『物玉探偵事務所~ムラサキカガミ~』

[ 所要時間:約??分 ]


《 キャラクター 》

三上 歩  ♂(みかみ あゆむ) …物玉探偵事務所の探偵 年齢不詳
仏田 蓮華 ♀(ほとけだ れんげ)…女子高校生 
マリア   ♀ (まりあ)      …物玉探偵事務所に居る人形 物霊が近くに居る時だけ動くことができる
岡村正樹  ♂(おかむら まさき)…今回の依頼主 19歳
紫鏡    ♀ (むらさきかがみ)  …鏡の物霊

*物霊…ものだま 神鏡…しんきょう
(詳しい設定は小説を書きます…たぶん)



三上 歩  ♂:
仏田 蓮華 ♀:
マリア   ♀:
岡村 正樹 ♂:
紫鏡    ♀:






 事務所の掃除をしている三上、仏田

仏田「どうやったらここまで汚く出来るんですか!」

三上「え、三年程掃除しなかっただけですけど」

仏田「…。一か月に一回ぐらいは掃除してください…」

三上「いやはや、お恥ずかしい限りです」

仏田「はぁ…。こんなに散らかっててマリアさんは何も言わないんですか?」

三上「マリアさんの周りは、しっかり片付けています」

仏田「あの綺麗な部屋はマリアさんの部屋だったんですね…」

三上「部屋も可愛くしてありますし、マリアさん専用のショーケースもあります」

仏田「そのこだわりを少し面会室とかにも分けて上げて下さい…」

三上「自分の部屋や事務所には興味がありませんからね…」

仏田「はぁ…この人は…。何でこんなに物がたまるかなぁ…」

三上「事件の依頼物などを引き取っているからですね」

仏田「え…捨てちゃえばいいじゃないですか?」

三上「そんな簡単に捨てられないんですよ。人形達と一緒ですね」

仏田「あ…。そっか、そうですよね…。」

三上「そういえば、今日はメリーさんの姿が見えませんがどうしたのですか?」

仏田「掃除するからって家に置いてきたんです。汚くなっちゃうと困りますから!」

三上「わかります。私もマリアさんが汚れては困ると思って胸の内ポケットに入れてあります」
(胸の内ポケットからマリアを取り出す)

仏田「…正直に言っていいですか?」

三上「はい」

仏田「気持ち悪いです」

三上「そんなことはないはずです!ね、マリアさん!」

仏田「心なしかマリアさん震えてるじゃないですか!」

三上「気持ち悪くないですよね!マリアさん!」
(マリアを撫でまわす三上)

仏田「やめて!マリアさん動けないからって撫でまわさないで!可哀想だから!」

三上「可哀想とは何ですか!マリアさ…」

 三上の顔面を思いっきり殴るマリア
 SE:殴る音

マリア「気持ち悪いっ!」

仏田「あれ?」

マリア「あら?」

三上「い、痛い…あ、あれ?」

マリア「私、なんで動けるのかしら」

 SE:ノック音

マリア(タイトルコール) 「『物玉探偵事務所~ムラサキカガミ~』」

 紅茶を淹れている三上

三上「どうぞ。…私が探偵の三上と申します。こちらが助手の仏田君です」

仏田「え、私いつから助手になったんですか」

岡村「…ありがとうございます。僕は岡村です、よろしくお願いします。…あの…こちらは都市伝説や心霊現象などの事件も受け付けてらっしゃるんですよね…?」

三上「うちの事務所はいつからそっち方面で有名になったんでしょうか…。本当は少し違うんですが…ともかく、お話お伺いしてもよろしいですか?」

岡村「はい…。…この間、僕の姉さんが自殺したんです…」

三上「…自殺ですか」

岡村「自殺する少し前から、姉さんの様子がおかしかったんです」

三上「様子がおかしかった、というと?」

岡村「朝から晩まで独り言を呟いていたんです…。"ムラサキカガミ"、"ムラサキカガミ"、と」

仏田「ムラサキ…カガミ?」

岡村「はい…。葬儀の時に棺の中を覗いたら紫色の鏡が置いてあって…。これはあの話じゃないかって…
   もしそうなら、鏡を供養してもらおうと思って…」

三上「なるほど…。お姉さんは都市伝説の"ムラサキカガミ"に殺されたと思ってらっしゃるんですね」

岡村「はい…」

仏田「三上さん。その"ムラサキカガミ"ってなんですか?」

三上「"ムラサキカガミ"というのは都市伝説の一種です。"ムラサキカガミ"で語られているお話は二種類あります
   一つは、間違って鏡に紫の絵の具を塗ってしまい、いくら拭いてもその絵の具が取れることなく、その子は病気になり亡くなってしまう」

