宮華学園・学園祭 「冬が来る前に…」
春原 花梨 | ♀ | (すのはら かりん) |
夏祭 壱悟 | ♂ | (かさい いちご) |
秋野 発幸 | ♂ | (あきの はつゆき) |
花梨N「…絶対に…アイツは手をあげる…」
壱悟 「はーい!はいはいはい!はーい!!」
花梨N「きた…さぁ次は私の番よ春原花梨!」
壱悟 「壱悟!立候補しまーす!」
花梨N「これを逃したら次はない…今まで臆して何も出来なかった私は今日でさよならだ…
高校最後の思い出作り…まさにラストチャンス…さぁ…手をあげろ春原花梨!」
花梨 「は!はいぃ!!…あ、あの!え、えぇっと、その、す、春原花梨!文化祭実行委員に…立候補します!!」
花梨 「冬が来る前に…」
発幸 「はぁ…お前さぁ…なんであんなメンドイのにわざわざ立候補するかなぁ…
しかもその後の実行委員会議で副委員長に抜擢されるとか…」
花梨N「この盛大に溜息をつき、全身から気だるげなオーラを出しているのは宮華学園、3年D組、秋野発幸、俗に言う幼馴染という奴だ。
何を考えているか全く分からず、幼馴染の私でも未だに謎が多い。背が高くバスケットボール部に所属していたがすでに引退。
部員の中でも群を抜く実力だったらしいのだが…そのやる気のなさに半幽霊部員となっていたそうだ…
彼いわく「好きな時にバスケできたらいいし」との事…それ故にすでに引退しているにも関わらず普通に部活に顔を出している…
ご愁傷様、後輩君達…」
花梨 「う…うっさいわね!なんとなくよ!なんとなく!!」
発幸 「とか言って…どうせアイツがまた立候補してくるの分かってたんだろ?
ガキの頃からこういうお祭り騒ぎに限って、アイツは実行委員とかメンドイもんに手出すからなぁ…」
花梨 「…そ…そんな事ない…わよ…」
発幸 「はいはい、そんで、結局ここまでズルズルと何もしないできちまって一人でテンパッたあげく
一緒にすごせる高校最後の学校行事だからっつって安易に『これがラストチャ〜ンス!』と思わず手をあげちまった…そんなとこだろどうせ」
花梨 「ど!?どうせとはなによ!?あと!そのいつも人の考えてる事見透かすのやめてよね!!」
発幸 「お前が分かりやすいんだよ、他の奴は分かんねぇしな」
花梨 「あぁ言えばこう言う!」
発幸 「はいはい、んじゃぁ俺部活あっから…精々頑張るこったな〜」
花梨 「あ!ちょっと!待ちなさいよ!!まだ話は!!」
発幸 「んじゃな〜」
花梨 「あ!……はぁ…逃げられた…」
花梨 「……むかつくけど…間違ってないから何も言い返せないじゃない…
くぅ!あ〜もう!むかつく!帰りにクレープやけ食いしてやる!!」
壱悟 「お、なに!?クレープ!?いいねいいね俺も行く!!」
花梨 「な!?い…壱悟!?」
壱悟 「さ!そうと決まれば善は急げだ!いくよ!花梨!!」
花梨 「ちょ!?え!?どこ行く…って!?手!?壱悟!手!手!握ってる!!!」
壱悟 「クレ〜プ♪クレ〜プ〜♪」
花梨 「聞いてないしいいいいいいい!!」
花梨N「いきなり現れ、状況を把握しきれていない私を引きずっているこの男こそ問題の人物…
宮華学園、3年E組、夏祭壱悟、私のもう一人の幼馴染…そしていつの間にか片思いになってた相手。
祭事に目がなく体育祭や文化祭の実行委員、はたまた町内の盆踊りに縁日などなど…
その手の祭事の手伝いは一通り網羅し、尚且つ自分も最大限に楽しむという超お祭り騒ぎ大好き人間だ。
普段は人懐っこくチャランポランとした性格なのだが、祭事に関してだけは別人と思えるほどのカリスマとリーダーシップを発揮する。
まったく…上に立つ者の状況把握能力を生かして少しは私の気持ちにも気づいてほしいものである…
いや、やっぱり気づかなくていい!恥ずかしすぎて死んじゃう!」
