擬天黙示録<ギテンモクシロク> 第十五話 理由無き殺意

ミカエル♂ 24歳  大天使、軍全体の指揮官をしている、生真面目で融通の聞かない性格。真名はアーサー。 
ウリエル♂ 23歳 大天使、遠征隊の指揮官、気が早く荒いタイプ、だが隊長としての腕は一流。真名はレオン。
サンダルフォン♂ 35歳 先代の軍団長、豪快で面倒見がいい、戦闘力は絶大。真名はクラーク。
マルクト♀  35歳 セフィロトのセフィラ。面倒見のいい姉のようなタイプ、しっかり者。真名はクラリス。
サリエル♀ 19歳 天使、ミカエルの副官、魔眼を持っている。大人しく静かな性格。真名はイリア。
アスタロト♀ 25歳 悪魔、冷酷な性格であまり波の見えない、だが奥底に激情を秘めている。
ナベリウス♀ 23歳 悪魔、荒々しく短気、そして直情的、とても分かりやすい性格。






ミカ♂:
ウリ♂:
サン♂:
マルクト♀:
サリエル♀:
アスタ♀:
ナベリ♀:




ナベリ「なぁ、見えたぜ、アスタ」

アスタ「一人頭の獲物は二匹って所か」

ナベリ「ん、二匹半だろ?五匹いるじゃねぇか」

アスタ「一匹は戦えそうもないだろ」

ナベリ「なるほどな、そういう事なら納得だ」

アスタ「四年前は遊び損ねたし、今度こそ楽しまないとな」

ナベリ「違いない、さぁ、行くとしますかね」

アスタ「白き翼の実力、とくと見せてもらおうじゃないか」


サン「擬天黙示録 第十五話 理由無き殺意」


ウリ「統治地域の外って、思った以上に過酷な環境だな・・・」

マルクト「ここまでだと思ってなかった?」

ウリ「あぁ、まさか人の住んでる場所がここまで少ないなんて・・・」

ミカ「そうだな・・・、まさかこれ程野宿をするとは」

マルクト「ふふっ、ミカエルは最初寝難(にく)そうだったわね」

ミカ「人と寝床を共にするのが久しぶりでして・・・」

サン「これだから個室持ちってのは、慣れとけー、外の宿じゃ個室で中々寝れねぇぞ」

ミカ「善処します」

サリエル「私は、早く湯浴みがしたいです、ここ最近は荒地ばかりで、
     汗も流せないので・・・」

マルクト「女の子には辛いわよね、その気持ち分かるわぁ」

サリエル「臭くないかと凄く心配です・・・」

ウリ「まぁ全員似たようなもんだし、一人臭くても分かりゃしないって!」

サリエル「そういう問題じゃないんですよ・・・」

ウリ「お、そうなのか、んじゃ早い所、水場探さねぇとな」

ミカ「それも含めて宿だな、私はいい加減ちゃんとしたベッドで睡眠が取りたい」

サン「そうだなぁ、どちらにしろ、そろそろちゃんと体を休めねぇと・・・」

サリエル「そうですね、皆さん疲れも溜まってきて・・・っ!」

ミカ「どうした、サリエル」

サリエル「敵・・・!」

ミカ「なんだと、どこだ!?」

サン「いくらサリエルの索敵が優れてるとは言え、気配すら・・・」

ミカ「距離、方向は?」

サリエル「五時の方向、距離は、っ、接近してます、数、ニ!」

ウリ「なんだこの気!?」

ミカ「みんな、避けろ!」

マルクト「っ、くぅ!」

サン「げほっげほっ、凄い砂煙だな・・・、みんな、無事か!」

ナベリ「フッ!」

サン「うぉ!?」

ナベリ「おぉ、よくかわしたなぁおっさん、でも迂闊だぜ?
    視界悪い中で声出すとか自殺行為にも程が・・・」

ウリ「それはテメェも、だろうがぁ!」

ナベリ「おっと!」

アスタ「おいナベリス、少し待て、今殺しても面白くない」

ナベリ「あっははは!分かってるよアスタ!少し戯れただけさ!」

アスタ「その戯れで興を削ぐような事になったらどうする」

ナベリ「その時はその時、その程度のおもちゃだったって事だろ?」

アスタ「それに関しては異論ないが、吹け、ブラスト!」

ミカ「っ、風!?」

サリエル「くぅ、強い・・・!」

ウリ「けど、お陰で視界は良好になったな」

ナベリ「お、五人健在か、中々やるじゃねぇか」

サリエル「二人とも黒い翼・・・」

ウリ「まさか、堕天使?」

ナベリ「やめてくれよ、あんな奴らと一緒にするのは」

アスタ「俺達は、れっきとした悪魔だ」

ミカ「くっ、よりによってこんな疲弊した所に・・・!」

サン「クラリス!」

マルクト「分かってるわ!我はセフィロトの樹第10のセフィラ、マルクトなり、
     顕現せよ神の力、アドナイ・メレク!」

アスタ「へぇ、セフィロトかよ、面白い」

ナベリ「四年前の貸しをようやく返して貰えそうじゃねぇか」

マルクト「貸しですって?」

ナベリ「遊び損ねたって貸しだよ」

アスタ「サタンの乱、首を突っ込み損ねたからな、ここで取り返させてもらう」