仏田「もう一つは?」

三上「"ムラサキカガミ"という言葉を覚えていた人が、20歳の時事故に遭って亡くなってしまうお話です」

仏田「まさか、お姉さん20歳なんてことありませんよね…?」

岡村「…20歳です」

仏田「え…きっと偶然ですよねぇ…三上さん?」

三上「いや、偶然ではないと思いますよ。岡村さん…今、その鏡持っていますね?」

岡村「え、あ、はい…持ってきてます」

三上「では、その鏡を引き取らせて頂いても構いませんか?」

仏田「え!?」

岡村「本当ですか?!」

三上「はい、ですが一つお願いがあります」

岡村「なんでしょう…」

三上「明日必ずこの事務所に来て頂けませんか?」

岡村「そんなことでいいんですか?」

三上「はい、構いません」

岡村「わかりました!約束します!」

三上「ではこの後、鏡の供養をさせて頂きます。供養している最中に何があるかわかりませんので今日はお帰り頂いてもよろしいですか?」

岡村「はいわかりました。よろしくお願いします」

三上「また明日、お待ちしております」

 岡村、部屋から出ていく
 
仏田「…どういうことなんですか?」

マリア「あの岡村ってヤツが嘘言ってるからよ」

仏田「あれ、マリアさんの声がする…?」

マリア「…こいつの内ポケットよ…」

仏田「…ご愁傷様です。嘘ってどうゆうことですか?」

三上「"ムラサキカガミ"の話では鏡は見つからないんです」

マリア「葬儀の時に棺に入れてあげようとするんだけど、いくら探しても見つからないのよ」

仏田「そうなんですか…」

マリア「後々見つかるんだけど、鏡は亡くなった人から恨まれていた人のもとから見つかるのよ」

仏田「と、いうことはつまり…」

三上「あくまで仮説ですが、岡村さんはお姉さんに恨まれていたのではないでしょうか」

仏田「そんな事するような人には見えませんでしたけど…」

三上「人を見かけで判断してはいけませんよ」

仏田「あぁ…。目の前にその言葉が当てはまる人がいた…」

マリア「ま、本当にどうかは当事者に聞くのが一番早いわね」

三上「そうですね。…では始めましょうか」

仏田「何を始めるんです?」

マリア「まぁ、見てなさい」

 紫鏡を机の上に置く三上
 三上は鏡に喋りかけたりしている
 それを見ている仏田、マリア

仏田「…何してるんですか?三上さん」

三上「ふむ…。話を出来る状態ではなさそうですね」

マリア「主人が死んだ理由にされたのよ。そりゃぁ喋りたくないでしょうね」

仏田「え?話についていけないんですけど!」

三上「蓮華さん、メリーさんの事件の時覚えてますか?」

仏田「覚えてますけど…それとこれと一体何の関係が…?」

三上「あの時はメリーさんと会話することが出来ましたよね、あれは何か伝えたいというのが物霊にあったからです」

仏田「それじゃあ今回は…」

三上「何か伝えたいという意思がない以上、会話は無理でしょうね」

仏田「じゃあどうするんですか?」

三上「物霊に無理やり喋らせます」

仏田「どうやってですか?」

三上「…見ててください」

 マリア、鏡の上に馬乗りになっている
 三上、鏡から少し離れる

三上「マリアさんは少し特殊な物霊なんです」

仏田「特殊な物霊…?他の物霊がいないと動けない以外にも何かあるんですか?」

三上「えぇ。実は…」

仏田「魔法が使えたりするんですか!」

三上「いえ、そのようなファンタジーな能力はありません。ただ…」

仏田「ただ…?」

マリア「うぉらァッ!」

三上「物霊自体に触れることが出来ます」

 マリア、何度も拳を振りおろす
 SE:衝撃音

仏田「『触れることが出来ます。』って!思いっきり鏡ぶん殴ってますけどぉおお!」

三上「あれは鏡を殴ってるのではなくて物霊に気合を入れているんです」

仏田「猪木さん方式!?人形が鏡をぶん殴る衝撃映像みたいになってますよ!もう少し優しい方法ないんですか!?」

三上「あれでも優しく殴ってると思いますよ」

仏田「あれで!?物を壊そうとしてるホラーな人形にしか私には見えないんですけど!」

三上「まぁ、殴るのは楽しいのでしょうね。ストレス発散になりますし、あのマリアさん可愛いですし」

仏田「楽しんじゃダメでしょ!そんなとこで発散しちゃダメでしょ!あれを見て可愛いと言える三上さんは凄いですね!」

