青き世界で凛と散れ 第一話 その花開く時


三国千尋♀ ミクニ チヒロ 17歳
母親と妹をXX(クスクス)に殺された少女。
根は臆病で弱いが、敵に対する憎しみは強い。
第一話開始段階ではパートナーは不在。


桜庭八重♀ サクラバ ヤエ 19歳
勝気で男勝りな性格、短気だが割りと気は利く。
パートナーは「ブバルディア」花言葉は「夢」「情熱」など。


瀬尾沙耶香♀ セオ サヤカ 21歳
勤勉で真面目、大人しい性格。
パートナーは「ジュグラン」花言葉は「知恵」「知性」など。


野川恵子♀ ノガワ ケイコ 38歳
優しく面倒見のいい性格、部隊の保護者的存在。
パートナーは「マロウ」花言葉は「母の愛」「温和」など。



千尋♀:
八重♀:
沙耶香♀:
恵子♀:




千尋「帰るの少し遅くなっちゃった、お母さん、怒ってないといいけどな、
   っ、何、この音・・・!鳴き声・・・?きゃあ!?何アレ、花の、化物・・・!?
   嘘、待って、そっちはダメ、私の家があるの!くっ!」

千尋「はぁ・・・はぁ・・・、お願い、お願い無事で・・・、っ!?」

(燃え盛る家の中、瓦礫に潰された母と妹の姿)

千尋「お母さん・・・!和美・・・!何で、どうして・・・!
   許さない・・・、あの化物、絶対に許さない!」


恵子「青き世界で凛と散れ 第一話 その花開く時」


八重「は、新人が来るって?」

沙耶香「はい、本日付で着任するようです」

八重「何でまたこの変な時期に?」

沙耶香「この最前戦では常に人不足です、
    人員が増える事には何も疑問はありませんが」

八重「誰か死んで補充ってなら分かるが、他の部隊からもそんな話は聞かねぇし」

沙耶香「確かに、ここ最近は大規模な戦闘もあまりないですから」

八重「希望がありゃ話は別だが、好き好んでこんな場所に来たがる奴なんていねぇだろ」

恵子「その好き好んでこんな場所に来たがる子がいたのよ」

八重「はぁ!?マジで言ってんの!?」

沙耶香「恵子さん、おはようございます」

恵子「おはよー、沙耶香ちゃん」

八重「あ、お、おはよーございます」

恵子「ふふっ、八重ちゃんもおはよー」

八重「ども、ってか、その話、マジで?」

恵子「えぇ、本当よ」

八重「はぁー・・・、そんな死にたがりがまだいたなんてなぁ・・・」

沙耶香「何度も言っていますが私は死にたがりではありません」

八重「はいはい、分かった分かった」

恵子「まぁあんまり詳しい話は聞いてないのだけど、
   みんなより年下ってお話だから、優しくしてあげてね」

八重「あたしより、年下・・・?」

沙耶香「もしかして、高校生ですか?」

恵子「いいえ」

八重「そんじゃ高校出てそのままここに就職って奴か」

恵子「惜しいわね」

八重「惜しい?」

恵子「高校を中退してここに就職よ」

八重「なんて親不孝な・・・」

沙耶香「八重はブーメランがお好きなようですね」

八重「うっせぇ、あたしは好きにしろって言われたから好きなように生きてんだ」

沙耶香「そうでしたね、でも、勿体無いです」

八重「あ、何が?」

沙耶香「本来なら学校で青春を謳歌しててもおかしくないはずなのに」

八重「それを言うならあたしらだってそうだろ、
   ちゃんと進学してれば夢のキャンパスライフだったんだぜ」

恵子「勉強が嫌で進学しなかった八重ちゃんが、
   キャンパスに夢を感じる事があるのかしら?」

八重「あるさ、勉強から逃げたからその夢は手に入らない、それだけだろ?」

恵子「あら、意外、八重ちゃんもお年頃の女の子だったって事ね」

八重「なんか腹の立つ誤解をされてる気がするぞ・・・」

沙耶香「では思ってた通りガサツな女、と言う事ですね」

八重「うっせぇ!それはそれで改めて言われるとダメージ食らうだろうが!」

恵子「ふふふっ、八重ちゃんがいつも通りだと安心するわね」

八重「くそー、新入りが来たらこの立場から抜け出してやるー」

沙耶香「出来るといいですね」

八重「見てろよー、って詳しい話聞いてないって割りに結構知ってるじゃねぇの」

恵子「年を聞いてあら?って思ったからそこだけ聞いちゃったの」

沙耶香「恵子さんらしいですね」

八重「それ以上突っ込まないあたりもな」

(ノックの音)

