンス3・4は散開。敵2番機に付け。2は俺と共に1番機を落とす。
ガンス3 :ガンス3、了解。行動に移る。ミサイルロック解除。
エレン :混線!?
ベネット :なんかこっちを撃ってくるみたいなんだが?
AWACS :攻撃許可はできない。確認をとる。
ベネット :もう、十分だろ!
ガンス3 :接敵する。攻撃開始。
ナレーター:所属不明機が真正面に来た瞬間。相手は機銃を掃射してきた。その攻撃を間一髪でかわし、トーラス隊の2機はすれ違う。
エレン :撃ってきた!
AWACS :トーラス隊!回避!これより未確認機を敵性勢力と断定。攻撃を許可する。
ベネット :遅いっ!2機にケツに付かれてる!
エレン :援護します!
ナレーター:統率の取れた敵の航空隊は2機ずつに分かれ、トーラス隊の2機に襲いかかる。
ガンス1 :相手はたった2機だ。落とせ。
ガンス3 :了解。追い立てます。
エレン :くっ!周り込まれたっ!
AWACS :本部より入電。敵勢力、キラオ帝国機と判明。キラオから先刻、宣戦布告がなされた。
ベネット :遠慮せずに落とせってか?それを早く言えってんだ!
ガンス1 :ロックした。ミサイル発射。
ベネット :くそっ!アラートっ!
エレン :隊長!右に旋回!回避をっ!
ベネット :ぐっ!・・・回避成功!
ガンス1 :ミスショット。ちょろちょろとかわすヤツだな。
ベネット :あまり俺らを嘗めるなよ!?
ナレーター:トーラス隊の1番機は食い下がる2機を振り切るために、急に速度を落とし、わざと自機を追い抜かさせる。
ベネット :後ろを取ったぜ!
ガンス1 :ガンス2。旋回だ。俺が援護する!
ベネット :おせぇっ!
ナレーター:1番機の機銃が火を噴く。回避が遅れた敵の2番機は、自身の破片をまき散らせながら海へと墜ちてゆく。
ガンス1 :ガンス2!脱出しろっ!・・・くそっ!やられたか!各機、体勢を立て直す。ガンス3、4。2番機を牽制しつづけろ。
ガンス3 :ウィルコ。
ベネット :ちっ!1機落とされて本気になりやがったな!
エレン :隊長!援護します!
ナレーター:敵の攻撃が薄くなったトーラス隊の2番機は、1番機の後ろに付こうとする敵を引きはがそうと食らいつく。
ガンス3 :やらせない!
エレン :敵のマークが苦しいっ!
ベネット :ちっくしょう!アラートがうるせぇ!ピーピー鳴りすぎだ!
AWACS :トーラス各機。基地からの救援は認められない。持ちこたえられるか?
ベネット :ちっくしょう!やってみる!
AWACS :任せたぞ。
ガンス3 :後ろを取った!
ナレーター:敵、2機がトーラス2の後ろを取る。機関銃が届く距離に近づいた瞬間、前方にいたトーラス2が後方へ宙返りをする。そして、一瞬で攻守が反転する。
エレン :フォックス2。発射。
ナレーター:2番機が放ったミサイルは白煙を上げ、一直線に敵機の4番機へと向かい、着弾。炎に包まれ墜ちる4番機。
ガンス3 :ガンス4が墜ちた!落下傘確認できません!・・・くっ!こっちに来た!振り切れない!
エレン :なかなかやります。この敵機!照準がさだまらないっ!
ガンス1 :ちっ!こいつら、手練れだ・・・・・手強い。
ベネット :くっそ!らちがあかねぇっ!
AWACS :もう少しだ。粘るんだ、トーラス隊。
ベネット :わかってる!・・・・!?ミサイルアラート!?どこからだっ!
AWACS :注意!海上にも敵は居るようだ!トーラス1、回避!
ベネット :くっ!まじかよっ!フレア射出っ!
ナレーター:船から放たれたミサイルを攪乱させるため、トーラス1は熱源をはなつ。放たれた熱源に誘われたミサイルは別方向へ飛んでいく。
ベネット :あっぶねぇ・・・。ミサイル回避。
ガンス1 :来たな。・・・ガンス3。「対象」が戦域離脱した。。この2機は放っておけ。帰還する。
ガンス3 :了解!回避機動を取り合流します。
ベネット :逃がすかっ!トーラス2!行く手を阻め!
エレン :了解!
ガンス3 :挟まれたっ!?ロールして低空へ逃げます!