三上「えぇ。マリアさんは何しても可愛いですから」

仏田「もう勝手にしてください。私は貴方を殴りたいです!」

マリア「あら?女の子がそんなことしちゃいけないわよ?」

仏田「鏡を本気で殴っちゃうフランス人形には言われたくないです!」

マリア「本気じゃないわよ」

仏田「突っ込むとこそこですか!?さっきまでの真面目な空気返してください!」

三上「私達は至って真面目ですよ」

マリア「本気で殴ったら鏡壊れちゃうわよ。壊れちゃったら聞けないでしょ?」

仏田「あぁ…だんだん鏡が可哀想に見えてきた」

紫鏡「さっきからドンドン…何?」

仏田「え!あんだけ殴られたのに普通だ!」

三上「物理的に殴ってるわけじゃないですからね、文字通り気合を入れているみたいな物ですよ」

マリア「喋ったわね。さ、話を聞かせてもらいましょうか」

仏田「でも、あんなにボコスカ殴られたら話す気なくなりそうだな、ハハハ」

三上「鏡の物霊さん、少しお話聞かせてもらってもよろしいですか?」

紫鏡「…嫌」

マリア「はぁ?別にまた閉じこもっててもいいけど。あんたを大事にしてくれた人、あんたの仕業で死んだことになってるわよ。それでもいいの?」

紫鏡「…私のせいじゃないのに…。アイツのせいなのに」

三上「それなら話して頂けませんか…?貴方の仕業で終わらせたくはないのです」

紫鏡「…ちょっと考えさせて。…わかった。喋る。その代りちゃんと真実を突き止めてくれます?」

三上「約束致します」

紫鏡「なら…。…私はもとは奈津美のお母さんの鏡だったんだ…。それ知っていたアイツはある日、奈津美への嫌がらせに私に紫の絵の具を塗ったの。
   帰って来て私を見た奈津美は凄いショックを受けてた…。ショックを受けてる奈津美にアイツはこう言った…『姉さん、"ムラサキカガミ"って知ってる?』」
   
三上「…」

紫鏡「今までどんなに嫌がらせを受けたって奈津美は耐えて来た。私に向かって何度も言ってた…。『負けないで、きっといつか解り合えるから』って…。
   そんなのを十何年続けてた奈津美の精神はボロボロだったと思う…。20歳になる直前だった奈津美はアイツの話を本気にしてしまった。それから奈津美は…」

仏田「…」

紫鏡「私が奈津美を見たのはここまで…。アイツが私を隠したから…。次に奈津美を見たのは棺の中だった」

仏田「じゃあ…やっぱり…」

三上「岡村奈津美さんが亡くなったのは、"ムラサキカガミ"の都市伝説が原因ではなく弟さんが原因だと思ってらっしゃるんですね」
   
紫鏡「…はい」

三上「となると、私の推理は外れたことになりますね…」

マリア「あんたの推理当たった事ないじゃないの」

仏田「え…それって探偵としてどうなんですか」

三上「…」

紫鏡「…」

マリア「ま、あんたの仕業じゃなくてよかったわ。もしそうだったら壊さなきゃいけなかったし」

三上「明日岡村さんに本当のことを聞いてみましょう。それを聞いたら鏡の物霊さん、後は貴方にお任せします」

仏田「ちょっと三上さん!?」

マリア「私も賛成。ぶっ殺しても構わないわ」

仏田「マリアさんまで!」

紫鏡「…いいのですか?」

三上「えぇ、どうぞお好きになさって下さい」

紫鏡「わかりました」

仏田「…どうなっちゃうんだろう、明日」

三上「あ、蓮華さん。貴方もお仕事がありますよ」

仏田「え?私なんかするんですか?」

三上「それはですね…」

 次の日机の左側に 三上 仏田
      右側に 岡村
      テーブルの上に マリア 鏡 が置いてある

三上「…それで鏡ですが、私共で処分して構わないということでよろしいですか?」

岡村「はい!大丈夫です。どうもありがとうございます!」

三上「…岡村さん」

岡村「何ですか?」

三上「ムラサキカガミの語源って知ってらっしゃいますか?」

岡村「え…都市伝説じゃないんですか?」

三上「お話させて頂いて構いませんか?」

岡村「いきなりですね…じゃあ少しだけ」

三上「ではお話させて頂きます。日本人は昔から鏡を神聖な物として扱って来ました。
   その歴史は天照大神から頂いた"神鏡"や、古墳時代、卑弥呼が魏の国からもらった"銅鏡"など。
   村の祭りごとの時に鏡を祭り一年の平穏や豊作を祈ったのです」