恵子「っと、噂をすればなんとやら、ね、はーい、どうぞー」

千尋「失礼します、本日付で前線基地ガーデン、第3部隊プランターに配属になりました、
   三国千尋といいます、よろしくお願いします」

恵子「っ、み、くに・・・?」

沙耶香「プランター所属、瀬尾沙耶香です、よろしくお願いします、三国さん」

千尋「よろしくお願いします、瀬尾さん」

八重「あっははは!堅苦しいなぁお前ら!あたしは桜庭八重だ!
   八重でいいぞ、よろしくな、千尋!」

千尋「っ、よろしくお願いします、八重さ・・・」

八重「八重だって言ってんだろ?敬語もいらねぇ、なっ?」

千尋「よ、よろしく、八重」

八重「おう、よろしく!」

沙耶香「それを崩すつもりはないんですね」

八重「当ったり前だろう!妥協したのはお前だけだぞ」

沙耶香「恐れ入ります」

八重「褒めてねぇからな!」

千尋「あの・・・」

恵子「っ、な、何?」

千尋「大丈夫ですか?」

恵子「だ・・・、大丈夫よ、ちょっと調子悪いだけよ、
   私は野川恵子、よろしくね、千尋ちゃん」

千尋「はい、よろしくお願いします」

恵子「ごめんね、ちょっとお手洗い行ってくるからシードの説明よろしく」

八重「あ、恵子!ったく、沙耶香」

沙耶香「はい、見てきます、三国さんのご案内をお願いします」

八重「おうよ」

千尋「大丈夫かな・・・?」

八重「まぁ当人が大丈夫つってたし大丈夫なんだろうよ、
   さっ、行こうぜ、お前の相棒に会わせてやるよ」

千尋「っ、はい」

八重「けーご」

千尋「あっ、うん」

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八重「ここがあいつらの寝床だ」

千尋「寝床・・・?」

八重「あぁ、ビビるんじゃねぇぞ?」

千尋「う、うん・・・」

八重「いよっと・・・、ほら、付いてきな」

(部屋の中には丸まった大きな生物が3体と卵のような物)

千尋「っ、なん、で・・・?」

八重「安心しな、攻撃はしてこねぇよ、なぁブバルディア」

(紅い生き物の頭を撫でる八重)

千尋「なんで化物がここにいるの・・・?」

八重「お前、なんも知らずここに来たんだな、
   誰かに騙されて売られてきたかぁ?」

千尋「違う!私は、自分の意志でここに来たの、その化物たちを滅ぼすために!」

八重「こいつらはあいつらとは違う」

千尋「何が違うって言うの、どう見てもあいつらにそっくりじゃ・・・!」

八重「違うっつってんだろ!」

千尋「っ・・・!」

八重「あぁ驚かせちまって悪かったブバルディア、
   ちぃと話しつけて来るから大人しく待っててくれよ」

千尋「ねぇ・・・、どう言う事なの、説明してよ!」

八重「あいつらはフロース、あたし達が命を預ける相棒だ、
   確かに体の作りは奴らと同じかもしれねぇ、
   だが、ここで戦う以上、あいつらを化物呼ばわりする事は許さねぇ」

