シガレット・キス

茅町 友香(かやまち ゆか)
吹屋 亮平(ふきや りょうへい)

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 塾の教員控え室。友香は一人自分の机のPCに向かってタイプしている。


友香:えっと・・・書類はこれでオッケーっと。つかれたー。


 亮平が入ってくる。手には茶封筒。


亮平:うーっす。おつかれ。まだやってたんだ。

友香:あ、亮平じゃない。どうしたの?上がったんじゃなかったっけ?

亮平:そうだったんだけどね・・・。はぁ。

友香:・・・どうしたの?

亮平:いや・・・教科長に呼び出された。

友香:教科長って・・・。大平洋(たいへいよう)?

亮平:うん。大平(おおひら)。

友香:うわ。今度はなにやらかしたのー?

亮平:受講者リストに不備があってさ。それの訂正。

友香:それは大変だ。ドンマイ。

亮平:ついてねぇよ・・・。茅町は?

友香:次の特進クラス志願者の整理。

亮平:今年はどうよ?特進クラス。国立いけそう?

友香:え?むりむり、レベルひっくい。もう、だめだめ。公立に入れる(いれる)のがやっとかな?

亮平:不作ですなぁ・・・。

友香:そっちはどうよ?総進コースは。

亮平:賢いヤツらは私学にびゅんびゅんで入れるな。ぎり公立いけるかなって?その他は知らん。

友香:志望校に行ける子は10人くらいか。大学受験。

亮平:そうなるな。ったく。こちとら命削って教えてんのに、あいつらと来たら・・・。

友香:仕方ないって。昔の私達もあんなんだったんじゃない?

亮平:そうなのかなぁ。

友香:・・・そういえば、私達の出逢いもここだっけ?

亮平:あ?そうだっけ?

友香:忘れたとは言わせないからね?私が総進クラスで、アンタが、亮平が特進クラスだったじゃない。

亮平:あー。そうか、んで、大学も一緒と。

友香:まさかガイダンスであんたが居るとは思わなかったよ。

亮平:こっちとしてもそうだっての。同じ学校。同じ学部っていう驚き。

友香:それで、今じゃ同じ職場って言う。どれだけ腐れ縁なのよ。私達。

亮平:いいじゃねぇか。いざこざ無くいけてるんだし。

友香:確かにね。特進と総進の連携も取りやすくて楽。

亮平:だろ?感謝しろ?

友香:逆にアンタが感謝しなさいよ。・・・それで、提出しなくて良いの?

亮平:するさ。お前もできたんだろ。ついでに持って行ってやるよ。

友香:あー、これ人に渡すなって言われてるから自分で持ってく。待っててくれても良いんだよ?

亮平:それって待ってろって言ってるようなモンじゃないか。まぁ、良いけど。

友香:待ってくれたお礼くらいはするって。・・・遅い。

亮平:あ?なにが?

友香:プリンター。そろそろ寿命なのかな?マリリン。


 年代物のプリンターを指さす。大きな音を立てて動くプリンター。しかし、なかなか紙が出てこない。


亮平:ま、マリリン?

友香:そう。マリリン。このプリンターの名前。

亮平:名前なんかつけてんのかよ。

友香:名前で呼んであげると調子よくなるんだからね?・・・ねぇ、マリリン。もうちょっと頑張ってくれる?

亮平:そんな事で調子良くなったら世話無いって・・・


 プリンターが勢いよく動き出す。紙送りがスムーズになる。


亮平:そんな馬鹿な・・・。

友香:ほら!ほらほらほら!調子良くなったじゃん!良い子ねー、マリリン。
   よし、コレでやっと帰れるー。

亮平:お疲れさん。今・・・。げ、もう日付、変わってるじゃん。

友香:ホントだ。くそー。結局晩ご飯抜きか・・・。

亮平:食べて無いのかよ。

友香:だって、終わらないんだもん。
   もう、今日は直帰して寝ようかなー。(ト。友香、椅子にもたれて伸びをする。)

亮平:じゃあ、なんか食いに行こうぜ?

友香:・・・珍しい。

亮平:あ?

