Arc Jihad -狂乱の舞-
♀赤阪 彩瑛(アカサカ サエ):17歳。適合者。ポンヤンペの前契約者であった秋弥の妹。
理知的で、兄思いの少女。原因不明の病があり、失明状態。
自分を救う為、また、世界を救う為契約者となった兄の遺志を継ぎ、
自分自身も契約者となる。
♀ポンヤンペ:聖剣クトネシリカの担い手。ポンヤンペという名前だが、正確にはポンヤンペの人格をインストールされた異世界人。
男勝りな性格で、姐御肌。何があっても人を守り、魔剣を滅ぼすという信念を持ち、がさつなようで実は思いやりに長けた人間。
前契約者である秋弥を守れなかったことに自責の念を感じている。
♀バートリ・エルジェーベト:『血の伯爵夫人』という異名を持つ女性の人格をインストールされた異世界人。
情緒不安定であり、空想癖のある女性。
♀宇良上 智香(うらがみ ともか):17歳。適合者。マイナス思考であり、卑屈。
家族から虐待を受けており家に居場所が無く引きこもりであった所、バートリと出会い契約した。
♀彩瑛:
♀ポンヤンペ:
♀バートリ:
♀智香:
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智香 :・・・バートリ。
バートリ :なんだ。智香?呼んだか?
智香 :ううん。なんでもない。
バートリ :そうか。なら良いのだ。
智香 :・・・・・。(溜め息)
バートリ :今日も、相変わらずの暗い部屋よな。昼間だというに、光がない。
智香 :開けたいなら開けて良いよ。
バートリ :智香が嫌なのであろう?だったら、開けぬよ。
智香 :ありがと。
バートリ :それに、暗い部屋は嫌いでない。自分のこの頭に、様々な思考を巡らせることが出来るのだからな。
智香 :空想なんて楽しいの?
バートリ :楽しいなんて物ではない。この世の全てがそこにはあるぞ。自分だけの世界だ。
智香 :そう・・・良かったね。
バートリ :智香もやってみると良い。さすれば、気分も少しは晴れるんじゃあないか?
智香 :そんな、簡単に晴れたら苦労しないよ。
バートリ :そうか・・・。ならば仕方ない。私1人で楽しもう。
智香 :・・・なんで?
バートリ :なにがだ?
智香 :なんで私を選んだの?
バートリ :契約のことか?それは至極簡単よ。
そこに智香が居たから。それ以外になにがある?
智香 :私以外でも、契約できる人はいるんじゃないの?
バートリ :うむ。それは居るだろう。
智香 :私なんかでいいの?そっちの人の方が色々とやりやすいんじゃ・・・
バートリ :うむ。いい。私は智香が気に入っている。
智香 :そうなの・・・?
バートリ :ああ、そうとも。なんせ、あの様な宴を私の為にもよおしてくれるとは思わなかった。
智香 :宴・・・?
バートリ :なんだ?もう忘れたのか?下の階の事だ。
智香 :ああ、アレ?あれは宴でも何でもないよ。ただ、私がしたかったことをしただけ。
バートリ :さようか。とはいえ、私にとっては良き宴であったぞ?
智香 :そう?ただの親殺し。簡単にいうと殺人だよ?
バートリ :フフフ・・・。私は智香のそういうところが気に入ったんだ。
私と契約し、その直後に『親殺し』という神経が沸き立つ様な見せ物を、智香の手で見せてくれた。
私はな?智香。この世界や、はたまた生死などはどうでも良い。欲しいのはただの悦楽よ。
それを見せてくれるなら、いつまでも智香の側にいよう。
智香 :側に居てくれる?
バートリ :ああ、居るぞ?楽しいモノを見せてくれるなら。
智香 :そう・・・ならいいんだ。
(智香、立ち上がる)
バートリ :おや?どうした。智香。どこか行くのか?
智香 :楽しいこと。しに行こうか?
バートリ :ほう!それは殺しか?それとも、性の悦楽か!?私はどちらでも構わぬぞ!?
智香 :バートリのしたい方で良いよ。
バートリ :ほほう。そうだの。なやむのぅ。うーむ。とりあえず、行きながら考えるとしよう。
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彩瑛 :Arc Jihad(アークジハード)-狂乱の舞-
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ポンヤンペ:関東に来てみたは良いモノの・・・。
彩瑛 :セレスさんが居ないなんて・・・。
ポンヤンペ:しかも、何処にいるか解らないとか。大丈夫なのか?セレス派は・・・。
彩瑛 :まぁ、聞くところによると、セレスさんってすごく自由人って事みたいだから(苦笑
ポンヤンペ:まったくもう・・・。
彩瑛 :とりあえず、関東支部の人達も連絡が付き次第、こっちに連絡してくれるみたいだし、気長に待とうよ。
ポンヤンペ:とはいえだ、この間にも闘いは続いている。あまり長引くのは良くない。早くそのセレスという人間を見つけるべきだ。
彩瑛 :ポンヤンペ。どうしたの?
