Arc Jihad(アークジハード) -正義の怒りと闇の覚悟-

♂赤阪 秋弥(アカサカ アキヤ):18歳ポンヤンペと契約した適合者。非科学的な力を持つ道具を崇拝する教団ミスティオンの聖剣派。
               精神的に幼く契約理由も、悪を倒すヒーローになりたいという安直な感情であり、言われるままに契約した。
               その言動や振る舞いは馬鹿としか思えないが、

♀ポンヤンペ:聖剣クトネシリカの担い手。ポンヤンペという名前だが、正確にはポンヤンペの人格をインストールされた異世界人。
       男勝りな性格で、姐御肌。何があっても人を守り、魔剣を滅ぼすという信念を持ち、がさつなようで実は思いやりに長けた人間。
       秋弥の幼さに苛つきながらも、相棒としては評価している。 

♂ムカゼ:むかぜ丸の担い手。長年放置された妖刀「むかぜ丸」から生まれた付喪神の人格をインストールされた異世界人。
    
♀白鳳 伽子(ハクホウ カコ):19歳。適合者。白鳳会というヤクザの一人娘であり現組長。感情の起伏が激しい一方、頭のキレる人間。
              父親殺しをした契約者を殺すためムカゼと契約した。親殺しの相手に復讐をするという狂気性が潜んでいるため、
              戦闘となると刀の担い手であるムカゼの狂気と同調し、内面の狂気性が増幅され、戦闘狂になる。


♂赤阪 秋弥:
♀ポンヤンペ: 
♂ムカゼ:  
♀白鳳 伽子:
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伽子(N) :『魔剣の担い手』と呼ばれる者達がいる。彼らは、異世界からやってきて、邪悪な力でこの世界を乗っ取るために暗躍している。

秋弥(N) :『聖剣の担い手』と呼ばれる者達がいる。彼らは、聖なる力を宿した剣を振るい、世を混乱に貶める魔剣を滅ぼすため、この世界へやってきた。

ムカゼ(N):この物語は、『聖剣』と『魔剣』そして、それらの剣と契約した人々のお話。


ポンヤンペ:Arc Jihad(アークジハード) -正義の怒りと闇の覚悟-


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秋弥     :支部長に言われるままに召喚の儀式ってヤツをしてみたのはいいものの・・・。何も起こらねぇじゃんかーっ!
        詠唱も間違ってないだろ?・・・魔方陣は間違ってないし。
        なんなんだよー。

ポンヤンペ  :おい。そこのお前。

秋弥     :もーいい。疲れた。休憩だきゅうけーい!

ポンヤンペ  :・・・見えてないのか?では、誰が・・・?

秋弥     :くかー・・・すぴー

ポンヤンペ  :コイツしかいないな。となれば、・・・おい。起きろ。

秋弥     :うむぅ・・・。俺の聖剣は・・・強いんだぞぉ・・・ムニャムニャ。

ポンヤンペ  :おい。起きろ。おいっ!

秋弥     :俺がこの世界をぉ・・・救うぅ・・・ムニャァ。

ポンヤンペ  :このっ・・・起きろ!このクソガキがぁッ!

秋弥     :おわぁぁっ!?な、なんだ!?何がおこっ・・・だれっ!?

ポンヤンペ  :誰・・・だと?散々この俺の呼びかけを聞いておきながら、答える事もしないで寝こけるバカがどこに居るっ!

秋弥     :え、な、なんか怒られてる!?・・す、すいません!すいません!

ポンヤンペ  :ったく・・・。お前だな?俺を呼んだのは。

秋弥     :えっと・・・どちらさまで?

ポンヤンペ  :何を言っている。俺はお前が呼んだ『聖剣の担い手』だ。

秋弥     :え?・・・まじで?

ポンヤンペ  :ここで嘘をついてどうする。

秋弥     :ぃぃぃいやったぁぁぁぁっ!ついに英雄になったぞー!

ポンヤンペ  :な・・・なんだ!?

秋弥     :やったぜー!英雄かぁー。どうしよ!サインとか求められちゃったりするのかな!

ポンヤンペ  :おい。何を盛り上がってる?

秋弥     :あ、ニュースとかで取り上げられて芸能界入りとかあったり・・・やっべー演技できるかなー

ポンヤンペ  :おいお前、話を聞け。というか・・・勝手に盛り上がるなっ!

秋弥     :だぁっ!?すいませんっ!

ポンヤンペ  :まったく・・・なんなんだ。この小僧は。まぁ、いい。
        お前。俺の姿が見えているな?