ミカ「首を、突っ込み損ねただと・・・!」

アスタ「あぁそうだ、俺たちが気付いた時にはもう、カーニバルは終っていたからな」

ミカ「カーニバルだと、貴様達は、戦いを何だと思っている!」

ナベリ「ぷっ、あっはははは、あっははははは!」

ミカ「何が可笑しい!」

ナベリ「何もかもがだよ!あっはっは!今更あたし達の戦いに意味を求めようってのかあんた!」

ミカ「なっ・・・!」

アスタ「天使と悪魔が殺しあう、これは今生きる者が生まれる遥か前から続いているものだ、
    そんな物に今更意味を問う、そんな事になんの意味がある」

サリエル「そんな、意味も無く命ある者同士が、殺しあっていいはずがありません!」

アスタ「意味が、そんなに欲しいのか小娘」

サリエル「当たり前です、命はそんなに軽い物じゃありません」

ナベリ「ならあたしが理由を作ってやるよ、殺し合いがしたい、強い奴と殺し合いがしたい!
    どうだ!立派な理由だろうが!これで満足かよ、ガキィ!」

サリエル「っ、そんな物が理由に・・・!」

ウリ「充分だ」

サリエル「えっ?」

ウリ「テメェらが理由も無く人を殺す悪魔だと分かった、
   これ以上の理由はない!」

ミカ「同感だ、天使軍、筆頭ミカエルの名に懸けて、貴様達をここから逃がしはしない」

サン「ミカエル、ウリエル、張り切るのはいいが、から回るなよ、あいつら、強いぞ」

ミカ「分かっています」

ナベリ「おい、聞いたかよアスタ?」

アスタ「あぁ、売れた首が揃っているようだ」

ナベリ「よし、テメェらも名無し首相手じゃやる気出ねぇだろうから名乗っといてやるよ!
    我が名はナベリウス、ソロモンが一柱、地獄の業火で焼かれたい奴は前に出なぁ!」

アスタ「我が名はアスタロト、ソロモンが一柱、堕ちし栄華の悲哀、その恐ろしさをとくと味わえ」

マルクト「っ、ソロモンが二人も・・・!」

ミカ「ならば尚更逃がすわけにはいかない!主よ、恐れ多くも我のような者が近付く事を許したまえ、
   神に似たるものは誰か、聖人・降誕!ウリエル!」

ウリ「あぁ!己が名は神の炎、裁くは有象無象、神を冒涜せし者、
   焼かれしは等しく罪人なり、悪しきを罪ごと焼き払え、劫火<ゴウカ>・神焔<シンエン>!」

アスタ「いきなり大技か、怒りで雑になった戦いなんぞ面白くもなんとも無い、ナベリス、バーク(叫べ)」

ナベリ「にぃ、すぅぅぅ(にやりと笑い大きく息を吸い込む)、うぉぉおおおおおおおおおおおお!」

サン「ぐぅ!?なんて奴だ、叫び声で術を相殺しやがった!?」

ミカ「だが、隙だらけだぞ、はぁ!」

アスタ「っと、なんの為に俺が待機していると思っている、舐めるなぁ!」

ミカ「なっ、こんな簡単に弾き返され・・・!?」

ナベリ「ほぅら隙だらけだ!」

ミカ「っ、まず・・・!」

サン「あのバカ!来たれ世界、約束されし成功よ、そして導け、終わりなき始まりへ!」

サリエル「ミカエル様後ろに飛んでください!」

ミカ「くぅ!」

サン「無限・斬劫<ザンゴウ>!」

ナベリ「っ、うぉっと!?」

マルクト「逃がさない、振るわれるは水晶の煌き、返る光こそ我が斬撃なり・・・!」

ナベリ「げぇ・・・!」

マルクト「反射・乱斬(ランギリ)!」

アスタ「ふん、ソードスネイク、喰らい尽くせ!」

マルクト「くっ、相殺・・・!」

サリエル「まだです!」

マルクト「っ!」

アスタ「伸びろ、トラッシュバイト!」

ウリ「させるかよ、行く手を塞げ、焔壁<エンペキ>!」

サン「ナイスだ、ウリエル!」

アスタ「ちぃ、抜けないか、ナベリス!」

ナベリ「おぅ!」

サリエル「っ、だめ、もう、あの人を傷付けさせない・・・!」

ナベリ「ヘルズ・フレ(イム)・・・!」

サリエル「あぁぁぁああああああ!」

ナベリ「ぐぅ!?」

ミカ「サリエル!?」

アスタ「後ろで縮こまってると思えば、貴様・・・!」

サリエル「間に、合った・・・!」

アスタ「よくも邪魔を、死ね!」

サリエル「っ!?」

ミカ「意思を超えこの身を運べ、光翼<コウヨク>!
   うぉぉおおおおおおおおお!」

アスタ「ちぃ、揃いも揃って邪魔を・・・!っだらぁ!」

ミカ「はぁ!・・・・フッ、中々思うように行っていない様だな、悪魔・・・!」

アスタ「・・・・それすら、楽しみの一つ、だろうさ・・・!」

ナベリ「げほっげほっ・・・!ちぃ、やってくれるぜ・・・!
    流石に大技は撃たしてくれねぇか、なら、レイブンズウイング・ザ・フレイム!
    アスタァ!かわせよ!」

