擬天黙示録 第十話 結果と現実と

ミカエル♂ 24歳 大天使、軍全体の指揮官をしている、生真面目で融通の聞かない性格。真名はアーサー。
ウリエル♂ 23歳 大天使、遠征隊の指揮官、気が早く荒いタイプ、だが隊長としての腕は一流。真名はレオン。
サンダルフォン♂ 35歳 先代の軍団長、豪快で面倒見がいい、戦闘力は絶大。真名はクラーク。
トム♂ 被りなのでやり易いようにどうぞ 村に住む男性、閉鎖的な村の象徴、排他的かつ否定的。
マルクト♀ 35歳 セフィロトのセフィラ。面倒見のいい姉のようなタイプ、しっかり者。真名はクラリス。
サリエル♀ 19歳 天使、ミカエルの副官、魔眼を持っている。大人しく静かな性格。真名はイリア。





ミカエル♂:
ウリエル♂:
サンダルフォン&トム♂:
マルクト♀:
サリエル♀:



サリエル「あ、ミカエル様、ウリエル様、おかえりなさいませ・・・・」

ウリエル「ただいまサリエル、支援、ご苦労様」

ミカエル「どうした、そんな顔をして、お前はちゃんと務めを果したんだ」

サリエル「でも、守れませんでした、エリカさんだけではなく、ペネムさんまで・・・」

ミカエル「・・・・・・あぁ」

ウリエル「俺たちがもっとちゃんと動いていればって悔いた所で、時は戻せない」

サリエル「ウリエル様・・・」

ウリエル「だから、次に活かすしかないんだ、だから、俯くな、前を向け」

サリエル「・・・はい、ありがとうございます」

ミカエル「はぁ・・・、少し、お前が羨ましいよ、ウリエル」

ウリエル「ん、何がだ?」

ミカエル「私もすぐに切り替えられる柔軟な思考が欲しいよ」

ウリエル「思考の切り替えはお前も早いだろ、俺は感情の切り替えが得意なだけだ」

サンダルフォン「熱くなって見失うのも早いがな」

ウリエル「っ、サンダルフォン様!?いつから聞いて・・・!」

マルクト「ちゃんと動いていればって辺りからかしらね」

ウリエル「ド頭からかよ・・・・」

ミカエル「サンダルフォン様、マルクト様、お疲れ様でした」

マルクト「ミカエル達もお疲れ様、ごめんなさい、一番辛い仕事任せてしまって」

ミカエル「いえ、問題ありません、私の立場を考えれば当然の事です」

サンダルフォン「責任を負うのは悪いことじゃない、が、一人で抱え込むなよ」

ミカエル「ふっ、それは大丈夫ですよ、今回はウリエルも一緒でしたから」

サンダルフォン「それならばいいんだがな」

マルクト「さて、落ち込んでる所、悪いんだけど、報告しにいかないと」

ミカエル「それもそうですね、さてと、村長の家は・・・」

トム「そういうのもう良いから、早く出てってくれないかな」


ウリエル「擬天黙示録 第十話 結果と現実と」


ミカエル「ん、君は・・・?」

トム「この村の人間だよ」

サリエル「あの、出てってとはどういう・・・?」

トム「悪魔からこの村を救ってくれた事には感謝してる、ありがとう、
   だけど、もうこの村でやる事なんて無いだろ、天使は早くどっかにいっちまえ」

ミカエル「なっ・・・・!」

ウリエル「テメェ、恩の押し売りをするつもりはねぇが、いくらなんでもその言い方はねぇだろうが」

トム「今まで散々統治外だとかで放置されて、一回助けただけで水に流せ?
   調子の良い・・・、俺たちがそんなんで納得するとでも思ってるのかよ」

ウリエル「っ、だからって、そんな態度許されるとでも・・・!」

マルクト「レオン」

ウリエル「なんだよ!」

マルクト「下がりなさい」

ウリエル「けど!」

マルクト「下がりなさい」

ウリエル「・・・・・分かった」

マルクト「申し訳ございません、少しだけお話をお伺いしてもよろしいでしょうか?
     それが終りましたらすぐに村から出発しますので」

トム「・・・何?」

ミカエル「ありがとうございます、何故今までペネムを、あの天使をこの村に置いていたのですか?
     そこまで天使が嫌いだと言うのに」

トム「あの天使は話のよく分かる奴だったからな、そこの赤い奴と違って」

ウリエル「ぐっ・・・」

マルクト「レオン」

ウリエル「分かってる・・・・!」

トム「あいつは悪魔からこの村を救う代わりにここに置いてくれって言ってたんだ、
   信用が出来なければ、いつでも寝首をかきに来て良いって条件付でな」

ミカエル「そうだったのか・・・」

トム「あの女が助けるって言い始めた時は本気でどうしようかと思ったけど」

サリエル「あの女?エリカさんの事ですか?」

トム「あ?あぁ、そんな名前だったな」