友香:いや、亮平から誘ってくるなんて滅多に無いからさ。

亮平:そうか?そんなこと・・・あるか。

友香:大学の時だって誘ってくれたの片手で数えるくらいじゃん。
   明日は良い事あるのかなー?

亮平:なんだよそれ。

友香:亮平が何か誘ってくれた次の日って良い事があるの。

亮平:なんだそのジンクス。複雑な気分。

友香:悪い事があるよりマシでしょ?

亮平:そりゃあ、そうだけどさ。

友香:さ、そうと決まれば!何はともあれ書類出して帰るぞーっ!

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 場転
 ファーストフード店内、喫煙席。
 机を挟んで向かい合う友香と亮平。
 友香は疲れているのか椅子に身体を投げ出して座っている。
 もくもくとポテトをつまむ亮平。

亮平:で。なんつー格好してんだよ。

友香:え?

亮平:いくら疲れてるとはいえ、それは酷いだろ。

友香:だれも見てないんだし、いーの。

亮平:俺が見てる。

友香:亮平はいい。

亮平:なんだそりゃ。

 溜め息をつく亮平。
 友香は思い立ったかのようにタバコを取り出す。

亮平:まだやめてなかったのかよ。タバコ。

友香:そーよ。ストレスが溜まるとどうしてもね。

亮平:まぁ、分からんでもない。

  亮平もタバコを取り出すが、火が見つからない。

亮平:・・・なぁ。火貸してくれない?

友香:あ、ごめん。マッチ今の一本で無くなった。

亮平:マジかよ。というか、マッチ派なのか。

友香:おいしいじゃん。・・・コレじゃだめ?

亮平:いいけどさ。シガレット・キスかよ。

友香:私じゃ嫌?

亮平:そうじゃねーよ。・・・恥ずかしいというか。

友香:あはははは。初(うい)やつじゃのぅ。・・・ほれ。

亮平:・・・おう。

 お互いタバコを咥え、火種を移す二人。

亮平:ありがとう。

友香:んー?顔赤いぞ?

亮平:んなわけあるかっ!照明のせいだ、照明の!

友香:へー、そう。

 (間)

亮平:そういえば。最近どうなんだ?

友香:なにが?

亮平:彼氏だよ。

友香:あー・・・。別れた。

亮平:はぁっ!?

友香:って言ったらおどろく?

亮平:クソ・・・してやられた。

友香:変化は無いよ。良くも悪くも。

亮平:相変わらず仕事人間か。

友香:そう。全く構ってくれない。

亮平:お前も似たようなモンだろ。

友香:私は違うもん。しっかり家に帰って準備万端だもん。

亮平:襲われる準備?

友香:うん。

亮平:あっけらかんと言うなよ。

友香:ごめんって。・・・別れよっかな。

亮平:本気で言ってる?

友香:うん。

亮平:そんなに仲悪い訳じゃないだろ?

友香:やっぱりさ。不安になるよね。私に興味ないんじゃないかなーって。
   シたいときに出来て、それなりに関係性持ててたらそれだけでいい。みたいなさ。

亮平:そんなヤツなのか?

友香:私が一方的に思ってるだけ。
   女の子って男が思ってるよりナイーブなんだからね?

亮平:お前も?

友香:うん。

亮平:うっそだー。

友香:なっ!?ひどい!

亮平:三年目で、次期教科長補佐にリストアップされてる位の『超キャリアウーマン』なお前が、ナイーブとか無い無い。

友香:・・・傷つくなぁ。

亮平:はははっ、わりぃわりぃ。・・・あ。もう2時になるじゃねぇか。

友香:あ。ホントだ。

亮平:お前の家。ドコだっけ?

友香:隣町。駅前のマンション。

亮平:え・・・。ちょっと待て!もう電車ねーだろ!?

友香:そうなるね。

亮平:なに平然と構えてんだよ!

友香:そんな焦らなくっていいでしょ。門限がある訳じゃないし。

亮平:でもなぁ・・・やっぱり気になるというか。

友香:・・・泊めてよ。

亮平:え?

友香:今日泊めて。亮平のウチ。

亮平:え、いや、その。

友香:だめ?