秋弥     :あ、ああ。一応。

ポンヤンペ  :ならば、お前が適合者であるという証拠だな。よし。
        お前、名前は?

秋弥     :赤阪秋弥だけど・・・。

ポンヤンペ  :アキヤ・・・。うむ。良い名前だな。俺はポンヤンペ。聖剣クトネシリカの担い手だ。

秋弥     :ポン・・・ヤ・・・呼びづらいなー!ポンちゃんでい・・・

ポンヤンペ  :良くないわボケっ!

秋弥     :ひいぃっ!

ポンヤンペ  :俺をバカにしてるのか?お前はっ!

秋弥     :しゅ・・・しゅいましぇんでした・・・。

ポンヤンペ  :全く・・・なんなんだ。コイツは。

秋弥     :適合者ですけど・・・

ポンヤンペ  :そんな事は分かっている!俺の言いたいことはそうじゃなく・・・
        あーっ!もういい!話が進まない!お前はちょっと黙って俺の話を聞け!

秋弥     :は、はい・・・。

ポンヤンペ  :お前。どこまでこの戦いを知っている?

秋弥     :えっと・・・。魔剣っていう悪いヤツらを倒すっていう感じですよね・・・?

ポンヤンペ  :そうだ。担い手と適合者。二者が一体となって悪事を働く者どもを滅するのが目的だ。
        そして、俺らは命を賭けそれを達するんだ。そこでだ。アキヤ。

秋弥     :な、なんでしょう?

ポンヤンペ  :お前に、命を賭ける気骨はあるか?

秋弥     :えっ?

ポンヤンペ  :今までの話を聞いていると、お前は適合者として選出され、浮かれているようだが、それではこの戦いは生きていけない。
        この戦いは命のやりとりだ。負けるということは死を意味する。それが分かっているのか?
      
秋弥     :えっと・・・。

ポンヤンペ  :お前の望む賞賛は、確かに受けられるだろう。戦いが熾烈になればなるほど。
        しかし、それは生き残ればだ。いつ、何処で、誰がお前を狙うか分からない。
        それを分かった上で、俺と契約するか?

秋弥     :・・・・・。

ポンヤンペ  :嫌だ。というのであれば、俺は契約を強制するなんてチンケなことはしない。
        他にも適合者はいる。今すぐ帰るといい。

秋弥     :・・・契約する。

ポンヤンペ  :覚悟はあるのだな?

秋弥     :俺ってさ。バカだからさ。難しい事はわかんない。
        だけど、俺、悪者を倒せるなら倒したいんだ。そのためなら何だってやるよ。

ポンヤンペ  :・・・なるほど。嘘ではないようだ。
        それに、お前は・・・バカではないな?

秋弥     :な、なんのことかな?

ポンヤンペ  :フフン。いい覚悟と信念を持っているのは分かった。
        ・・・いいだろう。契約を認める。お前に剣を授けよう。

秋弥     :あ、ありがとうございます。

ポンヤンペ  :あー。堅苦しいのは止めろ。肩が凝る。
        さっきのバカはどうした?

秋弥     :いや、なんだ。また耳元で怒鳴られるのは嫌だから・・・

ポンヤンペ  :もうしない。・・まぁ、苛つくことをしなければな。

秋弥     :心がけまーす。

ポンヤンペ  :さて、では、渡すぞ?・・・集え。大地の力。・・・クトネシリカ!

秋弥     :おお・・・

ポンヤンペ  :この刀を手に取れ。アキヤ。取ればお前は正式に俺のパートナーとなる。

秋弥     :お、おう。これで・・・うわっ!?な、なんだ!?急に刀が光って!?

ポンヤンペ  :焦るな。これはクトネシリカに宿る雷神の力がお前に反応しているんだ。

秋弥     :なるほど。・・・あ、収まった。

ポンヤンペ  :見て分かる通り、この刀は雷を操ることが出来る。遠近共に使えるからな。

秋弥     :がんばって使いこなしてみる。

ポンヤンペ  :・・・改めて、自己紹介しよう。クトネシリカの担い手、ポンヤンペだ。

秋弥     :赤阪秋弥です。よろしく。

ポンヤンペ  :では早速、戦いへ赴くとしよう。

秋弥(N)   :こうして、一組の聖剣チームが生まれた。
        熾烈な戦いの中に1つの希望が生まれた瞬間であった。

        (間)

        そして、この日から数ヵ月後に話は進む。


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 (間)


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ムカゼ    :ん?この気配・・・なぁ、伽子。

伽子     :どうした?ムカゼ?なにかあったか?

