擬天黙示録<ギテンモクシロク>「第十二話 蠅の王と海龍」〜「第十三話 焦がれうねるその渦」

ラファエル♂ 26歳 大天使、医療班の指揮官、温和で冗談好き、医療の腕は確か。真名はセシル。
ベルゼブル♂ 年齢不詳(見た目は青年) 残酷なまでに無邪気、無邪気であるほど残酷。七つの大罪、暴食を冠する。
ガブリエル♀ 24歳 大天使、本部防衛班の指揮官、優しく個を大切にするタイプ。真名はアンジェリカ。
レヴィアタン♀ 24歳 サタンを崇拝する女戦士、強気かつ真面目。七つの大罪、嫉妬を冠する。




ラファエル♂:
ベルゼブル♂:
ガブリエル♀:
レヴィアタン♀:




レヴィアタン「頂いた地図が確かならこの辺りはもう統治地域か、それにしては平和な物だ」

ベルゼブル「当たり前じゃないか、天使の統治地域だよ、治安が悪い訳が無い」

レヴィアタン「その声はゼブルか、ご機嫌麗しゅう、久しいな」

ベルゼブル「久しぶりだねレヴィ、僕の嫌味はスルーかい?」

レヴィアタン「私は嫌味だと思っていないからな、そもそも私もそういう意味で平和という言葉を使ったわけではない」

ベルゼブル「へぇ、それじゃどういう意味で?」

レヴィアタン「ここは奴らのテリトリーなのだろう、ならば敵襲の一つや二つあったとしておかしくあるまい」

ベルゼブル「君、その状態じゃ悪魔って分からないでしょうに、気配も殺してたしね」

レヴィアタン「だがお前には見つかったではないか、敵にも出来る奴の一人や二人はいように」

ベルゼブル「僕のレベルを甘く見てもらっちゃ困るよ、それに、使い魔だっているしね、ほら、おいでー」

レヴィアタン「っ、その、集めるのは止めてもらえないか、なんだ、少し、気色悪い」

ベルゼブル「えぇー、可愛いのに、蠅の群れ」

レヴィアタン「あぁ、そういう好き好きがあるのは分かる、が、一匹二匹なら私とて全く苦にならない、
       だが、だが、その、数百匹と集(たか)ってるのを見るのは、流石にだな・・・・」

ベルゼブル「数百匹?正確には四千八百・・・・」

レヴィアタン「そんな情報は求めていない!やめてくれ!」

ベルゼブル「そっか、残念、散会!」

レヴィアタン「ふぅ・・・・、ん、そういえばゼブル、何故お前はこんな所にいるのだ?」

ベルゼブル「奴らとお話をしてきたのさ、ラフィーもガブちゃんもいい子だったよー!」

レヴィアタン「・・・・愛称で呼ぶほど親しくなったのか?」

ベルゼブル「ううん、今初めて呼んだ」

レヴィアタン「そうか、ならばいいのだが、サタン様の言い付けは破ってないだろうな」

ベルゼブル「もちろんだよ、戦闘は全くしてない、後々メンドクサイのは嫌だからね」

レヴィアタン「まぁこの辺り一帯が無傷なのを見ると本当なのだろうな」

ベルゼブル「そんなぁ、僕だって局地破壊出来るんだよー!」

レヴィアタン「出来るが、しないだろ?」

ベルゼブル「その通り!」

レヴィアタン「はぁ・・・・、ん、待てよ」

ベルゼブル「なに?」

レヴィアタン「お前、話をしてきたと言う事は、防壁を・・・・?」

ベルゼブル「うん、越えたよ?」

レヴィアタン「面倒くさいことをしてくれたな」

ベルゼブル「何が?」

レヴィアタン「対策を打たれたらどうしてくれる」

ベルゼブル「あんな奴らの対策なんかに任務遂行を防がれてしまうのかい?嫉妬」

レヴィアタン「そんな馬鹿な、多少手間が余計にかかるだけだ、任務は完全にこなす」

ベルゼブル「それでこそ大罪を背負いし者だよ、サタンのためなら火の中水の中!」

レヴィアタン「水の中ならむしろありがたいのだがな、地上で戦うと自然を壊してしまう」

ベルゼブル「戦いにくいとかじゃないんだ?」

レヴィアタン「戦地を選ぶのは無能のする事、優秀な戦士は得意とする場所以外でも戦果を上げるものだ」

ベルゼブル「全くもって素晴らしい模範解答だよ、流石優等生のレヴィだ」

レヴィアタン「お褒めの言葉ありがとう、さて、私はそろそろ行くが、お前はどうする?」

ベルゼブル「帰ろっかなぁ、人が遊んでるの見ると僕も遊びたくなっちゃうし」

レヴィアタン「そうしてくれ、お前と二人では壊しすぎてしまう」

ベルゼブル「君一人でも充分壊しすぎだと思うけどね」

レヴィアタン「だから言っているんだ、二人だと天使の本拠地が終ってしまう」

ベルゼブル「あっはは!確かにね、それじゃ、くれぐれも終らせてしまわないように気を付けてね」

レヴィアタン「言われなくとも、この身に眠る悪魔の魂よ、目覚めよ、そして顕現せよ、ウェイク、
       うぉぉぉぉぉおおおおおおおおおお!」

ベルゼブル「嫉妬の海龍、破滅の波、何度見ても美しい」

レヴィアタン「美しいものか、この姿は嫉妬を体現したもの、何もかもを妬み、破滅させる姿だ、
       待っていろ天使共、魔王の鎚<ツチ>、嫉妬のレヴィアタンが今征くぞ!」