亮平:別にいいけど。あ、でもあれだ。部屋すっごい散らかってるし。

友香:気にしないって。

亮平:あー。えっと。下着とかも転がって。

友香:私が男物の下着見てキャーキャー言う女に見える?

亮平:・・・あー。もう、分かったよ。

友香:やりっ。いろいろ漁ってやろー。

亮平:漁った瞬間たたき出してやる。
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 場転 亮平の暮らすマンション。
 友香を外に待たせたまま、ざっと部屋を片付けていく亮平。


亮平:入っていいぞー。
 
友香:おじゃましまーす。・・・なんだ。案外綺麗じゃん。

亮平:そうか?

友香:そうだよ。

亮平:まぁ、とりあえず座りなよ。

友香:それじゃ、失礼して。

亮平:あ、タバコ吸うときは台所な。

友香:換気扇下?

亮平:ああ、壁紙が汚れるからな。

友香:几帳面だねぇ。

亮平:借家だからなるべく綺麗につかわねぇと。

友香:それもそうか。
 

  会話が途切れる。漫画を読み出す亮平。
  手持ちぶさたできょろきょろと辺りを見渡す友香。
  キッチン近くにリキュールの入った瓶を発見する。


友香:あ。お酒。

亮平:ああ、あるよ。

友香:飲めたっけ?

亮平:一応。昔は下戸だったけど。

友香:だよね。・・・飲みたいなぁ。

亮平:いいよ。何がいい?

友香:え?

亮平:作ってやるよ。カクテル。

友香:作れんの!?

亮平:大学の時、バーテンやってた。

友香:知らなかったー。

亮平:言ってねぇもん。で、何が良い?大概作れるけど。

友香:じゃあね。・・・スクリュードライバー!

亮平:あいよ。待ってな。


 台所に向かう亮平。戸棚から道具を取り出し、手早く作り始める。


友香:へー。いろんな道具出てくるねぇ。というか、それ全部私物なんだ。

亮平:こういうのに凝るタイプなんだよ。

友香:ふーん。なるほど。見かけにはよらないってこのことね。

亮平:見かけと違って悪かったな。ほれ、スクリュードライバー。

友香:ありがと。亮平は飲まないの?

亮平:俺はコレ。

友香:缶ビール?

亮平:うん。

友香:つまんなーい。

亮平:つまんなくて結構。

友香:ふぅ・・・。

亮平:・・・・。

友香:あ・・・。ねぇ。亮平。

亮平:ん?

友香:この部屋にさ。女の子連れ込んだ?

亮平:ぶっ!?

友香:亮平きたなーい

亮平:お前が変なこと言うからだろうが!

友香:だって気になったんだもん。

亮平:なにが?

友香:コレ。女物でしょ?ネックレス。

亮平:あー。こんなとこにあったか。

友香:彼女?

亮平:正式には『元』な。それ、俺がプレゼントしたヤツ。

友香:へー、別れたの?

亮平:先月。

友香:別れた理由は?(ト。友香、TVリモコンをマイクに見立てて)

亮平:音楽性の違い?

友香:どっかのロックバンドじゃないんだから。ほら。

亮平:正直に言うと、お互いに疲れたから。

友香:ほうほう。

亮平:俺もなんだかんだで忙しくてイライラしてたし、向こうも向こうでストレス貯めてて。
   顔合わせりゃ、喧嘩して。もう無理ってなったから、別れた。

友香:なるほどー。では、亮平さんはネックレスを彼女に返すんですか?

亮平:多分、もう会わないだろうし。売るなり何なりするさ。

友香:えー勿体ない。

亮平:じゃあ、やろうか?

友香:それは遠慮する。

亮平:なんで。

友香:私が横取りしたみたいじゃん。

亮平:まぁ・・・そうか。

友香:・・・へぇ。そっか。亮平もいろいろやってんのね。

亮平:相性は良かった方かな。

友香:なに?セックス?

亮平:そうじゃねぇよ!性格面だっての!

友香:ふーん。でも、身体の方だって相性必要よ?

亮平:それは・・・そうだけどさ。

友香:そっちの方はどうだったのさー。

亮平:言うかよ、そんなこと!というか、お前酔ってんのか?