ムカゼ    :ドォやら近くに別の聖剣がいるみたいだゼェ?

伽子     :へぇ・・・じゃあ、私の親父を殺したヤツかもしれないんだな?

ムカゼ    :ノッてきたぜ!伽子!楽しいパーティを始めようぜっ!

伽子     :はいはい。そうだな。分かったから大声出すな。・・・まずはここの始末をつけないとな。

ムカゼ    :あーぁ。そうだったそうだった。この雑魚い聖剣サマをクズ鉄に仕上げようぜ?

伽子     :分かってる。マージ・ウェイク、行くぞ?

ムカゼ    :ああ、あっと言う間にかたづけてやる。
        ・・・マージ・ウェイクっ!
 
伽子     :この感じ・・・やっぱり慣れないな。って訳だ。クズ共!
        ウチのシマを荒らした落とし前ツケさせてもらうぜっ!?

ムカゼ    :良い気分だァ!気が狂っちまいそうだ。アーッハハハハッ!

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 (間)


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秋弥     :ふぃー。終わった終わったぁー。

ポンヤンペ  :あっさりと終わったな。もう少し手間取るかと思ったんだけどな。

秋弥     :それって、俺が強くなったって感じ?

ポンヤンペ  :ただ、格下だっただけだ。自慢にはならないぞ。

秋弥     :ちょっとは褒めてくれてもいいんじゃない?

ポンヤンペ  :ダメだ。お前が図に乗るからな。

秋弥     :ちぇー・・・なぁ。ポンヤンペ。

ポンヤンペ  :なんだ?

秋弥     :マージ・ウェイクってなんだ?

ポンヤンペ  :・・・・は?

秋弥     :なんかさ。さっき戦ったヤツがやってただろ?なんか合体みたいな。

ポンヤンペ  :そんなことも知らないのか。

秋弥     :うん。知らね。

ポンヤンペ  :はぁ・・・。我ながらこの数ヶ月、良く生き残ったな。

秋弥     :ちょっ!?なんでそんな遠い目するの!?

ポンヤンペ  :基本的なことだからだっ!
        ・・・解説するとだな?マージ・ウェイクとは、お前と俺が一体となることで、お前自身が俺の持つ力を使う事が出来るようになるんだ。
      
秋弥     :ほえー・・・例えば?

ポンヤンペ  :刀の能力がお前の意思で使える。今、お前が刀から雷を放出できているのは、俺が刀に眠る力を発動させているからだ。
        お前が、どれだけ発動させようとしても、俺の力無しでは放てない。

秋弥     :それが、マージ・ウェイクすれば出来るってことだな。
      
ポンヤンペ  :そうなる。そして、加えて言うと、俺自身がもつ力も使えるようになる。

秋弥     :ポンヤンペが持つ・・・力?

ポンヤンペ  :俺は剣だけでなく、弓矢の使い手でもある。だから、一体となることで弓矢を扱うことも出来るようになる、ということだな。

秋弥     :すっげー。・・・あ、だからいつもこの弓持たされてるのか。じゃあさ、次からはそれやって倒していこーぜ?

ポンヤンペ  :だが、コレにはデメリットがある。

秋弥     :デメリット?

ポンヤンペ  :お前達、人間には扱えない力を一時的とはいえ得るのだ。
        長時間一体化していれば身体が崩壊していくだろう。
        それに、このマージ・ウェイクはお前の精神力を使う。やり過ぎると、俺は、お前を取り込んでしまう。

秋弥     :取り込むって・・・乗っ取られるって事?

ポンヤンペ  :そうなるな。1つの身体の中に2つの異なった人格が入り込むんだ。
        お前の人格がどんなに耐性があったとしてもいずれは消える。だから、長時間は出来ないんだ。

秋弥     :必殺技みたいなもんか・・・わかった。使いどころは気をつけよう。

ポンヤンペ  :そうしてくれ。・・・時に、アキヤ。なにを食べているんだ?

秋弥     :んー?棒アイス。さっき買ってたんだよねー。

ポンヤンペ  :戦いの直後というのに・・・。

秋弥     :だって、溶けるじゃん。コンビニ出たところで魔剣に襲われちゃったから食べ損ねてたし。

ポンヤンペ  :全く・・・お前といると気が抜けるな・・・。

秋弥     :へへー。それほどでもー。

ポンヤンペ  :褒めてないからなっ!?

伽子     :あー。ちょっといいか。

秋弥     :んあ?あ、ハイ。なんですか?

伽子     :お前、ここでなにしてる?