岡村「…?」

三上「そのためか、鏡がない村と鏡がある村同士での鏡の奪い合いなども起こりました。
   その頃から鏡は神聖な物であると同時に不吉な物となってしまったんです」

岡村「あの…"ムラサキカガミ"の話ですよね…?」

三上「気づきませんか?"ムラサキカガミ"の本当の名前に」

仏田「あ…」

岡村「…《村裂き鏡》…」
    
三上「そう。"ムラサキカガミ"の語源は"村を裂く鏡"と書いて"村裂き鏡"…。
   村や家族、兄弟を分けてしまう鏡。というのが本当の意味です。貴方とお姉さんのようにね」

岡村「え?」


マリア「鏡はその名前にずっと悲しんできた。自分が原因で人同士が争う姿なんて見たくないものね。
    鏡は人の幸せを受けるもの。そして、人の真の姿を映す物。あんたみたいな汚い人間も映し出してくれるのよ」

岡村「人形…?」

三上「紹介が遅れましたね。こちらはフランス人形のマリアです」

岡村「一体…どうゆうこと…?」

マリア「大切にされた物はね、人の心が宿るの。その鏡も大切に使われて来たのよ。
    あんたはそれを穢した。私はあんたを許さない」

岡村「なんで人形が動いて…」

マリア「あたしのことなんてどうでもいいの。あんたが見なくちゃいけないのはその鏡よ」

紫鏡「…お前が憎い」

岡村「…鏡が?!」

紫鏡「…私はお前が憎い」

岡村「ひっ…助けてっ…」

紫鏡「殺してやる…」

岡村「あ、あんた達お金払ったじゃないか!僕を助けろっ!」

三上「私は探偵です。事件の解決が仕事なので貴方を助けるのは依頼に含まれてません」

岡村「嫌だっ…神様っ…!」

マリア「九十九の神にでも祈るのね」

紫鏡「死ね…」

岡村「うわああああああああああ!!」

仏田「待ってくださいっ!」

紫鏡「…?」

岡村「ひぃっ…ひっ…」

仏田「まだ岡村さんが奈津美さんを自殺に追い込んだとは限らないじゃないですか!」

マリア「蓮華…あんた何言ってんの?」

仏田「本当に自殺に追い込んだとしても!…もしかしたら、後悔してるかも知れないじゃないですか!」

紫鏡「コイツは、奈津美を追いつめた!それは変わらない!」

仏田「岡村さん…。本当は後悔してるんですよね。じゃなかったらわざわざこんな所に鏡を持ち込んだりしませんもんね」

岡村「え…は…いや…その…」

仏田「岡村さん、その鏡さんから話は聞いています。そして鏡さんから見た貴方も知ってます…。全て正直に話してくれませんか?」
  
紫鏡「…」

仏田「お願いします!岡村さんっ…」

岡村「…。…何も言い訳は出来ません…。聞いたことはたぶん全部本当だと思いますし、やってないと言うつもりもないです」

仏田「…岡村さん」

岡村「…でも。事故だったんです。たまたま紫の絵の具が姉さんの鏡にかかってしまって、擦っても擦っても落ちないからなんとか言い訳しようと思って"ムラサキカガミ"の話を出しただけなんです!」

紫鏡「嘘だ!いつもの嫌がらせみたいにお前はわざと私に絵の具をかけたんだ!」

岡村「…嫌がらせ?僕は姉さんに嫌がらせなんてしたことないですよ!」

仏田「鏡さんの話だと、お姉さんは岡村さんに嫌がらせを受けていたと…」

岡村「したことないですよ!姉さんが学校や会社のことで悩んでるのは知ってましたけど…。僕は嫌がらせなんてしたことないです!」

三上「もしかしたらお姉さんが鏡さんに向かって言ってたのは、学校や会社の事だったのかもしれませんね…」

紫鏡「もしそうだとしても、コイツが奈津美を追い詰めたのは変わらない!」

岡村「…」

三上「…では、何故隠していた鏡を棺の中に入れたんですか?」

岡村「…あの時は姉が死んだのを自分のせいにしたくなくて必死だったんです…。
   鏡が棺の中から出てきたら"ムラサキカガミ"の都市伝説に殺されたんだと皆思うかなと思って…」