ベルゼブル「恋焦がれ、支配に執着し、主<アルジ>に一途に縋<スガ>るその姿は正<マサ>しく固執そのもの、
      それが存在意義であり、個たらしめる物であれば、どんな物であれ美しいと、
      僕はそう思うのだけれどね、まぁいいや、頑張っておいでよ、レヴィ」

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ラファエル「よし、これで準備は万端かな」

ガブリエル「なんとか間に合ったわね、これでなんとかなるといいけど」

ラファエル「するしかないよ、この防壁を超えられたら僕達の負けだからね」

ガブリエル「そうね、この先には守るべき兵も民もいるのだから、突破される訳にはいかないわ」

ラファエル「後は敵が来るのを待つだ・・・・・」

ガブリエル「っ、なに、あれ・・・・!」

ラファエル「巨大な、龍・・・・・?」

ガブリエル「まさか、あれがレヴィアタン!?」

ラファエル「・・・・・生きて帰ろう」


レヴィアタン「擬天黙示録 第十三話 焦がれうねるその渦」


ガブリエル「ようこそレヴィアタン、我らが本拠地へ」

ラファエル「来ていただいたばかりで申し訳ないのだけど、お引取り願えないかな?」

レヴィアタン「ほぅ、天使というのは客人を門前払いするのか、礼儀がなってないな」

ガブリエル「・・・・意外と悪魔って礼儀正しいのね」

レヴィアタン「当然、という訳ではないが、我々とて元は人間だ、常識ぐらいは持ち合わせている」

ラファエル「と言う事はアスモデウスが特殊なんだね・・・」

レヴィアタン「その通りだ、誰も彼もあんな者だとは思われなくは無いな」

ガブリエル「それならば、ちゃんと客人として迎え入れたいので、人の形を取っていただけるかしら、
      何も常にその姿な訳ではないのでしょう?」

ラファエル「そうだね、それでは入り口をくぐる事すら出来ないよ」

レヴィアタン「あぁ、それならば安心して欲しい」

ラファエル「どういう、事だい?」

レヴィアタン「元より入り口を使うつもりなど、ない!」

ラファエル「っ、来るよ!」

ガブリエル「分かってるわ、ふっ!」

レヴィアタン「甘いな、私の目的は、こっちだ!」

ガブリエル「防壁狙い、私たちだってそれを見抜けないほど間抜けじゃないわ」

ラファエル「守護の壁よ、牙剥きて、神に仇なす敵を討て!」

ガブリエル「爆逆・障壁<バクギャク・ショウヘキ>!」

レヴィアタン「っ、ぐぅ!っく、やってくれる、なぁ!」

ガブリエル「止まらない!?くぅ!」

ラファエル「っと、あれに当たりながらそのままこっちに反転とは、なかなかやるね」

レヴィアタン「少し痛かったぞ、天使よ、だが罠だと分かっていれば、まずはお前たちをやるだけだ。はぁ!」

ラファエル「くっ、当たったら走馬燈を見る間もなく死んでしまいそうだね」

ガブリエル「洒落にならない冗談はやめて」

レヴィアタン「冗談でなければいいのか?」

ガブリエル「っ、嘘!?」

ラファエル「海龍の身で跳躍までするなんて・・・!」

レヴィアタン「我が罪は全てを飲み込む、御し切れぬ程の嫉妬よ、
       得と味わえ、エンヴィヴォーテックス!」

ガブリエル「・・・何も、起こらない?」

ラファエル「いや、音・・・、音がする」

ガブリエル「木の、へし折れる、音?」

ラファエル「っ、な、あんな規模の津波を魔術で発生させるなんて・・・!」

ガブリエル「そんな、嘘、でしょ・・・!」

レヴィアタン「さぁ、こんな所で終ってくれるなよ、天使!」

ガブリエル「くっ、飛びましょう、障壁に全ての力を」

ラファエル「それしかなさそうだね、よっ!」

ガブリエル「ふっ!」

ラファエル「風よ、大気よ、我に力を、救いの力を!」

ガブリエル「水よ、大海よ、我に力を、護りの力を!」

レヴィアタン「凄まじい力だ、だが、奇麗事だけではなんともならぬ事を教えてくれる!
       はぁぁあああああああああああああ!」

ガブリエル「っ・・・・!つ、よ・・・!」

ラファエル「ぐ、ぅ、まだ、まだ、この障壁の先に、こんな物を通してなるものか・・・!」

ガブリエル「そう、よ、民を、アーサー達の帰る場所を、壊させるわけにはいかないの・・・!」

レヴィアタン「ほぅ、まさかこれを・・・」

ガブリエル「悪しきを阻むは確固たる信念なり」

ラファエル「惑いを退けるは迷い無き心なり、誓いは契り」

ガブリエル「我らの想いなり、神壁<シンヘキ>」

ラファエル「堅牢<ケンロウ>!」

ガブリエル「・・・・・・止まった?」

レヴィアタン「ふっ、油断大敵だぞ!」