秋弥     :へ?えっと・・・アイス食ってます。

伽子     :それは見たら分かるんだよ。私が聞きたいのは何で『こんな時間』に『こんな場所で』アイスなんか食ってんのかって事だ。

秋弥     :えーっと。なんとなく?

伽子     :・・・・はぁ〜っ。

ポンヤンペ  :アキヤ・・・。お前、呆れられてるぞ?

秋弥     :なっ!?そ、そんなことねぇって!

伽子     :バカを演じてるのか、それとも本当のバカなのか。・・・まぁ、どっちでも良い。
        私が本当に聞きたいのはここに居る理由とかじゃ無いしな。

秋弥     :あの〜?さっきから何ぶつぶつと・・・

伽子     :お前、白鳳亮司(はくほう りょうじ)って知ってるか?

秋弥     :んー?どっかで聞いたような・・・。たしか、ここら辺で有名なヤクザだったっけ?

伽子     :他には?

秋弥     :この間、何者かに殺されたっていうのをニュースで見たけど。

伽子     :・・・他。

秋弥     :んー。まだ犯人が捕まってないって事くらい?全く知らないんだ。
      
伽子     :ちっ・・・ハズレか。

秋弥     :ハズレってどういう事?

伽子     :どうせ違うだろうが、最後に1つだけ聞く。・・・お前が殺したのか?

秋弥     :そんなまさか。というか、ごめん・・・なんか、さっきから話が見えないんだけど?

伽子     :白鳳亮司はな。私の父親だ。それで今、私はお前を疑ってる。いや、正式には疑っていた。だけどな。

秋弥     :な、なんで!?

伽子     :お前・・・契約者だろ?そこに担い手もいるしな?

ポンヤンペ  :なっ!?

秋弥     :あんた・・・見えてるのか?

伽子     :当たり前だ。だから声を掛けた。
        私の父親を殺したのは、世の中で魔剣とか聖剣って呼ばれてるヤツだ。そして、そいつ等は基本二人一組で動いてる。
        今のお前達みたいに。

秋弥     :ちょっ、ちょっと待ってくれ。ほ、本当に俺だけじゃなく、ポンヤンペも見えてるのか!?

伽子     :だから、さっきからそういってるだろ。

秋弥     :(小声)・・・おい。ポンヤンペ。お前今、実体化してないよな?

ポンヤンペ  :してない。・・・契約者の可能性があるな。

秋弥     :・・・どっちだろう?

ポンヤンペ  :わからん。だが、注意して置いた方がいいかもしれん。探ってみる。
        ・・・ノイズが酷くてどちら側なのか分からないな。

秋弥     :まじかよー。どうする?

伽子     :どうした?トンズラでもする算段か?
        ま、計算したところで逃がさないけどな。

秋弥     :ま、待ってくれ。キミは、どっち側なんだ?

伽子     :どっち側?

ポンヤンペ  :聖剣か、魔剣か。私が見えているということは、お前もアキヤと同じ適合者で、契約者のはず。
        どちらの側でこの戦いに参加してる?ちなみに私は聖剣だ。名をポンヤンペという。
        もし、聖剣側ならば、お前と私達は共に戦う同志だ、お互いを傷つけるような事は・・・

伽子     :ハッ。バッカじゃねぇの?どちら側?同志?んなもんどっちでもねぇ。
        言っただろ?私は自分の父親を殺したヤツを、この手で苦しめるために力を手にしてるんだ。
        下らない戦争ごっこは他所でやってろ。

ムカゼ    :なぁなぁ。伽子〜。そろそろいいんじゃね?斬っちまおうぜ?こいつ等。

秋弥     :なっ!?いつの間に!?

伽子     :出てくんじゃねぇって言わなかったか。ムカゼ。お前が出てくるとややこしくなるんだよ。

ムカゼ    :でもよぉ。ずぅ〜っと堂々めぐりじゃんよ?
        コイツらが伽子の親父さん斬ったかどうか怪しい。けど、実証はない。
        じゃあ、もういっそのこと斬ってみればイイじゃん。魔剣の俺を狙う敵が減って、容疑者も消えて一石二鳥じゃん!

ポンヤンペ  :魔剣側・・・コイツが担い手か。

秋弥     :ムカゼって言ってたな。・・・何か知ってる?

ポンヤンペ  :わからない。無名妖刀の類かもしれない。

ムカゼ    :あん?今、テメェ無名って言ったか?この、俺の事を無名って言ったか!?