マリア「責任から逃れるために都市伝説を使ったわけね。最低よアンタ」

岡村「…ごめんなさい」

紫鏡「…じゃあ本当にわざとやったわけじゃないの?」

岡村「本当にわざとじゃない!事故だったんです!姉さんは唯一の家族だったから…ごめんなさい…姉さん…」

マリア「あんたがやったことは事故だったかも知れない。でも、自分の責任から逃れたためにこうなってしまったの。本当に償う気持ちがあるならちゃんと罪を背負って生きなさい」

岡村「…はい」

マリア「それでいいわよね?紫鏡」

紫鏡「…うん」

三上「これで事件解決ですかね?」

マリア「ま、とりあえずってとこだけどね。ほら、なんか言うんじゃないの、岡村」

岡村「…迷惑かけてすいませんでした…。三上さん、仏田さん、マリアさん。ありがとうございました」

仏田「いえ…!私は何も」

岡村「それと…。姉さんの鏡さん…本当にごめんなさい」

紫鏡「…」

岡村「……そろそろ失礼します。姉さんの墓前でしっかり謝ってきます」

三上「では駅までお送り致しますよ」

仏田「私も行きます!」

マリア「ちゃんと見張ってるのよ。駅のホームに飛び込まれたりされたら寝起きが悪いものね」

仏田「縁起でもないこと言わないでくださいよ、マリアさん!」

岡村「大丈夫です。姉さんの分もしっかり生きて行きます」

マリア「ん。じゃあ大丈夫ね」

 三上、仏田、岡村 事務所から出て行こうとする
 岡村、鏡を持って帰ろうと振りかえる

岡村「あ…姉さんの鏡…」

紫鏡「…私は、行けない」

岡村「そっか…そうだよね」

紫鏡「…」

岡村「ごめんなさい…ありがとう」

 三上、仏田、岡村、事務所から出て行く

紫鏡「…すっきりしました」

マリア「そりゃよかったわね。それにしてもあんた芝居下手ねー。バレるんじゃないかと思ってヒヤヒヤしたわ」

紫鏡「大丈夫ですよ。いきなり鏡が動いて『殺してやる』なんて言ったら誰でもビックリしますって」

マリア「ま、それもそうね。」

紫鏡「あの時点では本当に殺しちゃっても良かったんですけど…」

マリア「笑えないわよ、それ」

紫鏡「あはは!ですねぇ!」

 紫鏡、何か意を決する

紫鏡「あのマリアさん…お願いがあるんです」

マリア「は?嫌よ」

紫鏡「まだ何も言ってないじゃないですか」

マリア「何言うかくらいわかるわよ。何年あんたみたいなの見て来たと思ってるの」

紫鏡「だったら!」

マリア「嫌よ。…それしか道はないの?」

紫鏡「…はい」

マリア「…。…あっちに行けるかはわからないわよ?私達は普通の霊魂じゃないんだから」

紫鏡「大丈夫ですよ。私は神聖な鏡の物霊ですから」

マリア「言うじゃない」

紫鏡「…怖いのでハッタリです」

マリア「嘘よ。たぶん大丈夫よ、アンタならきっとお姉さんに会えるわ」

紫鏡「…そうだと、いいんですが」

マリア「私が大丈夫って言ってるんだから大丈夫。…それじゃあ行くわよ」

紫鏡「…はい。今度は本気でお願いします」

マリア「いくわよ…。せぇえのッ!」

 マリア、拳を振りおろす
 SE:鏡が割れる音

紫鏡「マリアさんって本当に怪力ですね」

マリア「褒めてるのそれ?」

紫鏡「褒めてますよ!……ありがとう」

マリア「礼なんか言うんじゃないわ」

紫鏡「最後までお世話になっちゃってごめんなさい。…皆さんにもお礼言っといてください」

マリア「はいはい。…さ、奈津美さんが待ってるわよ」

紫鏡「…はい。ねぇマリアさん」

マリア「何よ」

紫鏡「本当は優しいんですね」

マリア「はぁ?あたしがいつ優しくしたのよ」

紫鏡「ずっとですよ、ずっと。ほら、そうやって私達のために泣いてくれる所とか…」

マリア「人形が泣くわけないじゃない」

紫鏡「ふふふ…。ありゃ…そろそろ時間みたいです。…さようならマリアさん。マリアさんが私達のために泣いてる姿はまるで…」

 間
 紫鏡、喋らなくなる

マリア「…マリア様みたい…か…。…。全く…後味悪すぎよ…馬鹿」





Written by お風呂

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