花梨 「はぁ、はぁ、壱悟、はぁ、もうちょっと、はぁ、歩幅とか、はぁ、考えなさいよね、はぁ、はぁ」
壱悟 「え?あぁごめん!クレープの事しか考えてなかった!大丈夫?」
花梨 「なんとか…ね…はぁ…まったく、罰として私にクレープ奢りなさいよね」
壱悟 「(被せて)すいませーーん!!」
花梨 「って!壱悟!!無視しないでよ!今のも含めてクレープ2個奢りなさい!!」
壱悟 「えぇ〜花梨そんなに食べたらまた太るよ〜1個にしときなよ〜」
花梨 「またって何よまたって!…ったく…
すいません、ストロベリーレアチーズと抹茶プリンの和風クレープください」
壱悟 「あ!先にずるい!んじゃぁ俺は〜っと〜……
よし!すいません!チョコバナナに〜アイスとチョコケーキをトッピングして〜生クリームとチョコソースを増し増しで!!」
花梨 「うっ…あ、甘そう…」
壱悟 「ありがとうございま〜す!ふふ〜ん♪でわ!新生宮華祭実行委員発足を記念してカンパーイ!」
花梨 「クレープで乾杯する奴初めて見たわ…カ、カンパーイ…」
壱悟 「いっただっきま〜す!!」
花梨 「いただきま〜す」
壱悟 「あぁぁ…甘…うま…幸せ…あ、花梨そっちの一口頂戴!あむ!」
花梨 「い!壱悟!ああああんたそれ!か、かかか、かん、せつ」
壱悟 「はい、花梨も一口ど〜ぞ〜美味しいよ〜」
花梨N「!?…こ、こいつは人の気も知らないで……」
花梨 「い、いらないわよ!そんな見るからに甘そうなの!」
壱悟 「えぇ!すんごく美味しいよ!激甘激ウマだよ!」
花梨 「いらないったらいらない!それ食べたらさっき壱悟が言ったように本当に太っちゃうわよ!」
壱悟 「んぅ…美味しいのに、後で欲しいって言ってもあげないからね〜」
花梨N「ふぅ、諦めたか…んぅ、食べれる訳、ないじゃない…私からなんて…そ、その、間接、キス、だし?」
壱悟 「ごちそうさま!はぁ〜やばい今なら天国行ってもいいや〜幸せ〜…さってと帰ろっか花梨」
花梨 「うん、それにしてもそれだけ甘いもの食べてよく太らないわね壱悟…結局私のも半分くらい壱悟が食べちゃったじゃない…」
壱悟 「甘いものは別腹別カロリーなのだ!」
花梨 「何よそれ…んっ…さすがに暗くなってくると冷えるわね…はぁ」
壱悟 「そうだね、早く帰ろうか。はい、花梨」
花梨 「ん?なによその手…」
壱悟 「お姫様が風邪などひかぬよう、私がお手を温めてさしあげましょう…なんてね。さっ行くよ!」
花梨 「えぇ!?いいから!恥ずかしいじゃない!ちょっと離してよ壱悟!!」
壱悟 「さっき来る時は何も言わなかったじゃん、それにこの方が俺もあったかいしね!」
花梨 「んぅ、さっきはそんな事考えてる余裕が…んんんん、あぁもう分かったわよ!今日だけだからね!」
壱悟 「うん、ありがと!あ、それとよろしく!頼りにしてるよ副委員長!!」
花梨N「…いつからだろう…こんなにも壱悟を意識し始めたのは…中学かそれとも小学校か…
もしかするとそれよりもっと前だったのだろうか。きっかけとかそんなのは無かった…
気づいたらいつの間にか壱悟を目で追うようになっていた…」
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花梨N「そうこうしてる内に宮華祭まで2日」
壱悟 「さて皆!日中の勤勉ご苦労様!ここからが俺たち宮華祭実行委員の本当の戦いとなる!
本日の放課後と明日まるまる一日を使って行われる残りの準備期間で全生徒を満足させるモノを形にするのが俺らの仕事だ!」
花梨 「うわ〜…相変わらずのいきなりテンションMAX…」
壱悟 「じゃぁ時間も限られてるし各担当はこのミーティング後すぐそれぞれの仕事に移ってもらうからね!