ベネット :読めてるんだよ。撃ち落とすッ!
ガンス1 :ガンス3、右に回避っ!後ろだっ!
ナレーター:敵隊長機がそう言うより早く、トーラス1の機銃が敵機の機体に穴を空ける。
ガンス3 :被弾したっ!飛行維持・・・できません!
ガンス1 :脱出しろ!ガンス3!
ガンス3 :畜生っ!脱出レバーがッ!うあぁぁぁぁっ!
AWACS :敵1機、撃墜を確認。
ガンス1 :やられたのかっ!?
ベネット :後1機だ!
エレン :追い立てます。
AWACS :敵機空域を離脱。深追いはするな。戦闘終了。よくやった。基地に帰投しよう。
ベネット :了解。帰投進路を取る。なぁ、マッドロック。頑張ったご褒美はくれねぇのか?
AWACS :後でホットウィスキーを奢ってやる。調子にのって墜ちるなよ?
ナレーター:戦闘が終わり、2人の乗る機体は先程の混戦とは打って変わり悠々と基地へ帰って行く。
2人が基地へ戻ると、基地司令からの出頭を命じられた。
司令室の中には、机につき書類整理をしている人物が1人。
いかめしい顔つきで書類に目を通している。
ベネット :失礼します。ケンブル司令。お呼びですか?
ケンブル :ああ、良く帰ってきた。ベネット君、エレン君。まぁ、楽にしたまえ。・・・さて、君たちを呼んだ理由は分かっているな?
ベネット :さっきの戦闘のことですか?
ケンブル :そうだ。君たちが戦闘を開始した直後、キラオが我が国にも宣戦布告してきた。
どうやら、彼らはストマリアに協力する我々が疎ましいようだ。呑み込むつもりで来ている。
ベネット :はぁ?まだ戦争状態じゃないか。良くこっちまで手を回せるな。
エレン :制圧した基地から飛ばしてきたのでしょうか?先程の戦闘機は。
ケンブル :おそらくな。向こうの事情はともかく、この国もこの戦争に軍事介入することになった。
そして、この基地は今日をもって、敵国、キラオ帝国に一番近い最前線基地となった。
君たちが一番の戦争経験者となったわけだ。これからも、奮戦を期待する。
ベネット :了解。
エレン :了解しました。
ケンブル :そうだ。それと、今は居ないんだがこの人物を紹介しておく。ジェフリー・マルク。うちの基地に新しく来る従軍記者だ。
ナレーター:ケンブルが差し出した書類には、どこか頼りなさげに写っている人物の証明写真と略歴が載っていた。
ベネット :こんな時期に、新米の従軍記者ですか?
ケンブル :上層部が、内閣のお偉方にごねられて受け入れたようだ。どうも、戦争の気運を高めるために必要らしい。
エレン :理解しかねます。
ケンブル :全くだ。とりあえず、彼が明日からやってくる。いろいろと聞き出されるだろうが、多くは語らなくて良いからな。
エレン :分かっています。機密は保持します。
ケンブル :エレンは心配していないが・・・。
ベネット :俺かよ!大丈夫だっての。
ケンブル :冗談だ。まぁ、頭のすみにでも置いておいてくれ。私から以上だ。
ベネット :了解。・・・あ、そうだ司令。俺の機体、なんか調子が悪いんだ。
ケンブル :それは整備兵に言え。わざわざなぜ私に言う。
ベネット :だってよ、あいつら無視してくるからさ。
ケンブル :無視と言うより、お前がいろいろと無理難題をふっかけるからだろうが。
エレン :たしかに。
ベネット :そうかぁ?んな事無いだろ。フラップ板(ばん)の動きだったり何だったりくらい。
ケンブル :正常のときにもあれこれ言ってるのが厄介なんだろう。少しは慎め。さっきのことは言っておくから。
ベネット :はいはい。わかったよ。
ケンブル :では、他に無ければ解散。次の指示があるまで待機。
エレン :はい。では、失礼します。
ベネット :了解。
ナレーター:次回予告
ケンブル :私の出番少なくないか?
ベネット :ここで自分の出番を増やす訳か。
エレン :仕方ないですよ。ま、次回くらいは増えるんじゃないですか?
ケンブル :うむ、そうだな。新しいキャラにセリフ数を持ってかれないように・・・。
ベネット :次回 ソラノキセキ 第2話 記者
ケンブル :もっていかれただと!?
エレン :気を落とさずに、司令。
というわけで、次回もおたのしみに。
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