友香:まだ素面(しらふ)

亮平:素面でそんなこと・・・。

友香:女の子でもゲスい話はするんだかれねー?

亮平:舌回ってないぞ?

友香:噛んだだけ!

亮平:はいはい。そうですか。

友香:・・・はぁ。いいなぁ。そう言う事してみたい。

亮平:してないのかよ?いるんだろ?彼氏。

友香:さっきも言ったけど、そんな事とはかけ離れてるの。

亮平:良く続くな。

友香:終わらせたい。

亮平:終わらせちまえよ。

友香:別れたら拾ってくれる?

亮平:さぁ?どうするかな。

友香:そんなんだから相方に逃げられるんだよ。

亮平:にげられてねーし。

友香:にげられてるー。

亮・友:はぁ・・・。

亮平:なんなんだろうな。この関係。

友香:いいんじゃない?気楽じゃん。

亮平:そうだな。

友香:あ。亮平。なんか服貸して。スーツ脱ぐから。

亮平:ああ、いいけど。

友香:後、ハンガーもね。

亮平:了解。ここにあるよ。

友香:ありがとう。よいしょっと。

亮平:これでいいか?部屋着。

友香:ありがとう。え・・・カッターシャツ?

亮平:これくらいしかないからさ。

友香:え?ネタだよね?

亮平:本気。

友香:ジャージは?

亮平:俺が着てるヤツが最後。後は全部洗濯槽で湿ってる。

友香:干しなよ。

亮平:朝弱いからなぁ。俺。

友香:コインランドリーは?

亮平:近くにあるけど、持って行くの怠い。

友香:じゃあ、私の為にコインランドリー行ってきて。

亮平:えー?

友香:えー?じゃない!現実に、彼女でもない女に対して、自分のカッターシャツ一枚しか着せない男がドコにいる!

亮平:はいはい。持って行けばいいんだろ。持って行けば。

友香:分かればよろしい。

亮平:やれやれ・・・。あ、風呂とか使うんなら勝手に使って。タオルはそこの棚の中。

友香:了解。いってらっしゃーい。

 (暗転)
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 (明転)

 朝、ベッドで寝ている亮平。キッチンでタバコを吸いながら料理をする友香。

亮平:ん・・・くあぁぁ・・・。おはよう。

友香:おはよ。

亮平:あー、頭痛い。あれ?・・・何つくってんの。

友香:ホットケーキ。無性に食べたくって。

亮平:ウチにホットケーキミックスってあったっけ?

友香:買ってきた。

亮平:どこで?

友香:下のコンビニ。

亮平:売ってたんだ。

友香:大体売ってるよ?こういうの。

亮平:へー。

友香:亮平の分もあるから。

亮平:ありがとう。

友香:今日は何時から?

亮平:お昼過ぎ。

友香:そっか。じゃあ、私が先か。

亮平:昼の部なのか。

友香:そう。お昼から夜までぶっ通し。

亮平:それは泣けるな。

友香:まぁ、今日を乗り切れば明日は休みだからー。

亮平:お、マジか。俺もだ。

友香:そうなんだ。じゃあ、デートでもする?

亮平:別に良いけど?

友香:やった。暇だったんだよねー。明日。

亮平:構ってくれない彼氏は?

友香:もちろん仕事。だから一日中お家でぐーたらするだけだったの。

亮平:なるほど。

友香:じゃー、どこ連れてってくれる?

亮平:あ?別に考えてない。

友香:そうだ、この間出来たショッピングモールに連れてってよ。

亮平:ん?ああ、あそこか。そんなに面白みある所じゃないぞ?

友香:行ったことあるんだ。

亮平:一応な。塾の広告を貼らせてもらいに行った程度だけど。

友香:なるほどねー。じゃあ、明日は探検だ。探検。

亮平:子どもか。お前は。

友香:可愛げがあっていいでしょ?

亮平:・・・気持ち悪い。

友香:気持ち悪いって非道いなぁ

亮平:いや、お前じゃなくって・・・

友香:え?

