Arc Jihad(アークジハード)-自然の英霊-
♀赤阪 彩瑛(アカサカ サエ):17歳。適合者。ポンヤンペの前契約者であった秋弥の妹。
理知的で、柔和かつ清廉。兄思いの少女。原因不明の病があり、失明状態だった。
自分を救う為、また、兄が命を懸けて守ろうとした世界を救う為、契約者となった兄の遺志を継ぎ、自分自身も契約者となる。
「人の意志」を何よりも重んじるため、「人の在り方や意志を踏みにじる」ことがらに対して怒りを表す。
それがたとえ『「兄の仇」と「兄の意志を少しでも愚弄した者」どちらか一方しか殺せない』となったとしても揺るがず、「兄の意志を愚弄した者」を選び取る。
「常識から外れた正義感」を持つある種「歪んだ清廉さ」
♀ポンヤンペ:聖剣クトネシリカの担い手。ポンヤンペという名前だが、正確にはポンヤンペの人格をインストールされた異世界人。
自然の力を借り、攻撃へと転用できる力を持つ。神格も持つため、高火力な中距離攻撃を得意とする。
男勝りな性格で、姐御肌。何があっても人を守り、魔剣を滅ぼすという信念を持ち、がさつなようで実は思いやりに長けた人間。
秋弥と契約していた時は、秋弥の幼さに苛つきながらも、相棒としては評価していた。
担い手が彩瑛となったのちは、秋弥を守れなかったことから自責の念を感じている。
担う聖剣は「クトネシリカ」。自然の力を司る刀であり、脇差。リーチは短いが、自然を味方に付けることができるため、中~遠距離の戦闘に向く。
♂ムカゼ:むかぜ丸の担い手。長年放置された妖刀「むかぜ丸」から生まれた付喪神の人格をインストールされた異世界人。
「災厄をもたらすもの」としての力を有しており、毒や幻覚などのトリッキーな能力を持つ。
性格は、ひょうひょうとしており快楽的。自分が楽しいこと(戦闘や殺戮もその内)に目がない。
その一方、大事なものへの執着は強く、パートナーである伽子や知人が傷つくことは許せない「在り方を間違った『人格者』」
担う魔剣は「妖刀 むかぜ丸」。災厄をもたらす太刀。むかぜ(ムカデの古語読み)の名の通り、大ムカデの形をした爆弾を放つ。
また、幻覚及び致死性の毒をまき散らす事も可能。トリッキーな能力のため、使い手を選ぶ一振り。
♀白鳳 伽子(ハクホウ カコ):20歳。適合者。白鳳会というヤクザの一人娘であり現組長。感情の起伏が激しい一方、頭のキレる人間。
父親殺しをした契約者を殺すためムカゼと契約した。親殺しの相手に復讐をするという狂気性が潜んでいるため、
戦闘となると刀の担い手であるムカゼの狂気と同調し、内面の狂気性が増幅され、戦闘狂になる。
ムカゼとの契約期間が長いため、ムカゼの持つ「狂気性」に精神が侵され、精神が不安定化している。
♀赤阪 彩瑛:
♀ポンヤンペ:
♂ムカゼ:
♀白鳳 伽子:
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伽子 :ん・・・うん・・・?朝か?
彩瑛 :あ、おはようございます。伽子さん。
伽子 :おう、彩瑛か。・・・なにしてる。
彩瑛 :え?ああ、朝ごはん作ってます。あ、すいません!勝手にキッチン使っちゃって。
伽子 :かまわねぇ。そうかい。(欠伸)ねむ・・・。
彩瑛 :伽子さんはどっちがいいです?パンですか?ごはんですか?
伽子 :・・・任せる。
彩瑛 :そうですか。じゃあ、ご飯にしますね!今日は和風の献立ですから。
伽子 :はいはい、そうかい。
ポンヤンペ:おはようサエ。・・・今日は味噌汁か。和だな。
彩瑛 :そう、ちょうどお味噌があったから。
ムカゼ :おー!いいにおーい!家庭的ぃ!
彩瑛 :あ、ムカゼさん。おはようございます。
ムカゼ :家庭のにおいがする・・・。こんな思いを伽子と暮らしててできるとは・・・
伽子 :聞こえてんぞムカゼ。
ムカゼ :だってほんとじゃーん。伽子ってば料理しないじゃーん。
伽子 :よし、わかった。彩瑛。ムカゼには朝飯抜きな。
彩瑛 :え、それって
ムカゼ :えぇ!?そりゃねぇよ伽子ぉ!