ラファエル「っ、しまっ・・・!」

レヴィアタン「はぁぁぁぁああああ!」

ガブリエル「障壁が・・・!」

ラファエル「くっ、ここで止めるよ!」

ガブリエル「っ、えぇ!」

ラファエル「振り下ろされる大気は神の息吹、重圧を得て彼の者を圧したまえ!
      空圧・踏破<クウアツ・トウハ>!」

ガブリエル「降り注ぐ雨は矢となりて、神に仇なす者を打つだろう、
      降矢・滅雨<コウシ・メツウ>!」

レヴィアタン「ぐぅぅぅううううう!がっ、やってくれる、だがこの程度では、止まらん!」

ガブリエル「あぁ、街が!」

ラファエル「何て事を・・・!なんとしてもここで・・・!」

レヴィアタン「そろそろ潮時か、天使、サタン様の慈悲に感謝せよ!パーティングフォッグ!」

ラファエル「っ、霧!?」

ガブリエル「あの大きさなら、適当に打っても・・・!」

ラファエル「待ってガブリエル」

ガブリエル「っ、どうして・・・!」

ラファエル「もう、いないよ」

ガブリエル「嘘・・・!」

ラファエル「風よ、霧を吹き飛ばしたまえ、・・・ほら」

ガブリエル「・・・霧に紛れて、人の姿に戻ったのかしら」

ラファエル「恐らくね、逃げたのなら次を急ごう、人命救助を」

ガブリエル「分かったわ、行きましょう」

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レヴィアタン「ぐ、ぅ・・・、手加減をしながら敵に一定以上の打撃を与えると言うのは、
       思いの他難しい物だな・・・」

ベルゼブル「お疲れ様ー、レヴィ」

レヴィアタン「ゼブル、まだ、いたのか」

ベルゼブル「あー、ひっどいなぁ、危なくなったら助けてあげようと思って待機してあげてたのにー」

レヴィアタン「見え透いた嘘は結構だ、私がしくじらないか見ていたのだろう、
       何かあるようであれば自分が場に出る大義名分にもなるからな」

ベルゼブル「ふふん、動機はどうであれ助けるって結果は一緒さ」

レヴィアタン「そう下心が見え見えでは嬉しくないぞ」

ベルゼブル「もー、レヴィは堅いなぁ、ま、過ぎた事だしいっか、
      でも本当にあの程度で済ましちゃうんだもんなぁ、サタンったらよく分かんないなぁ」

レヴィアタン「程度は私の判断だ、殺しきらぬよう、尚且つすぐには回復出来ぬよう、
       これがサタン様の命だ」

ベルゼブル「ふーん、面白くないのー、はぁーあ、やる事ないし、仕方がないから僕帰るよー」

レヴィアタン「あぁ、そうしてくれ、お前の相手をしていると私が帰れない」

ベルゼブル「あれあれー、構ってくれてた感じだ、優しいなぁ、僕なら放置して帰っちゃうけどなぁ」

レヴィアタン「・・・・帰らないのか?」

ベルゼブル「そうだったそうだった、それじゃあねー!」

レヴィアタン「全く、扱い辛い事この上ない、強力な力を持っているのは分かるが・・・、
       いや、それは他の悪魔も同じ事か、この私も、な・・・」

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ガブリエル「くっ、こんな被害になるなんて・・・」

ラファエル「たった、たった一度の攻撃で街を薙ぎ払うなんて、規格外にも程があるね・・・」

ガブリエル「そう、ね・・・、ふぅ、下を向いてても事態は好転しないわね、この被害、二人じゃ手に余るわ、
      人、呼んで来るわね」

ラファエル「うん、お願いするよ、僕は先に降りて怪我人の治療を」

ガブリエル「分かったわ、それじゃまた後で」

ラファエルN「この後、防衛班と衛生班で破壊された街に住む人の救助、並びに復興に当たる事になる、
       人員の配置後、僕とガブリエルは障壁の修復に、結果として、その間本部は無防備となった。
       あれだけの力ならば本部その物に打撃を与える事も可能だったはず、
       だと言うのに悪魔は退いた。敗北した僕達に真相を知る術も無く、
       一抹の不安を胸に抱えながら任務にかかるのだった」


ベルゼブル「次回予告」


ガブリエル「今までに無い被害を受けた天使の街」

ラファエル「強大な敵の力を目の当たりにし、軍でも様々な思想が生まれる事となる」

レヴィアタン「次回、擬天黙示録 第十四話 敗北を経て」

ガブリエル「悪魔の強さ、天使には無い、強さ」






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シナリオの感想とか演じてみて台本としての感想とかいただけると作者がよろこぶかも・・・w