亮平:ゴメン。トイレ。

 (亮平、トイレに駆け込む。)

友香:亮平?ちょっと亮平。大丈夫?

亮平:・・・大丈夫じゃないかも(ト、亮祐トイレから出てきて)

友香:もしかして、風邪?

亮平:わからない。

友香:インフルエンザとかやめてよね?移さないでよ?

亮平:そればっかりは病院行かないとな・・・。

友香:ったくもう・・・。じゃあ、今日の仕事休む?

亮平:いや、そういうわけには。

友香:子供らに風邪、もしくはインフルエンザを移すつもり?

亮平:それは、まあ。

友香:大平(おおひら)教科長には私から言っておくから。
   亮平は今日休みなさい!

亮平:お・・・おう。
  
友香:わかったならよろしい。

亮平:・・・すまん。

友香:これくらい良いって。それじゃ、夕方ね。

亮平:おう。行ってらっしゃい。

友香:行ってきます。(ト、友香出て行く。ベッドに腰掛ける亮平)

亮平:ん・・・夕方?あいつここに帰ってくるつもりか?

(暗転)

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(明転)

友香:ただいまー。

亮平:ホントに帰ってきた・・・。

友香:だめ?

亮平:いや、いいけど。というか、今の状態を踏まえたらむしろありがたい。

友香:もっと、褒めてもいいんだよ?

亮平:調子のるから嫌だ。

友香:ケチ。あ、それより、どうだったの?病名。病院行った?

亮平:行った。過労による発熱。プラスおう吐。

友香:・・・風邪じゃないのか。

亮平:そうみたい。

友香:心配して損したー。

亮平:悪かったって。

友香:あ、大平教科長からの伝言。『風邪引くなんて情けない。生徒に移すようなことがないよう明日で治せ。出席停止だ!』

亮平:素直に明日も休めって言えばいいのに。

友香:あれだよ。今流行の『ツンデレ』ってやつだから。教科長。

亮平:おっさんのなんて嬉しくないなぁ。

友香:確かに。さて、亮平は休んでて。ご飯作るから。

亮平:今日の献立は?

友香:インスタント茶碗蒸し!あと、にゅうめん!

亮平:お、おう。なるほど。

友香:消化に良いもの選んだの。

亮平:ありがと。

友香:とは言っても簡単なものだよ。ゆでるだけとレンジで温めるだけだし。

亮平:その心配りで十分。

友香:へへ。

(ト、亮平タバコに火を付けようとする。しかし、ライターオイルが切れる)

亮平:あー。つかねぇ。

友香:ほれ。

亮平:マッチ?買ってきたのか。

友香:私はこっち派だからね。

亮平:ありがたく使わせてもらう。

友香:あ、なんだったら退こうか?

亮平:いや、いい。作ってるの見てる。

友香:湯がいてるだけじゃん。

亮平:いいから。

友香:はーい。

亮平:・・・・。(タバコをふかす)

友香:・・・・。

亮平:友香。

友香:うん?なに、もうできるけど・・・ひゃっ!?。(ト、亮祐、友香を抱きすくめる)

亮平:お腹空いた。

友香:だからもう少しで出来るって!というか何してんの!?

亮平:だっこ。

友香:それはわかってるって!

亮平:良いにおい。

友香:そりゃ、食べ物だし?

亮平:友香が。

友香:え?

亮平:・・・なんてな。ゴメン。離れるか。

友香:そうして貰えるとありがたい・・・かな。

亮平:おう。(ト、亮平離れる)

友香:・・・・。

亮平:いいの?

友香:・・・なにが?

亮平:帰んなくて。

友香:うん。

亮平:彼氏。多分待ってるぞ?

友香:待ってないよ。

亮平:携帯。鳴ってるけど?