伽子 :その代わりに、トイレ掃除な
ムカゼ :罰が過酷!労働基準法違反だぞぉ!
伽子 :テメェは雇われじゃねぇだろうが!
彩瑛 :ま、まぁまぁ伽子さん。そこらへんに
ムカゼ :やりぃ!天使降臨!彩瑛ちゃぁん幼気(いたいけ)な僕をたすけてぇ
彩瑛 :ムカゼさんの味噌汁にはホウ酸混ぜときますから
ムカゼ :まって!それ毒だから!害虫駆除の毒だから!
伽子 :よかったなぁ?ムカゼ。お得意の毒を盛ってくれるんだってよ
ムカゼ :天使が悪魔にぃぃぃ!?
伽子 :・・・くっ。(足元がふらついてたたらを踏む
彩瑛 :ん?・・・伽子さん?
伽子 :・・・あ?どうした。
彩瑛 :今、なにか言いましたよね?
伽子 :いいや、なんでもねぇよ。・・・顔洗ってくる。
ムカゼ :ポンちゃぁぁぁん!彩瑛ちゃんが不良になった!なんとかしてぇ!
ポンヤンペ:オレに泣きつくな!というか、ポンちゃんって呼ぶなバカ!
ムカゼ :そこをなんとかポンちゃぁぁぁん!
ポンヤンペ:ぶっ飛ばすぞ!この毒虫がぁぁぁっ!
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伽子 :戦うコツを鍛える訓練とはいえ・・・。
彩瑛 :えっと・・・ここに、これが居るから、ここでこうなって・・・
伽子 :これじゃあ、先が思いやられるな。・・・ほら、残り20秒。
彩瑛 :だから、こっちにこれで・・・うーん。じゃあ、こう!
伽子 :ほい、チェックメイト。
彩瑛 :えっ!?あ、あれっ!?
伽子 :弱すぎ。彩瑛。お前大丈夫か?
彩瑛 :だ、大丈夫ですって!ちゃんと駒の動かし方はわかってます!
伽子 :じゃあ、聞くが。私と対戦した局数は?
彩瑛 :15回ですね。
伽子 :ウチ、勝った回数は?
彩瑛 :ゼロですね・・・。
伽子 :じゃあ、引き分けた回数は?
彩瑛 :ゼロ・・・です・・・。
伽子 :せめて一回くらいは引き分けろっての。こっちはクィーンとナイト落ちだぞ?
彩瑛 :なんか、ごめんなさい。(苦笑
伽子 :まったく・・・。彩瑛。
彩瑛 :は、はい!
伽子 :担い手と契約者。チェスの駒に例えたらどうなる?
彩瑛 :例えたら?・・・うーん。
伽子 :むずかしいか?
彩瑛 :担い手は・・・クィーンですかね?
伽子 :ほう。その理由は?
彩瑛 :だって強いじゃないですか。私たちじゃできないことをやるし、戦いも強いですし。
伽子 :なるほど。じゃあ、私たち契約者はどうだ?
彩瑛 :それは・・・コレ。ですかね。
伽子 :ポーンか。理由は?
彩瑛 :だって、私だけじゃ何もできないですし。
伽子 :なるほどね。・・・だから、この魔剣と聖剣のドンパチ戦争でもお前は弱いんだよ。
彩瑛 :え?それは一体
伽子 :担い手はクィーン。これは合ってる。コイツが落とされたら一気に不利になるし、貴重な存在だ。
言ってしまえば、クィーンでもありキングでもある。そんな存在だ。
彩瑛 :そうですよね。なら・・・
伽子 :けど、私ら契約者はポーンじゃない。
彩瑛 :ポーンじゃ、ない・・・?
伽子 :そうだ。なぁ、彩瑛。担い手はこの世界に居続けるためにはどうしなきゃならない?
彩瑛 :契約者を見つけて、共に戦う「契約」を結ぶ。
伽子 :そのとおり。契約を結べない担い手は「この世に居ても居ない存在」だろ?つまり・・・。
彩瑛 :つまり、私たちが欠けた時点でその担い手は戦争に「負けてる」ってことですか?