千尋「説明に、なってない」

八重「だからあいつらはあたし達と一緒に戦ってくれるって言ってんだ」

千尋「なんで、なんで人間の敵と、化物と一緒に戦わなきゃいけないのよ!」

八重「っ、テメェ・・・!」

恵子「八重ちゃん・・・!」

八重「っ、恵子、なんで止めるんだよ!」

恵子「なんでもよ」

八重「理由は言えねぇってか、ちっ」

恵子「ごめんね千尋ちゃん、あの子血の気多くて・・・」

千尋「いえ、でも私はまだ納得できてません」

恵子「そう、そうよね・・・」

沙耶香「XX(クスクス)を倒すためには、フロースではないといけないからです」

千尋「フロースじゃないと、いけない・・・?」

沙耶香「そうです、人間の兵器では彼女たちを倒す事は出来ません、
    彼女たちを倒すためには、彼女たちの力、フロースの力じゃないといけないんです」

千尋「・・・・・・」

恵子「だから、私たちはフロースたちの中心、
   コアユニットに入らせてもらって戦うの」

八重「分かったかよ、あいつらは相棒なんだ、あたしらの命そのものなんだ」

千尋「嘘だ・・・」

沙耶香「嘘ではありません、残念ながら」

恵子「千尋ちゃん、あなたも彼女たちを倒したかったら、彼女たちの力を借りるしかないの、
   例えどんなに、彼女たちの事が嫌いでも」

千尋「っ・・・!」

恵子「あなたはまだ花を咲かせていないわ、まだ後戻りは出来る、
   だから一日ゆっくり考えて、無理だと思うなら帰りなさい」

千尋「くっ・・・!」

八重「あ、おい千尋!」

恵子「うっ、おぇぇえええ・・!」

八重「け、恵子!?」

沙耶香「っ、大丈夫ですか?」

恵子「げほっげほっ!だ、大丈夫よ・・・」

八重「どっからどう見ても大丈夫じゃねぇだろ!」

恵子「沙耶香ちゃん、お洋服汚しちゃってごめんなさいね・・・」

沙耶香「いえ、私は平気です、それより・・・」

八重「あぁ、何か飲みもん取ってくる!」

恵子「大丈夫だから・・・」

八重「だから大丈夫そうに見えないんだって!」

恵子「・・・マロウの中にいれば平気だから」

八重「お、おう、分かった、運んでやるからじっとしててくれ」

恵子「ごめんなさい・・・」

八重「よいしょっと、沙耶香はあいつに説明してきてくれ」

沙耶香「何をですか?」

八重「結局なんも説明できてねぇんだ、シードがあそこにあるだとか、
   フロースの咲かせ方とかよ」

沙耶香「分かりました、では行って来ます」

八重「頼んだ、ったく、人が増えたら楽になると思ったんだけどなぁ」

(淡いピンクの生き物の所まで恵子を運ぶ八重)

恵子「ごめんなさい・・・」

八重「恵子のせいじゃねぇだろ、おいマロウ、お前の相棒が辛いってよ」

恵子「八重ちゃん、マロウ、ありがと」

八重「おう、これくらいなんて事ないって、そんじゃゆっくり休めよ」

恵子「ありがとう・・・」

(生き物の中心部と一体化する恵子、生き物は身を守るように丸くなる)

八重「はぁ・・・、一体どうなる事やら・・・」

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沙耶香「やっと見つけました」

千尋「っ、瀬尾さん・・・」

沙耶香「説明をしに来ました」

千尋「え?」

沙耶香「花の、咲かせ方の」

千尋「・・・それをしろって事ですか?」

沙耶香「いえ、1日ゆっくり考えて、したいと思ったらしてください」

千尋「もししたくないと思ったら・・・?」

沙耶香「私たちは強制しません、・・・えぇ私たちは」

千尋「・・・もしもの時のために教えてもらってもいいですか?」

沙耶香「もちろんです、部屋に、卵のような物があったのを覚えていますか?」

千尋「はい」

沙耶香「あれが彼女たちの種です、ガーデンではシードと、
    呼び方を統一しています」

千尋「シード・・・」

沙耶香「あれに想いをこめながら手を触れるだけです」

千尋「想い・・・・、なんでもいいんですか?」

沙耶香「はい、そうすれば彼女たちは応えてくれます」

千尋「分かりました、ありがとうございます」

沙耶香「いえ、私は言われて伝えに来ただけですから」

千尋「・・・・・・」

沙耶香「では、私はこれで」

千尋「はい・・・」

沙耶香「あ、そうだ、沙耶香で、いいですよ」

千尋「え・・・?」

沙耶香「八重に習ってみようかと、なので名前で呼んでいただけると嬉しいです」

千尋「ぁ・・・、沙耶香、さん」

沙耶香「はい、沙耶香です、ありがとうございます、千尋さん、
    夜は寒くなりますから、暗くならない内に部屋に戻ってくださいね」

千尋「うん、ありがとう」

沙耶香「では」

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(フロースの寝室、シードの前に佇む千尋)

千尋「お母さん、和美・・・、私どうしたらいいと思う・・・?
   二人の仇を討ちに来たのに、その仇に力を借りないといけないなんて・・・」

恵子(XXを倒したかったら、彼女たちの力を借りるしかないの)

千尋「一匹残らず殺してやりたいのに、それが許されないなんて・・・!」

八重(こいつらはあいつらとは違う)

千尋「分かんないよ、違うなんて言われたって、一緒にしか見えないんだもん・・・!」

沙耶香(あれに想いをこめながら手を触れるだけです)

千尋「・・・先に進めば、分かるのかな?」

沙耶香(そうすれば彼女たちは応えてくれます)

千尋「私は、あの化物を殺したい、その為ならなんだって、
   ・・・っ、なんだって!」

(千尋がシードに手を触れるとそれは光を放ち始める)

千尋「うっ、な、なに、これ・・・!わっ!?」

(光が収束し次第に形を成していく、それは周りの3体とよく似た形に)

千尋「あ、あいつらと、同じ形に・・・!っ・・・!
   襲って、こない・・・、ミラビリス・・・?それがお前の名前・・・?」

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恵子「次は、次は絶対守るから・・・、だから私をそんな目で見ないで・・・
   千歳(ちとせ)・・・!」



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