各自メモ用意!まず舞台設営組みは野球部、サッカー部、バスケ部と一緒に体育館の設営に!
各部の部長には話し通してあるから各部員を使って設営の準備に入ってね、くれぐれも怪我に注意!それじゃぁGO!!」
花梨 「本当、こういう時だけ仕切るの上手いんだよなぁ…普段はあんななのに…………」
壱悟 「じゃぁ皆よろしく!俺は先生のところにミーティング後顔出すように言われてるから一旦そっちに…
ん?花梨?どうしたのぼ〜っと俺の顔見て」
花梨 「へ?あっ!いや、何でもない…」
壱悟 「そっか、じゃぁ俺先生の所行って来るから!花梨はここで各書類の処理と一般生徒から疑問要望の受付よろしく!」
花梨 「分かった、いってらっしゃい……はぁ、また別行動かぁ…しょうがない、私もお仕事お仕事っと」
発幸 「失礼しや〜す」
花梨 「は〜い、どうしましたって!?発幸!?あんた何でここにいるのよ!?」
発幸 「何でって…クラスの方だと何もやる事ないから暇つぶしに来た。
俺のクラス喫茶店だから女子が色々好き勝手やってて男子は今の所やる事ないしな〜」
花梨 「サボリも同然じゃない…残念でした、生憎ここには今私しかいないの壱悟なら先生のとこ。
…ったくこっちは猫の手も借りたいくらいなのに…体力有余ってるなら体育館の設営でも手伝って来なさいよ発幸」
発幸 「そんないかにも暑苦しくてめんどくさそうな事してられっかよ…大丈夫だよ、俺は暇つぶしに本でも読んでっから邪魔だけはしねぇよ」
花梨 「もう、しょうがないわね、本当に邪魔だけはしないでよ」
発幸 「わぁってるよ……で?その後の戦況は?」
花梨 「ん…敗走したいであります隊長…」
発幸 「一言前の発言を忘れる程戦況は悪いのか…はは…」
花梨 「悪いわよ…仮にも副委員長だし…壱悟と顔あわせるの実行委員会議の時くらいだし…むしろ一緒にいれる時間は減る一方…」
発幸 「そりゃご愁傷様」
花梨 「はぁ…」
花梨 「・・・」
発幸 「・・・」
花梨 「…そういえば発幸って本読むんだ?」
発幸 「…あぁ、マジで何もやる事ない時くらいだけどな」
花梨 「へぇ〜知らなかった」
発幸 「そうか…」
花梨 「・・・」
発幸 「・・・」
花梨 「何読んでるの?」
発幸 「ライトノベル、ハードカバーは肩凝って読めねぇ」
花梨 「ふぅん、そうなんだ」
発幸 「そうなんだ」
花梨 「・・・」
発幸 「・・・」
花梨 「あ、あのさ」
発幸 「ちゃんと仕事しろ」
花梨 「…はぁい」
花梨N「こいつ何だかんだ言って、やらなきゃいけない事はちゃんとやるタイプだから、こういう時言い返せないのよね…
それにしても…絵になるんだよなぁ何故か…昔からそうよねぇ…ふと目を向けたときに一瞬息を呑むような事があった覚えあるしなぁ…
体育会系の割りに体の線細いし、何だかんだカッコイイし、めんどくさがりだけど気が利くし…」
発幸 「なぁ花梨」
花梨 「っ!?な、なに!?」
発幸 「もしかして寝不足か?」
花梨 「へ?あぁ、そうね…実行委員なってから忙しくて,夜中まで家で事務仕事してるわ」
発幸 「気をつけろよ、ルックスだけはいいんだから中身と同じ様なブスにならないようにな」
花梨 「なによそれ!ったくほんと可愛くないわねあんた!」
発幸 「はいはい、俺は男なんで可愛くなくて結構ですよ、それよりその母親みたいな返しは止めた方がいいと思うぞ」
花梨 「そ、そんな事あんたに言われなくても!」
発幸 「はいはい、手ぇ動かしましょうね〜」