伽子 :そういうことだ。「私らにとっちゃあ」担い手はキングであり、クィーンだ。
だが、「担い手にとっちゃあ」私たち契約者がキングであり、クィーンだ。
彩瑛 :どちらも、欠けた時点でその対局は終わっている・・・と。
伽子 :そういった「理解が早い」ところは優秀だ。褒めてやる。
あとは、「対局の見極め方」が解れば及第点だ。
彩瑛 :「対局の見極め方」ですか・・・。
伽子 :彩瑛。今までの対局。どうやってプレイしていた?
彩瑛 :このチェスですか?・・・そうですね。チェス盤の空きマスと伽子さんの駒を見て、どこに置けば取られないかって・・・
伽子 :初心者あるあるだな。涙が出そうだ。
彩瑛 :うっ・・・そうですよね・・・。(苦笑
伽子 :いいか?チェスは取るか取られるかの勝負じゃない。どうやれば、「相手を詰ませるか」の勝負だ。
彩瑛 :詰ませる・・・。
伽子 :相手の手筋、持ち駒の特性。それを見極めて駒を振っていくんだ。
どこに手を打って、相手の駒を釣るか。
彩瑛 :手を打って、駒を釣る・・・。あれ?
伽子 :どうした?
彩瑛 :ということは、つまり。犠牲を払って相手を弱らせろってことですか?
伽子 :そうなるな。
彩瑛 :それって、とても危ない賭けじゃないですか。誰かを犠牲にする勝利ってことになって・・・。
伽子 :あのなぁ?チェスはただのゲームだ。それに「犠牲がどうの」なんてセリフは似合わねぇぞ?
彩瑛 :そうですけど、でもこれ。訓練なんですよね?私の。
「戦うための訓練」そう聞いて私はやってるんですけど。
伽子 :・・・・ぷっ、あはははははっ!
彩瑛 :えっ!?あれ?なにか私変なことを・・・?
伽子 :いや、わりぃ。そうじゃねぇ。変に不器用過ぎて笑えたんだ。
彩瑛 :ぶ、不器用?私がですか?
伽子 :ああ、そうだ。
私が言いたいことはな。犠牲がどうこうじゃない。
「自分の特性を生かして、どう相手にキメの一手をかけるか」ってことだ。
彩瑛 :特性を生かす・・・。
伽子 :例えばだ。ウチのムカゼは毒を使う。相手を殺す絶対の切り札だ。じゃあ、これをどうやって相手に食らわせるかが勝利のカギだ。
お前ならどうする?
彩瑛 :毒を・・・。相手のスキを作ってその瞬間に仕込む・・・とか?
伽子 :そのとおり。さも、能力は別にあるように見せかけて、決定的な一撃は最後に取っておく。それが、私とムカゼのやり方だ。
じゃあ、今度は自分で考えてみろ。
ポンヤンペ。奴の特性と能力はどうやれば活きる?
彩瑛 :ポンヤンペの能力・・・。自然の力を使った能力。
伽子 :そうだな。それがポンヤンペの強いところだ。
彩瑛 :これを活かすためには・・・。この能力を隠さないといけないんですよね?
伽子 :それをどうするかはまた別だな。
彩瑛 :え・・・。えっと・・・?
伽子 :まぁ、ゆっくり考えてみな。じゃあ、その間、私は少し休憩してくる。
彩瑛 :こ、答え合わせは・・・
伽子 :答えが出たら教えてやるよ。
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(クトネシリカを振るポンヤンペ。近場の岩に腰かけてそれを見るムカゼ)
ポンヤンペ:はっ!せいっ!はぁっ!・・・ちっ。
ムカゼ :あっれー?もう終わりー?つまんなーい
ポンヤンペ:ムカゼ。いつまでそこに居る気だ。
ムカゼ :だって、「邪魔するな」って言ったのはそっちだぜ?
ポンヤンペ:だからって、ずっとそこに居ろとは言ってねぇ!
ムカゼ :えー?つまらーん。
ポンヤンペ:こっちは訓練してるんだ。気が散るんだよ!用がないならさっさと・・・
(飛び掛かり、上段から切りかかるムカゼ)
ムカゼ :てやぁぁっ!
ポンヤンペ:なっ!?
(ムカゼの剣を受け止めるポンヤンペ。両者、鍔迫り合う)
ムカゼ :おっ、受け止めた?やるねぇ?
ポンヤンペ:ぐっ!・・・ムカゼ、お前・・・どういうつもりだ。
ムカゼ :つまんねぇから、ちょっと遊ぼうかってねぇ?
