擬天黙示録 第十二話 蠅の王と海龍

ベルゼブル♂ 年齢不詳(見た目は青年) 残酷なまでに無邪気、無邪気であるほど残酷。七つの大罪、暴食を冠する。
レヴィアタン♀ 24歳 サタンを崇拝する女戦士、強気かつ真面目。七つの大罪、嫉妬を冠する。



ベルゼブル♂:
レヴィアタン♀:




レヴィアタン「頂いた地図が確かならこの辺りはもう統治地域か、それにしては平和な物だ」

ベルゼブル「当たり前じゃないか、天使の統治地域だよ、治安が悪い訳が無い」

レヴィアタン「その声はゼブルか、ご機嫌麗しゅう、久しいな」

ベルゼブル「久しぶりだねレヴィ、僕の嫌味はスルーかい?」

レヴィアタン「私は嫌味だと思っていないからな、そもそも私もそういう意味で平和という言葉を使ったわけではない」

ベルゼブル「へぇ、それじゃどういう意味で?」

レヴィアタン「ここは奴らのテリトリーなのだろう、ならば敵襲の一つや二つあったとしておかしくあるまい」

ベルゼブル「君、その状態じゃ悪魔って分からないでしょうに、気配も殺してたしね」

レヴィアタン「だがお前には見つかったではないか、敵にも出来る奴の一人や二人はいように」

ベルゼブル「僕のレベルを甘く見てもらっちゃ困るよ、それに、使い魔だっているしね、ほら、おいでー」

レヴィアタン「っ、その、集めるのは止めてもらえないか、なんだ、少し、気色悪い」

ベルゼブル「えぇー、可愛いのに、蠅の群れ」

レヴィアタン「あぁ、そういう好き好きがあるのは分かる、が、一匹二匹なら私とて全く苦にならない、
       だが、だが、その、数百匹と集(たか)ってるのを見るのは、流石にだな・・・・」

ベルゼブル「数百匹?正確には四千八百・・・・」

レヴィアタン「そんな情報は求めていない!やめてくれ!」

ベルゼブル「そっか、残念、散会!」

レヴィアタン「ふぅ・・・・、ん、そういえばゼブル、何故お前はこんな所にいるのだ?」

ベルゼブル「奴らとお話をしてきたのさ、ラフィーもガブちゃんもいい子だったよー!」

レヴィアタン「・・・・愛称で呼ぶほど親しくなったのか?」

ベルゼブル「ううん、今初めて呼んだ」

レヴィアタン「そうか、ならばいいのだが、サタン様の言い付けは破ってないだろうな」

ベルゼブル「もちろんだよ、戦闘は全くしてない、後々メンドクサイのは嫌だからね」

レヴィアタン「まぁこの辺り一帯が無傷なのを見ると本当なのだろうな」

ベルゼブル「そんなぁ、僕だって局地破壊出来るんだよー!」

レヴィアタン「出来るが、しないだろ?」

ベルゼブル「その通り!」

レヴィアタン「はぁ・・・・、ん、待てよ」

ベルゼブル「なに?」

レヴィアタン「お前、話をしてきたと言う事は、防壁を・・・・?」

ベルゼブル「うん、越えたよ?」

レヴィアタン「面倒くさいことをしてくれたな」

ベルゼブル「何が?」

レヴィアタン「対策を打たれたらどうしてくれる」

ベルゼブル「あんな奴らの対策なんかに任務遂行を防がれてしまうのかい?嫉妬」

レヴィアタン「そんな馬鹿な、多少手間が余計にかかるだけだ、任務は完全にこなす」

ベルゼブル「それでこそ大罪を背負いし者だよ、サタンのためなら火の中水の中!」

レヴィアタン「水の中ならむしろありがたいのだがな、地上で戦うと自然を壊してしまう」

ベルゼブル「戦いにくいとかじゃないんだ?」

レヴィアタン「戦地を選ぶのは無能のする事、優秀な戦士は得意とする場所以外でも戦果を上げるものだ」

ベルゼブル「全くもって素晴らしい模範解答だよ、流石優等生のレヴィだ」

レヴィアタン「お褒めの言葉ありがとう、さて、私はそろそろ行くが、お前はどうする?」

ベルゼブル「帰ろっかなぁ、人が遊んでるの見ると僕も遊びたくなっちゃうし」

レヴィアタン「そうしてくれ、お前と二人では壊しすぎてしまう」

ベルゼブル「君一人でも充分壊しすぎだと思うけどね」

レヴィアタン「だから言っているんだ、二人だと天使の本拠地が終ってしまう」

ベルゼブル「あっはは!確かにね、それじゃ、くれぐれも終らせてしまわないように気を付けてね」

レヴィアタン「言われなくとも、この身に眠る悪魔の魂よ、目覚めよ、そして顕現せよ、ウェイク、
       うぉぉぉぉぉおおおおおおおおおお!」

ベルゼブル「嫉妬の海龍、破滅の波、何度見ても美しい」

レヴィアタン「美しいものか、この姿は嫉妬を体現したもの、何もかもを妬み、破滅させる姿だ、
       待っていろ天使共、魔王の鎚<ツチ>、嫉妬のレヴィアタンが今征くぞ!」

ベルゼブル「恋焦がれ、支配に執着し、主<アルジ>に一途に縋<スガ>るその姿は正<マサ>しく固執そのもの、
      それが存在意義であり、個たらしめる物であれば、どんな物であれ美しいと、
      僕はそう思うのだけれどね、まぁいいや、頑張っておいでよ、レヴィ」


ベルゼブル「次回予告」


レヴィアタン「天使を襲う嫉妬の海」

ベルゼブル「罪は深ければ深いほど強大となっていく」

レヴィアタン「全てを飲み込みかねないその罪に、天使達は抗うことが出来るのだろうか」

ベルゼブル「次回、擬天黙示録 第十三話 焦がれうねるその渦」

レヴィアタン「あの方の業は私の業、あの方の思いは私の思い、あの方の命(めい)は私の命(いのち)」



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シナリオの感想とか演じてみて台本としての感想とかいただけると作者がよろこぶかも・・・w