伽子     :止めろ、ムカゼ。これ以上ややこしくするな。

ムカゼ    :だってよぉ!こいつ等、俺の事・・・

伽子     :黙ってろ。・・・お前等、本当にやってないんだな?

秋弥     :やってない。悪い事してるヤクザって言っても、この戦争に関係の無い人間だったら手は出さない。

伽子     :・・・・・。信じてやる。お前等もう行っていい。失せろ。

ムカゼ    :えー。暴れるのナシかよぉー。

伽子     :私は不毛な争いは嫌いなんだ。

ムカゼ    :ちぇーっ。

ポンヤンペ  :待てっ!

伽子     :あ?

ポンヤンペ  :例え、この戦争に不参加だと語っているとはいえ、お前は魔剣の担い手。
        ならば、私はお前をこのままにして置く訳にはいかない。

秋弥     :ど、どうしたのさ、ポンヤンペ。殺気立って。

ポンヤンペ  :嫌な予感がする。コイツをここで見逃したら、この後、悪い事が起こりそうな気がするんだ。

ムカゼ    :おー?向こうさんやる気みたいだねぇ!どうする?どうするよっ!

伽子     :テメェ、さっき私が言ったことが聞こえなかったか?私は、失せろって言ったんだ。
        お前等を見逃してやってんだけど?

ポンヤンペ  :見逃されるほど、俺は落ちぶれてはいないし、俺は、俺の持つ信念を放棄する訳にはいかない。

伽子     :大口叩くんじゃねぇぞ?聖剣。それ以上喧嘩吹っ掛けてくるってんなら、出るとこ出させて貰う事になるんだからよ?

ムカゼ    :おーぅ!かっこいいぜ伽子!

秋弥     :ポンヤンペ。ホントに、やるのか?

ポンヤンペ  :ああ、あの二人を中心に空気が淀むのが分かる。自然の声が言っているんだ。こいつ等を放って置くなって。

秋弥     :・・・なら、仕方ないな。ポンヤンペの直感と自然の声が合わさったら外れることは先ず無いし。
        悪い事になる前に、元を断ち切ろう。

ムカゼ    :腹括っちゃったみたいだぜぇ?向こうさん。

伽子     :・・・お前等、本当にやるのか?

秋弥     :ああ、もちろん。

伽子     :殺される覚悟はあるんだろうな?

秋弥     :ああ。

伽子     :殺す覚悟も?

秋弥     :・・・・ああ。ある。

伽子     :ふん。バカの相手はコレだから嫌なんだ。・・・やるぞ、ムカゼ。

ムカゼ    :まってましたー。行くぜ−?伽子!・・・災い吹き荒れろ!むかぜ丸っ!

秋弥     :なんだあの刀。紫に光る・・・モヤ?

ポンヤンペ  :ぼぅっとするなアキヤ!こちらも行くぞ!集え、大地の力!クトネシリカ!使え!アキヤ!

秋弥     :お、おう!

伽子     :おせぇんだよ。ボンクラッ!

秋弥     :くっ!?一撃が・・・重いッ!?

伽子     :女だからって舐めんじゃねぇぞ?ダテに白鳳の代紋(だいもん)背負ってねぇんだ。

ポンヤンペ  :アキヤッ!

ムカゼ    :お前の相手はこの俺だゼェッ!?うらぁっ!

ポンヤンペ  :くっ・・そっ!雷撃獣砲(らいげきじゅうほう)!

ムカゼ    :おおっと!あっぶねぇなぁっ!

伽子     :どうしたボンクラ。この程度か?

秋弥     :くっ・・・見切れないっ!

伽子     :見えネェか?この太刀筋がよォっ!

秋弥     :刀が何処に振られるかわからないなんてっ!

ポンヤンペ  :落ち着け!アキヤ!先が読めないのは刀身が纏ってるモヤの所為だ!
        相手の動きを見ろ!刀身を見るな!

ムカゼ    :ほっほーぅ?やるねぇ、アンタ。伊達に聖剣の担い手じゃねぇってかぁ?

ポンヤンペ  :ピーピーうるさいヤツだなっ!うらっ!

ムカゼ    :へへーん。ハズレー。ほら、頑張って当てないと。いつまで経っても俺は倒せないよぉ?

ポンヤンペ  :いちいち・・・腹の立つヤツだっ!