ポンヤンペ:なにがだ?
彩瑛 :なにを、焦ってるの?
ポンヤンペ:焦ってなどいないさ。
彩瑛 :焦ってるよ。
ポンヤンペ:焦って等無い!(怒鳴る
彩瑛 :っ!(驚く
ポンヤンペ:あっ・・・いや、すまない。怒鳴るつもりは・・・。
彩瑛 :ねぇ、ポンヤンペ。
ポンヤンペ:・・・なんだ?
彩瑛 :何を考えているの?教えてよ。
ポンヤンペ:いや・・・特に何も。
彩瑛 :何も無い訳ないよ。最近ずっとイライラしてる。
ポンヤンペ:イライラなぞ・・・
彩瑛 :してる。それも、魔剣とかの気配がある度に。
ポンヤンペ:・・・・・。
彩瑛 :何を気にしてるの?何に怯えてるの?
ちゃんと話してくれないとわからないよ。
ポンヤンペ:・・・サエは、知らなくて良い。
彩瑛 :知らなくて良い訳ないよ!私は、ポンヤンペが心配なんだよ!?
ポンヤンペ:要らない。そんな心配は。
彩瑛 :ポンヤンペ!
智香 :良い匂い。
彩瑛 :誰ッ!?
智香 :良い匂いがするね。キミ。
バートリ :今宵の贄(にえ)が決まったな。
ポンヤンペ:この気配は魔剣!?なぜ気づけなかった!?
バートリ :ほほう。面白い成(な)りをしておるの。そこの聖剣。
ポンヤンペ:なんだ・・・この異様な気配は・・・。
智香 :ねぇ、バートリ。
バートリ :なんだ?智香。
智香 :今日はいつまで持つかな?
バートリ :さぁな。それはやってみないと解らぬ。
彩瑛 :ポンヤンペ!剣を!
ポンヤンペ:集え!大地の力。クトネシリカ!
サエ、使え!
彩瑛 :うん!
バートリ :ほほぅ、短刀使いか。面白そうだ。
智香 :バートリ、私達も。
バートリ :うむ、やろうぞ。悦楽の女神よ、舞い踊れ。ブラスメイデン。
ほれ。智香。
智香 :ありがと、バートリ。
バートリ :楽しい宴を始めよう。
ポンヤンペ:おふざけが過ぎると痛い目にあうぞ!雷撃獣砲(らいげきじゅうほう)!
バートリ :おっと、危ない。
彩瑛 :ポンヤンペ!突っ込みすぎ!
智香 :あなたの相手は・・・私っ!(杖を振りかぶる
彩瑛 :くっ!?(回避
智香 :もう一回!
彩瑛 :させないっ!(杖の攻撃を受け流す
智香 :うん。良いね。受け流すってこういう事を言うのかな?
彩瑛(M) :なに、この子・・・。戦いのスキルがまるで無い・・・。
智香 :ねぇ。
彩瑛 :えっ!?(考え事から我に返る
智香 :・・・来ないの?
彩瑛 :来ないのって・・・?
智香 :あなた、守ってばっかり。知ってる?戦いは攻めないと終わらないんだよ?
彩瑛 :それは、そうだけど。
智香 :だから、早く来てよ。
彩瑛(M) :なにを考えているの?この人・・・。
智香 :・・・つまんなぁーい。(座り込む
彩瑛 :えっ?
智香 :戦いに集中してくれないから、つまんない。
あなたは戦ってくれないから、座る。
彩瑛 :あなたは・・・一体・・・。
ポンヤンペ:ぐっがぁっ!?
彩瑛 :ポンヤンペ!?
ポンヤンペ:ぐっ・・・だ、大丈夫だ。サエ。
バートリ :ほら、ほら。どうした?不思議な鎧を着た騎士よ。
私を捉えてみせよ。・・・ん?どうした。智香。座り込んで。
智香 :あの子、私の相手を真面目にしてくれない。
バートリ :おや、嫌われたか?可哀想に。よしよし、頭を撫でてやろう。(智香の頭を撫でる
智香 :えへへ。ありがと。
ポンヤンペ:なんなんだ、コイツ等は。
彩瑛 :ポンヤンペ。一旦、逃げよう?あの2人、なんだかおかしいよ。
ポンヤンペ:敵を前に逃げるのは気が進まないが・・・。そうした方が良さそうだ。
バートリ :聞こえておるぞ?聖剣よ。この場から逃げるなぞさせぬ。
甘美なる悲鳴を包み、閉ざせ。『ルーム・オブ・チェイテ』
ポンヤンペ:しまった!