アスタ「無茶を言う・・・!」

ミカ「くっ、まさか仲間ごと薙ぎ払うつもりか、奴は・・・!」

ウリ「クソ、間に合うか・・・!?罪人を立ち入らせぬは神の采配・・・!」

サリエル「だめです、中詠唱じゃ!」

ウリ「っ!」

サリエル「サンダルフォン様!」

サン「了解だ、射せ、月の煌き、月劫<ゲッコウ>!」

ナベリ「ハッ、当たるかよ!」

マルクト「けどその回避行動の一瞬があれば充分よ」

ナベリ「なっ!?」

マルクト「流転せよ世界、在るべき地へ!転移・縮地<テンイ・シュクチ>!」

ナベリ「転送術、うぉ!?」

アスタ「っ、ナベリス!」

ウリ「お、俺も!?」

ミカ「くっ、何だ!?」

サリエル「マルクト様、サンダルフォン様、御武運を、っ!」

サン「中々無茶をするな、クラリス」

マルクト「あの二人を一緒にしておくよりはマシよ」

サン「ふむ、確かにそうだ」

アスタ「・・・・貴様、ナベリスをどこに・・・!」

マルクト「すぐ近くよ、ただしすぐには戦闘介入できない距離だけど」

サン「出来ないというより、させないと言った方が正しいか」

アスタ「・・・分断されたかよ」

サン「そういう事だ、お前さんは俺たちの相手をしてもらうぜ?」

アスタ「ハッ、望む通り殺してやるよ・・・!」

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ウリ「一体なんだって言うんだ・・・」

ミカ「何故私達まで・・・?」

ナベリ「おぉぉぉおおおらぁ!」

ウリ「うぉ!?」

ミカ「っ、ちぃ!」

ナベリ「だぁくっそ!テメェらやってくれやがったな・・・!」

ウリ「同じ所に飛ばされたのか・・・!」

サリエル「分断するため、です」

ミカ「どういう事だ、サリエル?」

サリエル「相手は二人で多数を相手する事に慣れていました、
     であれば分断して各個撃破の方がより確実だと、そう判断しました」

ミカ「マルクト様とはいつ疎通を?」

サリエル「恐らく、同じ考えに至ったのだと思います」

ナベリ「ちぃ、ただのお荷物かと思いきや中々やってくれんじゃねぇかよ、クソガキが・・・!」

サリエル「っ・・・!」

ミカ「サリエルを舐めてもらっては困るな」

ナベリ「あぁ?」

ミカ「彼女はこの私の補佐だ、並大抵ではないのは当然であろう」

サリエル「ミカエル様・・・」

ナベリ「ハッ、なんの冗談のつもりだ、分断しただけで勝ち組気分かよ、
    あめぇ、たった二匹半であたしに勝てると思ってんのか?」

ウリ「当然だ、テメェはここから逃がさねぇ、そしてあの二人が負ける訳がねぇ、
   つまり俺たちの勝ちだ」

ナベリ「ぷっ、あっはははは、あっははははは!おもしれぇ冗談だ!
    舐めやがって、ならあたしがテメェらを瞬殺してアスタ手伝ってケリだ」

サリエル「させません」

ナベリ「おぉデケェ口叩くねぇ、・・・テメェに何が出来るよ?」

サリエル「見えたんです」

ナベリ「見えた?あっはははは!あんだけであたしを見切ったつもりかよ!
    人を舐めんのも大概に・・・!」

サリエル「違います」

ナベリ「あぁ?」

サリエル「見えたのは、私の武器がです、もう貴方を、絶対有利には立たせません!」

ナベリ「・・・・上等だ、調子乗りやがって」

ミカ「信じているぞ、サリエル」

サリエル「お任せください」

ウリ「って言う事は、要(かなめ)はサリエルか」

ミカ「あぁ、我々のすべき事は決まったぞ、ウリエル」

ウリ「おぅよ、サリエルには指一本触れさせねぇ」

サリエル「勝ちましょう、今度こそ」

ナベリ「やれるもんなら、やってみやがれ!」


サン「次回予告」


マルクト「突如現れた二柱の悪魔」

アスタ「黒き翼は底知れぬ力を秘めた証」

ウリ「相対するは白き翼」

サリエル「その者、確固たる信念で立ち向かう」

ミカエル「次回、擬天黙示録 第十六話 地獄の番を名に持つ者」

ナベリ「あたしのもう一つの名前、知ってるかよ?」








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シナリオの感想とか演じてみて台本としての感想とかいただけると作者がよろこぶかも・・・w