花梨 「くっ!スゥ〜ハァ〜…そうよね♪時間もないんだしちゃんとお仕事しなきゃよね♪ありがとう発幸君♪…後で覚えてなさいよね…」
発幸 「はいはい」
花梨 「・・・」
発幸 「・・・」
壱悟 「花梨いるー!?って、おぉ!発幸だ!どうしたのこんなとこで!」
発幸 「よぉ、あまりにも暇なんで花梨で遊びに来てたとこ」
壱悟 「そっか!たしかに花梨と話すと表情コロコロ変わるし可愛くて面白いもんね!」
花梨 「かわい!?…え、えと…ありがとう…」
発幸 「今の会話に対するツッコミは無いんだなって言うか壱悟の発言で帳消しになったか」
壱悟 「どういたしまして〜、っと発幸がいるなら丁度良いや。花梨、ちょっと体育館の設営の件なんだけど
実際に見ながら確認したい事あるから俺と一緒に行ってもらっていいかな?」
花梨 「え、一緒に?…もちろんOK!ちょっと待ってね設営資料持ってくるから!…あ、でもここはどうするの?」
壱悟 「発幸よろしく!誰か来たら体育館にいるって言ってくれるだけでいいから!」
発幸 「壱悟の事だからそうだと思ったよ、了解。あ、そうだ壱悟、花梨ちょっと疲れ気味だからあんま無理させんなよ?」
壱悟 「わかった〜!じゃぁ行くよ花梨!!」
花梨 「あぁ!ちょっと待って壱悟!…ったく…発幸、心配ありがとね。それじゃ行ってくるから!」
発幸 「…おう…お幸せに〜…」
花梨 「な!何言ってんのよ馬鹿!!あぁもう待って壱悟!走って行かなくてもいいじゃなあああああい!!」
発幸 「…ほんと、毎度毎度騒がしい奴らだな……
んじゃ、友人様においてかれた俺は一人寂しく本でも読んでますかねっと………」
発幸 「…はぁ…友人様…ね…」
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壱悟 「そうそこ!あぁずれた!もうちょい右!そう!そこ!はいOK!」
花梨 「えっと次は雛壇の設置ね」
壱悟 「了解!いや〜助かる〜やっぱり花梨が居てくれると仕事はかどるよ〜」
花梨 「そんな事ないわよ、実行委員とか初めてだし私もういっぱいっぱいだよ」
壱悟 「あははは!花梨なら大丈夫だよ!」
花梨 「そんな買い被られてもねぇ」
発幸 「そうそう、花梨が得意なのはスウィーツの早食いくらいだからな」
壱悟 「あ、発幸だ!たしかにそうだね!あはははは!」
花梨 「壱悟笑いすぎ!発幸なにしにきたのよ!留守番は!?あんた暇なら教室戻りなさいよ!」
発幸 「うっわ…すげぇ言われよう…本読んでたんだけどあまりにも暇だから手伝いに来た、男手は多いほうがいいだろ?
留守は他の委員会の奴に任せたから大丈夫だよ、教室戻ってもさっき言ったとおり何もやる事ないから結局ここに戻ってくるぞ」
花梨 「はいはい、分かりました…じゃぁその労働意欲を最大限私が使ってやろうじゃない!覚悟しなさいよ〜」
発幸 「うっ…お手柔らかに…さて、んじゃぁ何からすればいいんだ花梨?…ん?花梨?」
花梨 「ん…あ、れ…」
発幸 「花梨!!!…おい花梨大丈夫か!?」
壱悟 「花梨!発幸!花梨どうしたの!?」
発幸 「…多分、寝不足でぶっ倒れたんだと思う…」
壱悟 「え…そんな寝不足ってどうして…」
発幸 「あほ!やった事もない実行委員の、しかも副委員長なんていきなりやらされて
普通なら投げちまう事も、お前の為に頑張ったからに決まってんじゃねぇか!!」
壱悟 「え?発幸なんで怒って…それに俺の為って…どういう…」
発幸 「…さっきも気をつけろって言ったじゃねぇか…なのにてめぇは花梨の事…何にも…何にも分かっちゃいねぇくせに!