ポンヤンペ:遊ぶだって・・・?
ムカゼ :そう・・・真剣(しんけん)を使ったマジのやりあい・・・だっ!
(ポンヤンペを突き放すと同時に、首を狙った一閃を放つ。間一髪で回避するポンヤンペ)
ポンヤンペ:くっ・・・貴様。今、首を狙ったな!?
ムカゼ :おうよ。なんせ「マジ」だからな。
ポンヤンペ:同盟の約定を反故にする気か!
ムカゼ :なぁんのことかなぁっ!
(切りかかるムカゼ、回避するポンヤンペ)
ポンヤンペ:ちぃっ!・・・ふざけるな!
ムカゼ :よっと!へへっ。約定とか俺、結んでないから。
結んだのは伽子の方だし。
ポンヤンペ:契約者の意志を裏切るというのか!
ムカゼ :俺ってば魔剣だぜ?そんなんイチイチ従うわけ、ねぇだろっ!
ポンヤンペ:くっ・・・!いいだろう。ならば、今ここでお前を切って捨ててやる!
ムカゼ :おうおう、ヤル気になったな!そうこなくっちゃなぁっ!
ポンヤンペ:蔦(つた)よ、敵を絡めとれ!
(蔦を操るポンヤンペ。それを斬り伏せるムカゼ)
ムカゼ :よっ!ほっ!せやっ!
ポンヤンペ:切り伏せるか、ならばっ!
ムカゼ :足元注意だ!
ポンヤンペ:ムカデ爆弾か!?
ムカゼ :大爆発ぅ~!隙だらけだぜ?英雄さん
ポンヤンペ:隙だらけは貴様だ!
ムカゼ :なにっ!?ちっ!
(鍔迫り合いになるムカゼとポンヤンペ)
ポンヤンペ:気づいていたさ。空気の壁を作らせてもらった
ムカゼ :あらら。的確に爆殺したつもりだったんだけどねぇ?
(突き飛ばし、下段から切りかかるポンヤンペ)
ポンヤンペ:趣味が・・・悪いんだよ!炎斬(えんざん)!
ムカゼ :おっと!それを食らうわけにはいかねぇっ、なっとぉ!
(右上段から振り払い防御。そのままの力で回転。下段から振り上げる。)
ポンヤンペ:ちぃっ!風よ!
(突風に身を任せ回避。距離を取る。)
ムカゼ :へぇ?器用なことできんじゃん?
ポンヤンペ:くそっ・・・やはり、脇差と太刀では・・・リーチの差がつらいか。
ムカゼ :おやおやぁ?降参ですかぁ?英雄さん。やっぱり、神霊(しんれい)の力をセーブしてたら勝てないんですかねぇ?
ポンヤンペ:なっ・・・!?
ムカゼ :なんでそれを!って感じかねぇ?ま、それもそうか。バレてないつもりだったんだし。
けどさぁ、インストールした英雄の名前がわかったら普通わかるよ?
どんな力を持っているのかって。
ポンヤンペ:貴様、どこまで知っている・・・。
ムカゼ :もちろん全部。
ポンヤンペ。アイヌの英雄であり、死後、自然の神として昇華された、現人神。(あらひとがみ)
その英雄が使う剣「クトネシリカ」には、狼とつがいの龍が描かれ、それらが持ち主に大いなる力を与える。
ポンヤンペ:・・・その、力の規模は?
ムカゼ :狼が現れれば、地が荒れ狂って形が変わる。つがいの龍に至っては、国を塵1つ残さず消し飛ばすほど。
ポンヤンペ:なるほど。つまり、貴様は俺のネタはすべて知っていると。
ムカゼ :直接見たことはないからねぇ。けど、マジで食らったらヤバイってのはわかる。
ポンヤンペ:はぁ・・・。ムカゼ。
ムカゼ :ん?どうしたよ?訓練はもういいのか?
ポンヤンペ:これでも俺は、お前とはいい関係を築けるんじゃないかと思っていた。
ムカゼ :へぇ?でも、そうじゃなくなったって感じだな?
ポンヤンペ:ああ。自然を荒らすから、こんなことはしたくなかったんだがな。
お前がこうさせたんだ。悪く思うな。
ムカゼ :おっと、これはこれは。虎のしっぽを踏んだかな?
ポンヤンペ:来ませい。我が刀に宿る神獣。そして、我が身に宿りて敵を討て!『ホケロウカムイ!』
ムカゼ :・・・は、ハハハッ!マジかよ・・・。さっきと圧が違うんですけど?