秋弥     :ポンヤンペ!これ・・・まずいよな。

ポンヤンペ  :ああ、完璧に圧されてる。

伽子     :大口叩いた割に手応えのねぇ雑魚か。お前等はやっぱり私の追ってる仇じゃねぇな。

ムカゼ    :俺ら、まだ技の1つもつかってねぇもんなー

秋弥     :なんとかしなきゃ・・・

ポンヤンペ  :あの刀の能力が厄介だ。認識を錯乱させるモヤが邪魔だな・・。

秋弥     :モヤが晴らせれば・・・あ、そうだ!ポンヤンペ!風を操る技とかある!?

ポンヤンペ  :ああ、在るが。・・・なるほどな。やるか。

伽子     :話し合いは終わったか?

ムカゼ    :ラウンド・ツー。いくぜぇっ!

ポンヤンペ  :構えろ、アキヤ。同時に放つからな!?・・・吹き荒れよ大気の咆哮!旋風撃(せんぷうげき)!

伽子     :なっ!?ぐうっ!?

ムカゼ    :うおっ!?突風!?・・・しまった!モヤがすっ飛んじまった!

秋弥     :コレでいけるっ!はぁっ!

伽子     :ちっ!なめんじゃねぇっ!

秋弥     :太刀筋さえ、見えたらもう怖くねぇっ!

ムカゼ    :惑いの力現れろ、幻影・・・

ポンヤンペ  :させるかっ!

ムカゼ    :うおっ!?弓とか卑怯だろっ!?宝具は1つしか持っちゃいけねぇ約束じゃねぇのかよ!

ポンヤンペ  :生憎この弓はこの世界の道具だ。ルール違反じゃない。・・・狩猟の名手をなめるなっ!

ムカゼ    :くっそぉーっ!形勢が逆転されちまった!

伽子     :お前がちんたらしてるからだろうが!

ムカゼ    :だってよぉー。

ポンヤンペ  :アキヤ、一気に決めよう。・・・マージ・ウェイク。やるぞ。

秋弥     :ここでか!?まだ、練習してないのに!?

ポンヤンペ  :大丈夫だ。お前の適応力には一目置いてるんだ。いけるさ。

秋弥     :・・・分かった。やろう!

ポンヤンペ  :心を落ち着けろ。俺に合わせるんだ。マージ・・・

秋弥     :ウェイクっ!

伽子     :ちっ・・・。一気に本気になったか?

秋弥     :なんだ・・・この感覚・・・すげぇ、温かい。

ポンヤンペ  :それが俺の力。そして、自然の力だ。

秋弥     :ポンヤンペの・・・力。これなら、いける!

伽子     :何をする気かしらねぇが・・・調子に乗んじゃねぇぞガキ共っ!

ムカゼ    :あーりゃりゃ。頭に血が上っちゃったよ、伽子。

伽子     :ムカゼ!アレを出せ!

ムカゼ    :はいよ!・・・這い出せ混沌。百足地獄(ひゃくそくじごく)

秋弥     :なんだ?地面から何かが出てきて・・・って、ムカデ!?

ポンヤンペ  :近寄らせたらだめだぞ!

秋弥     :分かってる!・・集いて落ちろ!裁きの雷撃!爆雷乱打(ばくらいらんだ)!

ムカゼ    :雷落として焼いたか、わかってんじゃねぇか。

伽子     :感心してる場合か!

ムカゼ    :いーじゃねぇか。単なるムカデとしか思ねぇヤツばっかりだったんだしよ!

ポンヤンペ  :たたみかけろ!アキヤ!

秋弥     :おう!はぁぁっ!

伽子     :ちっ!ムカゼ!

ムカゼ    :はいはい。わーってるよ。・・・爆ぜろ。百足(ひゃくそく)。

ポンヤンペ  :しまったっ!アキヤ!飛べ!

秋弥     :おわっ!?な、なんだ!?

伽子     :タイミング遅いんだよ。ムカゼ!

ムカゼ    :わーるかったって。

秋弥     :あのムカデ・・・地雷にもなるのか。

ムカゼ    :そう。俺の魔力で作ったムカデ型の爆弾だ。爆ぜるも何も俺次第のな?

ポンヤンペ  :嫌らしい能力を使いやがる・・・。でも、まだ。まだ、こっちが上だ!

秋弥     :行くぜ!雷撃獣砲(らいげきじゅうほう)!

伽子     :ぐっがぁぁっ!?

ムカゼ    :伽子!

秋弥     :当たった!?

ポンヤンペ  :かすっただけだ!気を抜くな!

ムカゼ    :大丈夫か?

伽子     :なんだ・・・あの威力。かすっただけで、吹っ飛ばされたぞ。

ムカゼ    :頭冷えたぁー?伽子。

伽子     :少しは私の事を心配したらどうだ?