なんで!なんでお前なんだよ!!くそっ!!」
壱悟 「発幸…どういうことだよ…何にも分かってないとか…」
発幸 「うっせぇ!お前が悪ぃんだよ!!」
花梨 「発…幸…」
発幸 「!!花梨、大丈夫か?」
花梨 「発幸…壱悟を…怒らないで…悪いのは私…だから…」
発幸 「でも!」
花梨 「お願い…」
発幸 「…くそっ!…」
花梨 「壱悟」
壱悟 「!?…何?…花梨?」
花梨 「ごめん…ちょっと保健室行ってくるから…後…お願い」
壱悟 「それなら俺付き添いに!」
花梨 「駄目…壱悟はやらなきゃいけない事あるでしょ…」
壱悟 「だけど俺!!」
発幸 「壱悟!!……黙って花梨の言う事聞け…」
壱悟 「………わかった…」
花梨 「ん、よろしく…じゃ…」
発幸 「おい!誰か保健室までこいつの付き添い頼む!……あぁ、すまない…ありがとう」
壱悟 「…………花梨…」
発幸 「ちっ…俺も頭冷やしてくる…じゃぁな…」
壱悟 「あ、発幸…その…ごめん…」
発幸 「……理由も分かってねぇのに軽々しく謝るな…それに謝るなら俺じゃなく、あのどうしようもない馬鹿に謝れ…」
壱悟 「…ごめん…」
壱悟N「謝る事しか出来なかった…それしか出来なかった…
発幸が怒った訳…花梨が倒れるまで無理をした訳…
分からない、全部分からない…でも…二人を傷つける気なんてなかった…ただ…ただ俺は…」
発幸N「ガラにもねぇ…取り乱しちまった…しかも花梨の目の前で…最悪だ…
しかも怒りに任せていらねぇ事くちばしっちまうし…最低だ…
…壱悟にもわりぃ事しちまったな…ちっ…俺が我慢すれば…
何もしなければ…俺らはずっと一緒にいられるんだから…
それでいいんだ…それで…」
==========2枠に分けるならここで切り============================================
花梨 「あ、壱悟!」
壱悟 「あ…花梨だ…おはよ」
花梨 「おはよ!何しゅんとしてんのよ、壱悟らしくない」
壱悟 「あはは…うん…そだね」
花梨 「ったく…委員長がそんなんじゃ皆に示しがつかないでしょ!ほら元気だす!」
壱悟 「でも…発幸が言ってたから…俺のせいで花梨が…本当にごめん…」
花梨 「あぁ…えぇとそれは…その…」
壱悟 「その…花梨は俺の為に頑張ってくれてたのに…そんなの全然気付けなくて…それどころか俺委員長なのに…
寝不足って資料作りとか、宮華祭の構成とか色々考えてくれてたんだよね…俺がやらないといけない事なのに花梨にばっか任せて…」
花梨 「壱悟、もういいよ、そんなに自分を責めないで…壱悟は壱悟しか出来ない事ちゃんとしてたでしょ?
実行委員の皆も、あんたに引っ張られて一生懸命頑張ってたじゃん、私だって壱悟が引っ張ってくれたから頑張れた…
倒れちゃったのは私が悪いの…がむしゃらに頑張ることしか出来なかったから…でも昨日の事で分かった…
私もっと余裕持たなきゃなって…壱悟の隣にいるなら尚更…」
壱悟 「花梨…あはは、なんか恥ずかしいな…」
花梨 「ってことで、てい!!」
壱悟 「痛!!いきなり何!?」
花梨 「私の元気分けてあげたの!昨日は委員の仕事しないで休んでたから元気ありあまってるからね!」
壱悟 「もう〜元気になる前に再起不能になりそうだったよ〜……」
花梨 「なに?まだ足りない?」
壱悟 「大丈夫です!間に合ってます!」
花梨 「ん!それはよかった!…あ、発幸〜!」
発幸 「…あぁ?…」
花梨 「お〜は〜よ〜!」
発幸 「…おう…」
花梨 「あ…あれだけ?…人が折角挨拶してやってるのに!」
壱悟 「…発幸…やっぱりまだ俺の事…」
花梨 「大丈夫よ、発幸はどうしようもない奴だけど…最低な奴じゃないから…知ってるでしょ?」
壱悟 「ん…そうだね!…花梨、ありがと!…よし…よっしゃあああああああ今日も頑張るぞおおおおおおおお!!」