彩瑛 :これは・・・結界!?
バートリ :現世(うつしよ)からこの空間だけを隔離する結界よ。
私が結界を自分で解くか、私を倒さぬ限りここからはでられぬぞ?
智香 :これで、少しはやる気になってくれたよね?
ポンヤンペ:やるしかないな。
彩瑛 :うん、なにが来るか解らないから気をつけないと。
智香 :それじゃ、いくよ?はぁぁっ!
(彩瑛、攻撃回避)
彩瑛 :っと。やっぱり、リーチ差が辛い。
バートリ :こちらも、楽しもうぞ?聖剣。
ポンヤンペ:望むところ!吹き荒れよ、大気の咆哮。旋風撃(せんぷうげき)!
バートリ :ほう、突風か!面白し!・・・この身に降り注ぎし災いは巡りて、彼(か)の者に帰る。
ポンヤンペ:避けない!?どうするつもりだ。
バートリ :リベンジ・ジャッジメント!
ポンヤンペ:旋風撃が跳ね返された!?くっ!(跳ね返った自分の攻撃を回避)
バートリ :ほれほれ。もっと見せておくれ?私に楽しみを教えておくれ。
ポンヤンペ:くそ・・・。やりづらい奴・・・。技が返るなら、剣術でっ!
バートリ :おお、肉弾戦か!それもまた一興!
ポンヤンペ:ほざいてんじゃねぇっ!だらぁっ!(袈裟斬り
バートリ :ぬるいわ!この程度、私でも防げる!
ポンヤンペ:剣戟はな?
バートリ :なに?
ポンヤンペ:剣(けん)に纏う稲妻よ。奔(はし)れ。迅雷(じんらい)!
バートリ :ぐがぁぁぁぁぁぁっ!?
ポンヤンペ:遠距離で防がれるなら、近距離で。だ。
バートリ :・・・くく。カカカ。アハハハハハハハッ!
ポンヤンペ:っ!?至近距離の電撃に耐えた!?あり得ない!
バートリ :いいぞ?すごく良い!この様な身の毛がよだつ感覚。たまらぬ!
ポンヤンペ:狂乱者め・・・。
彩瑛 :ぐっ・・・あぁっ!?
ポンヤンペ:サエ!?大丈夫か!
彩瑛 :う、うん。ちょっと圧(お)されただけだから・・・。
智香 :まだまだ、これからだよ?
彩瑛 :この2人・・・。なにかおかしい。
ポンヤンペ:ああ。どれだけ傷ついても向かってくる。
彩瑛 :どんな怪我も恐れてない・・・。
ポンヤンペ:厄介だぞ。こういう相手は。
智香 :怪我を恐れてないんじゃないよ?
ただ、自分が怪我して辛くなることよりも人の死が見たいだけ。
彩瑛 :どうして!そんなことするの!?
バートリ :それが、愉悦だからよ。
ポンヤンペ:愉悦・・・?人の命を奪って、それが愉悦だというのか!
智香 :狂ってるって思う?
バートリ :だが、お前達にもあるだろう?敵を排除して安堵することが。
智香 :人の死を見たら、自分が生きてると実感できるでしょう?
彩瑛 :それは、おかしいよ!間違っている生を実感する在り方だよ!
バートリ :では聞こう。どうすれば生を理解する?
ポンヤンペ:生は理解するものじゃない!大切にして生きていく物だ。
智香 :それは堕落者の考えだよ。
彩瑛 :愛情を噛み締めて生きていくのが、人間が人間らしく生きる在り方だよ!
智香 :愛情を噛み締める・・・ねぇ。
バートリ :愛情なんて、全てまやかしだ。
智香 :親なんてのも、結局突き詰めれば、ただの他人だし。
ポンヤンペ:なんてことを・・・。
彩瑛 :肉親は、自分を生んでくれたかけがえの無い人達なんだよ!?
智香 :私に取っては、単なる他人。私の居場所を奪う悪魔。
バートリ :ああ、可哀想な智香。毎日毎晩、酷いことをされてきたんだものなぁ?
殺したくなるのもうなずける。
ポンヤンペ:まさか・・・貴様・・・
バートリ :ふむ、察したようだの?その察しで間違いないぞ?智香は親を殺しておる。
最後に手を貸したのは私だがの。
智香 :でも、選んだのは私。これ以上、耐えられなかったから。
ポンヤンペ:だからって、親殺しが許される道理はない!