友香:え?うそ。

亮平:彼氏から。ほら。

友香:ほんとだ。

亮平:火の番はしとくから。

友香:あ、もう出来たから。先に食べてて。

亮平:おう。(ト、亮平、火を止め、料理を盛りつけ食卓へ)

友香:はい。なに?いきなり電話かけてきて。・・・・うん。そう。
   ・・・いや、そうじゃないよ。同僚が風邪引いててさ。
   ・・・・・・。何今更心配してるの?私が居て欲しいときにいつも居ない癖に。
   
亮平:・・・荒れてんなぁ。

友香:私は居ても居なくても良いんでしょ?自分のしたいことが自由にできるもんね?
   ・・・・そうじゃないって?私といる時はいっつも面白くなさそうじゃない。それで良くそんな言葉が言えたモノね。
   もう、いい。じゃあね。(ト、友香電話切り、部屋へ)

亮平:お帰り。

友香:うん。

亮平:いつもあんなんか?

友香:あ、聞こえてた?

亮平:ばっちりな。

友香:恥ずかしいとこ見せたかな。

亮平:別に。

友香:・・・・・・。

亮平:・・・帰ったら?

友香:え?

亮平:帰ったらどうだ?
   彼氏、待ってたんだろ?

友香:やだ。帰りたくない。

亮平:自分が傷つくからか?

友香:っ・・・。

亮平:別れたくないのはお前の方だろ?自分が傷つきたくないから、別れられない。

友香:そんな事ないっ!

亮平:あるよ。それで、現実から逃げたいからここに居る。

友香:なんで・・・。

亮平:うん?

友香:何で、そんな事言うの?

亮平:事実だから。

友香:・・・・。

亮平:違うか?

友香:亮平の・・・。

亮平:うん?

友香:ばかっ!(ト、友香、亮平の頬を叩いて出て行く。)

亮平:・・・いってぇ。
   何も叩いて行くことはないだろ・・・あ。

(ト、亮平。友香のシガレットケースを見つける)

亮平:ったく。忘れていきやがった。まぁ、気付いたら取りに来るか。

   (間)

亮平:取りに来なかったら、塾で渡せばいい。それに、今俺は病人なんだ!寝てていーの。

   (間)

亮平:あーっ!もう!届けてやるよコンチキショウ!

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 公園のベンチに座る友香。そこへ、亮平が来る。

亮平:やっぱりここか。

友香:・・・・。

亮平:ほれ、忘れモン。つか、電話くらい出ろよ。探したんだからな?

友香:別れた。

亮平:え?

友香:別れたの。彼氏と。

亮平:いつ?

友香:今。

亮平:・・・・・。

友香:しんどい。

亮平:・・・なんか、ゴメン。

友香:謝らないで!
   ・・・逃げてたのは本当なんだし。

亮平:その選択で、後悔はないのか?

友香:無いよ。・・・あるわけ無いよ。

亮平:あるんだな?

友香:・・・・。

亮平:意地張るなって。

友香:張ってない!

亮平:はいはい。無いんだね。

友香:ムカツク。

亮平:俺は案外大人だからな?

友香:慰めてんのかけなしてんのかどっちかにして!

亮平:拾ってやるよ。

友香:え?

亮平:こないだ言ってたろ。それの答え。

友香:こた・・・え?

亮平:あ、もしかして忘れてんのか!?

友香:えっと・・・。ごめん。

亮平:あー。言い損だ。言わなきゃ良かった。(ト、亮平タバコを取り出す。)

友香:・・・ありがとう。

亮平:あん?

友香:言い損じゃないよ?えへ

亮平:・・・・。もしかして、さっきの・・・。忘れたふりか!?

友香:私の方が上手(うわて)だね。

亮平:くっそ。なんだこのもやもや感!

友香:あー。なんか、どうでも良くなってきた。さっきまでへこんでたの何だったんだろう。

亮平:俺のおかげか?

友香:その可能性は45%くらいかな?。

亮平:おい、残りの55%ってなんだよ?

友香:残りは秘密。あ、火貸して。私も吸いたい。

亮平:コレじゃ、ダメか?

友香:シガレット・キス?

亮平:おう。

友香:いいよ。ちょうだい。(ト、両名、顔を近づけて火種を移す)

亮平:・・・顔。赤いぞ?

友香:赤くない!

亮平:赤いな。

友香:夕日の所為!

亮平:そういうことにしておくか。

友香:帰ろう?家。

亮平:明日もあるしな。

友香:風邪を治してからね。

亮平:・・・おう。




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