花梨 「はぁ…まったくアンタ達は…ほんとどうしようもないんだから…」
壱悟 「えへへ〜元気出た!」
花梨 「はいはい、良かったわね、それじゃ後は、もう一人のどうしようもない奴をどうにかしないとね!」
壱悟 「おう!!」
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発幸 「で?なんの用だ花梨…さすがに準備期間最終日だし俺も暇じゃねぇんだが…」
花梨 「発幸、あんた昨日の事まだ引きづってるでしょ…
廊下ですれ違っても何かそっけないし、ずっと不機嫌そうだし、私と壱悟が声かけても生返事だし」
発幸 「気のせいだろ…こっちも忙しくて気が立ってんだよ…」
花梨 「ちがくない!…何よ…言いたいことあるなら言ってよ?私嫌だよこんなの…」
発幸 「…なんもねぇって言ってるだろ…」
花梨 「何もなくないでしょ!?」
発幸 「うっせぇ!花梨は知らなくていいんだよ…」
花梨 「どういう事よ…何で逃げるのよ…訳分かんないじゃない…」
発幸 「別に逃げてねぇよ」
花梨 「逃げてるじゃない、私からも、壱悟からも…あからさまに私達が原因だって分かるような事して」
発幸 「あぁ!もういいんだよ!一人にさせろ!!」
花梨 「ちょっと!待ちなさいよ!」
花梨 「…発幸……いや、駄目だ…諦めてたまるか…戻るんだ!いつもの私達に!」
発幸 「はぁ…結局逃げ帰ってきちまった…何やってんだ俺…こんなはずじゃなかったのに…どっか壊れちまったみたいだ…
自分が思うようにならねぇ…思ってもない事ばっか言っちまう…俺…ただ花梨が好きなだけなのに…
でも花梨は…はぁ…ドツボだ…寝よ…もう色々疲れた…」
壱悟 「発幸…結局今日も仲直り出来なかったな…はぁ…駄目駄目だなぁ俺…結局まだ花梨に頼ってばっかだ…
自分でどうにかしなきゃ…そうだ…俺が自分でどうにかしなきゃ発幸は許してくれない…気がする…
でも何を…どうすれば…くぅ!俺の馬鹿馬鹿!考えろ、考えろ、考えろ…考え、ろ…考…え…ろ…か、ん…Zzz」
花梨 「壱悟、ごめんね…巻き込んじゃって…私にもっと勇気があれば…もっとはやく壱悟にちゃんと告白してたら…
こんな事にならなかったのに…発幸も、ごめんね、昼間偉そうにあんな事言ったけど逃げてるのは私だよね…
でも…もう逃げるのは止めるって決めたから…ごめんね…私がなんとかするから…
よし…反省終了!!宮華祭も私達も全部どうにかしてやろうじゃない!!そうと決まれば寝る!!!おやすみ!!!」
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花梨 「ん〜っと〜…あ、いたいた…おはよ壱悟!!!」」
壱悟 「うわ!?なになになに!?ん!?…あ〜〜びっくりした〜花梨か〜どうしたの?」
花梨 「うん、解散したら帰らずに実行委員室に来て。
委員長権限で鍵貸してもらえるでしょ?」
壱悟 「え?うん、多分大丈夫だと思う、明日の準備でやっときたい事あるから残りたいとか言っとけば…なにするの?」
花梨 「決まってるじゃない…3人だけの宮華祭やるのよ!」
壱悟 「決まってるって…俺聞いてないしそれに3人って…」
花梨 「そ、3人…絶対来ること!逃げたら今度はクレープ3個ね!いい!?」
壱悟 「だから太るよ花梨?はぁ…まぁ俺も早くなんとかしたいと思ってたから行くよ。絶・対・にね!」
花梨 「ん、じゃぁ放課後に!それまで本番頑張るわよ!委員長!!!」
壱悟 「おうよ!!!…さぁ祭りだ祭りだあああああああああ!!」
花梨 「なんだ、意外に元気じゃない壱悟…よかった」
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花梨 「はーーーつーーーゆーーーきーーー!!!!」
発幸 「あ?あぁ、なんだ花梨かってウオッ!?」
花梨 「さぁ行くわよ!始めるわよ!」