バートリ :アッハハハハ!下らないわねぇ。
智香 :自分の命が奪われそうなのに、その奪おうとしている相手も愛するなんて出来る?
彩瑛 :それは・・・。
ポンヤンペ:サエ。もう止めよう。こいつらと話し合ったとしても、わかり合うことは出来ない。
これは、実力で止めるしか。
彩瑛 :うん。そうだね・・・。いくよ、マージウェイク。
ポンヤンペ:ああ、そうしよう。マージ・・・ウェイク!
智香 :こっちも、マージウェイクしよう。
バートリ :ええ、優雅にイきましょう?マージウェイク!
ポンヤンペ:速攻だ。相手に何もさせるな!
彩瑛 :わかってる!剣(けん)に纏う稲妻よ。奔(はし)れ。迅雷(じんらい)っ!
智香 :あっははは。しびれる!痛いね!でも、まだまだっ!
彩瑛 :なんで・・・向かってこられるの!?
ポンヤンペ:サエ!集中しろ!
彩瑛 :えっ!?
智香 :貫くは無慈悲な杭(くい)。ルージュ・ストックス!
彩瑛 :無数の・・・杭!?
ポンヤンペ:防御だ!大いなる大地の隆起(りゅうき)は守護の盾!
守岩壁!(しゅがんへき)
智香 :ンフフ・・・無駄だよ?
彩瑛 :壁が・・・割れる!?
ポンヤンペ:押し負ける・・・!?サエ!上に飛べ!
智香 :理不尽な暴力は上から降り注ぐ。スタンプ・ロック
彩瑛 :上が・・・ふさがれたっ!?これじゃ逃げられ・・・あぁぁぁっ!?
智香 :杭に打たれたね?
彩瑛 :ぐ・・・あ・・・
ポンヤンペ:大丈夫か!?サエ!?
彩瑛 :怪我は大丈夫・・・急所は外してる。だけど、動けない・・・。
バートリ :さぁ、死の瞬間を見せておくれ?
ポンヤンペ:させないっ・・・サエは、殺させない!マージウェイク解除!はぁぁっ!
彩瑛 :ポンヤンペ!
智香 :邪魔だよ。
バートリ :沈黙するは自由。バルバロイ・ロック。
ポンヤンペ:ぐっ・・・クソ・・・拘束術・・・だと。
智香 :・・・なんか、つまんない。
バートリ :どうした?智香。
智香 :飽きた。楽しくない。
バートリ :そうか、まぁ、変な問答もあったからの。
興が削がれるのも無理はない。
智香 :それに、なんかこのまま殺しちゃうのもつまらないから。
あえて生かしておこうよ。
バートリ :ふむ・・・なるほど、それも面白いかものぅ。
ポンヤンペ:貴様等・・・なにを・・・
バートリ :ここは、見逃してやる。安心しろ。私らが遠くに離れたらすぐに動ける様になる。
ポンヤンペ:手心を加えて・・・どうするつもりだ。
智香 :べつに?面白そうだから。
バートリ :そういうことだ。それではな。次に逢う時はもうちょっと楽しめる様になっておいておくれ?
ポンヤンペ:くそ・・・くそがぁっ!
彩瑛 :ポンヤンペ・・・だい、じょうぶ・・?
ポンヤンペ:サエ・・俺は・・・俺は無力だ・・・
彩瑛 :そんなこと、ないよ?
ポンヤンペ:強さが・・・強さが欲しい。あいつらをぶっ殺せる大きな力を・・・
彩瑛 :えっ・・・?
ポンヤンペ:がぁぁぁぁぁっ!
彩瑛 :自力で、拘束を解いた?・・・ぐっ!?なに・・・この痛み・・・。
ポンヤンペ:力・・・大地の・・・ちガラ・・・
彩瑛 :や、止めて・・・ポンヤンペ・・・落ちついて・・・。
ポンヤンペ:モう・・・コロさせナイ・・・。
彩瑛 :ポンヤンペ・・・。大丈夫・・大丈夫だから・・・。
ポンヤンペ:ガァァァァァァァ!
彩瑛 :ポンヤンペ・・・だ・・・め・・・
彩瑛(M) :直後、私の意識が飛んだ。真っ暗な世界が眼前に広がった。
遠いところで、誰かの雄叫びが聞こえた。
それは、酷く恐ろしく。そして、同時に悲しげだった。
こちらの台本はコンピレーション企画「Arc Jihad(アークジハード)」にて
書かせて頂いたものです。
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