それになんだよ、その姿。白虎の革鎧って。マジモンの神格兵装じゃん。
ポンヤンペ:あんまり、この姿は好きじゃないからな。早目に終わらせるぞ。
ムカゼ :おいおい。まさかここまでッて思わなかったぞ。
ポンヤンペ:ムカゼ。・・・死にたくなかったら、死ぬ気で逃げろよ?
ムカゼ :あ、なんかヤバ・・・
ポンヤンペ:はぁぁっ!
ムカゼ :うわっとっ!?・・・って、ええぇぇっ!?
ポンヤンペ:外したか。
ムカゼ :まって!地面えぐれてますけど!?その短刀の剣圧で地面えぐれてますけど!?
ポンヤンペ:正しくは、この刀から発せられた神威(かむい)の所為だ。言っただろ?地形が変わるって。
ムカゼ :おいおい。マジで勘弁してくれよ。こんなのの相手なんてェ・・・できるわけねぇだろっ!
(切りかかるムカゼ。しかし、刃がポンヤンペの眼前で止まる)
ポンヤンペ:今、俺には普通の刀じゃ通用しない。俺を斬りたければ、同等の神格兵装をもってこい!
ムカゼ :マジかよ!行けっ!百足地獄(ひゃくそくじごく)!
ポンヤンペ:無駄だ!雷撃雨(らいげきう)!
ムカゼ :カミナリの雨って・・・!
ポンヤンペ:集え!天の雷!そして、眼前の敵を・・・
彩瑛 :ポンちゃん!ストーップ!
ポンヤンペ:っ!?サエ!?どうしてここに!
伽子 :私が連れてきた。・・・つか、派手にやってくれたな。
ムカゼ :伽ぁ子ぉぉぉ!こわかったよぉぉぉ!
伽子 :うるせぇ、耳元で喚くな。そして、抱き着くな、うっとうしい。
ポンヤンペ:・・・どういうことだ。
伽子 :訓練だよ。訓練。テメェのな。
ポンヤンペ:訓練だと・・・?
伽子 :お前、本気っつか、全力で戦ってきてねぇだろ。
それをコイツに見せるためにワザとムカゼをけしかけた。
ポンヤンペ:けしかけた・・・。では、さっきの言葉は・・・
ムカゼ :あ?あの、伽子の意志には従わねぇって?嘘に決まってんじゃん。
ポンヤンペ:なんだと!?
彩瑛 :あ、あの!ポンヤンペ!戦うつもりないなら、それ。仕舞ってくれないかな?
ポンヤンペ:あ?この鎧か?
彩瑛 :うん。バチバチうるさくて・・・っていうか、動くたびに火花散って危ないから!
ポンヤンペ:あっ!す、すまん!『神獣よ。元の座へと帰り給え』
彩瑛 :ありがと。・・・っていうか、すごいね。今の。
ポンヤンペ:あ、ああ。見せたことはなかったな。
伽子 :自然の英霊。死後、神として召し上げられた、人ならざる人。
その力の具現があれってか?
ポンヤンペ:ああ、そうだ。本来、自然が持つ力。人が忘れ去った本当の恐怖を具現化したものだ。
伽子 :フン。だが、持っていても使わないなら宝の持ち腐れだな。
ポンヤンペ:これは、最後の切り札だ。早々、使えるか。
伽子 :だが、コイツに教えていないのは問題だぞ?
ポンヤンペ:それは・・・
伽子 :まぁ、そこから先はお前らで決めたらいい。んじゃ、私らは先に帰ってるぜ。
ムカゼ :ふふーん。んじゃ、またあとでなー
彩瑛 :・・・ねぇ、ポンヤンペ。
ポンヤンペ:すまない!サエ。隠すつもりはなかったんだ!いまさら言っても遅いかもしれないが・・・その・・・。
彩瑛 :ポンちゃん!(抱き着く彩瑛)
ポンヤンペ:ポンちゃ・・・え!?ど、どうしたサエ!?熱でもあるのか!?