発幸 「はぁ!?ちょ!?離せよあぶねぇって!人の制服つかんだまま走るな!!」
花梨 「うっさい!問答無用!!いいから来なさい!!」
発幸 「わ、訳わかんねぇよ!何しようってんだよ!?」
花梨 「決まってるじゃない!私達の文化祭よ!!」
発幸 「はぁ!?余計訳わかんねえええええええええ!」
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花梨 「はぁ…はぁ…ただいま壱悟…捕獲してきた!」
壱悟 「花梨おつかれ〜」
発幸 「はぁ…はぁ…壱悟?…ったく…何なんだよ一体…はぁ…」
壱悟 「宮華祭だよ?発幸?」
発幸 「だから…それが何だっつってんだよ…」
壱悟 「んっと…どゆこと?花梨」
花梨 「…うん…(深呼吸)壱悟、発幸…本当にごめんなさい!!」
発幸 「な、なんだいきなし」
壱悟 「そうだよ何で花梨がいきなり謝ってるの!?」
花梨 「一昨日私が倒れてから発幸はずっと引きずってるし…壱悟は反省してずっと悩んでるし…
そんな二人、私見てられなくて…我慢できなくて…ちゃんと仲直りしなくちゃって…」
壱悟 「いや、その事なら俺が一番悪いよ!注意されたのに全然気にしてなくて、結局花梨倒れちゃったし…
…発幸に言われた通り…俺、何も分かってなかった…もっと二人の事考えなくちゃいけなかったんだ…
ごめん、二人とも…」
発幸 「…いや壱悟…お前まだ分かってねぇよ…なぁ?花梨?」
花梨 「ん!?ちょ、それはまだ!!」
発幸 「はぁ…この際だ腹割って話そうぜ…後腐れなくな…
そもそもこれが原因なんだしよ…言いたい事言っちまって、すっきりしちまおうぜ、後の事はそれから考えりゃいいだろ?
ってとこだろ、俺らを集めた本当の理由は…」
花梨 「ん…そうよ…」
発幸 「だったら話ははえぇ、ちゃっちゃと終わらそうぜ。俺だってこんなつまんねぇ関係続けたくねぇんだからよ」
花梨 「わ、わかったわよ!こうなったら腹くくるわよ!」
壱悟 「へ?なに?どういう事?二人だけで何話すすめてるの?」
花梨 「い、いいい、壱悟!!!」
壱悟 「はい!?…なんでしょう…か?」
花梨 「あの…その…私ね…壱悟の事が…その…」
発幸 「往生際がわりぃな、代わりに言っちまうぞ花梨」
花梨 「んんんん!あぁもう!!私壱悟が好き!!これで満足!?」
発幸 「うわ、ロマンとかその類のモノを力技でねじ伏せやがった…」
花梨 「あんたのせいでしょう!ばかぁ!…はぁ…えと…その…壱、悟?」
発幸 「ん?お〜い壱悟〜?い〜ち〜ご〜く〜ん?…あぁ駄目だ…完全にフリーズしてるわ…」
壱悟 「…あ…か…かかか…かり…ん?」
花梨 「な、なに?」
壱悟 「そ、その俺、あの、えと、そそそ、そういうの、は、初めて、で、そのこ、告白とか、
ご、ごめん、頭真っ白で…」
花梨 「あぁ…あはは…その…私も初めてなんだよ…告白するの…」
壱悟 「と、というかその、俺ずっと発幸と花梨ってそういう関係なのかと思ってて…」
花梨 「………えぇ!?!?」
発幸 「はぁ!?!?おま!?どう見たらそう見えるんだよ!?」
壱悟 「だってよく二人でいるし!その時俺に内緒っぽい話してたり!それに俺といる時花梨たまに何か悲しそうな顔するし!」
花梨 「完全に誤解よ!ねぇ!?発幸!!」
発幸 「あぁ、付き合ってるってのは完全に誤解だな、俺が一方的に片思いなだけだし」
壱悟 「はぁ!?何!?え!?どういう事!?」
発幸 「だから俺が好きなのは花梨だって」
壱悟 「な!?ってちょ!今度は花梨が!花梨しっかり!」
発幸 「まったくしょうがねぇ奴らだな…」
花梨 「…はは…ははははははは…なにこれどういう事…はは」
壱悟 「花梨が壊れたあああああああ!!」
発幸 「あぁ〜もう、壱悟ほっとけ。それよりジュース温まっちまうぞ、折角拝借した菓子もあんだし食おうぜ」