サリエル「・・・・あの人は、この村のために頑張っていたのではないのですか?」

トム「それがあいつの仕事だからな」

サリエル「仕事・・・・?」

トム「ちっ、世間知らずの天使様にはそんな所まで説明しなきゃなんねぇのかよ・・・」

マルクト「それは私が把握しています、村から出た後に説明しておきます」

トム「そうしてくれ、で、もうない?」

ミカエル「では私から、彼女が死んで、どうも思わないのか?」

トム「あぁ、直接の知り合いでもない、俺にはなんの関係もないよ、
   どうせ他の奴らも一緒さ、なんも思ってないだろうね」

ミカエル「・・・・彼女は、命をかけてまで村を救ったと言うのに・・・」

トム「だから、あいつの仕事なんだからしょうが無いだろ、皆が心を痛めないためのあいつだろうが」

ウリエル「人間一人の扱いが、そんなんでいいと思ってるのかよ・・・・!」

トム「なぁ天使様、それじゃあ聞くけど、この村の、いや、地域外の人間の扱い、あれでいいのかよ?」

ウリエル「っ、それは・・・・」

サリエル「良い訳、ないじゃないですか、だけど、貴方達は、それを受け入れるつもりは・・・」

トム「ある訳ないだろ、ほら、分かったらさっさと出てけよ」

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サリエル「マルクト様、エリカさんの仕事って、いったいどういう事でしょうか・・・?」

マルクト「統治外にある地域の小さな村にはね、たまたま訪れた旅人をもてなす為の子がいるの、
     きっとこの村では彼女だったんでしょうね」

ウリエル「もてなす為・・・、どうしてそんな必要が?」

マルクト「襲来者は人の形をしてるのが殆どでしょう?だからもてなす事で被害を最小限にするのよ」

ウリエル「それじゃ、村の身代わり、って事かよ・・・!」

マルクト「その通り」

サンダルフォン「それだけじゃないぞ、旅人は中には金を持ってたり独自のコネを持ってるものもいる、
        そういった奴らに取り入れば村は潤う」

サリエル「そんな、非人道的なことが・・・」

サンダルフォン「恵まれていない地域ではよくある事だ、統治地域外では特に、な」

ミカエル「それじゃあ、あの子が、この村のために身を捨ててまで守ったのは、
     他の人からしたら当然だと・・・」

マルクト「そうなるわね」

ウリエル「そんな事が、許されるはず・・・・」

サンダルフォン「だが、これをしなければとうに破綻している村は沢山ある」

ミカエル「それは、我々が更に精進して、統治地域を広げなければならない、と言う事ですか」

サンダルフォン「それをするには、俺達を嫌っている者達に認められなくては、だな」

ミカエル「・・・・・・・お二人は」

サンダルフォン「ん?」

ミカエル「我々が、歓迎されていないという事を、最初からご存知だったのですよね?」

サンダルフォン「あぁ、だから天使を名乗るなと最初に言っただろ?」

ミカエル「何故です、何故我々をここに連れてきたのですか」

サンダルフォン「あー・・・、それはだな・・・」

マルクト「なんでそこで詰まるのよ、これから悪魔を探して世界を回るのよ?
     奴らが何処に多いって、そんなの統治地域の外に決まっているでしょう、
     だからまず肌で感じてもらいたかったのよ、その空気をね」

ウリエル「なら、あの子とペネムが死んだのも、ワザとなのかよ」

マルクト「それは違う」

ウリエル「じゃあなんであいつらは死んだんだ!なんで二人がいながら守れなかったんだよ!」

マルクト「っ、それは・・・・」

ウリエル「なんだよ、言えねぇのかよ!」

ミカエル「ウリエル!」

ウリエル「んだよ!お前はなんとも思わねぇのかよアーサー!」

ミカエル「そんな訳がないだろう!だが責任をお二人になすり付けて何になる!」

ウリエル「違うのかよ、現場にいたのは二人だろうが、空気を感じさせたかったんだろ、この空気を!」

ミカエル「そうは言ってなかっただろう!」

ウリエル「俺にはそうとしか聞こえなかったけどなぁ!」

サリエル「や、やめて・・・」

ミカエル「もういい!ならば私を憎めよ!ルイスを殺したのはこの・・・!」

サリエル「やめてください!」

ミカエル・ウリエル「っ!?」

サリエル「やめて、ください・・・、サンダルフォン様も、マルクト様も、ミカエル様もウリエル様も、
     皆全力を尽くしていました、誰にも非があるようには見えませんでした!
     私は、全部見ていたのに、見えていたのに・・・、一人安全な所で、何も出来なかった・・・!」