ムカゼ    :いや、かわしてたの見えたし、心配するだけ無駄じゃんよ〜。

伽子     :ああ、お前はそういうヤツだよ。・・・こっちもやるぞ。

ムカゼ    :お!待ってました!合体ターイム!

伽子     :ふざけてないで行くぞ。

ポンヤンペ  :アキヤ!させるな!

秋弥     :分かってる!

伽子     :マージ・・・

ムカゼ    :うえぇぇぇいくっ!!

秋弥     :はぁぁぁっ!・・・なっ!?止められた!?

伽子     :さぁ・・・こっからはガチでテメェの命。取らせてもらうぞ?

ムカゼ    :ってことでー。早速行くゼェっ!

伽子     :逆巻け混沌。真・百足地獄(しん・ひゃくそくじごく)

秋弥     :さっきと同じ技なんか・・・

ポンヤンペ  :何か違う!避けるんだ!アキヤ!

伽子     :もうおせぇんだよ!爆ぜろ!百足!

秋弥     :はっ!不発かよっ!遅いのはそっちの技のほう・・・ぐっ!?

ムカゼ    :へっへー。遅かったのはあんたでしたー

秋弥     :な・・・にが・・っ!?

伽子     :知らんだろうから教えておくぜ?このむかぜ丸はな、江戸期に生まれた『災いをふりまく妖刀』がモデルなんだよ。
        害虫を呼び寄せ、人を狂わせ、そして、毒をまき散らす。それがむかぜ丸の本当の力。

ムカゼ    :さっきまで見せてたのはその一部ってこと。今、キミが喰らったのは爆発でも無ければ、錯乱能力じゃない。
        ムカデ爆弾が抱えてた毒でぇーっす。

秋弥     :どく・・・だって?

伽子     :当ててやろう。今、お前の身体は自由に動かせねぇはずだ。第一段階。マヒ毒に犯されてる。
        その次に来るのは、喉の渇きと、幻覚。

ムカゼ    :そして、最後には?・・・呼吸ができなくなっちゃいまーす!
    
秋弥     :・・・く・・・そ・・・

伽子     :私にここまで本気を出させたのはお前が初めてだ。そこは評価してやる。
        だが、詰めが甘かったな。アマちゃん。

ポンヤンペ  :アキヤ!アキヤ!大丈夫か!?

秋弥     :ぐ・・・あが・・・

ムカゼ    :第二段階超えかけてるかな〜?そろそろ、諦めなって。

秋弥     :ポン・・・ヤンペ・・・ごめん。

ポンヤンペ  :アキヤ。喋るな!俺がなんとかして・・・

秋弥     :俺・・・もうムリだ。分かるんだ。・・・俺が死んだら、ポンヤンペ。アンタも・・・死ぬの?

伽子     :契約者の死亡は契約の破棄になる。担い手は元の世界へ還るか、この世界をまた彷徨うかのどっちかだ。それくらい知っとけ。
     
ムカゼ    :ま、その前に俺が斬るけどな!

秋弥     :ポンヤンペ・・・逃げてくれ。

ポンヤンペ  :ダメだ!そんなことは・・・

秋弥     :頼むよ。・・・俺からの・・・お願いだからさ。

ポンヤンペ  :ダメだ!認めない!俺が、俺の力でお前を治して・・・

ムカゼ    :ムリムリ。俺の作る毒はどんな治癒系の技使っても治せないから。
        俺が止めない限り。

秋弥     :しかたない。・・・なぁ、白鳳・・さん。

伽子     :なんだ?

秋弥     :俺の、担い手。ポンヤンペを・・・殺さないでくれないか?

ポンヤンペ  :おい・・・止めろ、アキヤ!止めてくれ!

秋弥     :虫の良い話かもしれない。・・・でも、俺は、ポンヤンペを、死なせたくないんだ。

ポンヤンペ  :止めろ!

伽子     :・・・いいだろう。

ムカゼ    :な、伽子!?

伽子     :決着と落とし前は付いた。別にオチをつけなくてもいいだろう。

ムカゼ    :でもよぉ〜。

伽子     :私が決めたんだ。従え。あと、いい加減、私の中から出ろ。頭の中で喋られるとうっとうしい。

ムカゼ    :はいはい。わかったよっと!これでいいかい?

伽子     :ああ、それでいい。・・・お願いはそれだけか?アマちゃん。

秋弥     :ああ・・・それだけだ・・・。

ポンヤンペ  :まて、取り消せ!アキヤ!お前を、お前をここで終わらせる訳にはいかない!