花梨 「そうはさせないわよ発幸!何よ!人に言わせたかと思えば自分はさらっとノリで告!…こ、こ、告、白…されたんだ…私…」
発幸 「っ!?アホ!改めて言われると、その、ハズイだろうが…」
壱悟 「あ…発幸が照れてる…珍しい…」
花梨 「あ、ほんとだ〜発幸も可愛いところあるじゃな〜い」
発幸 「…ほっとけ…」
花梨 「はいはい……ん?あれ?…(グスッ)な、んで?…あれ?…とまら…ない…」
壱悟 「ん?花梨!?…え、どうしたの…また俺なんかしちゃった?」
花梨 「ん〜ん…(グスッ)なんでだろ…涙が勝手に…」
発幸 「おい、本当に大丈夫か、花梨…」
花梨 「(グスッ)うん…うん、大丈夫…安心したら…いきなり…(グスッ)…うぅ…よかったぁ…よかったよぉ…」
発幸 「ったくしょうがねぇ奴だな…ほら、これ使え…」
花梨 「ん…ありがと…(グスッ)」
壱悟 「花梨よしよ〜し」
花梨 「壱悟…さすがにそれは恥ずかしい…でも…ありがと…ありがと…二人とも…」
発幸N「その後、花梨が落ち着くのを待って、俺らは少し遅い3人だけの宮華祭を始めた…
と言っても持ってきた菓子とジュースを肴に3人で駄弁ってただけだが…」
壱悟N「発幸はこう言ってるけど、ちゃんと今後の事とか色んな事話したんだけどね〜
とりあえず告白しちゃったものはしょうがないって事で返事は各自保留って事に!」
花梨N「色々はぶきすぎでしょう壱悟も…まぁ間違ってはいないからいいけど…
折角ちゃんと、自分と相手の気持ちが分かったんだから…これから3人…
お互いをちゃんと見てから返事しようって…それからでも遅くないんじゃないかって…
3人で決めたんじゃない…私ね…本当は今回の事で、もしかしたら3人バラバラになっちゃうんじゃないかって…
もう、今までみたいに一緒にいられなくなっちゃうんじゃないかって…そう思ってたんだ…でも取り越し苦労だったみたい…
よかった…私の隣にいてくれるのが壱悟と発幸で…本当によかった!!」
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壱悟 「花梨!次どこ行く!?俺チョコバナナ食べたい!!」
花梨 「壱悟さっき焼きソバ食べたじゃない!」
発幸 「そうだ、花梨はこれから俺と喫茶店で優雅なティータイムだ」
花梨 「学園祭の喫茶店で優雅にティータイム出来るわけないでしょうが…」
壱悟 「あぁもう!早く決めないと時間なくなっちゃうよ!実行委員の仕事もあるんだし!」
発幸 「そうだぞ花梨、早く行こうぜ」
花梨 「あんた達私の意見は無いわけ!?レディーファーストとかそういう紳士的な所少しは見せなさいよ!
さっきからやれあれ食べようとかやれ疲れたとか!」
発幸 「うわ…怒らせちまったよ壱悟…どうするよ?」
壱悟 「三十六計逃げるにしかず!!キリッ」
発幸 「OK…そんじゃ3・2・1…」
壱悟 「GO〜〜!!!」
花梨 「あ、逃げた!こら〜!待ちなさいよ!壱悟!発幸ーー!!」
花梨N「こんな感じで本物の宮華祭二日目を楽しんだ私達は、寒い冬の訪れに負けないように…
デコボコなりにも決して揺るがない程強く、何があっても解けないような絆を見つけた…
これから成長していく内に学校がバラバラになるかもしれない…就職先の関係でこの地から離れる事になるかもしれない…
けれど…この絆だけは絶対にもう離さない…この不器用でどうしようもないけれど、掛け替えのない友人二人が…私は大好きだから」
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こちらはコンピレーション企画の一つとなっております。
下のリンクが企画のサイトとなっております。
宮華学園HP http://space.geocities.jp/voice_act_scenario/kyuka_gakuen.html