サンダルフォン「サリエル、それは違う、お前のサポートがなければ俺たちだって・・・」

サリエル「けど私は見えていたんです!エリカさんが騙されている所も、どう騙されていたかも、
     どんな目にあっていたかも、全部見えていたんです・・・、私が他の人にそれを伝えていれば、
     もしかしたら誰も死なずに済んだかもしれない、だから、私の判断ミスなんです・・・」

ミカエル「サリエル・・・・・」

サリエル「申し訳ございませんミカエル様、私の、私のせいで・・・」

ミカエル「違う、あれは私の判断だ、ルイスを殺したのも私だ、他の誰のせいでもない」

マルクト「そうよ、サリエルの判断は間違ってなかった、あそこでそれを知ってしまったら、
     現場に焦りが生まれ、より酷い事になっていたかもしれないのだから」

ウリエル「んだよ・・・、俺がガキみたいじゃねぇか・・・・」

マルクト「いいえ、私も配慮が足りなかったわ、ごめんなさい」

ウリエル「・・・・こちらこそ、すみませんでした」

サリエル「あの、サンダルフォン様、マルクト様、お二人は、どう思っていらっしゃるんですか?」

サンダルフォン「・・・・どういう事だ?」

サリエル「ペネムさんと、エリカさんの事、そして、村の事、お二人は知識を私たちに授けてくださいました、
     だけど、私はお二人の気持ちが知りたいんです」

サンダルフォン「・・・・悔しいに決まっている、その場にいながら何もしてやれなかった」

マルクト「力はあったはず、だからやり方さえ間違えなければ二人とも救えたはずなのに・・・」

ウリエル「・・・・・・・」

マルクト「村の事だって、本当ならちゃんと支援したいと思っている」

サンダルフォン「難しい事は分かっている、だが本拠地からこんな近い場所すら守れないのは、な」

ミカエル「・・・・・まずは悪魔を殲滅します、一人でも苦しめられる人が減るように」

ウリエル「そんな事しか、出来ねぇのかよ・・・・」

ミカエル「そんな事だが、私たちにしか出来ない事だ」

ウリエル「・・・・・分かってるよ」

マルクト「サリエル、どう、かしら?」

サリエル「ありがとうございます、ちょっと不安だったんです、お二方とも、
     弱い所を全然お見せにならないので、なんとも思ってないんじゃないかと思ってしまって・・・」

サンダルフォン「ははは、悪かった、不安にさせないようにと思ってたんだが、逆効果だったか」

マルクト「私たちもまだまだね」

ウリエル「それを言うならミカエルもじゃないか?」

サリエル「ミカエル様は分かります」

ミカエル「・・・・そうなのか?」

サリエル「分かりますよ、私は」

ミカエル「そうか、不安を悟られるようではまだまだだな、私も」

ウリエル「わかんねぇなぁ、俺には」

サンダルフォン「何がだ?」

ウリエル「ミカエルが」

マルクト「ふふっ、きっとウリエルにはずっと分からないでしょうね」

サリエル「はい、きっと」

ウリエル「サリエルにも言われるとは・・・」

ミカエル「まぁ、サリエルは私と共にいる時間も長いからな、それもあるだろう」

サンダルフォン「なぁクラリス」

マルクト「何?クラーク」

サンダルフォン「面白いな」

マルクト「えぇ、同感」

サリエル「ふふっ、そうですね、私は少し複雑ですけど」

ウリエル「・・・・・余計分からん」

ミカエル「そうだな、何が面白いのか私にも分からない」

サリエル「いつか分かりますよ、きっと」

ミカエル「そ、そうか、それはそうと、サンダルフォン様、次はどう動かれるのですか?」

サンダルフォン「このまま統治地域外を進む、そうすれば悪魔とは嫌でも当たるからな」

ウリエル「今度は正面からぶつかれる相手だといいけど・・・」

マルクト「同感だわ、次はすっきり終りたいわね」

サリエル「もう、後悔しないように」

ミカエル「あぁ、では、そろそろ行きましょう、次の地へ」


サンダルフォン「次回予告」


ウリエル「納得の行かない決着を迎えた一行は、次の地へ向かう」

サリエル「一方その頃、本拠地に迫る影が一つ・・・・」

ミカエル「次回、擬天黙示録 第十一話 暴食との接触」

マルクト「流転する舞台、この戦いに安息など無いのだ」





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シナリオの感想とか演じてみて台本としての感想とかいただけると作者がよろこぶかも・・・w