彩瑛 :やっぱり、すごい人だね。ポンヤンペは。さっきのとてもかっこよかった。
ポンヤンペ:あ、ありがとう・・・
彩瑛 :だからね。隠してた事とか謝らなくていいよ。なにか理由が有ったんだろうし、そういった信念があるなら私は待つから。
ポンヤンペ:サエ・・・。
彩瑛 :だから、謝らないで。
ポンヤンペ:・・・いや、悪かった。契約者と担い手は二人で一つだ。
そういった信頼関係の元でともに戦うべきなのだ。だから、謝らせてくれ。済まない。
彩瑛 :いいのに。生真面目だね。
ポンヤンペ:見た通り、俺の本当の力は精霊から授かった力だ。しかし、あまりに強大すぎて、場を荒らす。
そのため、あまり使うことを良しとしたくないのだ。
彩瑛 :そっか。わかった。ポンヤンペが使わないって決めたんなら私も使わない。
ポンヤンペ:・・・いいのか?
彩瑛 :うん。いいよ。だって、それがポンヤンペの意志だから。
ポンヤンペ:・・・ありがとう。
彩瑛 :でも、さっきの恰好。すごかったね。虎の毛皮被って、フェイスペイント・・・?だっけ?あれもしちゃって。
本当に英雄なんだ!って思った。
ポンヤンペ:あっ・・・いや。あれは・・・その・・・。
彩瑛 :ん?どうしたの?ポンヤンペ。
ポンヤンペ:その・・・笑わないでくれるか・・・?
彩瑛 :うん?なにが・・・?
ポンヤンペ:これから言うことにだ。
彩瑛 :うん。笑わない。
ポンヤンペ:その・・・使いたくない理由は、もう一つあってな。
さっきの姿になると、隈取(くまど)りができるだろ?
彩瑛 :うん。赤と、黒で線がでるけど・・・。
ポンヤンペ:あれが・・・その・・・少々はずかしくて・・・。
彩瑛 :え・・・?
ポンヤンペ:口調も、振る舞いも男っぽいというのはわかっている!
しかしだ・・・。一応、俺も女だ・・・。だから、その、さらに男っぽくなるのが、恥ずかしいというか、なんというか・・・
彩瑛 :・・・ぷっ・・・あはははははっ!
ポンヤンペ:なっ!?わらったな!?
彩瑛 :ごめんごめん!けど・・・アハハ!やっぱりポンヤンペも女の子なんだって思ったらつい・・・
ポンヤンペ:い、今、失礼なことを言っているぞ!サエ!
彩瑛 :ごめんってば。さ、早く帰ろ!晩御飯作らなくっちゃ
ポンヤンペ:こら!サエ!逃げるな!
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伽子 :全く、お気楽なやつらだ。
ムカゼ :つか、伽子ぉ。盗み見趣味あったの?変態さんだ・・・がはっ!?
伽子 :そんなんじゃねぇよバカ。妙な喧嘩にでもなったらどうすんだ。
ムカゼ :・・・保護者?
伽子 :もっかいぶん殴ってやろうか?
ムカゼ :やーん。伽子こわぁい
伽子 :まぁ、いい。なんだかんだで、まとまったんならそれで・・・ぐっ。(目眩を感じふらつく
ムカゼ :ん・・・?伽子?
伽子 :・・・なんでもねぇ。ちょっと、目眩がしただけだ。
ムカゼ :そう?ならいいんだけどよ。
伽子 :・・・なぁ、ムカゼ。
ムカゼ :ん?なんだ?
伽子 :もし、私が使い物にならなくなったら。その時は、お前。どうする?
ムカゼ :そうだなぁ・・・。丸ッと取り込んで、次の奴探す?
伽子 :っ!!・・・そうか。
ムカゼ :なーんちゃって。嘘だよ。伽子以外に俺を使いこなせるのいないし。
使い捨てみたいに取り込んだりしないから・・・ん?伽子?
伽子 :・・・なんでもねぇ。んじゃ、私はお前に取り込まれないように頑張らなくちゃなァ?
ムカゼ :おーう!だから、お互い、元気でいようぜ?相棒。
伽子 :ハッ!いってろ、タコ。
ムカゼ :俺はムカデですぅー
伽子 :はいはい。そうだな。
ムカゼ(М):この時の俺は、気づいていなかった。伽子の身に起こっていることを。
そして、この見落としが。この先に1つの影を落とすことになるのだった。
to be continued...
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シナリオの感想とか演じてみて台本としての感想とかいただけると作者がよろこぶかも・・・w
こちらの台本はコンピレーション企画「Arc Jihad(アークジハード)」にて
書かせて頂いたものです。
他の参加者様の台本はこちらへ