秋弥     :うん・・・そう言ってくれるだけで・・・もう十分だ。

ポンヤンペ  :アキヤ、しっかりしろ!同調が解ける!意識を俺に向け続けるんだ!

秋弥     :そうしたら・・・ポンヤンペも・・・死んじゃう・・・だろ?・・・それは、嫌だ。

ポンヤンペ  :ダメだ!俺が許さない!そんな事は・・・くっ!?

伽子     :どうやら、精神の同調が解けたみたいだな。

ムカゼ    :ってことはぁ、コイツが死ぬのももうすぐってか。

秋弥     :へへ・・・ホントに一緒になってたんだな。俺たち。

ポンヤンペ  :いやだ・・・しっかりしろアキヤ。お前、ヒーローになるんだろ・・・?

秋弥     :そうだけど・・・やっぱり、夢は夢だったみたい。
      
ポンヤンペ  :今更そんな・・・そんなことを・・・

伽子     :もう、喋るな。アマちゃん。苦しくなるぞ?三段階目だ。

秋弥     :が・・・あがっ・・・

ポンヤンペ  :アキヤ!・・・魔剣・・・貴様っ!もう十分だろう!

ムカゼ    :って言われてもネェ。俺はただ伽子の言う通りにしてるだけだしぃ。

ポンヤンペ  :減らず口をっ!!

伽子     :かかってくるか?霊体如きになにができる!ムカゼどころか、生身の私にすらキズ1つ付けられない癖に息巻いてんじゃねぇぞ!
        それになぁ?私は、今までの事をコイツの命で手打ちにしてやってるんだ。むしろありがたいと思え。

ポンヤンペ  :だったら!俺を殺せ!俺が全ての原因だろう!アキヤは関係無いっ!

伽子     :いいや。関係はある。何せ、こいつは契約者だしな?担い手の落とし前は、契約者が付ける。道理は通ってるはずだが?

ポンヤンペ  :くっ・・・。

秋弥     :ポン・・・ヤンペ。・・・今まで・・・

ポンヤンペ  :ダメだ!喋るな!アキヤ!気をしっかり・・・

秋弥     :あり・・・が・・・と・・・う・・・・

ポンヤンペ  :アキヤ・・・アキヤぁぁぁぁぁ!

ムカゼ    :ほへー。案外もったな。コイツ。最新記録かも。

伽子     :ムカゼ。お前、黙ってろ。

ポンヤンペ  :妖刀・・貴様・・・。絶対に殺してやる!

ムカゼ    :出来るモンならやってみなー。その機会があればいいけどな。

伽子     :約束通り、見逃してやる。殺したいんなら、早めに新しい相手を見つけるんだな。聖剣。

ポンヤンペ  :絶対に見つける・・・。見つけて、何があってもお前達をっ!アキヤの仇をっ!
      
伽子     :ああ、待ってる。私も、私怨を晴らそうとしているんだ。いつでも相手になってやる。

ムカゼ    :じゃ、さいならー

ポンヤンペ  :くそっ・・・なんで・・・、俺は、人を守るために・・・アキヤを守るために・・・
        くそっ!くそぉぉぉぉぉっ!

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 (間)

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伽子     :なぁ、ムカゼ。

ムカゼ    :おろ?なぁにー?伽子。

伽子     :アイツ、本当にくると思うか?

ムカゼ    :来るね。あの目はあの時の伽子にそっくりだからさぁ。

伽子     :あの時の私・・・か。

ムカゼ    :後悔してもしらねぇぜー?殺さなかったの。

伽子     :いいんだ。それに、私は後悔なんかしない。

ムカゼ    :そーかい。にひひ。

伽子     :お前の方こそ、後悔するんじゃないのか?

ムカゼ    :オレ?オレはぁ、楽しければいい!

伽子     :お前の目的はどうなる?

ムカゼ    :・・・ま、それは追々考えようぜー。今は伽子の願いが先決!

伽子     :そうか・・・。ありがとう。

ムカゼ    :そうと決まれば。次にいこーぜーっ!


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秋弥(N)   :聖剣は誓う。次こそは救い。戦い抜いてみせることを。

伽子(N)   :魔剣は思う。自分の恨みは、彼女の恨みでもあることを。

ムカゼ(N)  :二者は向かう。次の戦いへ。各々の戦いへと。

ポンヤンペ(N):他の剣(つるぎ)と剣(けん)を交える時は近い。


こちらの台本はコンピレーション企画「Arc Jihad(アークジハード)」にて
書かせて頂いたものです。
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